雫石鉄也の
とつぜんブログ
七人の侍
監督 黒澤明
出演 志村喬、三船敏郎、稲葉義男、加東大介、千秋実、宮口清二、木村功
日本映画を代表する名作。小生はずいぶん前に観たが、このたびBSの黒澤特集で放映されたので観た。これで何度目の鑑賞になるかな。
何度観ても面白い。何度観ても名作であるとの認識を新たにする。あまりに有名な名作だけに、どういう映画か、ほとんどの人はご存知だろう。でも、まだ観ていないという幸せな(そういう人は「7人の侍」を初めて観るという、生涯忘れられない感動をこれから感じるのだ)人のために紹介する。
野盗の群れに村を襲われて、百姓たちは困り果てる。長老のアドバイスで、侍を雇って村を守ってもらうことにする。侍スカウトに出かけた百姓4人は、七人の侍を連れて村に帰る。侍たちは村に馬防柵を作り、村人に軍事教練をして、野盗の襲来に備える。そして、野盗の群れが村に襲いかかる。
あれ、こんな西部劇観た事あると、思われるかもしれない。その西部劇「荒野の7人」の方を先に観たムキも多いだろう。実は小生も「荒野の7人」を先に観た。ものすごく面白い西部劇で、小生の西部劇ベスト5に入れてある。で、後になって、本歌の「7人の侍」を観たわけ。感動した。「荒野の7人」も面白いが、「7人の侍」はずしりとくる重量感を感じた。
白い米の飯が食えるというだけで、絶望的な戦いに望む7人の浪人たち。劇中で志村喬扮する勘兵衛がいっていた。「ワシらもかっては立身出世一国一城の主を目指した。しかしそんなことを考えているうちに歳をとって、髪も白くなり一人になってしまった」
三船の菊千代、木村の勝四郎は別として、他の中高年の浪人5人は死に場所を探していたのではないだろうか。そしてたまたま勘兵衛に声をかけられ、勘兵衛の人柄にもひかれて、利吉たちの村を死に場所と定めたのだろう。だから生き残った勘兵衛が、やはり生き残った、加東の七郎次に「ワシらはまた負け戦」という。本当は勘兵衛、七郎次も死にたかったのだろう。
百姓は生産者である。侍は非生産者。なにがどうなろうと生産者の方が強い。非生産者はどんなに頑張っても生産者には絶対に勝てない。
ラストで百姓は歌い踊りながら田植えをして、ひとときの生産の喜びを表わす。侍は死んだ4人の仲間の、土盛りに刀を刺しただけの粗末な墓標をあとに、「負け戦だ」との言葉を残して去って行く。
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