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鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイドを行っていた千嶋淳(2018年没)の記録

十勝の自然2 フクジュソウ

2015-04-28 22:04:34 | 自然(全般・鳥、海獣以外)

Photo by Chishima, J.
フクジュソウハナアブ類 2014年3月 北海道中川郡池田町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)

 早春、雪が解けて真っ先に花を咲かすのがフクジュソウです。残雪や枯野の中で天を仰ぐ鮮やかな黄色の花には毎年ワクワクし、元気をもらいます。北国の長い冬の後だからでしょうか。元日草の別名もあり、本州では冬のうちから花を咲かせますが、十勝では3月後半から4月前半が開花期です。
 いくつにも分かれた花びらで花の中心に熱を集め、ハナアブなどの昆虫を呼び寄せて花粉を運んでもらいます。そのため、晴れた日中に目一杯開いている花は、夜や悪天候の時には閉じてしまいます。公園や庭先にも多い花ですので、よかったら実際に確かめてみてください。
 アイヌ語名は「クナウノンノ」。ノンノは花を意味し、霧の女神クナウが肉食獣テンとの結婚を拒んだがため草にされてしまい、テンがまだ不活発な早春に雪の間から顔を出し、父のいる天を懐かしんでいるという伝説に因んだ名前です。
 見た目もきれいで思わず山菜として食べたくなってしまうかもしれませんが、全体に毒があり、嘔吐や呼吸困難を起こすこともあるので、気を付けましょう。美しい花を愛でたのが水辺なら、近くに同じく早春を告げるエゾアカガエルやその卵があるかもしれず、それらを探すのもまた一興です。


(2015年4月7日  千嶋 淳)

清見ケ丘公園

2012-12-01 22:33:31 | 自然(全般・鳥、海獣以外)
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All Photos by Chishima,J.
コムクドリのオス2012年5月 以下アオバトを除きすべて 北海道中川郡池田町)


NPO法人日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより178号」(2012年9月発行)より転載 写真を追加)


 開拓が入る前の十勝平野はカシワをはじめ、ミズナラ、センノキ、ハルニレ等の巨木に覆われていたらしい。しかし、今では帯広市街地の緑地面積が3%程度に過ぎないことからも察せられるよう、その大部分は失われてしまった。そんな往年の、巨木が生い茂る原野の片鱗を感じながら散策を楽しめるのが、池田町市街地に隣接する清見ヶ丘公園だ。
 帯広から車で30分、またはJR池田駅から徒歩で20分の距離にある同公園は、池田市街地の東側に連なる丘陵地帯の一部で、公園内には樹齢300年を超えるというカシワの巨木が立ち並ぶ。両手を回してもとても抱きしめられない太さの幹と、その上部から力強く分岐する枝の数々からは、荘厳さと時の悠久さを十分実感できる。
 同公園での探鳥は四季を通じて楽しむことができるが、一番のおすすめは初夏(5月中旬~6月上)。巨木が多いため、樹洞や木の割れ目も多いのであろう。コムクドリやキビタキ、ハリオアマツバメといった樹洞営巣性の鳥が多いのが特徴の一つだ。コムクドリを観察するのなら、葉が芽吹く以前の5月中・下旬が良い。黄金週間前後に夏鳥として渡来する本種は、渡来初期にはディスプレイや営巣場所をめぐる争い等のため活発に動き回る。「キュルキュルキュル…」という、ムクドリより高めの声を頼りに探せば、主に梢付近にその姿を見出すのはそう難しくない。ムクドリより一回り小さく、オスでは赤褐色や紫色が鮮やかな本種は意外にも気性が荒く、既に繁殖に入っているアカゲラと樹洞をめぐって争い、そこから追い出すことさえある。じっくり観察していれば、そんな場面に出くわすかもしれない。
 ハリオアマツバメは、斜面の上にある駐車場付近が観察しやすい。「チルルルー…」というアマツバメよりやや低めの声と共に、鎌型の鳥体が高速で迫って来る。時には「シュッ」という羽音が耳を掠めることさえある。和名の由来となった、尾羽の先の針状の突起は高速で飛翔するので観察は難しいが、最近ではデジタルカメラの性能が大幅に向上したので、高速で撮影すれば画像で確認できることがある。本種は、私の生まれ育った関東地方平野部ではほとんど見られず、高山帯に赴いてようやく少数観察できる程度だったので、自宅付近で毎日のように観察できても、未だに有難味を感じてしまう。


虫を追いかけるハリオアマツバメ
2012年5月
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 留鳥の樹洞営巣種であるカラ類やゴジュウカラ、キツツキ類も勿論多く、6月下旬以降は巣立ったばかりのあどけない幼鳥を見ることも多い。年間を通してヤマガラを観察できるのも、ここならではだろう。南方系で照葉樹林を主たる生息地とし、十勝では少ない種だが夏にも少数が観察され、冬には分散個体も加わるのか、やや増えるようだ。ドングリを好む種なので、カシワの巨木が林立しているのが良いのかもしれない。繁殖期であればシジュウカラより更にテンポの遅い囀り、それ以外であれば「ニーニー」というハシブトガラより鼻にかかった地鳴きを意識して探すと良い。


ヤマガラ
2009年11月
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 樹洞の鳥といえば、ここはかつてフクロウで有名な場所であった。ここで撮影された雛や家族の写真を、今でもあちこちで見かける。しかし、近年では年に数回声が聞かれるだけで、繁殖の有無は不明である。多くのカメラマンが押し寄せ、巣立ち雛に張り付いて親鳥が給餌できない状況が何年も続いたらしい。中には昼間ほとんど動きのないフクロウの、動きのある写真を撮ろうと騒ぎ立てたり、花火(?)を焚いたりする輩までいたという。デジタルカメラの普及に伴って動物写真が簡単に撮れるようになり、動物への思いやりの欠片も抱けない人間が大手を振ってフィールドを闊歩してるのが、悲しいかな、昨今の現状である。どうか探鳥中に運良くフクロウに出会うようなことがあっても、深追いはしないで欲しい。
 公園の北側に隣接して、池田清見温泉がある。ナトリウム‐塩化物強塩泉のしょっぱい温泉なのだが、おそらくそのためにここに飛来するのがアオバトだ。なぜか渡来初期の5月には見られないが、6月中旬以降、最大30羽ほどが温泉に隣接した公園内の沢に飛来する。葉が茂る時期なので直接確認できていないが、沢で飲水してナトリウムを摂取していると思われる。本種は海水を飲む行動が有名だが、鉱泉付近等での飲水も知られており、ナトリウムの摂取が生理的に必要と考えられている。葉が茂り、警戒心も強いため飲水を観察するのは難しいが、尺八のような声や上空を飛ぶ姿は8月頃まで楽しむことができる。


アオバトの飛翔(左がオス)
2011年7月 北海道白糠郡白糠町
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 公園はカラス類のねぐらにもなっており、8月中旬以降は数千羽のカラスがねぐら入りするのを日没前後に観察できる。冬にはカラス類に代わってトビがねぐらとして利用するようになり、冷え込んだ朝には午前9時を過ぎてもなお、多数のトビが巨木に群がる姿が見られる。
 繁殖期は上で紹介した鳥にくわえて、ヒヨドリ、アカハラ、センダイムシクイ、コサメビタキ、アオジ、シメ、ニュウナイスズメ等を観察できる。公園で下草の手入れが行き届き林床が開けているためか、ウグイス、ヤブサメ、コルリ等は見られない。
 秋から冬は葉が落ちるので留鳥のカラ類やキツツキ類が観察しやすくなり、キバシリやキクイタダキも姿を現す。清見温泉側の沢ではミソサザイもよく観察される。また、園内を走り回るエゾリスが目立つ季節でもある。


エゾリス
2009年11月
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 基本的には大樹を謳歌しながら身近な鳥を楽しむ、散策的バードウオッチングの場所であるが、ヤツガシラ、ヤマゲラ、シロハラ、ミヤマホオジロ等の記録もあるので油断は禁物だ。もっとも、そう書いている筆者もそれらを見た時は散歩中で、カメラを取って戻ってくるといなくなっていたというのが大半であるが…。


ヤツガシラ
2010年5月
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 アフターバードウオッチングの選択肢は多い。春秋にはガンカモ類や猛禽類で賑わう十勝川下流域は目と鼻の先であるし、渡り時期であれば十勝が丘展望台やまきばの家展望台で猛禽類や小鳥類を見るのも良いだろう。同公園内には児童公園やパークゴルフ場もあるのでファミリーでの探鳥にも向いており、その場合ワイン城や十勝エコロジーパーク等観光コースに繰り出すこともできる。池田町内には、もやしたっぷりのラーメンを堪能できる「再来」や、格安でカットステーキのランチを楽しめる「よねくら」等、飲食店も多い。清見温泉や十勝川温泉で湯に浸かるのもまた一興だ。


カシワの巨木茂る公園内
2008年12月
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(2012年9月7日   千嶋 淳)



潮溜りのミンク

2009-08-19 18:17:16 | 自然(全般・鳥、海獣以外)
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All Photos by Chishima,J.
潮溜りにやって来たミンク 2009年8月 北海道根室市)


 夏の太平洋名物の海霧は、十五分前と比べても明らかに濃くなっていた。海岸近くで餌捕りのための潜水を繰り返していたラッコも、打ち寄せる高波に身の危険を感じたか沖側へ泳ぎ出し、乳白色の景色に溶け込んでしまった。飽和した水蒸気が、ツリガネニンジンの淡い青紫の花をじっとりと濡らす。これ以上ここに留まっても収穫は少なそうだ。腰を上げようとしたその時、視界の片隅に褐色の物体が高速で飛び込んで来た。
 すぐさま眼前に達した物体は、細長い動物だった。40cmくらいはあるだろうか。ミンクだ。そのまま疾風のごとく駆け抜けてしまうかと思われたが、少し先の潮溜りに近付いた辺りで速度を緩め、潮だまりの際まで達すると水中を覗き込むような仕草をした。そして水中に入るとゆっくりと進み、その先で磯に上陸すると、また岩の間を駆けていった。もしかしたら潮溜りで、好物の魚を探していたのかもしれない。


磯を駆けるミンク
2009年8月 北海道根室市
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水面を覗くミンク
2009年8月 北海道根室市
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 ミンクは元々北海道にいた哺乳類ではない。原産地の北アメリカから高級な毛皮目当ての養殖用に輸入され、最盛期には約100万頭が飼育されていたという。それらが飼育場から逃げ出したり、養殖産業が下火になるにつれ、1960年代頃から野生化した。現在では道内各地の川をはじめ水辺の周辺で、普通に観察されるようになった。泳ぎが達者で川面を泳いでいる姿を見る機会も多い。魚が主食だが、イタチ科の本種は獰猛なハンターの側面も持っており、鳥類や小型哺乳類も捕食する。帯広郊外の河川で、本種がカモ類(距離があったため種は不明)の成鳥を捕えるのを見たことがある。成鳥を捕えるくらいだから、雛や卵への捕食はもっとあるだろう。残念ながら、ミンクの捕食がカモ類やクイナ類など水辺で繁殖する鳥類に与える影響はわかっていない。


早春の川べりにて(ミンク
2006年3月 北海道十勝郡浦幌町
飼育下では様々な毛色があるが、野生化では黒~黒褐色のものが大部分。
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 イタチ科は養殖や放逐の目的で本来の分布域外にも容易に持ち出され、それが野生化するケースが多い。北海道でもミンク以外に毛皮目的で移入されたキテンと、ノネズミによる山林の被害を減らすため導入されたホンドイタチが野生化している。ホンドイタチは平地で分布を広げ、オコジョを平地から山地に追いやったと言われている。このような在来種との競合は、西日本における在来種ホンドイタチと移入種チョウセンイタチとの間でも生じており、大抵は移入種側が在来種を駆逐している。在来種に対する捕食では、伊豆諸島でネズミ用に放されたホンドイタチがアカコッコやオカダトカゲなど、また奄美大島や沖縄本島でハブ駆除目的で移入されたジャワマングースがヤンバルクイナ、アマミノクロウサギなどの固有種に深刻な影響を与えている。安易な外来生物の移入は、従来からの生物相を簡単に破壊する典型的な例といえる。


チョウセンイタチ
2007年1月 鹿児島県出水市
対馬には自然分布していたが、九州や本州西部では移入種として分布を広げた。
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 ちなみに、本州の西部ではミンクの代わりにずんぐりした茶色い哺乳類が川や沼の水面を泳いでいるのに出会うことがある。これはヌートリアで、やはり毛皮目的に南アメリカから輸入されたのが野生化した種類で、こちらはイタチではなくネズミの仲間である。北海道でも戦後の一時期、石狩川流域で生息していたそうだが、北海道の気候・環境に合わなかったのか、定着はしなかったようである。


ヌートリア
2008年3月 兵庫県豊岡市
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ミンクを観察した磯
2009年8月 北海道根室市
濃霧がすぐそこまで押し寄せる。
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(2009年8月19日   千嶋 淳)


飯綱(10月14日)

2008-11-02 14:05:44 | 自然(全般・鳥、海獣以外)
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All Photos by Chishima,J.
駈けるイイズナ 以下すべて 2008年10月 北海道十勝管内)


 定点調査の午後二時過ぎは正直辛い時間である。鳥の動きもほとんど無く、人間側は昼食で満たされた食欲に続いて睡眠欲が台頭してくる。定期的に襲って来る睡魔を振り払いながら、秋の午後は厭味なくらい緩やかに過ぎて行く。時折遠くでタンチョウが甲高く鳴く以外は静かなものだ。あと半月もすれば北風の音が鳴り止まぬ季節だが、その直前はこうも穏やかなものか。

 ふと視界の片隅の地面を、何か小さいものが這っている。
「毛虫??」
眠気で呆けた頭で一瞬思ったが、そこまで小さくはないようだ。それに形もどうも哺乳類ぽい。
「トガリネズミだろうか?」
 双眼鏡を手にとって覗くと、小さいながらも立派なイタチの形・顔をしている。イイズナだ!
 慌ててカメラに持ち替えるが動きは早く、なかなか追い切れない。そうこうしている内にどんどん近付いてきて、定点としている車の下に入ってしまった。後に残されたのはただ静寂のみ。

こちらに近寄って来るイイズナ
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「あのまま行ってしまったのか…」
不安と一縷の望みと共にそっと車を降り下を覗き込むと、イイズナはまだいた。しかも上半身を起して周囲を観察している。写真を撮ろうとしたが、近過ぎて望遠レンズの最短焦点距離を切ってしまっている。こうなったら瞼を通して脳裏に焼き付けておこう。それにしても何て大きな頭部なのだろう。或いは下半身が小さいのか、頭部が体の半分を占めているようにも見える。そして黒くつぶらな瞳は何と可愛らしいのだろう。


立ち上がって周囲を確認(イイズナ
右上に写っているのは車輪。
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 暫く周囲の確認をしていたが流石に人の気配を察したのか、最寄りの叢に向けて駈け出した。一度走り出すとそのスピードの速いこと。細長い体をくねらせながら一目散に駈けて行く。この間凡そ一分ほど。私の手元に残ったのはピンボケ・ブレブレの写真ばかりだったが、それを悔しく感じさせない、幸せな出会いであった。捕獲された個体や目の前を一瞬で駈け抜けて行ったもの等を除いて、初めてこの動物をじっくりと観察できた瞬間だったのだから。
 頭胴長が20㎝にも満たない、愛嬌たっぷりのこの小型哺乳類は、飛び立つライチョウ類を襲って空中戦の挙句落としたとか、馬小屋に入り込んだだけで馬が恐れおののき動けなくなるといった伝説に事欠かない、獰猛なハンターでもある。


一目散(イイズナ
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(2008年11月2日   千嶋 淳)


自然史系文献における著作権って何だろう?

2008-08-02 00:31:13 | 自然(全般・鳥、海獣以外)
Photo
All Photos by Chishima,J.
コヨシキリ 2008年6月 北海道中川郡豊頃町)


 先日、図書館で資料集めをしていた時のこと。書架の片隅に長らく探していた文献を見つけた。この文献は40年以上も前の帯広近郊の鳥についてのもので、この地方の鳥類リストとしては最古の部類に属するものかもしれない。古本屋や友人・知人の本棚にも見たことが無く、入手は困難かと思っていたところでまずは安心した。
 私は図書館のような静かすぎる環境では、却って集中できない性質である。自宅で、文献の山を机の上にだらしなく広げながら、気になる箇所に赤線を入れたり、疑問点を口で反芻しながら読み進めるのが一番身に付く。そんなわけで、館外持ち出し禁止のこの文献を、管内のコピー機で複写させてもらい、複写願と共にカウンターに持って行った。


キョウジョシギ(夏羽)
2008年5月 北海道中川郡豊頃町
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 カウンターでのチェックといっても通常は書類で申告した枚数と、実際の複写枚数が一致しているか程度の簡単なものなのだが、この日の職員は自己の職務に極めて忠実な方だったらしい。私が複写したのは「出版後50年を経ない単行本」であるので、著作権法により一冊の半分以上の複写を認めるわけにはいかないと言う。しかし、私が調べたいのは鳥類全般についてであり、特定の分類群のみではない。すべてのページの情報を必要としている。そのことを伝えた。それでも首を縦には振ってくれないので、くわえてこの本は出版後長い年数を経過していて事実上入手不可能であること、これを全部コピーしたところで営利目的になど利用のしようが無いこと等を説明したが、二言目には「著作権法」を持ち出してダメの一点張り。
 気長に説明を試みていた私も、余りにステレオタイプで役所的な対応と、こんなことに貴重な時間を費やされていることに腹が立ってきて、「著作権だ権利の侵害だの言うが、小説や随筆のように売り物になるわけではない書籍に、自分の観察データを託した(この本は発行は教育委員会であるが、中身は完全に一鳥見人の観察記録である)筆者が、50年近く後にそれをコピーしたいという願いを嫌がるのか?自分もそうした報文を細々と書く身だが、もし同じ立場だったら嫌がるどころか草葉の蔭からでも大喜びする!」という旨のことを、少々語気を荒げて伝えた(他にも幾多のやり取りがあったのだが、省略する)。
 黙り込んでしまった職員は「少々お待ち下さい」と裏方に消えてしまった。少々とは縁遠い時間の後、再び現れた彼女の口から、著者と連絡が付いて複写の許可が出たので、コピーは持って帰ってよろしいと伝えられた。今までの不毛な議論とは打って変わっての親切な対応には謝意を表したいが、本をコピー機にかけてから優に一時間以上が経過していた。


キタオットセイ(オス成獣)
2008年5月 北海道羅臼沖
Photo_3


  今回の文献は教育委員会の発行であるが、古い時代ゆえ製本も粗末で、おそらく発行部数もかなり少ないはずで、せいぜいや官庁や学校等に配布された程度と推察される。このような曲りなりにも「公的な」出版物の他に、地元のナチュラリスト達が手弁当で自分たちの観察結果を印刷したものが各地に少なからず存在する。彼らが身銭を切ってまでそうしたものを出版するのは、自分らの結果を公にすることによって学問の進歩、また地域の自然の保全に反映されることを望んでのことだった筈である。また、それらを図書館等に寄贈するのは、ネット時代の現代ならともかく、そこに置くことによってより多くの人への情報の伝達が可能と考えたからであろう。それを、著作権法を盾に後世の人の知りたいという思いが規制されるのは、何処か腑に落ちないものを感じる。著作権法が著者の権利を保護するものであるとしたら、科学文献、特に自然史系の分野においては、規制すべきは複写の分量ではなく、そこに書かれている事実や写真を無断で使用する、あるいはそれらを意図的に無視するといった行為ではないだろうか。


ツメナガセキレイ(亜種ツメナガセキレイ;夏羽)
2008年7月 北海道北部
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ケマダラカミキリ
2008年6月 北海道上川郡上川町
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ツバメシジミ
2008年5月 北海道河東郡音更町
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堆肥上のタンチョウ・成鳥
2008年7月 北海道十勝川下流域
Photo_7


(2008年8月1日   千嶋 淳)