走る営業公務員、奮闘記!!

地方分権が進展する中での地方からみた木っ端役人の奮闘記です。

スワルティ(よい知らせ)

2011年06月06日 19時58分45秒 | ちょっといい話
 赤十字新聞(第852号)を読んでいて素敵な話だったので紹介しよう。

 3月25日に発表があった第100回看護師国家試験で、インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき姫路赤十字病院(兵庫県)で受け入れているスワルティさん(愛称スーさん、32歳)が、見事に合格したという。

 この試験はかなりの難関で、今回の国家試験を受験したEPA看護師候補は合わせて398人。
合格したのは16人で、なんと合格率は4%と超狭き門である。
 スーさんはインドネシアで看護専門学校や大学を経て8年看護師として働き、平成20年8月に「高い看護知識と技術を学びたい」と来日。
半年の語学研修のあと、平成21年2月から同病院で看護師助手として働きながら、勉強してきました。

 スーさんは来日当初を「勉強は楽しかったし、少しづつ日本語を覚えていくことが嬉しかった」と振り返る。
ところが、入職すると環境は一変。
「周りの人の言うことがわからず、仕事が終わると毎日泣きました」
「インドネシアに帰ろう」と思ったこともたびたびあったとのこと。

 2回目の受験となった昨年の試験では、他の病院で学ぶスーさんの友だち2人が合格。
「私も一生懸命勉強したのに、不合格。悲しかったです」と振り返る。
残されたチャンスはあと1回。
同病院の柴田由美子看護副部長と話し合って勉強方法をがらりと変えました。

 病院全体が応援する中、スーさんは「一生懸命に勉強しました。楽しいことは一つもしませんでした。いろんな人がサポートしてくれるのに、頑張らなかったら恥ずかしいから」と合格への誓いを新たにしました。
 試験前日、看護部長や副部長の激励を受け、当日も「みんなで祈ります。頑張って下さい」というメールをもらった。
「絶対できると思いながら試験を受けました」

 そして、このようなスーさんの姿勢は周りの職員にもいい影響を与えたという。
特に若い職員には彼女のフレンドリーで積極的な姿勢が(若い職員の)モチベーションアップにつなげたという。


 4月下旬、スーさんは兵庫県支部救護班に帯同し東日本大震災の被災地に入りました。
「2004年のスマトラ島での津波被害のときの恩返しがしたい」という思いから、国家試験合格の記者会見の席で湯浅志郎院長に直訴して実現しました。
「被災地で私がニコニコした顔を見せれば、みんな少しでもつらいことを忘れてくれるかもしれません」

 「スワルティ」とはジャワ語で、「よい知らせ」という意味。
スーさんの活動は被災地の皆さんにきっと「よい知らせ」をもたらしてくれることでしょう。

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 スーさんのような立場の人は、3回の受験チャンスしか与えられていません。
でも、彼女たちはそれを受け入れてなお、日本のために尽くしています。
さまざまな人がいるため、簡単にハードルを下げることはできないとは思いますが、彼女たちには日本語という壁があります。
他の言語にはない「阿吽(あうん)」の呼吸といったものを読み取る技術も必要です。
それでも、その壁を泣きながらでも、楽しいことを我慢してでも人の役に立つために頑張っています。

 この話で救いだったのは、スーさんの職場の人たちが彼女を温かく見守り、応援してくれていることでしょう。
彼女たちは、いつの日か自国帰り、自国の人たちのために献身的に働くことでしょう。
彼女たちこそが、歴史や文化の異なる国同士を絆でつなげてくれる人たちだと信じます。