走る営業公務員、奮闘記!!

地方分権が進展する中での地方からみた木っ端役人の奮闘記です。

「和」の国へ小異を捨てよ

2011年06月02日 22時19分11秒 | 考え方
 5月14日号の週刊東洋経済に慶応義塾大学経済学部教授の土居丈朗(どい・たけろう)さんが次のような寄稿をしている。

 スケープゴート(不満や憎悪、責任を直接的原因となるもの及び人に向けるのではなく、他の対象に転嫁すること)探しはもうやめよう。
「絆」とか「一つになろう」とか、大震災後に国民が一致協力しようという機運が出てきているのに、それではせっかくの機運に水を差してしまう。
 一致協力する姿勢は、義援金等やボランティアの形となって発露しており吉兆だ。
バブル崩壊後に失われつつあったが、「和」の国日本が戻ってきつつあるようにも見える。
 だがねその反面、大震災による甚大な被害、その後の原発事故による立ち入り制限や風評被害に対するやり場のない不満や怒りが渦巻いている。
 「想定外」の地震や津波がもとで起きたことだが、自然に対して怒りや不満をぶつけられない代わりに、政府や電力会社の甘い予測に関与した者をスケープゴートにしたがる雰囲気があり、憂慮すべきことだ。
 不満や怒りのはけ口を求めたい衝動はあろうが、スケープゴートを見つけてそれをぶつけたとしても、大震災でなくなった方が戻ってくるわけでもないし、放射性物質の放出が止まるわけでもない。
被災者や遭難者の心のケアは今後も重要だが、スケープゴートを責めても、それで問題が解決するわけではない。

 今般の大震災における危機管理は、確かに合格点とはいえないものがあつた。
人命が懸かっているだけに失敗は許されないとはいえ、全知全能の人間がいないのもこれまた事実である。
大震災から2ヶ月というこの時期では、今後の復旧・復興に向けた知恵を、一致協力して集め、具体的な行動に移してゆくべき時である。
その時期に、重要な意思決定の場である政治の場で、抗争を繰り広げている場合ではない。

 一方が復興のための財源は消費税がよいと言えば、他方が消費税はダメだと言う。
が、対案は明示されず、はたまた復興の財言論・増税論議ばかりが先行していることを批判し、増税は断固反対だ、と言う。
あるいは、震災復興の財源捻出のためには、子ども手当を廃止せよと一方がいえば、それをやめては公約違反だと拒絶する。
しかも、これらが性質の悪い場合には、政策の内容よりも、現内閣を是とするか否とするかという次元ばかりで主張される。

 あたかも、利害対立の「チキンゲーム(別々の車に乗った2人のプレイヤーが互いの車に向かって一直線に走行するゲーム)」の様相である。
互いに主張の利点を認めず、他方が屈するまで妥協せず、屈したほうがスケープゴートになるかのような姿勢では、消耗戦となる。
大震災で疲弊した中で、消耗戦は最も避けなければならない。

 確かに平時の政策志向の違いはあってもよい。
しかし、大震災直後の時期に、小異を針小棒大(些細な物事を、おおげさに誇張して言うこと)していたずらに対立をあおるべきではない。
今はお互いの顔を立てつつ、いかに利害対立を乗り越えて相和してゆけるかを考えるべきである。

 大震災後の展開を見ると、失敗や「想定外」のための準備不足もあって、その担当者に責任を取らせたい(辞職させたい)と思う人は多かろう。
引責辞任を迫っても、その後、必ず従前の対立が解消され協力が得られると期待できたり、「この人物なら必ず上手くできる」と事前にわかっているならまだいい。
しかし、そうでないならば、小異を捨てて大同について知恵を出し合い、よりよい方策が実施できるように取り組む必要がある。
今、一致協力できない障害があるなら、取り除くべきだが、大震災の引責はもう少し後でも遅くはない。

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 私たちが選んだ国の政治家の先生たちの今日の行動を見ていて、土居先生に共感する自分がいた。