tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

再考、中国の貿易依存度

2013年11月11日 14時52分55秒 | 経済
再考、中国の貿易依存度
 日本にいて報道だけで情報を得ていたのでは、今の中国で何が起こっているのかを十分に理解することは不可能でしょう。 しかし、最近報道される多様なトラブルを見聞きする限り、中国は大きな問題を抱えていることは事実でしょう。

 13億人という巨大な人口を抱え、共産党一党独裁の国家でありながら、改革開放、社会主義自由経済などのスローガンの下、次第に変質を遂げ、先ず世界の工場へ、そして巨大な市場へと変化しつつあるという、奇跡のような、変化・発展をしつつあるというのはまさに現実です。

 その一方で、進展する格差の拡大、国際水準の近代部門と伝統的な自給自足的経済部門の併存から、いかに均質的な発展段階に近づいていくかといった問題は、ますます重要にならざるを得ないように感じられます。

 かつては日本もそうでした。この何十年か発展段階を迎えたアジアの途上国もそうでした。発展段階の初期、国内の一部には、先進国に匹敵するような都市やリゾート地となどが生まれます。そして、当然、自給自足的な従来部門も併存します。
 日本でも地方の農業地域が都市と肩を並べる豊かな状態になるのには、農地解放、米価審議会(生産費・所得補償方式)、列島改造による土地ブーム、などが必要でした。

 中国のような、広大で多様な国土、巨大な人口、多民族、多様な文化・宗教を包含する国では、かかる政策も時間も大変なものと思われます。
 かつて書きましたように、私はその難しさの一端を貿易依存度に見るような気がしています。

 貿易依存度には傾向があります。EUに見るように、加盟各国の貿易依存度は数十パーセントから100パーセントを越えますが、EUを一国とすれば、貿易依存度はアメリカと似た水準である30パーセント程度になります。戦後下村理論を打ち立てた下村治博士が指摘したように、貿易依存度には人口規模に反比例するという性質があるのです。
 
 ところが、人口13億を擁する中国の貿易依存度は、かつて60パーセントを超で(2007年67%)次第に低下していますが、昨年でも47パーセントです(インドは30%強)。
 産業の一部が先進国の投資で急速に輸出競争力を獲得する発展段階の国は、貿易依存度が高い傾向がありますが、中国は際立っています。

 これは何を意味するのでしょか。おそらく、中国国内には国際取引に関係ない自給自足的な部門(人口)が多分に残されており、その部分の経済水準はいまだ相当に低いということではないかと推定されるように思います。

 貿易依存度が下がり続ける過程というのは、そうした経済格差が是正され国内の生活水準の遅れた部分が次第に近代化する過程で、人口規模からいえば、中国はアメリカやEUの水準より更に低い所まで、将来下がっていくことになるのでしょう。
 
 そしてその過程では、先ず伝統部門の意識の覚醒が進み、格差是正への要望が繰り返しいろいろな形で現れざるを得ないということではないでしょうか。中国政府の今後の適切な政策の遂行と、その成功を祈るところです。


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