tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

新自由主義と金融工学進化の関係は

2020年10月20日 16時57分54秒 | 文化社会
社会経済思想と政治形態(試論):新自由主義と政治(7)
 試論の暫定的まとめに入る前に、正面から扱ってこなかった金融問題が、新自由主義の中で、どんな位置にあるのかを見ておきたいと思います。

 今、新自由主義が言われる中で、一国経済が直面している問題は大きく2つあるように思います。それらが新自由主義の思想と整合するものかどうか、解りません。ただ、新自由主義がマーケット・メカニズムを尊重し、規制や、社会的制約を嫌うものとすれば、新自由主義の名のもとにそれらが正当化される可能性はあるかと思う所です。

 2つのうち、一つは変動相場制です。そしてもう一つはマネー資本主義です。ここでは特にこの2つの問題点を指摘しておきたいと思います。

 先ず変動相場制です1970年までは戦後の世界は固定相場制でした。世界銀行、IMF、GATT体制、所謂ブレトンウッズ体制です。これは戦後、アメリカが覇権国として、自国通貨$を基軸通貨として金兌換制を採り、世界経済を公正なルールによって健全に運営しようとして作り上げた体制です。 しかし、それを崩したのもアメリカです。

 崩した理由は皆様ご承知の通り、アメリカの経済力が衰え、基軸通貨$が金兌換制を保てなくなったからです。
 これはゴルフで言えば、プロ選手権のスクラッチ制を、アマチュアの遊びの ハンディキャップ制に変えたようなんものです。
 
 これで経済力の弱くなった国は、為替レートを切り下げれば、あるいは経済力の強い国を通過を切り上げさせれば国際競争力を調整する事ができます。(「為替レートとゴルフのハンディ」参照)  生産性向上やコストカットの努力は必要はありません


 そして、 為替レートはマーケットで決まります。マーケットが正しければ、為替レートは購買力平価相応のものになるでしょう。しかし現実には「プラザ合意」のようなことも起こりますし、中国のように、人民元切り上げ要請に常に「ノー」という事も可能です。
 現に為替レートは実体経済よりも金融政策で動くようです。

 もう1つのマネー資本主義の問題は「資本主義の変貌」という問題です。
 当初「資本移動の自由化」は、世界経済の均等な発展を目指して、GATT、IMF体制の下で進められました。しかし、資本主義は、資本を投下して財やサービスを生産し、そこで生まれる付加価値の増大によって、社会を豊かにするために資本が必要という資本主義でした。

 しかし金融技術の発達は、先物取引、ヘッジ機能、レバレッジ、そして多様なデリバティブと進化を遂げ、資金移動の多くの部分は実体経済活動を伴わない「マネーゲーム」となってきています。
 資本投下→生産活動→付加価値→人件費と資本費に分配(資本増大)
というプロセスから
 資本投下→マネーゲーム→キャピタルゲイン(資本増大)
という形で資本を増やすことが盛行することになったのです。これを 支えるのは金融工学で、金融工学への貢献で、ノーベル賞学者も出ています。

 この動きをリードしたのもアメリカで、経済力の衰えで赤字化した経常収支を資本収支で穴埋めする(世界のカネを呼び寄せる)のが常態化し、そこに開いた仇花が、サブプライム→リーマンショックという事ではなかったでしょうか。

 この金融工学も、マネー資本主義も、新自由主義に入るのでしょうか。
 戦後の経済史を見れば、これらはすべて、アメリカが経済力の低下を、生産性向上の努力を省いて、金融の自由化の中の資本移動で乗り切ろうとして考えた窮余の一策の結果として一般化したものではないでしょうか。
 そして、新自由主義もアメリカで生まれているのです。

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