tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

格差問題と最低賃金

2015年07月31日 10時32分30秒 | 政治
格差問題と最低賃金
 7月末は例年最低賃金の季節ですが、中央最低賃金審議会は小委員会で、29日、今年度の引き上げ額の目安を16~19円とすることを決めたようです。
 全国平均は18円で、昨年14円で大幅引き上げといわれたのを上回り、時給表示になった2002年度以降、最大の上げ幅ということだそうです。

 都道府県別の具体的な金額は、各県の最賃審議会で秋にかけて決まるのでしょうが、このところ行政主導の引上げのようですから、公労使の3者のうち、公と労が賛成すれば、低い県でも16円、東京などは19円引き上げ、あるいはプラスアルファでそれ以上の額になるのでしょう。

 確かに、格差問題が深刻になりつつある日本の現状を考えれば、法的拘束力のある最低賃金の引き上げは、社会的にも支持されるという見方もありうるでしょう。
 しかし、格差かを小さくするということであれば、下を上げ、上を抑えるのでなければなりません。アメリカ並みに上が上がるのを放置では格差社会化は進むでしょう。

 黒田日銀の異次元金融緩和による円安以来、日本の主要企業の業績は大幅に改善、春闘も再開されていますが、増えているのは大企業中心の企業収益、トップ経営者の年俸などといわれ、年収1億円以上の経営者(上場企業)が443人などと報道されています。
 日本もだんだんアメリカ型の経済社会になって来るように感じられます。

 政府が最低賃金引上げを政策にするならば、円安で輸入原材料価格上昇に悩む中小企業の上昇分の価格転嫁の一般化、その政府による奨励・指導なども合わせ行うべきでしょう。電力やガスでは、輸入原材料価格の転嫁は制度化されています。

 更に、雇用構造の積極的な見直し(非正規の正規化を含め)の促進による安定雇用、最賃適用者の削減政策(非正規労働の一般化はまさに反対の政策、格差の固定化、一般化)、ひいては中間層の拡大による社会の安定化策を取るべきでしょう。

 さらに進んでは、松下幸之助さんの時代までとは言わないまでも、累進課税方式へのある程度の回帰、などなどの格差是正のための総合政策を策定し、国民に、安倍総理の口癖のように「解り易く」説明すべきでしょう。

 最低賃金はなるべく高く引き上げる(安倍総理の経済財政諮問会議での発言です)、しかし、その後始末はすべて企業に丸投げ、企業は、困ればなんとか自分で考えるでしょうというのでは、格差問題は解決しそうにありません。
 最低賃金の引き上げは、格差是正という大義名分があるのだから、政府の方針は正しいのだといった政策の繰り返しで良いのでしょうか、官主導の最低賃金引き上げなどという意見を聞くと、先ごろの中国の最低賃金大幅引き上げ政策を思い出したりしてしまいます。

 日本も、アメリカのようになったり、中国のようになったり、いろいろと大変です。


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