かつて日本は円高で大変苦労しました。プラザ合意で240円の円レートが120円になり、リーマンショックで80円になり、日本経済は潰れそうになりました。
円高の時は、日本経済はずっとデフレでした。デフレの恐ろしさは、日本人は身に染みて知っています。
今、日本は円安で困っています。円安になると輸出が増え、インバウンドも増えて日本経済には良い事が沢山あります。
しかし一方で輸入物価が上がって、日本は資源輸入国ですから輸入物価が上がると食料品や日用品を中心に物価が上がります。インフレです。輸出企業は儲かっても、一般国民は消費者物価が上がると生活が苦しくなります。
下の図は、輸入物価と輸出物価について契約通貨建てと円建ての過去1年間の動きをグラフにしたものです。
輸入物価指数の推移(2023年4月=1.000)
輸出物価の推移(2023年4月=1.000)
(原資料:日本銀行)
契約通貨建て(赤い線)はドルが中心でしょう。物価水準はあまり変わっていません。円建て(青い線)は円建てですから円安で大幅に上がっています。輸出物価の上昇は円高差益を生みますから大歓迎ですが、輸入物価の上昇は少し時間差を置いて消費者物価を押し上げ家計を直撃します。
賃金が多少上がっても、物価が追い越していてきます。政府は、「物価上昇以上の賃上げ」と言っていますから消費者物価が上がると大変です。
その結果、「日銀に円安を止めるような金融政策取るべきだ」と注文し、財務省は円安になるようにドルを売って円を買う為替介入をしました。
アメリカのイエレン財務長官は、「為替介入は余りすべきでない」と言いました。
頼まれた日銀は大変困っているのではないでしょうか。確かに、日銀が政策金利を引き上げれば忽ち円高になるでしょう。
円高になれば、消費者物価は安定するかもしれませんが、輸出部門の円安差益は円高差損になり、インバウンドも減るかもしれません。日本経済には全体としてはマイナスの影響が大きいでしょう。
金利が引き上げられたら、政府は国債にまともな利息を付けなければなりません。本気で利息を付けますか?
ところで、何故、こんなことになるのでしょうか。
理由は殆どがアメリカの経済・金融政策のせいなのです。プラザ合意で円高になったのはアメリカが自国の経済防衛のために日本に円高容認を要請したからです。リーマンショックの円高はアメリカが金融恐慌防止のためにゼロ金利政策を取ったからです。
2013・14年には日本がアメリカを真似てゼロ金利、異次元金融緩和政策を取って円安を実現しました。アメリカは沈黙でした。
今回の円安は、アメリカが自国のインフレを防止するために政策金利を大幅に引き上げ、なかなか下げないからです。
すべてアメリカの都合ですから、日本が巧く対応できないのは当然ですが、日本の経済政策の主体は政府です。日銀はあくまでも金融面で政府の経済政策が円滑にいくように手助けをするのが役割で、もともと金融というのは実体経済の潤滑油なのです。
政府が、プラザ合意以来の経済政策の失敗(第一は巨大な赤字)を繰り返しながら、その尻を日銀に持っていくのは少しみっともないようです。
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