tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

法人企業製造業:利益とその処分の動向

2019年08月20日 20時48分26秒 | 経営
法人企業製造業:利益とその処分の動向
 前回は法人企業製造業の付加価値とその配分の状況を見て来ました。
総務省の「法人企業統計年報は現状では2017年度までですが、日銀の異次元金融緩和で為替レートが正常化して以来、企業収益は急速な回復・伸長を見て来ました。

 今回は順調に増加した利益を企業はどのように処分(活用)しているのかを見ていきたいと思います。
 今回は表でなくグラフにしてみましたが、その方が一見して解り易いかと思います。

 最初の「営業純益」は、前回の付加価値構成の表に出てきた、法人企業統計で利益を表すものですが定義は、「営業利益-支払利息等(金融費用)」です。これは付加価値の構成要素として、この統計では営業利益を考えているのですが、別途、支払利息等を構成項目として出しているので、その分は差し引いたという事でしょう。

 営業利益から当期純利益に至るには、営業外収支と特別損益を計上し、さらに法人税を差し引かなければなりません。営業外収支の中の、支払利息等の減少は前回の付加価値構成の中でも触れましたが、営業外収益である受取利息・配当の著増、特別損益のマイナス幅の縮小(リーマンショックで一時急拡大)などの要因が当期純利益には反映されています。

 図に見ますように、2013年度から円安により当期純利益は大幅に増加していますが、この処分先は2つです。株主に対する配当金と内部留保です。

 配当金は、資本金を提供してくれている株主(法的には企業の所有者)に報いるためですからたとえ利益が出なくても、往々内部留保を吐き出してある程度は払うことになります。
 こうした状況は2008年度、2009年度の状況を見れば明らかです。

 その後何とか経営を立て直し、内部留保の取崩し(人体なら出血)は止まりましたが、2012年度までは、内部留保は微々たるものです。$1=¥80の円高がいかに日本の製造業に苦難を強いたかが歴然です。

 2013年度、円安が進行してからの内部留保は、まさに水準訂正といえましょう。我が国製造業の競争力は回復、正常な経営に復していいます。
 当然株主への配当金も著増する状態になりました。2017年度にはこの状態がさらに進んだようです。

 経営としては、めでたし、めでたし、ですが、企業の発展のエネルギー源である内部留保を食いつぶさざるを得なかった経験は、内部留保回復への強烈な動因になったのでしょう、内部留保に励んでいます。
加えて、近年の「物言う株主」の台頭は、配当の充実を強く要求してきます。配当金の増加も顕著です。両者のバランス、企業の選択は難しいところです。

 加えて、利益の著増は、付加価値配分の基本である人件費への配分、いわゆる労働分配率論争も引き起こします。

 さらに企業としては、企業発展の原動力である内部留保を、遊ばせておくのではなく、如何に将来の発展のために投資するか、その選択も、「 ものに投資するか」「 人間に投資するのか」という企業経営の最大の問題点に発展していきます。
 
 余計な事まで書いてしまいましたが、こうした問題も、すべてその源は「付加価値」をどう作り、どう使うかにかかってくるという事ではないでしょうか。
 ということで改めて、付加価値関係指標の動向を見た次第です。

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