tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日銀2%インフレ目標削除でどうなる?

2018年04月28日 17時37分14秒 | 経済
日銀2%インフレ目標削除でどうなる?
 昨日の日銀の政策決定会合の結果、2019年頃としていた 2%インフレ達成目標の削除を決めたとのことです。
 2013年に異次元金融緩和を打ち出してから、当初は2年程度で消費者物価の2%程度の上昇は達成できると思っていたようですが、日本人の生活態度の特質を見誤っていたようです。

 前回のブログでこの1年ほどの消費者物価の動きを見ましたが、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」が2%も上昇するのはとても無理でしょう。
 黒田さんは日本人の生活態度を、アメリカ・ヨーロッパ、アジアの国々と同じだと思っていたのでしょう。

 借金してでもカネを使いたい人の多いアメリカでしたら、異次元金融緩和を2年も続ければインフレが2%になります。確かにリーマンショック後アメリカが超金融緩和を始めて2年ぐらいで、アメリカの消費者物価(コアコア指数:食品・エネルギー除く指数も)は2~3%に達しています。

 しかし、これはキリギリス体質のアメリカの話です。堅実生活の文化を持つアリ体質の日本では、そうはいかないのです。
 しかも、政府は、少子高齢化で日本は大変だ、年金・医療・介護を始め、国民の負担は重くなる、消費増税が必要だと将来不安を煽ります。

 いくら金融を緩めても、大多数の日本人は、借金していい生活をしようとは考えず、将来のために貯蓄して備えようとします。統計が示しように平均消費性向は下がりっぱなしです。企業も将来不安から労働分配率を上げるようなことはなかなかしません。
 賃金上昇率は高まらず、消費性向は下がるのですから、消費は伸びません。物価は上がりようがないのです。

 漸くここへきて人手不足から一部の非正規労働者の賃金水準が労働市場の逼迫から上がり、サービスや加工食品などの価格が上がっていますが、「生鮮食品・エネルギーを除く総合」の上昇率はまだ0.5%です。

 日銀は、2%インフレが達成できると言いながら、その根拠についてはなにも言いませんし、今回2%上昇という文言を削除しても、理由の説明はありません。
 
 以前の日銀だったら、詳しい分析をして説明していたのではないかなどと思ってしまいます。

 何故こんなことになったのか、これは、あくまで私の私見ですが、日銀がアメリカに倣って 異次元金融緩和に踏み切った本当の目的は、マネー・マーケットを驚かせて「円安」を実現することだったのでしょう。
 そして、円安になれば、当然、アメリカの様にインフレになると読んでいたのでしょう。

 マネー・マーケットに働き掛けるのが目的であれば、説明などしていては先読みされてい、効果は期待できません。「敵を騙すには、先ず味方を騙せ」ではありませんが、説明なしに突如行動を起こすことが必要です。

 今の日本経済は、円レート次第で、好況にも不況にもなります。マネー・マーケットと勝負する日銀は、国民に説明などしていられないのでしょう。
 異次元緩和は続けるとのことですが、もし日銀が、金融正常化に舵を取ると言えば、その瞬間、円は暴騰するかもしれません。円高は日本経済には致命的です。 

 遡れば、こんなことになるのも、「変動相場制」になって、マネー・マーケットが実体経済以上に発達し巨大化し、為替レートが実体経済を離れて、国際投機資本の思惑で動くようになってしまったことの影響が歴然です。

 いま日本に必要なことは、時間をかけても実体経済からの為替レートへのアプローチ(経常黒字の削減策)でしょう。金融政策は「失敗は出来ても成功は困難」という困った事情の認識が必要ではないでしょうか。

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