tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2%インフレターゲットと春闘賃上げ

2023年05月20日 16時15分02秒 | 労働問題
5月10日に連合が今春闘の結果についての中間集計を発表しています。

それによりますと、この段階での平均賃金方式による賃上げ率は3.67%で、昨年のこの段階の2.10%に比べて大幅な改善という事です。
このブログでは平均賃金で5%ぐらいがいいなどと書いてきましたが、昨年より大幅改善ですが、一方で4月の消費者物価が前年比3.4上昇で、さらに上昇の気配です。

今春闘では物価上昇をカバーする賃上げという声が強いのですが、物価上昇の方が予断を許さないという情勢です。

連合も、ここまで物価が上昇するとは予想しなかったという面もありましょうし、多くの生活用品関連産業では、コロナもあり、需要の落ち込みに加えて、原材料コストの値上がりの価格転嫁が出来なかったという事情もあり、一斉値上げでやっと一息でしょう。

然しこれでは一部の高賃上げ企業は別として、折角春闘で頑張ったのにまだ足りなかったという事で来年以降が心配という事から、今後も高賃上げを続けられるかといった心配もあるようです。

一方政府・日銀の方は10年来の「2%インフレターゲット」のままで、インフレは「そのうち2%になるだろう」という姿勢のようです。

こんな状態で、さてこれで「どうなるか」、「どうするか」という事になるのですが、政府のやることは、原油価格が下がっているのに6月から電気料金の大幅値上げでまた消費者物価の上昇に拍車をかけるようです。

もともと「インフレターゲット」というのは「インフレをこれ以下に抑える」というためのものですから、政府によるインフレ加速はルール違反ではないでしょうか。

政府が頼りにならないのなら、民間がやるしかないわけで、状況は1973年の第1次石油危機に似てきたようです。

ならば民間は何をすべきかという事になります。
企業は、製品・サービスの価格を決定するときに、なるべく上昇を小幅なものにするように努力する事と、労働側は、賃金引き上げを求める時に、なるべく企業経営を圧迫しないように努力をすることに、共に産業人の「倫理」として十分な配慮をするという事を実践するのです。

これは資本主義にとって最も基本的なことで、渋沢栄一は「論語と算盤」で論語の重要性を説き、アダム・スミスは「国富論」と同時に「道徳感情論」の著者であることが示しているように、資本主義は「倫理」を伴って「より良い」ものになるのです。

「2%インフレターゲット」という目標は、1国経済において「賃金コストの上昇率が労働生産性向上+2%」の範囲に収まる時に成立するのです。(ただし為替レート一定)

海外価格上昇による輸入インフレは、世界共通ですから、その分価格転嫁しても、国際経済の中で国際競争力上は中立です。

という事で、いま日本にとって必要なことは、企業は累積した輸入インフレ分は、この1年の一斉値上げでほぼ価格転嫁は終えつつあるようですから、後は需要増と技術革新などよる生産性向上で収益を高めることへの努力でしょう。

労働サイドは比較的モデストで、過剰な賃上げ要求はしていないようですから、後は生産性向上努力に注力する事でしょう。

多分その結果は、政府が余計な世話を焼かなくても、2023年度の物価上昇は2%前後にまで沈静化し、日銀も改めて正常な金融政策への出口に動けるようになるでしょう。

今年は、その方向へ日本経済が舵を切る年でしょうし、それが日本経済の安定成長への入り口になるのではないでしょうか。

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