tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業は本格的高齢化への対応整備へ

2024年01月13日 13時01分12秒 | 労働問題

人生50年でした、年功賃金、55歳定年制プラス退職一時金という従業員処遇制度は終身雇用制度として設計されたのです、などと外国人に説明ていた時代は歴史上の話となりました。

世界屈指の平均寿命を記録し続け、平和(戦没者無し)で安定した社会を築く努力を重ねている日本の企業では、戦後平均寿命の伸びとともに雇用制度の改革に種々の努力をしてきました。

もともと日本企業の考え方は、欧米流の「必要なときに雇い、要らなくなったら解雇する」という hire and fire の考え方とは違って、わが社という人間集団に入ったものは生涯面倒を見るという理念に立っていたのです。

変化は2つの要因から起きることになりました。1つは平均寿命の延伸、もう一つは社会保障制度の進展とその財政事情です。

定年制度は60歳に伸び、雇用努力義務は65歳という事になり、それでも間に合わない、というので、65歳雇用義務、雇用確保努力義務が70歳という事になっています。

こうした変更は、財源に不安のある公的年金制度との整合性を取るために決められているわけで、長期不況に悩まされて来た企業にとってみれば、雇用についての義務や確保努力を課せられるという負担の面を強く感じさせてきたようです。

ところがこのところ、企業サイドからの定年制、定年再雇用制度、それに伴う賃金制度の改革などの動きについての報道が多くなってきました。

目立つのは定年再雇用の際の賃金水準を、従来より高く設定するとか、job wage 対応にするといったものです。

こうした動きが出てきたという事は、企業が定年延長、再雇用などを行政から押し付けられてするのではなく、企業として、熟練労働力の有効活用、従業員に雇用安定意識を持ってもらい、高齢になっても安心して慣れ親しんだ職場で得意な職務に専念して貰えるというメリットに注目した結果であるように感じられます。

このブログでもすでに触れているところですが、定年再雇用などで、ベテラン従業員を閑職に異動し大幅に賃金水準を引き下げることがい一般化すような状態は、折角職場で鍛え上げた職務遂行能力の活用を年齢が来たからやめるという愚行だとみてきました。

これは勿論当該従業員にとっても極めて不本意なもので、そうしたモラール低下も考えれば、企業全体のパフォーマンスの低下でもあることは明らかでしょう。

そうした意味では、企業としても、長い年月をかけて育ててきたコストを十分回収しないで終わるという極めて勿体ない事をしていると言えるでしょう。

ところで、政府は「働き方改革」で、日本的経営を欧米流の職務中心方式に変えようと熱心ですが、企業の方は、新卒一括採用を辞めない様に、人間集団としての企業の在り方をやめませんから、企業として人を育て、育てた成果を確り回収するという人材の育成/活用計画のバランス管理は、高齢化時代を背景に、更に重要になるわけです。そしてこれは伝統的な人間中心日本艇経営の理念に通じるもののようです。

これは大きく見れば平均寿命の延伸、職業人生の長期化の中で、企業にも、従業員にも最適な雇用人事システムの模索の本格的な動きに通じるものでもあるわけです。

高齢社会のさなる進展は当分続きそうです。今後もこうした企業の動きに注目していきたいと思っています。


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