tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国際収支から見た日本経済の歪み

2019年11月11日 21時46分59秒 | 経済
国際収支から見た日本経済の歪み
 今日、財務省から国際収支の速報で2019年9月分の国際収支の内容が発表になりました。
 マスコミの見出しは、経常収支の黒字が1兆6千億円、前年同月比2300億円の縮小などとなっているようです。

そこで、内訳を見ますと、貿易収支は11億円の黒字ですが、米中摩擦の影響で(同)3200億円の減少。サービス収支はラグビーワールドカップもあり旅行収支が改善して700億円の黒字。 最大の稼ぎ頭は第1次所得収支(海外からの利子・配当などの収入)の1兆8000億円(9500億円増)、で第2次所得収支(途上国援助など)は2300億円の赤字(これは当然)といったものです。

表題で「歪み」と書いたのは、これは、このところ全く変わらずですが、経常収支の黒字が大きすぎるということです。
具体的に言いますと、日本人の総所得はGNI(国民総所得)でそのうち「可処分所得」に相当するものが国民所得です。最近年(2017年度)国民所得は445兆円です。

これを、日本人(法人を含む)が全て使えば正常収支は±ゼロです。という事は、経常収支がプラスという事は、日本人は稼いだものを使い切っていない、経常収支分だけ使い残しているという事です。言い換えれば、現状推定4%程の使い残しだという事です。

使い残した分は何処へ行っているのかと言いますと、家計なら銀行の預貯金ですが、国の場合は、海外の債権や証券を買っている、つまり日本国として外国に貯金をしているということになります。

「貯金をきちんとして、健全財政で結構ですね」といいたいところですが、実はなかなかそうはいきません。
例えば、大きな問題だけでも3つほどあります。

まず第一は、常に円高を招く可能性があるという事です。典型的なのは「プラザ合意」ですが、そんなに黒字が出るなら「円高に出来るでしょう」と経常収支の赤字国は考えます。「プラザ合意」では直接言われましたが、G7やG20でも、黒字国があるから赤字国があるので、バランスが大事だ、といった見解は常に表明されます。
 国際投機資本などが、「何かあれば円買い(円高)」という行動をとるのも、日本が万年黒字だからです。

 第二は、経常黒字で、外国の債券・証券を買っても、貯蓄の保全にならないということです。最も信用があるはずのアメリカ国債や証券を持っていても、円高になればその分だけ目減りしますし、リーマン・ショックのようなことがいつ起きるか解りません。
 海外の債券・証券に投資しても、結局損するというのが日本では常識でしょう。

 第3は、経常黒字分は日本国内で使われないわけですから、日本経済の活性化に役立たないという事です。
 家計でも、貯蓄を沢山すれば、その分、日々の生活は厳しくなります。もちろん将来の安心のためにですが、経常黒字→円高の日本の「円」で計れば海外貯蓄は目減りしますから将来の役には立ってくれないのです。

 そして、日本経済のこの傾向は、深刻化しこそすれ、改善の方向に向かう気配がない、具体的には経常黒字幅が縮小傾向にならないという事が、一番の問題なのではないでしょうか。アベノミクスも黒田バズーカも、結局は弥縫策でしかなかったようです。
 長くなるので、次回にします。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。