tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2017上半期経常収支10.5兆円の意味

2017年08月09日 11時33分50秒 | 経済
2017上半期経常収支10.5兆円の意味
 財務省が、今年上期の経常収支の数字と発表しました。10.5兆円の黒字で、マスコミは「リーマンショック後最大」と報じています。

 大幅黒字でそれも漸増しているのですから、マスコミも、日本経済、日本企業の強さと肯定的な論調が一般的ですが、それだけでいいのでしょうか。
 
 ご承知のように、アメリカの経常収支は万年赤字です。今、アメリカが「アメリカ・ファースト」と自国中心になっているのはそのせいです。アメリカが赤字なのは、「黒字国が稼ぎ過ぎるからだ」という事で、何かというと黒字国を目の敵にされます。
 国際投機資本は、そんなに黒字なら、もっと円高にしてもいいという姿勢になります。

 日本経済にしてみても、経常黒字というのは、日本人(法人・個人)が稼ぎ出した「国民総所得( GNI)」を使い切らずに「使い残している」という事で、家計で言えば、家の収入を余して貯蓄しているという事です。

 日本は世界一といわれる貯蓄国で、その分生活は切り詰められ、消費は伸びず、貯蓄は大方がドルですから、円高になれば目減りしてしまいます。

 どうしてこんなことになるのかを、国際収支の中身で見ると、経常黒字の中の最大のものは「第一次所得収支」といって、企業が海外に工場などを作り、そこからの利子や配当などで稼いでいる9.8兆円が最大という事が解ります。

 これはどういう事かといいますと、企業が国内より、海外に工場などを作り、そこで利益を上げ、そこで上げた利益を海外に再投資して、さらにそこで利益を積み上げるという形でしょう。

 ですから、この分は国内総生産(GDP)には算入されません。日本企業の活動が海外で役に立ち、その結果、日本のGDPは増えない、という事なのです。
 これは外国にとっては結構なことで、ある意味では日本企業の国際貢献という事ですが、日本国民にとっては、おカネは海外で回っていて、国民生活の向上はままならないということになります。

 ならば、外国での生産活動だけでなく、国内の生産活動も活発にして、GDPを伸ばすことは考えられないかという事になりますが、それには、国内の消費活動が活発にならなければならないでしょう。

 ここで「 平均消費性向の低下」という問題があることがハッキリします。個人貯蓄1800兆円を持ちながら、さらに貯蓄に励む日本人、その意識と将来不安との関係でしょうか。

 政府は口では言いながら具体的な手は打てず、日銀は、 2%インフレになれば解決すると考えているのでしょうか。

 この国際収支統計でも、旅行収支が上半期8000億円の黒字となっていますが、これはすでに日本の物価水準は国際的には高くないという証左です。インフレで消費を引っ張るというのは、国民生活をさらに厳しくするという事でしょう。

 国際収支統計からみても、日本経済の現状の問題点はかなりはっきり見えてくると言えるのではないでしょうか。


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