tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用構造を変えるには:官製「働き方改革」の盲点

2024年09月18日 16時11分34秒 | 労働問題

このブログでは国が「働き方改革」を言うなどは「余計なお世話」で、働き方改革は必要に応じて労使が自主的に考えって実行するものという立場をとっています。

「賃上げ」の場合も同様ですが「官製春闘」はスローガンだけで、去年、今年、経団連が賃上げを認める姿勢を取り、連合内の主要単産が本気なって、やっと賃金が上がってきています。  

政府が日本の雇用構造に影響を与えたのは、「プラザ合意」という経済外交の大失敗の結果、大幅円高で企業が賃金水準の維持が出来なくなり、やむを得ず正社員を減らし、非正規社員の著増という雇用構造の悪化をもたらした事ぐらいでしょう。

ところで、技術革新が進み、雇用構造がそれに従って変わらなければならないというのは当然で、大変大事なことです。

実はそれを極めて上手にやって来ているのが日本企業なのです。これはコダックと富士フイルムの比較でも書きましたし、GMやGEの経営の変容でも書きました。今日現在の話では、日本製鉄のUSスチール買収の話があります。

アメリカの主要企業はでは軒並み産業構造の変化に雇用構造が対応できずに失敗をしているのです。

自民政権の「働き方改革」は、まさにアメリカ型の職務中心、職務がなくなれば解雇のアメリカ型雇用システムが素晴らしいという現実を知らない単純な欧米崇拝の結果なのです。

現政府の「働き方改革」では、企業の新卒一括採用は非合理的だからやめるべきとなっています。日本企業はやめる気配はありません。これは雇用というものの本質の理解が、欧米と日本では違うからです。

日本では企業は人間集団です。人間集団の凝集力がシナジー効果を生んで、1+1が2以上の力を出すのです。欧米流の職務中心の採用では、個々人の能力を全部引き出しても100%で、そこまでは出ないのが普通でしょう。

欧米流では職務がなくなれば解雇されます。技術革新の時代です、解雇され、改めて進路を決め、勉強し、トレーニングを受けて新しい職務を探します。

日本の伝統的な方法は、技術革新などで企業の職務内容、職務構成が変わったとき、企業自体が自分のやる仕事を変えて行きます。繊維や窯業の産業から化学、電機、半導体へ業態を変えていくのは企業の当たり前の発展過程のようです。

従業員は手慣れた専門分野から共通点のある新分野に雇用は継続のまま企業内の再訓練再配置で安定した生活を保障されながら、高度技術企業の従業員に脱皮します。

ですから、日本には企業生命の長い会社がいくらでもあります。ドラッカーが日本の企業生命の長さに驚嘆し、自らの経営学に取り入れたことは知られています。

日本の失業率は欧米に比べて常に異常に低いことも知られています。人間集団ですからそこから排除するということは人間の尊厳という視点からも避けたいという意識が根底にあるからでしょう。

雇用という問題が、企業の利益を中心に判断される欧米のと、人間集団が協力してその時代に必要な仕事をして社会貢献するという経営理念を持つ日本企業との違いが判らずに、日本の雇用政策を考えても決してうまくいかないのは、こうした理由からだと考えています。