フィンランドとスウェーデンのNATO加盟の方向が決まりました。最初難色を示していたトルコもそれなりの理解をしたようです。
問題の源は、中立を表明している緩衝地帯のあることが対立するヨーロッパとロシアの間の平和維持に役立つという考え方が、ロシアのウクライナ侵攻により崩れ去ったという事でしょう。
この、フィンランドとスウェーデンの大きな変化を「NATOの東漸を1cmも許さない」と言ってきたプーチンの大失敗だったという意見もあります。事が「プーチンの大失敗」で終われば、確かにそうかもしれません。
しかし、プーチンにしてみれば、NATOが大きく東に拡大したのは、ロシアに対する敵対意識の表れだから(それが自分のせいだなどとは考えない)ロシアとしては、今後はそのつもりで行動する、責任は、総てフィンランド、スウェーデン、NATOにある、という事になるのでしょう。その結果この地域の不安定は大幅に増すことになりそうです
独裁者というのはそういうもので、事の理非曲直は総て自分の都合で決めるのですから(客観性の認識はない)、まともな判断では対抗出来ないのも当然でしょう。
ロシアのリーダーがプーチンでなくゴルバチョフであれば、かつてのゴルバチョフの朝日新聞への寄稿のように東西対立、核戦力の積み上げ競争の愚かさを理解し、NATOとの関係も対立から協力に変わり、メルケル路線(対ロシア融和路線)はEU,ロシア双方が裨益する所となって、ユーラシア大陸の在り方は全く違っていたでしょう。
ロシアは酷い国だという意見は今や一般的なものになっていますが、かつては殆どの都市て反プーチンのデモがあり(逮捕され鎮圧されましたが)、また300万人と言われる若者が海外逃避しているという現実もあるのです。
物言わぬ(物言えぬ)大衆は、プーチンの抑圧の下に苦しんで(騙されて、諦めて)いる可能性の方が大きいという見方もあります。
国が悪いのではない。リーダーが悪いのだという意見にはそれだけの理由があるのでしょう。もちろんリーダーを選んだのは国民ですが、国民に責任を負わせて済むものでもないでしょう。
もう1つの独裁的なリーダーを持つ大国である中国の場合も、リーダーが鄧小平だった時は、改革開放で、社会的市場経済を掲げ、中国自身の経済発展に力を入れ、対外関係は今よりずっと友好的でした。
その後2代のリーダーを経て習近平になって、徐々に独裁色を強め(「国際仲裁裁判所判断は紙屑」発言)、アメリカで奇妙な独裁感覚を持ったトランプとの対立の中で、それが一層進化し、次第に自己都合で国際常識も無視する国になりました。
中国人民の意識は、そんなには変わらないのでしょうが、リーダーによって、国の態度は大きく変わり、国際関係は容易に不安定なものに変化します。
ミャンマーのクーデターのような場合は、独裁者は突然生まれますが、通常は、時間をかけて次第に独裁者の立場を固めるようです。
自分の国は勿論、国際社会も国連も、地球上に独裁者が生まれないように、日頃から十分注意していなければならないのではないでしょうか。