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赤字財政は金融で救えるのか:MMTその後

2019年05月20日 13時19分12秒 | 経済
赤字財政は金融で救えるのか:MMTその後
 MMT(新時代の金融理論)については「理論構成も出来ていないご都合主義の金融里論」という見方が一般的になってきているようで、結構なことだと思っていますが。NHKを含めてTV放送などで、学者などがでてきて MMTは合理的と説明しているのを時々見ます。

 その中でよく聞かれるのが、「よい例が日本だ」といって、日本が世界トップクラスの財政赤字残高でも、インフレにもならず、円の価値は何かあれば円買いというほど信用があって、日本の円も国債も紙屑になるような気配は全くない、これこそ「MMTが正しい証拠だ」とか、 リーマン・ショックでアメリカは大変だったというが、「アメリカの金融機関の立ち直りは結構早かった」等という発言があります。

 この所30年も殆ど経済成長していない日本を引き合いに出していいただいても迷惑な話ですが(数字上の成長のほとんどの部分は国民所得統計の方式の変更によるもの)、アメリカと日本の違いなどについても解ってもらわないと困りますので、少し書いておきたいと思います。
 
 基本的には、MMTというのは「財政赤字は金融で救える」という理屈ですが、要は、救える場合と救えない場合があると言う事が第一、第二は、救える場合といっても本当に救えたのではなくて、損した人が「仕方ないね」と諦めることによるという事です。

 もっとはっきり言えば、金の出入り(収入と支出)の関係と、金の貸し借りの関係をごっちゃにして遣り繰りをしようというのがMMTなのです。
 本来的にはそんな事が成立するわけはありませんが、上述のように、「損した人が諦めて呉れれば」成立するという事でしょう。

 日本の借金財政が破綻しない理由は、日本国民が真面目で、国が面倒見てくれない可能性が大きいことを懸念して、自己防衛の意識から貯蓄に精出しているからで、お陰で政府は財政赤字を海外からのマネーで資金繰りをつける必要はありません。
 もし外国から借金していれば、外国の都合で「金返せ」あるいは「もっと利息を払え」と言われれば、忽ちに財政破綻の可能性は大きいでしょう。

 それに日本は、アメリカと違って、国内の生産力をなんとか維持していますから、円安になれば国際競争力が回復して、経済成長の可能性が大きくなるという状態を維持しているからでもあります。国民の真面目さが財政赤字を支えているという所でしょうか。

 アメリカのリーマン・ショックからの回復が早かった、という点については、アメリカの不良債権の大半は、外国の負担で処理されたという事が大きいのではないでしょうか。
 2009年ごろのみずほ総研の分析でも、不良債権の「発生率」はユーロ圏やイギリスの方が大きかったようです。(日本の金融機関も大変でしたね。ユーロ圏の金融業の総資産の規模はアメリカより大きいです)。

 これはまたごく身近な話ですが、当時私の家内がへそくりで買っていた投信が半分ぐらい値下がりして、途方に暮れ、解約した方が良いかと相談してきたので、運用先のリストを見ましたら、ファニーメイやフレディーマックが並んでいたのを思い出します。

 儲けようとして買って損したのですから自業自得ですが、アメリカ政府系の機関の債券に、アメリカの格付け会社がAAAをつけていたのは詐欺罪ものだなどと思いました。

 当時は、金融工学全盛で、ジャンクボンドも集めて上澄みだけ掬えば優良資産などいう金融論がノーベル賞に値するように見られたものでした。
 今の、MMTもいつかはそんなことになるのではないかなどと空想しているのですが、さてどうなるのでしょうか。