tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

覇権国からずり落ちるか、アメリカ?

2017年06月02日 11時16分49秒 | 国際政治
覇権国からずり落ちるか、アメリカ?
 日本時間の今日早朝、トランプ大統領は「パリ協定からの離脱」を表明しました。
 第二次大戦以降、世界の覇権国として、リーダーを任じてきたアメリカ、その巨大なGDPのゆえに(中国に次いで)世界第二の温暖化ガス排出国でもあるアメリカが、地球市民がこぞって目指す温暖化ガス排出削減の協調行動から離脱を表明したのです。

 トランプさんは選挙戦の時から、温暖化ガスの理論に疑念を表明、この議論はでっち上げなどとしてきていました。
 確かに、地球の平均気温の上昇はCO2の排出によるという理論には、異論もありますが、今日では世界中が認めている確実性の極めて高い理論でしょう。

 トランプさんにしてみれば、 アメリカは覇権国の役割を担ったおかげで損ばかりしているという被害者意識から出発しているようなところがあり、世界の警察官は止めるとか、日本やNATOは防衛費をもっと負担しろとか、不法移民がアメリカの富を蚕食しているなどと主張し、アメリカのコスト削減に熱心で、それによって「アメリカ人の雇用を増やす」というのが公約の主眼でした。

 現実の状況は、はアメリカ産業の競争力の相対的劣化が原因なのでしょうが、そうではなくて、世界中の余計な面倒など見ずに、国内の雇用増加に注力すれば、問題は解決できると考えていたようです。

 しかし、結果はどうでしょうか。シリアの軍事作戦でアメリカの武器の凄さを見せつけたり、日本海に空母を計3隻も派遣し、北朝鮮をけん制したり、世界の警察官を積極的にやってくれています。

 それに引き換え、同じ地球規模の問題でも、温暖化ガスの問題では、協力体制から手を引いて国内雇用の増加の方に注力しようという形のようです。

 日本などでは、地球環境問題に取り組んだ方が、長い目で見れば経済成長も促進し、雇用も増えると考えるのが一般的ですが、トランプさんの頭の中では、「長い目」でなく「従来」と「当面」が中心になっているようです。

 流石にアメリカの良識は健全に残っていて、石油や石炭の業界団体も、パリ協定離脱には懸念を表明していますが、トランプさんの頭の中では、職を失ったラストベルト地帯の労働者の票の数の方が大切に見えるのでしょうか。

 既にいろいろなところで見られてきていますが、これからも、トランプさんの頭の中にあるものと、アメリカの良識との葛藤が、アメリカの政治や社会、経済の中で雇用を軸に続くのでしょう。

 代わって覇権国を狙う国々もあるのでしょう。日本は、日本なりの道を、「粛々と」進むことになるのでしょうか。
 最近、国会の場などでは「粛々と」といえば、「他人がどうであろうと気にせず」という意味に使われることが多いようですが、それでいいのでしょうか。