tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

中国の所得倍増計画を読む: 4、為替レートと国際経済秩序

2010年07月26日 12時39分07秒 | 国際経済
 前々回指摘しました様に、日本の所得倍増計画でも、多少のホームメイドインフレの進行はありましたが、日本経済に、問題を発生させたのはホームメイドインフレよりも「外的要因」でした。
 具体的にいえば、ニクソンショックによる固定相場制の崩壊、オイルショックによるエネルギー問題の発生、そして最後に致命的な打撃を与えたのはプラザ合意による極端な円高 でした。

 中国は日本のプラザ合意後の「失われた10年、20年」という失敗に十分に学んでいると思います。そう明言する中国の方にも何人かお会いしました。人民元の大幅な切り上げをやって、それを持ちこたえるだけの力は今の中国にはない、とはっきり言う中国の方も居られます。

 すでに書いてきていますように自国通貨の切り上げは、「自国の国内コストの同率の上昇」を意味します。つまり国際為替市場に円レートを(円高を)任せるという事は、「国内コストの水準の決定を(コスト上昇を)国際為替市場に任せる」という事なのです。

 戦後の各国経済の歴史が示すように、経済成長を阻害する主要な要因は基本的には「 ホームメイドインフレだ」と書いてきました。それを避けるために、労使交渉があり、所得政策があり、その環境整備のために財政政策や金融政策が行われるのでしょう。

 こうしたホームメイドインフレ回避のための(経済の安定発展のための)政府や労使の努力は、為替レートの切り上げによって、全く意味を持たなくなります。

 日本はプラザ合意で円を2倍($1=¥240から¥120)に切り上げられ、その結果 「日本の労働者の賃金はドルベースで2倍になって、日本の賃金水準は世界一」 になりました。しかし同時に物価も2倍になったわけで、高くなった物価を国際水準まで下げるために、20年近くデフレ を経験したわけです。

 そして今回、さらに2007年以降、円は$1=¥120から80円台半ばへ、30パーセント以上の切り上げです。春闘賃上げ率はゼロでも、日本の労働者の賃金は、国際的にはパートや派遣も(最低賃金も)含めて、この3年で、3割以上も上がっているのです。

 多分、円建ての賃金はますます上がらなくなり、製品価格も下げざるを得ないでしょう。更なるデフレです。税収は伸びず、財政再建も進まず、それでも国民は消費税アップも仕方ないと諦め、我慢するのでしょう。日本はどこまで円高デフレを耐え忍ばなければならないのでしょうか。

 国際投機資本の思惑や、強国の圧力で為替レートが決まり、真面目な経済運営が影響を受けるのが今日の現実なのです。国際経済はこのままでいいのでしょうか。