tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2010春闘:定昇論議の問題点

2010年02月18日 12時48分33秒 | 労働
2010春闘:定昇論議の問題点
 打ち続く不況の中での労使交渉に大変なご苦労をされている労使の担当の方や責任者の方々を差し置いて、余計なことを申し上げる失礼をお許し下さい。
 今春闘が定昇中心の論議になっていることは、マスコミに連日報道されていて、定昇を実施せずとか、定昇の凍結といった言葉が使われています。現場の労使間でもそうなのでしょうか。

 定期昇給というのは「賃金制度」ですから、それをやらないことは、「賃金制度」を改定するという事になります。 ですから昔は、「定昇延伸」とか「定昇の実施時期を延ばす」という言い方でした。当然、期間は半年とか1年以内です。

 1年たってしまうと、入社2年目からの賃金は決まっていますが、初任給が据え置きですから、入社1~2年が同じ賃金という制度になります。つまり定昇凍結というのは、あくまでも臨時的な処置で、本来は、年度内に賃金体系を見直さなければなりません。

 こんなことになる理由は、「賃金水準」論議と「賃金体系」論議をごっちゃにしているからです。
 これは、戦後、多くの企業が、定期昇給とベースアップをごっちゃにして、毎年10%とか15%といった賃上げをして、賃金体系が収拾つかなくなったのと状況は逆ですが理論は同じことです

 この問題は、昭和29年に、日経連が、定期昇給制度の確立を提唱し、労使共に「ベアと定昇の区別」を勉強し整理することが出来ました。その結果、
・企業の経営実態に即した「賃金水準」を決めるベースアップは春闘で
・仕事と賃金の結びつきなどを決める「賃金制度・体系」は労使の委員会などで協議
というのが常識となり、職能資格制度や職能給も導入され、賃金制度論議が活発になりました。

 今問題にすべきは、経済や企業業績が長期に落ち込む中で、企業の経営実態(広く言えば日本経済の実態)に即した「賃金水準」を決めるべき春闘で、ベースダウン論議をせず、賃金体系制度を崩して「なし崩しに」平均賃金を抑制するといった方向を労使で模索しているという事でしょう。これでは定昇とベア(現時点ではベースダウン)を区別する前の時代に逆戻りです。

 本来は、制度である定期昇給(労使合意で決めたもの)は実施したが、ベースダウンがあったので、個別賃金は余り上がらなかったとか、少し下がったとかいう事になるべきなのでしょう。
 戦後の労使関係の歴史の中で積み上げてきた労使の知恵を無駄にしないで欲しいと思うのは私だけでしょうか。