tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

合理的な賃金原資・賃金水準とは:ロンドンG20に思う

2009年09月06日 10時18分56秒 | 経済
合理的な賃金原資・賃金水準とは:ロンドンG20に思う
 今回のロンドンG20では、昨年来の金融危機の中で問題になっている銀行の高額報酬 についての議論もされ
「危機の一因と指摘されている銀行の高額報酬に関して、報酬のためにリスクを取る行動を抑制していく新たな国際基準を設けることで合意した。」
と伝えられています。

 次回のピッツバーグ金融サミットでまた話し合われることになったそうですが、これには賃金や報酬というものについての最も基本的な認識についての一致がないと話はまとまらないか、中途半端なものになってしまうでしょう。その点が懸念されるところです

 基本的な問題が2つあります。1つは、賃金や報酬というものの意味です。これは受け取った人の生活をより豊かなものにするためのものでしょう。であって見れば、それは、その人が社会をより豊かにした功績・成果を反映して支払われるべきものだと思われます。

 その国が経済成長したから国民の賃金が上がる。会社が新製品を開発して業績が上がったからボーナスが増える・・・、これは合理的です。
 つまり、賃金や報酬は、生産した付加価値の配分として支払われるというのが基本です。

 もう1つは、「銀行の高額報酬」の意味です。ひと括りに銀行といっても、預金、貸し出し業務をしてインカムゲイン(付加価値)としての収入を得ているところと、投資銀行のように、マネーゲームを業とし、キャピタルゲインで利益を上げるところがあります。前者は健全な銀行業務です。今問題になっているのは後者でしょう。

 このブログでも再三触れてきました様に、キャピタルゲインは付加価値の創造ではありません。他人が生み出した付加価値を自分のところに移転させるだけです。ですから、キャピタルゲインから賃金や報酬を払うというのは、基本的には、ギャンブルで儲けた金を山分けするのと同じです。そこには付加価値生産性のような、報酬についての経済学的に明確な基準になる指標はありません。

 キャピタルゲインの山分けが、報酬(賃金やボーナス)になり、その水準が国民1人当たりの「雇用者報酬」の水準に影響を与えるようなことになったら、実体の国民経済の経済学的あるいは倫理的基準はがたがたになって、経済の正常な運営は困難になるでしょう。