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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

勤労者世帯の平均消費性向急落

2023年06月08日 15時55分46秒 | 経済
一昨日、6月6日、総務省統計局から4月度の家計調査(家計収支編)が発表になりました。
コロナが終息期に入り、3月末には春闘の集中回答日もあり、「大手企業の満額回答続出」などとマスコミに報じられていました。

政府もいよいよ今迄の経済低迷期からの脱出とおいった雰囲気を作ろうと躍起のようで、サラリーマン世帯の財布の収支にも影響が出るのではないかという気もあって、先ず、例月点検している2人以上勤労者世帯の平均消費性向を見ました。

      平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯:%)

                    資料:総務省「家計調査」

昨年になってからは、前年比で上昇基調がほぼ続いている(3月・11月以外は青より赤の柱が高い)状況でした。

更に今年に入っても1、2月は緑の柱がさらに高くなっていたのですが、3月は0.2ポイントの微上昇となって、さて先行きはでした。

今回は、開けてビックリ、4月の数字は前年の78.8%から73.9%へと4.9ポイントの大幅低下になっていました。

ところで、平均消費性向の低下するのには2つの要因があります。一つは、家計が節約して貯金を増やそうという場合、もう一つは、収入が増えたのに今まで通りの支出をしていたら消費の割合が減ったという場合です。

日本では長い間前者の節約型、今回は後者の収入増型になる可能性もあり、それならベストだと思っていましたが、どうもそう簡単ではないようです。

消費支出の統計内容から推測しますと、両方の要因が絡み合っているようです。
先ず全体の傾向としては2人以上全世帯の消費支出を見ますと名目値で0.5%減、実質値で4.4%減とともにマイナスです。

物価上昇に負けずに所費を伸ばすという元気も息切れし、4%以上の物価上昇では、少し節約しなければという雰囲気も出てきたように感じられます。

勤労者世帯では、収入の統計もありますので見てみますと世帯の収入は前年比2.6%の増、実質値では1.4%の減ですが、世帯主の収入は0.7%のマイナスで、春闘の効果はまだないようです。

その代わり、人手不足のせいでしょうか世帯主以外(妻、子供など、多分非正規?)の収入が増えて、合計では2.6%の増加で、平均消費性向計算の分母の可処分所得(手取り)は3.5%のプラス(実質は0.6%のマイナス)です。

しかし、収入は増えても支出は抑えられ、名目で0.9%減、実質6.7%減と節約基調で、その結果が平均消費性向の4.9ポイントの低下になっているのです。

別途消費支出の中身を費目別にみますと、食料のような、値上げがあっても減らしにくい物は伸び、家庭用品や衣類など節約できるものは伸びず、交通、通信や、教養娯楽のような、コロナ終息で活動が積極化しているものは増加といった、節約と支出増の選択の状況が見られます。

5月には、春闘の結果がどうかも出て来るでしょうし、物価の状況とも相まって、日本経済を左右する個人消費の動きがもう少し見えてくるのではないでしょうか。

賃金・物価水準の正常化の鍵は企業行動

2023年05月30日 13時45分51秒 | 経済
日銀の植木総裁は、物価問題の全責任を負わされたような形で、大変ご苦労をされているようです。

アメリカでも、ヨーロッパでも中央銀行の総裁は皆さん物価問題で苦労しておられますが、世界経済が混乱して資源価格などが乱高下したり為替レートが変動したりすると、欧米では民間企業がその影響を増幅するような行動をとり、インフレが激化したり、賃金が高騰したりして、金融政策では容易に抑えられないような状況になるからのようです。

日本の企業や労働組合は、その点ではお行儀がいいようですが、お行儀がいいだけでは済まないし、最近少しそうでもない事もあるようです。

やっぱり企業は経済活動の主体ですから(労働組合も)主体が、環境変化に適切に多応しないと経済は上手く行かないし、金融政策というリモコンでそれを上手く捌こうとしても、容易ではないという事でしょう。

日銀の植田総裁は、今年後半には物価は下がっていってその後また上昇傾向になるのではと予想されているようです。

このブログでも、日本では長年の我慢が限界にきて一斉値上げの波が起きて上ってきた消費者物価も、そろそろ一段落で、後は春闘の賃上げによるコストアップが多少の上昇に繋がるかなといった見方をしていました。

しかし、最近の動きを見ますと、一斉値上げの波は津波のように繰り返して未だ収まらないという状態です。

政府・日銀は「2%インフレ目標」ということで日本経済の体質的なインフレが2%というのが望ましいと言っていますが、、どうも一斉値上げがエスカレートして、東京都区部では5月にはコアコア指数が3.9%となりこれ以上上がればアメリカ並みというところです。

一部の回転寿司チェーンなどでは、値上げで売り上げ減となり、値下げもという動きもありますが、加工食品や飲料などはまだ値上を考えているようですし、電力業界は6月から電気料金の大幅値上げを決めています。

もう昨年来の値上げの季節を卒業し、経営努力で利益を出し、賃上げもするという経営の本来の姿勢に戻る時期でしょう。
経済活動の主体である企業にその辺の自覚が欲しい所です。

ただ、この所の円安、1$=140円が一時的かどうかという問題が起きていますから、これは別途考慮という事で、適切な対応を慎重に考えるべきでしょう。

どう対応するかという問題については、円高の時には賃金を下げ、物価を下げる努力をしたわけですから、円安がこのまま続けば、それは、賃上げ、価格上昇の方向で対応しないと、アベノミクスと同じ失敗をすることになります。

こうした問題に対しても、産業・企業の労使が自覚して適切に対処すればいいのかもしれませんが、問題が些か複雑ですので、慎重な対応が必要という訳です。

考えられる方向としては、アカデミアが国民にも企業にも(政府にも)解りやすい理論構築をして、政府、日銀、産業企業の労使が十分に話し合って経済の安定した成長に整合的な行動を取るといった「日本的な」作業が出来ればいいなと思うところです。

東京都区部消費者物価に見るインフレ傾向

2023年05月26日 15時07分31秒 | 経済
消費者物価指数の先行指標と言われる東京都区部の消費者物価の5月分(中旬速報値)が発表になりました。

このブログでも毎月初旬に発表になる日本銀行の輸入物価指数、企業物価指数と消費者物価指数の関係を見る際、この速報を使っていますが、重要な先行指標です。

今回発表の5月の数字は、季節変動のある生鮮食料品を除いて対前年同月比で3.2%の上昇、前月の3.5%より下がったことを報じていますが、これは政府の電力・ガスの料金引き下げ政策によるもので、消費者物価の上昇基調は変わらないというのが実情です。

マスコミでも、電気・ガス料金が下げられたことで上昇率は下がったが、食料品や日用品の値上がりは大きく、消費者物価の上昇基調はまだ続きそうという論調が多くみられます。

このブログの4月分の消費者物価の分析でも指摘していますが、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」(アメリカでは消費者物価の「芯の芯」といった意味でコアコア指数と呼んでいます)は対前年5月で3.9%の上昇となり図のようにこれはこれまでの最高です。

東京都区部の消費者物価3指数の推移

                      資料:総務省統計局「消費者物価指数」

値上がりの大きいのは4月の全国指数とも共通なものが殆どですが、食料品の値上げ傾向は続いており、調理食品、加工食品、飲料、外食などの中にはが2ケタの値上がりのものも多く「生鮮を除く食品」の値上がりは8.9%に達しています。

東京都区部の場合、昨年5月も対前年同期比で8.9%上昇しており一斉値上げで始まった価格水準の改定が1年たっても繰り返されていることが解ります。
長期不況で値上げが出来なかったことの反動と言ってもこの上昇は少し異常です。

原因は種々あると思いますが、2年連続で物価が10%近く上るというのは、他の物価や人件費の上昇との乖離が大きすぎる感じがします。

統計的にみれば、そろそろ上昇率が落ち着いてくるのではないかという状態ですので、この1年ほどの「消費者物価は上がって当然」といった意識の切り替えが必要な段階に入って来ているように思われるところです。

株価は上がっていますが、家計の所得のベースである賃金水準は春闘順調と言ってもせいぜい3~4%の改善です。不用意な価格の引き上げは、また、買い控えによる消費不振につながる恐れも大きいので、社会全体が、物価上昇に用心深くなる段階に入っているのではないでしょうか。

消費者物価のコアコア指数が、アメリカの5%に近づいて来ている事は、危険信号と見た方が良いのではないかなどと考えるところです。

消費者物価上昇、そろそろ要注意水域か

2023年05月19日 13時04分32秒 | 経済
今日、総務省統計局から2023年4月の消費者物価指数が発表になりました。
一口で言うと、消費者物価、上昇傾向収まらず、というところですが、上昇しているのは特定の分野に絞られてきたという感じになっています。
       
         消費者物価、主要3指数の推移

                     資料:総務省統計局「消費者物価指数」

上のグラフで見て頂きますと2月は電力料金に政府の補助金が出て下げましたが、その後の上昇角度は相変わらず急角度です。
6月からは政府の認可で電力料金は値上げになりますから2月の下げは帳消しになるのではないでしょうか。

エネルギーの影響を受けない緑色の線は一貫して上昇角度を強めています。この「生鮮食品とエネルギーを除く総合」は天候やエネルギー価格に影響されない日本国内事情によるインフレが中心ですから、これが日本経済の基調的な物価動向を示すという事でしょう。

物価上昇の内訳に入って、10大費目のそれぞれの動き(前年同月比)の説明を見ますと、上昇が目立つのは食料(8.4%)、うち、生鮮食品は鶏卵、生鮮魚介ですが、加工食品・調理食品、外食などの9.0%上昇というのは気になる所です。

家具家事用品の10,0%も目立ちますが、エアコン価格の上昇が大きいようです。
その他、被服・履物と教養娯楽が3%台の上昇ですが、その他の費目は1~2%で、落ち着いてきているように感じられます。

昨年春から始まった多様な品目の一斉値上げの動きも、そろそろ終盤かと思われましたが、上記緑色の線の上昇がなかなか沈静化しないのに加えて、鳥インフルの影響が鶏卵やから揚げに出るなど、予想外の事態もあって、台所も大変です。

6月からの電気料金の値上がりが、また統計の自然な動きに影響を与えますが、やはり注目すべきは緑色の線の動向です。

長期に亘った価格転嫁の出来ない状態から一斉に価格転嫁に動いたのが昨年来のインフレの大きな原因ですが、輸入品などの海外からのインフレ要因はすでに小さくなっています。この辺りは主要3物価の分析でも見られるところです。消費者物価はいまだに上昇中で、6月の電気料金の値上げがまたグラフを歪めるでしょう。

         消費者物価主要3指数対前年同月比の推移(%)

                        資料:上に同じ

一斉値上げの波はそろそろ鎮静化という見通しは変わらないと思いますが、緑色の線がこのまま上昇を続けるようですと、日本経済がインフレ体質になるという危険水域という事も考えられますので、注意深く見ていきたいと思います

GDPの構成、投資・消費のバランス回復へ

2023年05月17日 13時32分25秒 | 経済
今日、内閣府から2023年1~3月期のGDP速報が発表になりました。
対前期比の年率換算で、短期の変動を報じるマスコミでは1.6%の実質成長、プラスになったのは3期ぶりで、個人消費の伸びが押し上げた、といった見出しが多いようです。

それはその通りですが、日本経済の基調的な動きを見ますと、昨年は順調な成長路線を取り始めており、一昨年までは基本的には企業の設備投資の片肺傾向だった日本経済が、個人消費の伸びにも支えられる形に変化して来ている事が見えて来ています。

これはこのブログで毎月追っている平均消費性向が去年から回復傾向になっている事からも予測出来たことですが、実質GDPの対前年同期の伸び率と個人消費の対応する伸びを図にしておきます。

    GDPと家計消費(共に実質)の対前年同期比の推移

                 資料:内閣府「GDP統計」

今年の1~3月期について見ますと実質GDPの伸びは前年比1.3% 家計最終消費支出は2.7%、民間企業設備が4.2%(いずれも実質)です。

GDPの1.3%の上昇の寄与度の内訳は、プラスが家計最終消費支出が1.5、民間企業設備が0.8、政府支出が0.4などですが貿易収支が-0.7、民間住宅や在庫がー0.7などで結局GDP成長率は1.3%という事です。

在庫は時により増減しますが、基調的には、日本経済は、消費と投資の両方に支えられるようになりましたが、輸入が増えて貿易赤字が増え、その分がマイナスになっているというのが現状でしょう。

この貿易赤字は、GDPには入っていない海外投資からの収益(第一次所得収支)で現状は十分埋めていますから現状は問題はないのですが、今のアメリカの様に、第一次所得収支も沢山あるが、貿易収支の赤字が大きすぎて、国全体として赤字、という事になると大変ですからこの辺りは気を付けなければならない所でしょう。

なぜ昨年から消費が増えて来たのかの理由はまだよく解りません。今朝発表のこの統計の中で、一番下に雇用者報酬(実質)という欄があります。これは日本国内の企業が払った人件費の総額の伸びを消費者物価の上昇率で割り引いたものです。
その数字の動きを見ますと。昨年の1~3月期から今年の1~3月の5四半期の推移は、
消費者物価の上昇もあり、-1.4、-1.2、-1.6、-1.8、-2.3という事で、ずっと対前年比マイナスです。

昨年から日本の家計は、物価上昇にもめげず、物価上昇以上に消費を伸ばしているのです。
そのお蔭で、この1~3月期も日本の実質成長はプラス1.3%を達成しているのです。
 
消費が重要だということは解るのですが、その元は賃金でしょう。さて、今年の春闘の結果はどうなっているのでしょうか。

主要3物価指数、消費者物価のみ上昇基調続く

2023年05月15日 14時04分31秒 | 経済
今日、日本銀行から国内企業物価指数と輸入物価指数が発表になりました。昨年春から世界経済のインフレ化の原因になった、資源などの国際商品の値上がりも次第に落ち着き、昨年は急激に進んだアメリカ、ヨーロッパのインフレも減速の動きを示しています。

このまま順調に推移すれば、FRBやECBも余計な心配をしなくてもよくなるのでしょうから、このままいってほしいと思うところです。

国際商品のインフレを国内にあまり持ち込まない日本ですが、日本には日本自体の事情もあって、消費者物価は、まだ収まる気配が明確には見えてきません。

主要物価3指数の推移(消費者物価は東京都区部速報)

                      資料:日本銀行、総務省

上図でご覧いただく通りですが、輸入物価指数は昨年秋から下がり始め、急速な下げ基調で2020年を100にして200近かったのが今は150台です。

この影響は当然日本の企業物価にも出るわけで、メノコ算でいえば、輸入物価が10%上がれば企業物価は2~3%上がるぐらいが計算上の関係ですが、現実は90%上がって20%の上昇という所ですが、その後の下げはかなり緩慢です。

消費者物価の方は、輸入物価10%の上昇で1~2%の上昇辺りかと思いますが、輸入物価が下がっても上がり続けて5%を超え、まだ下がる気配はありません。(消費者物価の4月は東京都区部の速報値)

国内物価が下がりにくかったり上がり続けたりしているのは、輸入原材料が商品になるまでに時間がかかるという事もありますが、今回の場合は、長年国内価格に転嫁できない状況が続いていた反動が大きい(特に消費者物価の場合)事はいつも指摘しています。

そのあたりを下図の対前年同月の上昇率で見てみますと、輸入物価はすでに去年4月より低くなる状態です。輸入物価が下がり始めて4ヶ月ほどして企業物価は緩慢ですが下げ基調に転じています。

      主要3物価指数対前年上昇率

                       資料:日本銀行、総務省

消費者物価は今年に入ってからの政府の電気ガス負担軽減策で少し下がりましたが、上昇基調は変わりません。 
消費者物価については毎月その中身を分析していますが、日用品などの一斉値上の影響がおおきいことは広く実感されています。下がるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

今のインフレは、基本的には国際情勢の不安定による国際資源価格の上昇によることが大きいわけで、これからの国際関係が少しづつでも安定化することが望まれるところです。

上場企業久しぶりの好決算に湧く

2023年05月13日 15時51分45秒 | 経済
上場企業の2023年3月期決算が集中し、SMBC日興証券の集計では、東証1部上場企業の増益基調がはっきりしたようで、10日現在、開示率35%で純利益は7.0%の増という事だそうです。

代表格のトヨタは、原材料費の高騰などで、減益決算になっていますが、内容などは悪くないという事でしょうか、決算発表後株価は上がっています。
製造業は国際的なサプライチェーンの不具合などで減益の企業も多いようですが、三菱自動車など大幅増益の企業もあり、円安傾向もあり、元気度は上がっているようです。

マスコミで報道されているように、商社などでは史上最高の好決算が続出、輸入関連で、価格転嫁に苦しんだところもあるようですが、全体では史上最高の決算になると予想されています。

長い先行き不透明な景気低迷状態からようやくコロナも終息の様子になり、円レートも130円台という円安が続いている事から、2024年3月期についてもSMBC日興証券では増益を見通しているようで、いずれにしてもコロナとともに最悪期は抜けだしたといった感じです。

世界の政治・経済情勢はますます不安定化するような情勢にありますが、日本経済で見ますとコロナの終息見通しから消費支出が活発化し、久方ぶりの一斉値上げが続いたのにも拘らず消費が比較的堅調に推移していること、加えて、インバウンドが急速に回復していることなどが、街の中小企業にも活況を齎している事も大きいでしょう。

インフレというのは、適度なものであれば、常に景気感を押し上げる効果を持つもののようです。
早く買わないと値上がりするという心理、在庫を持っていれば、仕入れた時より大体高く売れるという状態はインフレ期の特徴です。

加工貿易立国の日本は、輸出競争力が増す円安が有利ですが、この所の円安は、アメリカの金利引き上げに加えて、日本の貿易赤字の拡大という事情もあるようで、つい1~2年前の100円飛び台といった円レートとは大違いになっています。

更に、昨年来の平均消費性向の反転上昇の動きは、今春闘の高めの賃金決定の支援もあり、今後も続きそうに感じられます。

折しも進む世界的な技術革新の波に加え、日本の食文化の高度化の成果である加工食品、飲料などの品質の高さが、インバウンドなどの活況から世界に知られ、輸出が伸びるといった実態も多様な製品で見られているようです。

今回の決算の好調も心理的な起爆剤の一つになり、日本経済も少し様変わりとなりそうな気配が感じられるようになることを望むところです。

米国「TIME」誌の見出しの責任は何処に?

2023年05月12日 20時01分59秒 | 経済
問題の源がアメリカの1週刊誌の表紙の見出しなのだから、大騒ぎすることはないのではないかという意見もあるかもしれません。

しかし、「平和憲法」で「戦争放棄」を謳っている日本の総理大臣インタビューを特集したTIME誌の次号表紙、岸田総理が眉間に皺を寄せ、厳しい顔で読者(カメラのレンズ)を見る表紙の「日本の選択」という見出しの下の副題を日本政府が問題にしているのです。

次号の内容をあらかじめ紹介する電子版ではこうなっていました。
「岸田総理大臣は何十年も続く平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしたいと望んでいる」(NHK訳による)

その後、日本政府(外務省)の抗議によって訂正された副題はこうなっています。
「岸田総理大臣は、平和主義だった日本に国際舞台でより積極的な役割を持たせようとしている」(同上)

現状において厳然と存在する日本国憲法を前提にして考えれば、最初の副題は、岸田総理が日本国憲法と全く違う方向に日本を変えようとしているという事になって、日本国民としては、「アメリカの週刊誌に言う前に自分の国の国民の総意を確かめるべきではないか」、「勝手な先走りが過ぎるぞ」といった国民の声がありうるでしょう。

訂正された副題では、「平和主義だった」と過去形になっているのが気になりますが、国際舞台で積極的な役割を果たす気持ちは(出来るかどうかは別として)評価しようか、といったことになるのでしょうか。

松野官房長官によれば、「記事の中身は、ほぼ改定後の副題のようなもの」という事のようです。

そして、NHKの報道によれば、TIME誌は、電子版についてはすでに見出しは改めました(これは確認済みだそうです)、しかし「印刷された雑誌の方の表紙や記事は変わっていない」という事だそうです。

という事で、印刷されたTIME誌の次号では、最初の副題が、世界中の人達に読まれることになるのでしょう。

もし日本国憲法に意思があれば、という事は、現在の日本国憲法を善しとする人たちから見れば、岸田総理はとんでもない事を外国の週刊誌に言ってくれたようだ、この責任は誰にあるのだ、という事になるのではないでしょうか。

紙のTIME誌の次号を読んだ人の多くは、日本もいよいよ戦争をする国になるのだなと思うでしょう。これが国際社会の中の日本や日本人にいかなる影響を与えるかは、恐らく日本の外務省にも、岸田総理にも読み切れないでしょう。

嘗てバングラデシュで、テロ組織の襲撃に対し、「我々は日本人だ」と言いながら、「有志連合の一員だ」と言われテロの犠牲となったJICA関係者7人の例もあります。

国民の安全には、「日本は役に立ってくれるが、無害な国」というイメージの確立が最も重要なようです。これが「平和憲法」の存在意義なのではないかともいえそうです。

TIME誌の表紙が、国際的な場で余計なトラブルのもとにならないよう願うばかりです。

消費の堅調続くか、平均消費性向は微増

2023年05月10日 12時03分40秒 | 経済
昨日、総務省統計局から3月の〔家計調査〕の家計収支編が発表になりました。

消費者物価指数の上昇がなかなか止まらず、特に日用品の一斉値上げが続く中で、家計の消費意欲がどうかと注目の「2人以上の勤労者世帯」の「平均消費性向」を見ました。

結果は83.5%で、昨年3月の83.3%を0.2ポイント上回るという事です。辛うじてトレンドとしては上昇傾向かと言えるところでした。

平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯、%)

                     資料:総務省統計局「家計調査」

図に見ますように平均消費性向は昨年来前年を上回る月が多くなり、家計の消費に対する積極性が見られるという感じになって来ました。

一方、昨年は加工食品、外食、調味料などから始まり、生活必需品である日用品の一斉値上げが第1波~第4波ぐらいまで続き、値上がりでやむを得ず消費支出が増えたのか、消費支出の積極化の雰囲気が出て来たのか判断の難しい所でした。

しかし、コロナの鎮静化という援軍もあり、一方で「節約疲れ」などという雰囲気もあって、これまでの消費不振経済から少し雰囲気が変わり始める様相も見て取れます。

3月の調査でも、消費者物価指数の上昇から実質消費支出は2人以上所帯でマイナス1.9%ですが、これは名目支出が1.8%増えたのに対し、消費者物価が3.7%の上昇となった結果です。

2人以上所帯で費目別の動きを見ますと、増えているのは食費、家具・家事用品、被服・履物、交通通信、教養娯楽などで、特に教養娯楽の12.9%の伸びが目立ちます。

食費や家事用品は物価上昇の影響もあると思われますが、教養娯楽は旅行、宿泊、外食などの伸びに支えられており、コロナの沈静化とともに生活パターンの積極化が始まっている事を予測させます。

結果的に、勤労者世帯の消費性向は83.5%と残念比0.2ポイントの微増にとどまりましたが、これは名目可処分所得がマイナス1.4%と前年比減少している中ですので、貯蓄にばかり精出すのでは、生活が面白くないという何かが出て来て言えるのかもしれません。

4月からは、企業もすこし気張った賃上げをしたようですし、どんな数字になるのか、望まれるのは物価が沈静傾向になり、実質所得増の経済に近づいていくことですが、政府の経済舵取りとともに、じっくり見ていきたいと思います。

日本の民主主義はかなり重症?

2023年05月09日 14時53分59秒 | 経済
前回は、民主主義というシステムが結構病気に罹りやすいという点を見てきました。
ところで日本は民主主義国をもって任じていますが、日本の民主主義も病気に罹っているのではないかという点を取り上げてみました。

というのも、民主主義をもって任ずる国であるのに、ここ2代の総理の暗殺を狙った事件があり阿部総理は凶弾に倒れ、岸田総理の場合は失敗に終わりましたが、これは、まともな民主主義の国では異常な出来事でしょう。

しかも、大統領や首相の暗殺といった場合、その実行犯は、何らかの組織の意思によってそうした行動を取るのが普通だと考えられますが、日本の今回の2件については、そうした組織的背景がない個人的な犯行らしいという事が、また異常です。

正常な民主主義社会では在り得ない事、必要のない事でしょう。
もし、政権がより多くの国民の意思を代表していないとなれば、選挙によって政権を交代させることで目標を達することが出来るのが民主主義だからです。

という事で、問題の第1は、選挙制度が存在しているのに、首相暗殺といったことが起きるのは、選挙制度を活用しても政権を変えることが出来ないという挫折感から発するという事になるのが一般的な推論でしょう。(政権交代の可能性がない? 何故??)

第2の問題は実行犯に組織的背景がないらしいという事でしょう。これは、民主主義が病んでいるだけではなく(病んでいるから)、人の心も病んでいるという推論になります。

こう考えてみると、今回の連続した2つの事件から見えてくるのは、日本は、民主主義社会という形の下で、国民の中にかなり重篤な、国の在り方の現状を否定するような異常なマグマが鬱屈した形で溜っているような状態ではないのかという事です。

これは一体どういうことで、原因は何処にあり、対策は何なのかを、政権党も野党も、国民全体も、少し確りと考えてみなければならに問題ではないでしょうか。

翻って、国際社会の中での日本人のといった面から日本人の考え方や行動を見てみますと、一般的には、自制心や責任感は確りしていて、スポーツの応援などに熱狂しても、その中で必要な公徳心は維持し、後始末などはきちんとするとか、落し物が返ってくる稀有の国といった評判は今でもあるようです。

ただ、こうした日本人の一般的評価とは裏腹に、日本人の日本の政治家に対する信頼度が最近異常に低くなってきている事が大変気になるところです。

嘗て70%を超えていた衆院選の投票率は50%をいくらか超える程度で低迷、最近の地方選では50%割れが当たり前のようです。

最近の衆院選の自民党得票率は38%(公明15%)で、投票率に掛ければ有権者の僅か20%ほど。有権者の20%ほどの支持で議席は過半数を得て、公明党の協力で絶対多数で、強行採決をすれば何でもできる。それでは何でも閣議決定で決めておけばいいという態度なのかと思う人もいるでしょい。

一方、野党は俺が俺がで小党分立、政権などは夢のまた夢。自分の言う事がTVから聞こえることが目的なのかなどと揶揄される状態に見えるようです。

民主主義の取扱い方が下手なのでしょうか、こうして国民の意思が政治に反映されなくても国政は進んでいくのです。(やっぱり「民主主義のトリセツ」が必要らしい)

進んでいく先が良ければいいのですが、国民1人当たりのGDPは、かつての世界のベストテンの常連から30番近くまで落ち、世界から不審の目で見られている状態です。

やっぱり、日本の民主主義は病んでいるのではないでしょうか。

アメリカのインフレは収まるか、景気は?

2023年05月06日 15時03分16秒 | 経済
アメリカの金融機関の破綻が相次いで、世界中が心配しているようですが、その割にアメリカ経済は元気がいいようで、雇用も伸びていますが、インフレの方は3月の消費者物価は前年比5%に下がり(前月は6%)、政策金利の引き上げも0.25%で、後は時間をかけて沈静化という感じのようです。

まあ小康状態という事でしょうか。ダウ平均も銀行破綻で急落の後、急上昇で、一応平静に戻っているようです。

今回の原油等の資源価格の上昇は、西ではロシアのウクライナ侵攻、東では中台関係の不安定化など大国の国際関係に関わる問題が多いだけに、1970年代の石油危機と直接比較できない面もありますが経済現象としては共通でしょう。

然し欧米諸国も、特に覇権国の地位にあるアメリカは1970年代の石油危機への対応の失敗を繰り返してはならないという強い意識があったのでしょう。早い対応でした。
パウエルFRB議長のインフレ抑制への意識は強烈で、ヨーロッパではECBのこれに倣いインフレ退治にはそれなりの成果があったようです。

一方日本は、欧米のような単純な輸入インフレの国内インフレへの波及はないので、日銀は金利引き上げはしません。アメリカが急激に金利を引き上げたので、円安が150円まで進み、日本は迷惑しましたが、アメリカは自国中心、日本のことなど気にしません。

それでもアメリカのインフレが収まり、FRBの心配した金利引き上げによる経済活動の落ち込み、リセッションは何とか避けられ、富裕層が損した銀行の破綻も、政府の預金保障で何とか収まり、日本への影響も軽微で済みそうです。

パウエル総裁の説明によると、「アメリカの景気は予想以上の雇用の増加など強いので状況によっては一層の金利引き上げの可能性もある」と警戒感(物価を上げるなと言う脅しでもある)をにじませんがら、インフレ率は低下の方向を示している」とのことです。

「しかし目標の2%達成は2024年になろう」と述べ「雇用(景気)が強くなり過ぎれば金利引き上げの必要もありうる」と警戒感を明確にし、ゆっくりインフレを抑えながら景気の落ち込みを何とか防ぐという微妙な舵取りの成功を狙う意図がはっきりです。

勿論この狙いはアメリカとして最も望ましいものですが、同時に、基軸通貨国のインフレの鎮静化と経済安定は、日本は勿論、世界中が望むところですから、パウエル議長の手腕に期待したいところです。

1970年代のインフレはスタグフレーション化して全快には10年前後もかかりましたが、今回は、ほぼ1年で正常化の達成が見通せそうですので、経済政策も進歩したというべきなのかもしれません。

こうして容易にインフレを呼ぶアメリカやヨーロッパの経済体質についての処方箋は、それなりに固まりつつあるのですが、日本はどうでしょうか。

日本は、インフレを起こしにくいという世界でも珍種の国です。日銀は、未だその処方箋が書けていないようです。
その理由の一つには、インフレの起きやすい国では金融政策が効きやすいが、インフレの起きにくい国では金融政策が効きにくいという現実があるようです。

インフレとデフレの非対称性という問題は今の経済学ではどのように考えられているのでしょうか。その点がはっきりしないと、日本の景気はなかなか良くならないように思われるのですが、どうでしょうか。

我家の地球柑の嬉しい話

2023年05月02日 14時13分47秒 | 経済
チューリップの咲いていた小さな花壇は、夏の野菜畑に変身中です。
この煉瓦で囲った場所の東の隅に地球柑を移植したのは2017年です。その年までは鉢植えで、実がなると玄関の前に出して通る人に見えるようにしていました。



実の姿が面白いので「これ、何ですか」などと言われる方も結構いました。2017年10月31日のこのブログをご覧ください。(リンクを張っています)

そんなことで少し欲が出ました。この木が背丈ぐらいに大きくなって、こんな実が沢山生ったら面白いな、というわけです。

この場所には、それまで酔芙蓉が植えてあったのですが大きくなり過ぎ、困っていたので、思い切ってそれを切って、そこに地球柑を地植えにしようと考えたのです。

それから不思議なことになりました。木は育つのですが、毎年花が咲いて丸い実がなっていた地球柑の木に、全く花が咲かなくなったのです
このことはブログに書いて、なぜ咲かなくなったのか、何方か教えてくれればと思ったのですが、駄目でした。

そして6年たって、今年、新芽の出たところに蕾らしきものが現れ、「これは!」との期待に応えて、白いつぼみが膨らみ、甘酸っぱい柑橘の花の匂いがしてきたのです。



実は、私も歳ですから、生きているうちに願いが叶うかと内心危ぶんでいたのですが、今年の春は、この念願についてだけは希望が持てる年になりそうで、大喜びなのです。

ただ、鉢植えのころから花の後、小さな実は無数に付くのですが、大きくなるのは数個というのが経験です。

これだけ花が咲いて、実がついて、それが順調に、枝々に地球儀の様に丸く実ってくれるかはまだ解らないのですから、半分心配は残っています。

それでも、これから、半分心配しながら秋まで見守って行くのも、また楽しいものだとも思っているところです。

足元の狭い畠で、キュウリやナス、トマト角が実を結んでいくのを、見下ろしながら、かなり大きくなった地球柑の木が「それじゃ頑張って実をつけてやろうか」という気なって欲しいと願っているところです。


消費者物価、一斉値上げもそろそろ終盤?

2023年04月21日 13時08分35秒 | 経済

このブログでは消費者物価の動きを毎月追っていますが、動きが複雑になって来て、傾向的な動きが掴みにくくなって来ています。

原因には、電気料金の政府の政策が一貫しない事や、鳥インフルの影響で、物価の優等生と言われる鶏卵の価格の大幅上昇などもあります。
ただ一貫して上昇傾向を示しているのが「生鮮食品とエネルギーを除く総合」です。昨年春以来の上昇傾向がまだ止まる気配がないという現状です。

下の図で、原指数の全般的な動きを見ますと2021年春ごろから、赤と青の線「総合」と「生鮮食品を除く総合」が上昇をはじめ、緑の「生鮮食品とエネルギーを除く総合」は一昨年の年末までは下がっています。

     消費者物価3指標の動き(原指数)

                   資料:総務省統計局「消費者物価指数」

これは当時、コロナ禍がひどく、消費が落ち込んで値上げなど出来ないという状態が続いたという事でしょうか。
一方ガソリンを中心にエネルギー関連は価格転嫁が出来たという事だったのでしょう。輸入物価高騰が消費者物価に影響しています。

しかし、昨年に入って、長期の消費不振で値上げできなかった加工食品や調味料その他日用品の一斉値上げの動きが出て、それまでの我慢の反動でしょうか、今年の4月、5月まで多様な消費物資の一斉値上げの波が続き、今年の4月、5月は第4波ぐらいになるのでしょうか。

一方エネルギー価格をはじめ、輸入物価は昨年秋から下がり始め、国内の企業物価もほぼ沈静、その影響が消費者物価にも及んできています。
下の図で見て頂きますと、今年1月、対前年同期比で4.3%まで上がった消費者物価の「総合」は、その後の上昇率を下げて来ています。


ここにきて赤い線が青い線を下回っているのは、生鮮食品が消費者物価を押し上げているという事ですから、これには生鮮魚介に加えて鶏卵の影響も大きいようです。

エネルギー価格は政府の電気料金政策で動くので、経済現象だけではないという面があり、ここでコメントすることはありませんが、問題は緑の線です。
 
         消費者物価3指数:対前年同月比(%)

                       資料:上に同じ

これは輸入物価や天候や鳥インフルの影響はほぼ除かれていますから、純粋に、日本の国内の人件費などのコスト、長年値上げできずに圧迫された企業利益の回復といった要因で動くものです。

そしてこの線はまっすぐに伸びて、赤・青の線を上回る3.8%という年間上昇率を示しています。
そして、この統計の翌月4月にも、さらに5月にも、何千品目とか何万品目の値上げが予定されていることがマスコミなどで報道されています。

最初の図(原指数)に戻っていただきますと、緑の線の上がり方はまだ青・赤の線の下にありますが、大分追いついて来ています。

これが青・赤を抜いてその上に出ると、(厳密ではありませんが)国内インフレが、海外インフレを上回ることになり、日本経済がインフレ体質になったことを示します。

という事は、そのあたりが現状の物価上昇の限度という事になりそうだという予想になるのではないでしょうか。
そのあたりに注目しながら今後も毎月見ていくつもりです。

2022年度の貿易収支は大幅赤字ですが

2023年04月20日 20時57分05秒 | 経済
今日、財務省から2023年3月と、2022年度の貿易収支が発表になりました。

企業の経常利益に当たる経常収支では黒字が維持されていますが、営業収支に当たる貿易収支はこの所赤字続きで、1月に発表された2020年(暦年)の貿易赤字19.9兆円をさらに上回る21.7兆円に膨らんで、1979年度の第二次オイルショックの時以来の大幅になっています。

しかし、マスコミでも、だから心配だといった声はあまり聞かれません。理由は、今回の貿易赤字は多分一過性で、ソ連のウクライナ侵攻をはじめ、国際情勢が安定しない中でのことなので、日本経済そのものに問題が生じているといった見方は余りないからです。

一時は、原油やLNGの輸入価格は2倍近くにまで上がったようですが、このところは上がり下がりはありますが、傾向的には下がる状態になっています。
国際投機資本の思惑で、150円までいった円レートも、今は130円台半ばです。

半導体などの重要部品をはじめ、希少鉱物資源などは軒並み値上りしていて、こうした希少資源の価格はデジタル化を支えるとか、再生可能エネルギー開発に必要といった性格のものなので、今後も値上がりが続く可能性はあるでしょう。

こうしたものの価格は、結局、世界中で同じように上がるので、世界共通であれば、日本だけ不利になるわけではないので、そうした資源の活用する技術開発で日本が先行すれば克服可能という見に方もあるでしょう。

一方で、日本は国内投資より海外投資に力を入れてきたので、国内経済はが不振続きでしたが、進出先の企業からの利子配当といった「第一次所得収支」が増加しており、これが貿易赤字を埋めて、経常収支は黒字になるといった状況にあります。ですから貿易赤字をそれほど心配する事はないという見方が多いのでしょう。

多少時間はかかるでしょうが、国際情勢が安定すれば、この辺の事情がどんなバランスで落ち着くかが次第に見えてくると思われます。現状ではあまり心配する必要なないという見方が大勢ではないでしょうか。

ただ、日本企業の考え方もこの所変わって来つつあるようです。国際情勢の不安が残る中では、国際的なサプライチェーンは不安定化するので、生産設備の国内回帰といった動きもあります。

これは、国内経済の活発化を齎す要因ですし、これからインバウンドの増加も見込まれていること、更には、国内の家計の消費行動が、当面の物価上昇に刺激され、今後はその沈静化の中で、コロナの終息、今春闘の影響もあり少しずつ動意を見せるのではといった変化もありそうです。

インバウンドの増加は貿易収支の黒字要因になりますが、国内の経済活動の活発化は貿易収支には赤字要因でしょう。影響は交錯しています。

もし、長らく低迷した日本経済が活性化を取り戻すとすれば、その方が大変望ましい事は明らかですから、貿易赤字が多少増えても当面国際収支の心配はしない方がいいのではないでしょうか。

これまでは、万年黒字で円高が心配という日本ですが、この所はアメリカの金利引き上げで、100円飛び台の円レートが130円台で安定しているようですし、日本が赤字国に転落すれば、変動相場制が円安にしてくれるという事のようですから。

財政政策と金融政策、政府と日銀の関係の行方

2023年04月18日 17時02分46秒 | 経済
日銀総裁が、黒田さんから植田さんに変わりました。

黒田さんは、プラザ合意、リーマンショックによる超円高が日本経済の正常な活動を妨げていることを明確に意識して、2発の黒田バズーカで円レートの正常化を実現し、政府と共に2%インフレターゲットを掲げて、金融政策だけでは不可能な日本経済の復活のための財政政策、構造開花鵜の金融面からの下支えをしてきました。

残念ながら、日銀の政策成功によって順調に進むかと思われた財政政策、構造改革は、掛け声は立派でしたが、現実の政策運営面で多くの齟齬があったようで、日本経済はゼロ近傍の経済成長を続けることになり、コロナがそれに拍車をかけて、日本経済の不振は目を覆う状態になりました。

3年間おコロナ禍の中で、活動の抑制を強いられた日本経済に対して焦る政府は、赤字財政をも顧みず、国債発行、財政支援で経済活動の維持を図り、日銀はその下支えの役割を強いられたという事でしょうか、巨大な国債発行残高の半分は日銀が保有し、ETFの購入で、株式会社「日本」の筆頭株主は日本銀行と言われる状態になりました。

折しもアメリカから広まったMMT理論の実態は、勤倹貯蓄精神の旺盛な日本人の、老後のための貯蓄が支えたことにも気づかずに国債残高を膨張させた日本政府を、結果的に徹底して支えたのが日銀の役割だったと理解されたという事でしょうか。

政府は、そうした条件を、如何に恵まれた条件であるかの認識もなく、当然のことのようにコロナ禍に対しても、その後の原油・LNGなど 国際商品の値上がりに対しても、際限のないバラマキ政策を続けています。

表面的な対症療法に気を取られ過ぎの、選挙の人気目当てのような財政政策が続いた結果は、輸入インフレの中で、価格転嫁の困難な産業や中小企業の経営の限界、更に、実質所得の低下する国民・家計の我慢・勤倹貯蓄意識の限界が露呈されてきたようです。

消費者物価はじりじりと上がり始め4%を越え5%に達しようという状況になり、家計はコロナの鎮静化とともに、貯蓄選好から「消費性向」を高め始め、その影響は、輸入物価の上昇に加えて、貿易収支の赤字化を促進、円安要因になるという不安定な状況を齎しています。

日本経済はこれまでと違う様相の時代に入るのではといった不安も感じられる所です。

これまでのこうした状況から、巷でも言われますように、政府は日銀を子会社の如く考え、意のままに御すことが出来ると思っているといった見方も在るようです。

こんな困った状況の中ですが、今日18日、衆議院の財務金融委員会に出席された植田総裁の発言が報道されています。
「国債の買い入れについては、2%の物価目標を達成するという金融政策の必要性から行っているもので政府の財政資金の調達を支援するためのものではないと強調」と報道されています。

これは公共工事に使われてきた建設国債を防衛費の財源に充てるということに関連した質問に答えたもので、それに続いて、「財政運営については、国会の責任において行われるものであり、具体的にコメントをすることは差し控えたい」といっているとのことです。

政府は財政政策に責任を持ち、日銀(中央銀行)は金融政策に責任を持ち、互いに独立した意思決定をするというのが、世界の常識でしょう。

共通の目的を持って協力する事は当然有り得るとして、さて防衛費の膨張が著しくなるこれから、政府と日銀の考え方、両者の関係はどうなっていくのでしょうか、何か目が離せないことになりそうな気もします。