司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「合同会社の設立登記の手続とよくある質問」

2012-12-01 01:47:51 | 会社法(改正商法等)
 資料版商事法務2012年11月号に,東京法務局民事行政部法人登記部門「合同会社の設立登記の手続とよくある質問」がある。概要を拾うと,


○ 社員となることができる者
 「法令上,欠格事由の定めはなく,成年被後見人や破産者でも社員となれます」

※ 会社法上,社員の欠格事由の定めはないが,成年被後見人については,いかがなものか。「(設立時の)社員となれます」と高言しなくても・・・。会社成立後の話としては,相続により社員の地位を承継する場合もあるから,また会社法第607条第2項の規定も存することから,肯定せざるを得ないのはわかるが,設立時の話としては,疑問である。成年後見人が成年被後見人の財産を出資して,合同会社の設立にあたって社員として参加する等は,非常に特殊な事情でもない限り,本来あり得べからざる話であろう。法務局が成年後見の現場における権限濫用(業務上横領とも言える。)を容認するかのごとき解説はだめですよね。「欠格事由の定めはないが,成年被後見人については,適当でない」と解説すべきでは?


○ 社員となることができない者
 「民法上の組合,有限責任事業組合,投資事業有限責任組合などは・・・社員にはなれません」


○ 定款に署名又は記名押印をする者
 社員が持分会社E(代表社員が持分会社Fで職務執行者G)である場合
 ⇒ 持分会社Eの代表社員たる持分会社Fの職務執行者G

※ 定款の変更には,原則として総社員の同意が必要であり,この場合,法人の代表者が同意の意思表示をすると解されているにもかかわらず,原始定款に署名等をするのは,職務執行者でよいものだろうか? 社員の資格に基づくものであるから,持分会社Fの代表社員(法人である場合には,その職務執行者)が署名等をすべきであると解すべきであろう。甚だ疑問である。


○ 資本金の額の決定
 「資本金の額を金0円と定め,出資財産の価額の全てを資本剰余金の額とすることも可能です」

※ まあそうかもしれないが・・・。


○ 職務執行者の選任機関
【要旨】業務を執行する社員である法人の業務決定機関によって決定する必要があり,取締役会を設置している株式会社にあっては,取締役会で職務執行者を選任しなければならない。

※ この立場が固守されている。


○ 職務執行者の権限
 「社員の行為のうち,業務執行社員のみがすることができるもの(業務の決定,業務の執行など)については,その職務執行者が行うことになりますが,業務執行社員でない社員もすることができるもの(定款変更の同意,業務執行社員の持分の譲渡の承諾など)については,当該法人の代表者が行うことになる」

※ ここは,重要。

「合同会社の設立前においては,職務執行者には,登記申請行為に関するものを除き,何ら権限がないと解されることから,設立前に法人たる業務執行社員が行う行為についても,当該法人の代表者が行うこととなります」

※ もちろんだが,うっかりしやすいところかも。


Q.定款に職務執行者を記載しておけば,法人の業務執行の決定機関で選任したことを証する取締役会議事録は不要か。
A.【要旨】取締役会議事録の添付を省略することはできない。


Q.合同会社Aの唯一の社員が合同会社Bで,合同会社B(社員1名,職務執行者甲)の代表社員が合同会社C(社員1名,職務執行者乙)である場合,定款変更等における総社員の同意書は誰が作成するのか。
A.【要旨】乙である。

※ 合同会社Bのこの場合の意思表示は,社員の資格に基づくものであり,その職務執行者甲ではなく,代表社員である合同会社Cが行うべきである。そして,合同会社Cの意思表示は,業務の執行として,その職務執行者である乙が行うことになる。
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