tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

芸術の町。ウブド

2008-05-27 22:01:58 | 日記

電柱がないこと。景観を壊すような看板がないこと。電線が無粋に空を這っていないこと。こんな簡単なことが、これだけ景観に価値をもたせるものなのだろうか。ウブドへ行くまでに目にした景色。破壊しつくされた日本の景色と比べると、どこを見てもコンクリートの塊が見えない景色は、やはり非常に貴重なものであることが実感される。
フェンスの見当たらない民家、赤い瓦屋根や瓦葺の屋根。そこには、神様がデザインしたままの調和があった。町中は別にして、空を遮るのはヤシの木だけだ。圧倒的な植物の生命力がみなぎる豊かな自然。その緑のエネルギーに圧倒されていた。
ウブドでは、素朴で純粋な人々のホスピタリティー。奢ることなく自然に調和して、人々はつつましく生きていた。どこに目をやっても、バリらしさが存在した。チャナンは通りに必ずあったし、石像を置いていない家は見当たらない。村を歩いていると、こぼれんばかりの笑顔とすれ違う。一瞬、松葉杖のぼくに注意を留めてのことかなと思うがそうではない。笑顔は、彼らは挨拶。信仰心から培われたものなのだろうか。多くのバリ人が、おしみない微笑みを振りまいてくれる。おおらかな笑顔。バリのホワイトマジック。

数十年前の日本も、こうだったような気がしてならない。田中角栄の日本列島改造論で、日本はかつてない経済活況を喫することができたが、残念ながら失ったものの方が大きかったようだ。

バリ島はリピーターが多い。いくつか理由はあるのだが、この芸術の町ウブドはその理由のひとつだ。ウッドクラフトの店が軒を並べ、店先には見事な彫刻を施したつくりかけの家具が置いてある。一体、バリでこれほどの家具の市場があるのだろうかと心配になる。そして、無数に点在しているアートギャラリー、ミュージアム、アトリエでは、豊かな感性と高度なテクニックで緻密に描かれた絵画を見ることができる。
プナに連れられて訪ねたアートギャラリー。バリらしいヒンズー教の神々がモチーフの細密画や、ポール・ゴーギャンの『タヒチの女』のような南国の女性がモチーフの絵画に目を奪われた。大胆な構図で、自然と人間の調和を絶妙な色彩で表現してあった。
また、町中の石畳の道を松葉杖で歩いて行けば、バリ独特のアジアン雑貨やアクセサリーの店が軒を連ねていた。店の前では、チャナンを供える女性が静かに手を合わせていた。

ウブドの散策を終え、プナと2人で町外れのレストランで食事。インドネシア音楽が流れる2階の窓側の席から、広大なライスフィールドを眺める事が出来る。見渡す限りのどこまでも続く緑豊かな田園風景。眺めているだけで、気持ちがゆったりとしてくる。田んぼのあぜ道をはさんで、右側に見える田んぼは田植えを終えたばかりだったが、左側は刈り取りが終わったばかり。同じ視野の中に、春と秋の田園風景が混在していた。

プナはナシチャンプルを、ぼくはチキンヌードルスープとライスをそれぞれ注文。チキンヌードルは、大きな器に入って出てきた。酸味とスパイシーな風味のコンビネーションが絶品だった。スープはほんのりレモングラスの香りがして、南国らしさがにじみ出ていた。そして、ヤシの葉っぱに包まれていた御飯に乗っていた、赤茶色のふりかけのようなもの。てっきり、オキアミの佃煮だろうと思ったのだが、味はまったくない。プナに聞くと、椰子の実から作られている食材とのこと。
プナはフォークやナイフを使って、自分の皿の料理を普通に食べていた。バリニーズは、右手だけで食べるのかなと思っていたが、TPOを選択するということか。