tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

風の記憶:北アルプスの風(5)

2008-09-30 22:12:54 | プチ放浪 山道編

 
 

【撮影地】富山県中新川郡立山町立山峰1(富士の折立)(2008.9月撮影)
Copyrights© 2005-2008 TETUJIN
all rights reserved.

一の越山荘前で大勢の人が休んでいたものの、見通しの悪いガスのためか、雄山方面への登山者はほとんどいないようだった。他の登山者となるべく重ならないように、タイミングを見計らって雄山ルートに歩を進める。ここからが本格的な山登り。さっきまでの、しっかり作られた石畳の遊歩道はもう存在しない。
雄山までは、ルートが幾重にも付いているガレ場なので、足下が不安定で思ったより歩きづらい。その、つづら折りのガレ場をいっきに登る。
途中で、岩陰に咲くハクサンイチゲ、イワギキョウ、イワウメ、ミヤマキンポウゲ、イワツメクサなどの花の写真を採っていると、別ルートから登ってくる30代の女性と年配の男性の親子が迫ってきた。岩場なので、できれば落石による事故を防ぐために間隔を開けて登りたいのだが、写真を撮るため止まるたびに距離をつめられて、すぐ後ろに。彼らが通り過ぎるのを待って再び登り始めたのだが、こちらが休むと向こうも休むため、なかなか彼らとの距離をあけることができない。
ガレ場の尾根を、団子になって進んでいるうちに、天気が変わりぽつぽつと雨が降ってきた。
大きな岩陰に足を止め、レインウエアーの上だけをはおり、ザックにはカバーを。ザックのポケットがカバーで覆われて使えなくなってしまうので、給水のためのペットボトルをレインウエアーのポケットに。傍らを見ると、さきほどの親子も、レインウエアーを着て登りを再開するところだった。


人気ブログランキングへ参加しています。
気に入った写真や記事がありましたら応援のクリックよろしくお願いします。


風の記憶:北アルプスの風(4)

2008-09-29 22:33:13 | プチ放浪 山道編

 
 

【撮影地】富山県中新川郡立山町立山峰1(雄山、富士の折立)(2008.9月撮影)
Copyrights© 2005-2008 TETUJIN
all rights reserved.

すり鉢の底のような室堂から、雄山への鞍部である一の越までは、石畳でできた景色のよい遊歩道が続く。一の越と室堂との標高差は300m。前半は比較的なだらかだが、後半は勾配を増したきつい登りとなる。石畳の道とはいえ、高度2500mを超えており、空気が薄く、少し歩くと息があがる。行く手には、カラフルな登山ウエアを着た数組の登山者たちが先行するのが見えた。また、時折、雄山方面から下山してくる人たちとすれ違う。この坂はその昔、山岳信仰のために山に登った時代に懺悔坂と呼ばれていた。
途中の祠と祓い堂を過ぎて、1時間ほどで一ノ越到着。東西が大きく開けた稜線に立つ一ノ越山荘。大勢の登山者がその前で休んでいた。
ここは、立山雄山の直下にある峠となっていて、黒部湖と室堂の境界でもある。下からはあいかわらず、室堂方面からぞくぞくと人が登ってきている。
そしてここから雄山まで、さらに1時間。すぐに急登が始まり、登っている尾根を除けば遮るものがない360度の空中散歩道が続く。ただし、あいかわらず霧に閉ざされていて、立山連峰が全貌を現すことはなかった。


人気ブログランキングへ参加しています。
気に入った写真や記事がありましたら応援のクリックよろしくお願いします。


風の記憶:北アルプスの風(3)

2008-09-28 17:17:56 | プチ放浪 山道編

 
 

【撮影地】富山県中新川郡立山町立山峰1(室堂平)(2008.9月撮影)
Copyrights© 2005-2008 TETUJIN
all rights reserved.

室堂山への登山道を散歩していたら、霧が流れてきてあたりを一瞬にして包んだ。天気がよければここの辺から、五色が原や薬師岳が見えるらしい。時計を見ると、時刻は6時を回っていた。この霧ならば、さらに上に登ったとしても、立山連峰の稜線からの朝日を見るのは無理だろう。そう判断した私は、朝食を食べに室堂山荘まで戻ることに。
霧が出ているということは、天気は回復に向かっているのだろうか。どうやら心配したほど今日の天気は悪くはなさそうで、あと2~3時間はなんとか持ちそうだった。せっかく立山に来たのだし、昨日、校外学習の軽装の高校生たちが団体で降りてくるのを見かけた雄山へ登ってみようと思い直していた。

標高2450メートルに建つ室堂山荘のすぐそばには、日本最古の山小屋が保存されている。また、その昔、富士山、白山とともに多くの庶民の信仰を集めていた山岳宗教の名残を示す山荘のすぐそばの祠には、「西国33番札所観世音菩薩霊場」の第32番札所、近江国繖山観音正寺の千手千眠観世音菩薩の分霊像が奉られている。そうした遺跡のそばを通り過ぎると、何人かの人たちが写真をとっていた。
山荘に戻り、朝食。室堂山荘の食事は美味しくてボリューム満点だ。 ただし、米どころの富山なのに、ご飯だけはイマイチのよな気がする。気圧が低いから、ご飯を炊くのが難しいのかもしれない。また、この山荘のお風呂は温泉じゃないのだが、昨日、夕刻に山荘にチェックインしてそうそうに入った湯船は、大きくて綺麗な上、貸切状態で気持ちよく入れた。山小屋というよりも、昔のユースホステルのような印象だ。
美味しい山荘の朝食を済ませ、いよいよ出発。連泊するという同室の人に挨拶をして、私は山荘をあとにした。


人気ブログランキングへ参加しています。
気に入った写真や記事がありましたら応援のクリックよろしくお願いします。


風の記憶:北アルプスの風(2)

2008-09-27 22:32:27 | プチ放浪 山道編

 
 

【撮影地】富山県中新川郡立山町立山峰1(室堂平)(2008.9月撮影)
Copyrights© 2005-2008 TETUJIN
all rights reserved.

室堂平の日の出は遅い。山小屋の人によれば、この日の富山の日の出は5時30分なのだが、山荘の東にそびえる立山連峰に隠れて、実際に太陽が顔を出すのは6時30分ごろとのこと。
5時ごろ、隣の男性の立てる物音で目をさました私は、布団から抜け出して窓の外を見た。空は白み始めていた。だが、山は雲に隠れていて、天気は予報どおり悪いようだ。同室のもう一人の方を起こさないように布団をたたんでいたら、寝ていた彼も起き出して互いに挨拶をかわした。とりあえずパジャマがわりのジャージを着替えて、6時からの朝食前に山小屋の近くを散歩することに。
室堂山荘の外に出ると、朝の空気が冷たかった。あたりはすっかり明るくなっていて、もうすでに何人もの登山客たちが立山連峰縦走を目指して登山道に出ていた。立山連峰の中腹あたりの稜線が影のように見えて、そしてその稜線を這うように、浄土山方面から富士の折立、大汝山(おおなんじ)、雄山(おやま)方面へ雲が流れていく。かろうじて、室堂山の頂が見えて、そこに朝日が弱く反射していた。
<山の中腹まで登ってみよう>山の稜線から日の出を見ることができるかもしれないと、私はだれもいない室堂山への登山道を登り始めた。立山連峰につながる雄山方面へのメインの登山道と違って、こちらに向かう人はだれもいない。

室堂山へ向かうゆるやかな道をのんびり散歩していると、山の中腹辺りで登山道を降りてきた若い女性とすれ違った。まだ10代であろう彼女は、ペパーミントグリーンのトレーナーを着て、手にはペットボトル、そしてヘッドフォンをつけていた。いたって、軽装。
「おはようございます」
彼女の弾んだ声に、妖精と出会ったような気がして私はうれしくなった。彼女も朝日に誘われて、この道を散策していたのだろう。
その後、だれともすれ違うことなく、室堂山への登山道をひとりでしばらく歩く。朝の至福のひととき。限りなく静かで、本場アルプスの高原のような贅沢な空間を独り占め。
やがて、平坦地になって室堂が隠れると、整備された遊歩道はいきなり山道らしくなり、あたりは険しい高山の雰囲気。この景観の激変に戸惑う。ただし、ここまでの室堂平への展望は圧巻だった。緑のじゅうたんに被われた立山カルデラが眼下に広がり、見飽きることがなかった。ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、シナノキンバイ、チングルマ、コイワカガミ、ツガザクラなどがところどころに咲いていた。


人気ブログランキングへ参加しています。
気に入った写真や記事がありましたら応援のクリックよろしくお願いします。


風の記憶:北アルプスの風(1)

2008-09-26 22:22:45 | プチ放浪 山道編

 
 

【撮影地】富山県中新川郡立山町立山峰1(室堂平)(2008.9月撮影)
Copyrights© 2005-2008 TETUJIN
all rights reserved.

東京 → 越後湯沢 7:48~9:05(JR新幹線MAXとき307号) → 富山 9:13~11:21(JR特急はくたか4号)
電鉄富山 → 立山 11:50~12:50(富山鉄道本線)
立山 → 美女平 13:10~13:17(立山ケーブルカー)
美女平 → 室堂 13:20~14:10 (高原バス) 
立山室堂山荘宿泊

立山室堂山荘 - 雄山 - 大汝山 - 富士の折立 -  雷鳥平 -  みくりが池 - 室堂ターミナル

山を形容する言葉はたくさんあるが、山を人になぞらえて、男性的な山、あるいは、女性的な山と形容することも多い。そうした言葉は、切り立った岩肌、鎖場だけが頼りの人を寄せ付けないような登山道、情け容赦ない悪天候などの印象から生まれてくるのだろう。ただ、山の天気に関しては、とくに秋にかけての時期は変わりやすく、霧や雲はいつでも生まれ、視界が急速に閉ざされてしまう。もし、秋のこの時期、山で一日中晴れたら、女神に祝福されたと言っていいのかもしれない。
天気予報では、この日、立山地方は午前中は雨。午後からはかろうじて曇りの予定なのだが、日曜日なので午前中で帰らなければならない。明日からまた仕事。私は、昨夜、室堂の山小屋で同室になった人たちと話をして、雨の立山をさっさとあきらめて、午前中に信濃大町から白馬へJRで移動し、栂池の自然観察園にでも行こうかなと思っていた。高山に咲く花なら、雨が降ってても見ることができる。むしろ、立ち止まって花をじっくり見るには雨の方が良いかも知れない。
それほど、前日にトレッキングした室堂のまわりは濃い霧が立ち込めて、目の前に聳え立つ立山連峰の影がようやく見える程度で、今日の天候は期待できそうもなかったのだ。



人気ブログランキングへ参加しています。
気に入った写真や記事がありましたら応援のクリックよろしくお願いします。