tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

夜のドライブ

2008-05-13 23:06:25 | 日記

ホテルまでの帰りの車は、迎えに来てくれたのと同じドライバーのアデサが待っていた。ホテルの部屋にサービスのミネラルウォーターが今日は置かれていなかったことを思い出したぼくは、ごく軽い気持ちで彼に、帰りにコンビニに寄ってくれるようにお願いする。
ホテルの建屋の中にはコンビニがあるのだけれど、この時間、開いているかどうか不安だったし、そのうえ、ホテルの部屋の冷蔵庫のミネラルウォーターのボトルは、冷やすために無駄な電気代を使っていて買う気がしない。
アデサは、コンビニに寄ってというぼくのリクエストを笑顔で受け取ると、イグニッションを回して車を発進させた。開け放った車のウィンドウから気持ちよい風が入ってくる。。。・・・・・・車は来た道とは全く違った道を走っていた。
彼に確認すると笑顔で「ノープロブレム」を連発する。

30分過ぎてまだホテルに着かないので、ぼくはもうどうにでもなれと開き直っていた。その間、彼とはいろいろ話をしたのだが、決して悪いことをするような人間に見えなかった。聞けば9歳の男の子と生後3ヶ月の女の赤ちゃんがいるらしい。彼はあまり英語が上手じゃなく、彼の思っていることがうまくしゃべれずに、じれったそうにしている。そして、しきりに、ぼくの英語が上手だとほめてくれる。
そのうち、車はクタへ。ホテルのあるサヌールとは方向が全くちがう。高級ブティックなどが並ぶ道の片側に車がずらっと駐車してある大通りを抜け、ヒンズー教の島というのにあちこちにあるマクドナルドの前を通ってクタ・ゴーギャン通りへ。あふれそうなほど、たくさんの観光客がラフな格好で歩道を闊歩している。歩道の向こうには、店内をライトアップしたショーウィンドウ。
洪水のような人の流れと店の電飾は、大都会の眠らない町を連想させる。
ハードロックカフェを過ぎて海岸沿いの車がたくさん停まっている場所に車を止めると、アデサはここで写真を撮れという。よく意味がわからなかったのだが、とにかく有名なスポットなのかもしれない。地元の駐車係(彼らは、ここで車の整理をしてチップをもらっている)にシャッターを押してもらって、アデサと一緒の写真を撮る。あとで地図を調べてみたのだが、中級クラスのホテルが立地しているだけであり、数年前に爆弾テロのあった場所でもない。何故、アデサが写真を撮れと言ったのか今もなお不明だ。

写真を撮ったあと、さらに車は走り、今度はカルフールという巨大なショッピングセンターへ到着。彼はここでペットボトルのミネラルウォーターを買えると言う。確かに巨大な店だから買えるには違いないが、あまりにも店が巨大すぎて、店の入り口がどっちの方向へ行けば良いのかすら見当がつかない。不安そうにしていると、アデサがチップを渡した駐車場の係員に店の入り口を聞くが、かなりの距離がありそうだ。松葉杖の身には、ペットボトルの水を探して店内をウロウロ探し回るのも厳しく、2人で顔を見合わせて購入を諦めた。
結局、1時間以上、夜のバリ島の繁華街をドライブしてホテルに向かった。ミネラルウォーターは、ホテルの冷蔵庫の100円のボトルを利用することにした。アデサは、ぼくがミネラルウォーターを買えなかったことがとても残念な様子だった。

ホテルに到着して、ぼくは夜のドライブに連れて行ってくれた彼の好意に大いに感謝した。そして、彼の連絡先を紙に書いてもらった。
別れ際、20万ルピア、日本円にして約2500円を彼に渡し、彼の子供たちに日本のおじさんからプレゼントとしてケンタッキーフライドチキンを買ってくれるように頼んだ。とても高い水代になったが、ぼく自身、夜のクタのドライブを満喫できたし、何よりも、今の日本人が忘れてしまっている彼の親切な気持ちが嬉しかったのだ。受けた親切に対し、お金を渡すのは気が引けたし、受け取ってもらえないと思ったのだが、彼はすごく恐縮して、そして最後には受け取ってくれた。
ぼくがインドネシア語を話せたら、彼とは良い友達になっていたかもしれない。