tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

柴子(6)

2007-07-05 19:29:16 | 日記

「大丈夫か?救急車を呼んだから、もう少しがんばれ」
どれくらい気を失っていたのだろう。目を開けると、ダチが心配そうにオレを覗き込んでいた。そこはまだ公園の中だった。
「お前、親父狩り狩りをされたんだ。それも、とんでもないサイコ野郎に」
ダチが、俺の手を握り締めながら言う。オレは息するたびに、わき腹に脳天まで響くような痛みを感じていた。もう死ぬかもしれない。
ダチに体を起こされて前を見たら、少し離れたところにあのブスの衣服をつけたいつか見たことのあるハゲのオヤジが倒れていた。そのそばに、まるで動物の死体のような白髪のヘアーピースが落ちていた。

<サイコか>どんな字を書くんだろう?ひらがな?彩子?犀子?漢字がでてこない。こんなことなら、もっと勉強しておくんだったなあ・・・・・・。<もう遅いか>
目を閉じると、走馬灯のようにこれまでの人生が一瞬のうちにフラッシュバックした。<ああ、オレってもうすぐ死ぬんだ。>不思議と恐さはなかった。死の直前に記憶がフラッシュバックするのをなんていうんだっけ?・・・・・・思い出せない。

<もう、死んでもいいっか。なんかこう疲れちゃったしー>
目の前に、カーテンが浮かび上がる。カーテンを開けると、いつか見たきれいな女性が全裸でシャワーを浴びていた。女性は、カーテンを開けて覗き込んでいるオレに気づかない。そのうち、シャワーから紫色の水が流れ出し、そして女性を紫色に染めていった。
やがて、視界すべてが紫に・・・・・・。<柴子(さいこ)か?・・・・・・>。
そして、目の前に映画のワンシーンが浮かび上がった。フロントのカウンターの向こうに若い背の高い男。振り返ってドアの外をみると
Bates Hotelのネオンサイン。なんだっけこの映画?思い出すのも大変なほど忘れられない映画。
<たしか、死んだ母親になりきってしまった二重人格者が出てきた>
・・・・・・タイトルが思い出せない。な ん だ っ た っ け・・・・・・。