tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

dot the i/ドット・ジ・アイ

2007-07-13 23:43:10 | cinema

バチュラパーティーとは、結婚前(通常1週間くらい前)に男同士で「結婚前の独身最後の夜遊び」を楽しむパーティのことを言う。アメリカでは、男の団体でストリップ鑑賞へ行くのがお決まりのコースだ。女性は「バチェロレットパーティー」と呼ばれ、パーティー会場になっている個人宅へ男性ストリッパーの宅配をして羽目を外すというのが一般的らしい。
このパーティは、英国でもフランスでも同様にあり、女性側のパーティは、そのやかましさからヘン・ナイト (hen night;雌鳥ナイト)と呼ばれる。特に結婚式の多い6月前後になると、金曜日の夜は決まって"女性が女装している"とでも言いたくなるようなすごい格好をして楽しむ。街行く人は、そんな服装のグループを見て、<結婚間近なんだ>と振り向く。
さて、そのヘン・ナイトでキスする羽目になった婚約中の女性が、偶然選んだそのキスの相手に恋をする。男も一目ぼれをしてしまう。そこから、ドラマは始まる。映画は2重構造になっていて、三角関係が思いもよらぬ展開を見せて驚くことになる。

この映画の中でカルメン(ナタリア・ヴェルベケ)が「A kiss is to dot the 'i'  in the word love(キスは愛という文字を完成させる最後の点(ドット)」というセリフがある。それに対してキット(ガエル・ガルシア・ベルナル)は「Loveにはiがない」と返す。
もともと、「Kissは'愛'という文字を完成させる最後の点である」と言うセリフは、フランスの作家「エドモン・ロスタン(Edmond Rostand)」によって1897年に発表された戯曲「シラノ・ド・ベルジェラック(Cyrano de Bergerac)」の中のセリフで、 "A kiss is a rosy dot over the 'i' of loving"から来ている。スペイン生まれの情熱的なカルメンに、英語でこのセリフを言わせているのがミソ。しかも、 "A kiss is to dot the '
i' in the word love. "と間違えて言わせているのがなんともおしゃれだ。
確かに、英語の”LOVE”にも同じ単語であるスペイン語、あるいは、ポルトガル語の”AMOR”にもそのスペルには'i'はない。ところが、ドイツ語の”LIEVE"、そして、日本語の”愛(AI)"には'i'があるからややこしい。・・・・・・と思うのはぼくだけか。
実は、この映画のタイトルが意味する「dot the i」は別にある。これは慣用句“dot the 'i's and cross the 't's”からの引用で、細かいところまで注意を払う、細部にまで十分気を配る、詳細に記す、明確に説明すること。つまり、'i' と't' は似ているから混同することのないように正確に'i'に点を打ち、't'には横線を引かなければならない。
タイトルであるこの言葉が、映画の重要なキーワードで、観客は細部にまで気を配った脚本に引き込まれていく。もう、大どんでん返しがたまらない快感に・・・・・・。
さて、ネタバレタイム。
”life is not a movie”って言葉が出てくる。これは、ザ・プロデューサー (Swimming with sharks, 1995/米)でケビン・スペーシーが言った言葉だ。
”This is the only way you can hope to survive because life is not a movie. Everyone lies, good guys lose, and love does not conquer all. So Let's do this Thing! Let's finish it."
"I'm sorry."
"Do it! C'mon do it Now!"
三角関係は、映画「卒業(1967)」のように教会で花嫁を奪い去ろうとするが、タッチの差で間に合わず・・・・・・。 
監督、脚本はこの作品が劇場長編デビュー作となるマシュー・パークヒル。短編映画では各国の映画祭で数々の受賞を果たしているというパークヒル監督だが、その才能は映画だけに留まらず、詩人、小説家としても認められ、大学教授までやっていたらしい。なかなかのおしゃれな映画だ。