tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

柴子(4)

2007-07-03 19:54:37 | 日記
「遊ぶって、なにすんだよ?」
オレは、何気に聞いた。
「カラオケとか!」
「興味ねえよ。っていうか、お前だれ?」
「サイコ」
 
オレ自身、こんな風に道端で声を掛けられたのは、ずっと前に一度だけあった。その時は、会社帰りでくたくたに疲れていたし、財布には3000円ぐらいしか入ってなかったし、なによりも女が苦手だったので、そのときはシカトして通り過ぎた。
オンナがオレに道ばたで声をかけるなんて、キャッチセールスか街頭募金だと思ってる。しかし、声を掛けてきたサイコと言う名の山姥ギャルが一人ぼっちだった事、そして、分厚いメークでもはっきりとわかるようなものすごいブスだったので、なんとなくかわいそうに思えていた。こいつ、家出でもしたんだろうかと。
「お前、どうでもいいけど、こんなとこで油売っていると、やられちまうぞ」
「じゃあ、どっか連れてってよ」
そのブスは、なおも食い下がった。男みたいなしわがれた声で、女らしさは微塵も感じられない。はっきり言ってキモイ。
「・・・・・・」
オレは、そのブスを相手にせずに無視して家に帰ることにした。その辺に野宿してても、こんなブスを襲うバカもいないだろう。放っておくに限る。
「ネエ。どっか行かないの?」
ブスはなおも食い下がってきたが、オレはバイクにまたがると聞こえないフリをした。バイクを動かそうとしたときだ。そのブスが、バイクの後ろをつかんで行かせまいとした。あやうく、オレはたちごけしそうになった。ふっと、整髪料の嫌な匂いが鼻先をかすめた。
「放せよ!」
「お願い、乗せてって」
ブスはそういうと、オレの肩に手を回してバイクの後ろにまたがってきた。駅前のロータリーの街灯に照らされて、ミニスカートの下にはいた薄手の黒のスパッツが光を反射して見えたのを目にして、オレはドキっとした。ブスはオレの前に手を回して、しっかりとしがみついてくる。
「どこ行くんだよ?」
「どこでもいい」