彦四郎の中国生活

中国滞在記

香港❹日本にとって、親日で民主主義的考え方を多数が占める「台湾・香港」人は貴重な隣人

2019-08-26 12:30:37 | 滞在記

 日本人にとって香港はビジネス相手であると同時に便利な観光地であり、古くから隣人として馴染み深く親しまれてきた地域でもある。香港の人口は750万あまりにすぎないが、2018年の訪日香港人はのべで220万人にものぼり、日本を訪れるビジネス・観光客は全世界・地域別でみて何と4位。(1位中国・2位韓国・3位台湾)。また、香港人全体のリアル訪日率は95%の超高率であり、ほとんどの香港人は日本を訪問したことがある人たちだ。

 一方、日本から香港へは、2016年の統計では107万人となっている。日本人にとって人の行き来の多い親しみやすい地域が香港であるということは言える。そして、台湾からも日本に訪れる人がとても多いし、日本から台湾を訪れる人も多い。これら2つの地域は、民主主義という価値観を大事にしたいと思う人々がとても多いところでもある。残念ながら、韓国の政情・世論は、とりわけ文在寅政権になった2年前以降から「反日の嵐」が強くなり、北朝鮮や中国との関係強化政策をとり、中国の長期戦略にも支えられた文政権の方策により、日本との関係は1950年以降で最悪となってきている。民主主義の国家ではあるのだが‥‥。フィリピンも今の大統領になってから、中国寄りとなり、人権問題でも中国を擁護してきている。

 東アジアにおいては、日本にとって、親日で民主主義的な考え方を尊重し、人権を尊重する価値観を持つ人が多数を占める「台湾」と「香港」は、それこそ数少ない貴重な隣人だ。だからこそ、今回の「香港の問題」と来年2020年の1月にせまった「台湾総統選挙」の行方は、その貴重な隣人・地域を失うかどうかという、日本人にとっても重要な問題でもあると思う。

 なぜ香港では、多くの人々が参加するデモという方法でしか、「逃亡犯条例改正法(香港の人々はこれを「反送中法」と呼ぶ)」に反対する・意思表示することができないのか。2010年代に入ってから、中国政府の強い圧力により香港選挙法改正(改悪)がおこなわれたからだ。これに反対したのが2014年の学生主体の雨傘運動だった。

 超改悪により、香港立法会(国会にあたる)の選挙は、70議席のうち半数の35議席しか普通選挙では選出されなくなってしまった。あとの35議席は事実上・中国政府の指名者が議員となる。(普通選挙?)で選出される35議席のうち、30議席は「財界人を中心とした、人口の3%ほどのエリートしか投票権がない」というものだ。企業経営者や専門職などの資格をもたない残りの97%の人々はたったの5議席枠を選ぶのだから、異常な選挙制度である。つまり、70議席枠のうちの5議席だけが普通選挙がおこなわれるというしろもの。結果的に議会は中国政府と関係の良い・北京の意向をくんだ財界などの既得権者層が主導することとなる。しかも、香港独立をとなえる独立派は香港政府からテロ団体指定をされ、立候補すらできない。

 香港行政長官の選挙に至っては、上記3%の有権者が1200人の委員を選び、その委員が長官を選ぶ仕組みであるから、97%には一切投票権がない。

 しかし、民主主義国並みの言論や報道、集会、結社の自由は存在しているので、一般の香港市民が政治的な意思表示をしようと思えば、デモに行くことが唯一の有力な方法である。香港ではデモに行くことを「足で投票する」とも言う。自身の意志を直接政府に見せて、対応を求めるのである。香港は「デモの都」ともよばれ、2018年の警察統計では1097件のデモが行われた。

 香港の政治(司法・行政・立法)は中国の一党独裁体制の延長線上にあり、香港市民の民意よりも中国共産党政権の意向が政治を左右する。他方、社会は欧米型の自由な市民社会であり、NGOやメディアも自由があり活発で、政治的言動の発表やネットの利用などは自由にできる。6月18日に中国本土では閉鎖されて(ブロック)閲覧できなくなった私のブログも、香港や台湾では閲覧ができる。

 このような、政治は権威主義、社会は自由という体制は、世界的にも極めて稀(まれ)なのが、香港である。そして、今回の「逃亡犯条例」は、その香港の社会の自由面を取り除こうとしている条例である。6月9日に起きた103万人デモの当日、香港紙「明報」はデモ参加者にアンケートを実施した。それによれば、彼らがデモに参加し「条例改正」に反対する理由の中で、「自分・家族または友人が中国大陸に引き渡されると心配するから」としたものは56.2%にものぼった。相当数の一般市民が、身近に大陸への引き渡しを危惧していることがわかる。

 「中国に送られる」こと、中国政府への賛成度を基準に裁かれることは、香港人にとって悪夢である。かって香港の親は子供を叱る際に、「悪い子は大陸に送るよ」と脅したともいう。

 私も実感する。中国大陸では政治的な又は社会についての批評めいたことをする自由はない。それをしようと思えば命をかけてのこととなる。約30万人の日本人が中国で生活しているといわれている。(最も多いのは上海の8万人)  私の知る中国に住んでいる人で このことを憂いながらなんらかの発言をする人も ごくまれとなってきたように感じている。

 それぞれが賢明と言うか、中国では「言わず・聞かず・見ざる」が処世と決め込んでいる人がほとんどかと思う。それはそれで正しい選択なのだが、はたして 日本人として 人として 香港や台湾のことを見聞きしていて 何もしない それだけでいいのだろうかという疑問はのこる。

 8月30日に中国に戻るので、このブログはしばらくは執筆が難しくなるかと思うが、香港や台湾の情勢を中国本土でもウオッチしながらも、また、日本にできるだけ頻繁に短期帰国しに、ブログで発信し伝えたいと思っている。香港❶—❹のシリーズはこれで一旦終了しますが、それなりの発信は 中国という国で暮らす一日本人としての、私なりの「義」や「責務」かとは思っている。祇園祭山鉾・蟷螂山の「蟷螂の斧(とうろうのおの)」である。


香港❸―中国国内の動向―とても憂慮される事態が近づきつつあるか…

2019-08-26 09:56:37 | 滞在記

 香港での集会・デモが大規模化した6月9日以降、中国の「微博(ウェイボー)」などインターネット関連では、「香港加油(香港頑張れ)」「香港遊行(デモ)」などを含む投稿をすると「現在の操作は無効」と警告が出て来る。「香港」「HONG KONG」「HK」と検索すると不可能に。完全に「デモに関する」ことは、インターネットでは、「香港やデモ」などの言葉を使わないで当局サイトの意向にそった投稿以外は削除されたりブロック(閉鎖)されたりしている。(ただし、香港警察加油などはOK)

 香港市民でも圧倒的に「条例反対者」が多いのも事実だが、そのような反対行動に抗議する「中国支持・警察支持」の集会・デモも多数の人数を集めた。6月30日の集会では数千人規模だったが、7月20日には数十万人規模の「中国・警察支持」の大規模な集会が開催された。中国国内ではこの集会は大規模に報道もされたのではないかと思われる。

 8月5日、香港ではゼネストの呼びかけに応じて、1週間以上にわたってさまざまな機関や職種・職場でゼネストが行われた。空港職員・公務員・ディズニーランド従業員・地下鉄職員などなど、ゼネストは広範囲に実行された。ゼネスト参加人員は35万人にのぼったとされる。6月以降、香港行政府・及び中国政府に抗議の自殺をした人は4人にのぼった。警察側の火器の発砲で目を失明した人もでた。

 8月に入り、公務員や親中派が比較的多いとされる金融業界関係者が抗議集会を開催。5日から行われたゼネストへは幅広い業種からの賛同も相次ぎ始めた。林長官は、「デモ隊の目標は香港政府の転覆だ」と表明。また、6月9日以降から8月5日までの逮捕者は500人以上、警察が使った催涙弾は1000発であることを明らかにもした。

 中国国内の報道では、果敢にデモ隊と対峙している香港警察への賛辞のインターネット投稿が多く寄せられ(組織的にも投稿か)る。「警察加油!香港市民支持你」「I ♡ HK police」などなど。デモ隊との対峙で「目が充血」した警察官には、イラストとともに「あなたは英雄だ」。

 また、香港のデモ隊の一人が中国国旗を掲揚していた家の国旗をひっかけて下に落としている映像は、「再侮辱国旗!香港黑衣人 将に国旗縄子!」の文章と共に中国では拡散された。中国共産党系新聞「還流時報」の記者を名乗る人物をデモ隊が取り囲み暴力を加えたという出来事は、瞬く間に中国で「恐るべき黒色恐怖テロ」としてひろめられた。そして、彼は「英雄」として中国人に賛美され始めた。のちに、この記者を名乗る人物は本物の記者ではなく、北京の工作員たちの専用アパートに暮らす「工作員」であったことが明らかになってきている。

 7月24日、オーストラリアの大学に留学している香港からの学生らが「逃亡犯条例」改正案に反対する香港での大規模デモを支持する集会をクイーズランド大学でしていたところ、大勢の中国人留学生が乱入し。デモ支持の学生らに殴りかかったり、プラカードを奪い破り捨てたりするという事件が起きた。さらに「中国国家」を歌いながら、「中国は偉大だ」と叫びながら暴力行為に及んだ。このような事件は、日本でも起きる可能性はある。騒ぎは4時間あまり続いたという。

 中国政府は条例反対のデモ隊に対して、「テロの兆候があり、黒幕はアメリカ」とアピールを国民にプロパガンダしはじめている。また、8月9日からは、香港に隣接した広東省深圳市には、数百台の装甲車や大型が並び、「10分で香港に到達することが可能だ」と、デモ参加者に脅威を与えていもいる。この部隊は中国軍指揮下の暴動鎮圧部隊である武装警官隊(武警)。

   7月17日に香港では「白髪行進」ともよばれた、数千人の高齢者がデモを行い、政府に対する抗議行動をリードする若者への連帯をしめした。「支持青年 守護香港」の横断幕を先頭に、「若者よ、父も外に出る」「子ともたちよ、あなたは一人ではない」などのプラカードを持つものなど。参加者の中には、「若い人たちが私たちにこれ以上沈黙するなと気づかせてくれた」と話す人も。

 8月18日、再び大規模なデモが行われた。参加者は170万人にのぼった。このような8月中旬以降の状況下、アメリカのトランプ大統領は、「〇〇門事件のようなことがまた起きれば、貿易問題を巡る中国とのであるディール(取引)ははるかに難しくなる」と、中国を強く牽制した。

  「英領事館職員が行方不明」とのテレビ報道。香港のイギリス領事館職員(中国人・香港人)の男性が、8月8日に中国広東省深圳に行ったまま行方不明になってるとの報道。その後、男性は中国当局に拘束されていたが2週間後の8月22日頃に釈放され、香港に返されたことが判明した。香港情勢で中国に批判的なイギリスを牽制したものと思われる。

 「"今、現場で調査しなくてどうする!"香港デモを動画レポートした中国人弁護士、中国で一時行方不明に」というインターネット記事が8月22日に掲載された。北京を拠点に活動する弁護士の陳秋實さんが、香港デモの現場を「取材」し、その動画をネット配信し、中国本土に戻った後、連絡がとれなくなっていた。その後 当局に一時拘束されて取り調べを受けていたことが判明。釈放されて家族のもとに戻ったと報道されていた。

 「主張に関わらず対話よびかけ」「私たちがやらなくてどうする」「香港の問題は、法律に関する問題でもある。法律に携わるものとして、世界中でも最大規模の法律に関わる衝突が起きている今、現場に来て調査しないでどうするか?私たちがやらなくてどうするか?」「2019年の夏、香港で何があったか?‥‥‥いつか子供にそう聞かれたとき、何も答えられないのが嫌なんだ‥‥」「建制派(中国政府支持)でも民主派でも構わない。ちょっと座って私と話しましょう」と呼びかける動画、「デモ参加者の大多数が平和的・理性的・非暴力などを掲げる"和理非"だ。一方で暴力的な手段を厭わない"勇武"もいる」とレポートする動画などの陳さんの言葉が 身に心に沁みる。

 この動画が中国本土に配信されると、「圧力が物凄い。公安局・司法局・弁護士協会・弁護士事務所の全てから電話がかかってきた。"これ以上政治的に敏感な場所にいてはいけない。帰らないようなら誰も君を守ってくれないぞ"と云われた」と明かす陳さん。そのうえで、所属する弁護士事務所の上司などに責任が及ぶ可能性について、「私は誰にも告げずに一人で香港に来た。誰かが巻き添えを食らうのを望んでいないからだ。」とも語る。

 「デモ参加者が問題視しているのは警察の業務執行が合法的かどうかだ。立法委員(国会議員に相当)の選挙が正しく行われているかだ。香港返還時の中国とイギリスの共同声明が遵守されているかだ。これはいずれも法律上の問題だ。香港を巡る問題の本質は政治ではなく、法律の問題なのだ。」と語る陳さん。彼こそ、この香港問題の情勢下で、中国大陸に住む中国人としての「勇気ある英雄」のような気がする。こんな人もいたんだと感嘆する。

 8月中旬に、一連の香港問題での香港政府(林鄭月娥)や中国政府を強く支持するという声明を出した超有名俳優が二人いる。一人は成龍(ジャッキー・チェーン)だ。かれは、ずっと以前から「中国共産党政権支持」を強くアピールしている人物だ。このため、台湾や香港の人々の多くから忌み嫌われている。最近では昨年度の東野圭吾原作「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(中国映画)に主演したり「ポリスストーリー」の主演として中国本土人には人気が高い。中国政府からの覚えもよく、富豪でもある。香港出身なので、「香港の心を裏切った男」とも言われる。

 かって若い頃、アジアの歌姫・テレサテン(台湾出身)と恋人関係にあったが、価値観の相違(〇〇門事件や台湾統一問題など)から別離となった。〇〇門事件への中国政府の対応を批判し、1996年の台湾進攻の際に、台湾軍の国防服に身を包み防衛軍を訪れたテレサ・テンは、1990年以降永らく彼女の歌は放映が禁止されていた。

 もう一人は、私にとってはとてもショックなことだが、中国の超有名女優の一人である劉亦菲(リュウ・イーフェ)。私の憧れの三大中国(台湾や香港出身を含む)女優は、章子怡(チャンツィ)38歳と林志リン44歳と劉イーフェ32歳の三人だ。劉は2020年に公開を予定されている「木蘭(ムーラン)」実写版の主演女優として、今撮影の真っ最中。この映画を楽しみにしていただけに、彼女の「香港デモに参加している香港市民は恥を知りなさい」発言はとてもショックだった。

 恒例の毎年8月に秘密裏に開催される、中国共産党政権中枢チャイナセブンメンバーと党長老たちとの「北戴河」会議が終了した。ここでは、現執行部の方針を長老と共に討論し、今後の方針が確認されたのだろう。米中貿易戦争を巡る問題とともにこの香港問題についてもおおまかな方針が確認されたものと思われる。10月1日から7日は、中国は「国慶節」となる。中華人民共和国成立の1949年から70周年を迎える10月1日。この日までには、中国政府としては香港の鎮静化を図りたいと考えていることは間違いない。

 とすれば、この9月の初めころには、香港では鎮圧部隊とデモ隊との大きな衝突が考えられる。「反送中法(反逃亡犯条例)」に反対する大規模なデモを再び起こすことも予定されている。

 チベット問題化、ウイグル問題化、〇〇門事件問題化が懸念されている香港。私は中国に暮らしているだけに、尽きない日々の「拘束の恐怖」というものがよくわかる。反対デモに参加している多くの香港人の気持ちがよくわかる。

 トルコは中国のウイグル政策について「人類にとっての大いなる恥」と批判声明を今年の2月に出した。マレーシアの首相も中国のウイグル政策に批判声明をだした。だが、アジア圏においては、これは少数派。

 今年7月の国連人権理事会において、欧州連合(EU)各国や、オーストラリア、カナダ、日本、ニュー―ジーランドは、ウイグル問題に関する中国政府の対応を批判する文書に署名、一方で、ロシア、サウジアラビア、ナイジェリア、アルジェリア、北朝鮮、ミャンマー、フィリピンなど37か国は署名を拒否し、「われわれは、人権の分野における中国の顕著な成果をたたえる。テロリズムや分離主義者、宗教の過激主義が、新疆ウイグルの全ての民族に多大なダメージをもたらしていることをわれわれは留意している」との声明を出した。

 8月26日の朝日新聞は、「香港 警察官家族もデモ―政府と市民の板挟み」の見出し記事。「約400人が参加したこのデモ、警察を矢面に立たせたまま、混乱を収拾できない香港政府への警察内部の不満を、家族が代弁した形だ」との報道。そして、ついに8月25日には警察側が実弾をデモ隊の上に向けて(空に向けて)発砲をした。

 デモ隊との衝突が激しくなればなるほど、中国軍指揮下にある武装警察軍が、鎮圧に乗り出してくる可能性は高くなる。8月7日には、香港と澳門(マカオ)を管轄する中国政府側政庁の長官が、香港デモについて「暴動・動乱である」との声明を出した。198〇年の〇〇門事件の時も同じように鎮圧・弾圧・虐殺が行われた6月▭日の1か月前に、「動乱・暴動」との声明を出していた。鎮圧にあたって、この「声明」を出して、デモや集会参加者を怒らせ、過激化させて、「だから鎮圧しました」と国内外に声明を出すのが、中国共産党政府の常套手段と言うか、一種の戦略でもある。

 ◆私のこのブログは今回で995回目かな。もうすぐ1000号だ。今年の6月18日に、中国国内では私のブログは当局より閉鎖された。大学の夏休みのため今はまだ日本に帰国してこのブログを書いているが、8月30日に再び大学での教員の仕事のために中国に戻る予定だ。自身のこのブログは閲覧もできなくなる。身の危険も心配となる。香港人の「反送中法案」の気持ちがよくわかる。