亜熱帯気候の中国福建省の夏は、5月上旬から始まり、10月下旬に終わる。その半年間、大学構内は日傘の花が咲き続ける。特に暑いのは6月・7月・8月・9月の4カ月。最高気温平均は35度を超す。湿気も日本の京都の夏の2倍ちかくを感じることなり、この季節を中国語では、「悶熱」(メェンロー)、つまり悶絶するような"湿気もすごい暑さ"と表現する。日本では「蒸し暑い都市」の代表的な京都が涼しくも感じる「悶熱」なのだ。(中国福建省福州市は、中国の省都で最も暑い都市と報告されている。)
大学構内のバナナの木は、1年に3度も実がなる。4月、7月、10月に。デェイゴの真紅の花は5月に開花し始める。ブーゲンビリアはほぼ10カ月間、ブーゲンビリアは夏の半年間咲いている。
2年半あまり中国に戻っていないが、大学構内の自分の研究室の部屋、自宅アパートの部屋は今、どうなっているのだろう。
―学生発表より、前号の続き―⑯「日本の音楽と広東語流行歌曲のつながり」、⑰「日本の女性雑誌と中国」、⑱「日本の妖怪」
⑲「日本の住宅」、⑳「日本酒」、21「月の異名」
22「狐のお面/日本文化」、23「日中のお風呂事情—違う3つの特徴」、24「日本の茶道文化」
25「日本の和服文化」、26「平成時代の思い出」、27「かるた(歌留多)」
28「日本の酒文化」、29「『雪国』を紹介する」、30「日本神話の起源」
31「旧日本帝国海軍のいろいろ」、32「日本酒文化」
—「日本文化名編選読」(全15回/90分×15)の講義について―
2017年より閩江大学でこの講義を担当するようになり6年目となっている。講義で使う教科書はない。大学より「自分で考えた講義プランでやってください」と言われている。1年目は「どのような講義プランを作ったらいいのか?」相当に悩み、調べ、考え、そして現在に至る講義プランの原型を作っていった。
全15回のうち、9回分は、日本文化を理解するための基礎文献の学習だ。いわゆる日本文化論に関する「名著」といわれている書籍についての学習。どのような書籍を学ばせるのか。とても参考になったのが三つの本。『原典 日本文化論』(王秋菊編著)[北京大学出版]、『日本文化論の名著入門』(大久保喬樹著)[角川選書]、『日本文化論の系譜—「武士道」から「甘えの構造」まで』(大久保喬樹著)[中公新書] そして、6回分は、日本のさまざまな諸文化についての学習や学生発表など。基礎文献を学習した後に、諸文化を学習すると、「なぜ、そのような文化が生まれたのか?」が学生なりに考察できてくる。
1、1回目〜6回目の講義(基礎文献の学習❶)—(講義についてのガイダンス)、「日本の風土(自然環境・民族性)とは」「日本民族とは」「日本の国とは」
<基礎文献>①『風土』(和辻哲郎著)、②『東洋の理想』(岡倉天心著)、③『水と緑の国、日本』(富山和子著)、④『武士道』(新渡戸稲造著)、⑤『菊と刀』(ルース・ベネディクト著[米国人])、⑥『タテ社会の人間関係』(中根千枝著)
2、7回目〜9回目(基礎文献の学習❷)「日本文化とは」「日本人の美意識とは」「日本語とは」
<基礎文献>⑦『日本人の生活文化』(郁達夫著[中国人])、⑧『「縮み」志向の日本人』(李御寧著[韓国人])、⑨『陰翳礼讃』(谷崎潤一郎著)、⑩『「いき」の構造』(九鬼周造著)、⑪『ウチとソトの言語文化学―文法を文化で切る』(牧野成一著)
以上11基礎文献➡世界各地の諸文化とは、「その地域・国の風土(自然環境)、そしてその風土や歴史から生まれる民族性」を基礎として諸文化が誕生する。このことを基礎的な知識や体験としてもたなければ、いろいろな諸文化がなぜ生まれたのかの理解はできない。
3、10回目〜13回目(日本の諸文化についての学習—日本と中国を比較しながら、なぜその文化が生まれたのかを考察する)
①「日本の料理文化」、②「日本の衣服文化」、③「日本の建築文化」、④「日本の宗教文化」、⑤「日本人の化粧文化」、⑥「日本人の自然観—生け花・庭園にみる」、⑦「日本人の結婚文化」、⑧「日本の教育文化」、⑨「日本の伝統芸術・伝統芸能文化―茶道・生け花・能・歌舞伎など」、⑩「日本の怪談・幽霊・妖怪文化」、⑪「日本の俳句・短歌という文藝文化」、⑫「日本の技術(匠)文化と日本の商業文化(三方良し)」
4、14回目〜15回目(学生発表)—日本のさまざまな文化についての発表(日本の諸文化①~⑫で取り上げたものや、取り上げなかったさまざまな文化についても学び合う)
■中国で大学教員をしている日本人が、毎年3月に北京に集まり、大学での講義(授業)交流研究会(毎年20人〜30人ほどが参加)をしている。コロナ禍以前の2014年~2019年まで毎回参加していたが、日本文化に関する授業の多くは、日本文化を単発的に説明するだけの講義をしている人がほとんどだ。そこで、私の「日本文化論」の授業に関する取り組みを、学生たちの感想を交えて交流研究会で2018年に報告・発表した。
■日本の大学では、「日本文化論」はどのように授業がされているのかも、かなり調べたが、やはり単発的な文化論講義がほとんどだ。例えば、「日本の音楽史で綴る日本文化論」など。これはこれでだが、日本の音楽分野での文化論にすぎず、日本文化全体の視野がない。これでは、まともな「日本文化論」と言えるかどうか?
■この私が6年間連続で行っている「日本文化名編選読」の授業レベルはかなり高く、難しさもあるとは思うが、膨大な写真資料のPPも作成し、基礎文献について学生が理解しやすいように、具体的な内容を提示しながら講義をしている。おそらく、この講義を15回受講すると、日本の一般大学生よりも、「日本の風土、民族、そして文化」に関する本質は理解できてくるかと思えもするし、日本の大学でもこのような基礎文献の学習のうえに、各諸文化を学習し、「なぜ、その文化が生まれたのか?」を理解する講座(授業)が必要ではないかと思っている。
■期末試験は、8つの説問に関しての論述レポートの提出。提出締め切りは昨日までだったが、提出された学生たちのレポートを読んで、その理解度については、「かなり、よく理解できているなあ」だった。期末試験の解答を学生たちは書くことにより、この授業の内容を整理できてもくる。