彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国政府の「日本人の中国渡航ビザ発給、全面再開」を受けて―私は3月29日、中国に渡航することになった

2023-02-27 05:04:13 | 滞在記

 2023年1月10日、中国政府から突然に発表された「日本人の中国渡航ビザ発給停止」措置。この措置は、超爆発的なコロナ感染が進行していた中国の現状に対して、日本政府が12月下旬から中国からの日本入国者への水際対策の強化に抗議してのものだった。そして、この措置は、日本政府がこの水際対策停止を発表するまで続くだろうと、日本のメディアでは報道されていた。1月12日に、中国政府が発行した、私の「中国工作許可証書」がEメールで届いたが、しばらくは、「中国渡航ビザ申請」ができない(おそらく2月下旬までは)ので、中国渡航も4月になりそうかなとの予想もした。
 

 中国国内での感染状況が落ち着いて、新たな警戒すべき中国国内でのコロナ変異株出現もなければ、おそらく2月下旬頃には、日本政府の中国からの入国者に対する水際対策も停止されるだろうから、「日本人への中国渡航ビザ発給停止措置」も2月末日ころまでは続けられるのではないかと、私も予想していた。

 ところが、中国政府は、これも突然だが、1月29日に「日本人の中国渡航ビザ発給」を再開すると報じた。翌日1月30日付朝日新聞には、「中国ビザ発給を再開―日本への対抗措置を解除」「中国一転―"名より実"対日ビザ再開、経済回復を優先」の見出し記事が掲載された。(■韓国に対しては、この中国への韓国人の渡航ビザ発給の全面再開は2月下旬になっても発表がされていない。)

 1月30日、勤務先の中国の大学から、「中国渡航ビザ発給が再開されたので、ビザ申請を行ってほしい」との連絡が入ることとなった。2月2日、大阪にあるビザ業務代理店に行き、中国渡航ビザ申請を依頼し、その日のうちに大阪にある中国渡航ビザセンターに申請を行った。

 突然の中国渡航ビザ再開にともなって、2月に入ってからの中国渡航ビザセンターでの申請者が多くなり、渡航者の指紋捺印や顔写真の撮影などの予約日がとれたのは、12日後の2月13日午前9時30分からの順番日。そして、2月16日に中国渡航ビザをようやく受け取ることができた。その日のうちに、大阪市内にある中国国際旅行社(大阪支店)にて、航空券の手配を依頼し購入した。

 現在、日本から中国福建省福州市への直行便は、中国廈門(アモイ)航空の成田-福州(毎週水曜飛瀬)の一便しか運航していない。3月29日(水曜日)の便が、残席3席となっていたので、この日の航空券を即、購入した。片道航空のこの日の航空券代金は、約15万円。(昨年は約40万円だったので、それから比べるとかなり安くはなった。でも、コロナ前の2019年までは、往復便で6万円ほど[片道だと3万円ほど]だったので、まだまだ高額だ。) だが、昨年12月上旬に「ゼロコロナ政策」が廃止され、それまでの長い隔離期間(昨年の10月までは、2週間~4週間)がなくなったので、中国渡航がしやすくなった。

■日本政府は、2月中には中国からの日本入国者への水際対策を停止することで調整に入ったと、2月中旬に報道されていた。

■日本には、東京にある中国大使館の他に、日本各地に中国総領事館がある。(札幌・新潟・名古屋・大阪・福岡・長崎の六都市)  中国渡航ビザは、東京をふくめた7都市の「中国渡航ビザセンター」で申請ができる。

 中国政府は、海外への団体旅行許可を2023年2月6日に発表した。3年振りの団体旅行が解禁されたのは20ヵ国。この20ヵ国リストには、日本や韓国は除外されていた。20ヵ国中19ヵ国は、中国の一帯一路政策に覚書をして加盟している国々となっていて、海外旅行への認可もまた、政治外交の手段として使っている。国の選び方も政治的な意図がある。今年に入って、海外から日本に旅行にきている人が増えてきている。中国語を話す中華圏から来ている人たちもよく見かけるが、そのほとんどは中国本土からではなく、台湾・香港などからの旅行客かと思われる。

■コロナ前には運航していた厦門航空の「関空⇨⇦福州」(週に2便)が再開されれば、航空運賃も安くなり、日本と中国との行き来もしやすくなるかとは思うが、そのためにも、早く、中国からの海外団体客の認可国の枠が広がり、日本への団体旅行も認められるようになればいいと願う。こんど、私が、夏休みで日本に一時帰国する2023年7月頃には、状況は変わっているかと期待もしている。

 2月16日の産経新聞(電子版)には、「中国共産党、コロナ対策で"決定的な勝利"主張」の見出し記事が掲載されていた。この記事の内容は、「中国国営中央テレビによると、中国共産党の最高指導部にあたる政治局常務委員会は16日に開いた会議で、中国の新型コロナウイルス対策について、"死亡率は世界で最も低いレベルを保っており、大きな、決定的な勝利を収めた"と主張、3月5日に開幕する全国人民大会(全人代)でも、新型コロナの"勝利宣言"を強調して習近平指導部の成果に位置付ける見通し。同会議では、"人類文明史上、人口大国が感染症の大流行から脱することに成功するという奇跡を起こしたと自賛。昨年末に"ゼロコロナ政策"を唐突に撤回するといった習指導部の判断について"完全に正しかった"と強調した。」と書かれていた。

■昨年12月上旬の突然の「3年間余りのゼロコロナ政策」の廃止、そして12月上旬から2月上旬の2カ月間で、全人口14億人中の11億人(78%)〜12億人(85%)が感染したとされる。そしてコロナによる関連死者数もかなり多かった(一説には100万人〜200万人)と推定される中国。2月中旬になり、国民の大多数の集団免疫がほぼ獲得できたためか、感染はほぼおさまってきているようだ。まあ、上記の「決定的な勝利宣言」は、中国共産党のプロパガンダらしいなあ‥‥と改めて思う。

今もなお世界的に続くコロナ禍だが、2020年1月からこの2023年1月までの3年間、世界の人々は言葉に尽くせないほどの多大な被害と迷惑を受けることとなったのは、どの国の政治・政策のためだったのだろうか…。コロナの起源もまだ闇に包まれたままだ‥。

 2月13日(月)から、私が勤務する中国福建省福州にある閩江大学は2学期(後期)授業が開始された。中国におけるコロナのほぼ収束?により、学生たちは大学に戻り、教室での授業が再開されることとなった。私は、3月下旬の中国渡航日までの約1か月半、日本からのオンライン授業の継続となった。

 もう明後日、今週の水曜日から3月になるが、亜熱帯地方の中国福建省は、2月中旬から春のポカポカ陽気が訪れている。3月中旬の大学構内には、ハイビスカスの花やレンゲ(蓮華)、ツツジ、刺桐(さしきり)、デェイゴなどの花々が開花する。

 4月上旬になると、大学構内の睡蓮(すいれん)も開花し始め、藤の花も開花する。そして、大学構内では日傘(ひがさ)の花が咲き始める。枇杷(びわ)やバナナも収穫され、店先や路上で売られ始める。気温が25度以上の夏日も多くなり、上半身裸の人も見られ始める。そして、5月上旬から10月下旬までの半年間は夏となり、特に6月上旬から9月下旬までは、悶熱(メンロウ)と言われる「悶絶するような暑さと湿気」の日々の季節を耐え忍ぶこととなる。

 「全国的にも蒸し暑い夏の京都」と言われる京都は、中国福建省福州と比べたら、とても過ごしやすく、また、涼しくも感じられる都市でもある。(福建省福州市と沖縄県那覇市とは、同じ緯度にある亜熱帯気候だが、沖縄は島であるため、海風が吹き熱や湿気がこもらない。だが、福州の町(人口700万人)は、海から30kmほどある内陸の盆地にあるため、熱と湿気が停滞、こもりやすく、中国でも「三大火釜」都市の一つとなっている。) そんな中国福建省での生活が、3年ぶりに始まることとなった。

 

 

 


NHKドラマ「ガラパゴス」を見る➋―非正規雇用率4割、そして派遣会社数がダントツ世界一の日本—それを是とする連合・芳野会長とは‥

2023-02-24 06:16:42 | 滞在記

 2月6日・13日に放送されたNHKドラマ「ガラパゴス(前編・後編)」(相場英雄原作)。日本の今の、働く人たちのリアルな真実(派遣労働者など非正規労働者が4割もいる)を描いた社会派ミステリーサスペンス・ドキュメント的ドラマとして、とても優れたドラマだと視聴し思った。

 日本の財界の要望を受けて、この派遣労働者などの非正規労働者を大きく増加させたのが、2000年に発足した自民党の小泉純一郎政権だ。小泉政権は2006年の第5次まで継続した政権だが、「新自由主義」・「規制緩和」の名のもとに、郵政民営化や「労働者派遣法」の大幅改正を行った。小泉首相と、そのブレーンで実行の中心となったのが竹中平蔵氏である。(小泉政権下で、「郵政民営化担当相」「経済・産業相」や「総務相」などの閣僚となる)  新自由主義・規制緩和とは要するに、「働く労働者の権利を緩和(縮小する)こと」「働く人たち(労働者)にとっては、派遣・契約などの身分におかれる人たちが増やされ、生活が常に脅かされる人たちが増やされる」ことにほかならない。

「自民党をぶっ潰す」と選挙向けパフォーマンスでアピールしていた小泉純一郎氏だが、その内実は、「労働者の権利をぶっ潰す」ことに他ならなかった。ポピュリズムで大衆をの不満を扇動し、政権を掌握した小泉氏だが、現在の日本でも、日本維新の会がそのポピュリズムを継承している。

 派遣労働者を企業や会社に斡旋する「人材派遣会社」も急増した。そして、竹中平蔵氏は、何万社もある人材派遣会社の中でも、大手6社の一つである「パソナ ホールディング」の顧問となり、その後、会長職に就任している。竹中平蔵氏は、安倍晋三政権や菅義偉政権でもブレーンとして政権の政策に携わり続けた。

 2000年代に入り、この自民党の労働政策により、非正規労働者は激増し、日本の労働者(2023年現在、約5200万人)の4割超の約2200万人となっている。NHKドラマ「ガラパゴス」で描かれる大手人材派遣会社「ポープネス」森社長(高島政宏)と竹中平蔵氏は、どこかだぶるところがあるとも思った。

 基本的には働く人(労働者)の権利や身分を守るためにつくられた「労働組合」だが、その労働組合への日本における労働者の加入率は、第二次世界大戦終了後まもない、1948年の約56%をピークとして、特に1990年以降は減少の一途をたどることとなった。2023年現在は、約16%に減少している。つまり、10人に1.6人くらいしか労働組合に加入できていない。

 約5200万人の日本の総労働者数のうち、約16%余りしか労働組合に加入できていない日本の現状だが、現在、日本には労働組合の主なナショナルセンターは次の3つ。①日本労働組合総連合会(略称「連合」)約683万人と最も多い。②全国労働組合総連合(略称「全労連」)約75万人。③全国労働組合連絡協議会(略称「全労協」約11万人。④その他 ①②③④の合計は約990万人と、ついに1000万人未満となった。①の「連合」は、立憲民主党や国民民主党を主に支持、②の「全労連」は日本共産党を主に支持するというように、「労働組合」と「政党」との関係がそれぞれにある。①の「連合」は労使協調路線を長年とっていて、この「連合」に加盟している労働組合は、大企業内の労働組合などが多い。

―世界の派遣会社数、日本は世界でダントツに多い国—

 世界で最も人材派遣会社が多い国は日本だ。その会社数は約3万8000社(全世界の約50%)。次いで(2位)はイギリスの約1万社、3位はアメリカの約7000社。日本での人材派遣会社の営業所数は約8万3000か所(全世界の約72%)あり、日本のコンビニ店舗数の約5万6000店よりもはるかに多い。派遣労働者の急激な増加とともに、日本では人材派遣会社及び事業所も急増したわけだが、世界的に見てもこの多さは異常ではあると言われる。日本の派遣会社の中でも、大手6社と言われている会社は次の6社である。(「テンプスタッフ」「スタッフサービス」「パソナ」「リクルートスタッフイング」「アデコ」「マンパワー」、「パソナ」が最もマージン料金が効率と言われている。)

 人材派遣会社は、例えば一人の労働者を企業や会社に紹介(派遣)した場合、そのマージン料として、労働者が派遣先の会社から受け取る賃金の20%台〜30%台をも、人材派遣会社が受け取ることとなる。労働者は働く現場の会社と派遣会社から二重の搾取(さくしゅ)をされることとなる。さらに、ドラマ「ガラパゴス」でも描かれていたが、会社(現場の会社又は人材派遣会社)が、派遣労働者用のアパートを斡旋する。4人〜5人の相部屋のアパート、月のアパート代は4万円余りがとられる。ドラマでは「たこ部屋」とも称されるアパートだが、派遣労働者が得た賃金から法外なアパート代が差し引かれる。ここでもまた搾取される。

 そのような「労働政策」を政財界で一にしてすすめてきたのが、自民党であり、日本維新の会なども、これに同調している。特に、「1億円の壁(1億円以上の年収者に対する税率の軽減)」と言わる現行の「税制」は、国民の格差助長につながっているが、この税制改革(是正)に最も反対する国会議員の比率は、日本維新の会が最も多い。つまり、自民党と日本維新の会は、国民の格差是正に反対している政党である。

 このような「格差是正」「労働者の権利と生活を守る」という組織使命をもっているはずの「労働組合のナショナルセンター」のはずだが、「連合」は数十年にわたる「労使協調」路線をもつため、これらの問題に対する自民党政治への要求は歴史的に弱い。それでもやはり労働組合のナショナルセンターだから、それなりの要求はしてきてはいた。
 ところが、2021年に「連合」会長に初の女性会長・芳野友子氏(56歳)が誕生して以降、芳野氏は「反共産党」「親自民党」を公言してはばからず、自民党幹部たちとの会食を重ねて、「私はここまで偉くなったのよ!」と嬉々としている姿ばかりが報道されてきている。
 「週刊文春」の2月23日号には、「"自民党支持になっちゃおうかな"芳野連合会長が陥った共犯関係」と題された記事が掲載されていた。記事内容は、「野党共闘分断」「労働組合のさらなる弱体化と連合組織の自民党支持化」などを狙う自民党のかっこうの相手としての芳野会長であるととらえ、「あなたは偉いよ!」とおだてて、自民党側から「使える女」として「連合ごと」取り込もうとしてる」というもの。

 このような芳野氏のことは、この2年間、インターネット記事でもよく報道され続けてもきた。さすがに、他の「連合」幹部たちも、この芳野氏の「ご乱交」の言動には困りはてているとも伝わる。「姫(お方様)、それはお待ちくだされ‥」という時代劇のような場面だ‥。さすがに、「連合」に参加している労働組合からも苦言が続いている。

 そもそも、芳野友子氏のような、労働組合のあり方にも、日本の労働者のおかれた現状にたいしても見識のない、およそ「連合会長」になるべき器(うつわ)・要素のない人が会長になったのか‥。2021年、「連合」新会長選出を巡って、混乱があり、なかなか新会長が決まらない事態に陥った時、「それなら私がやってもいいわよ!」と手を挙げたのが芳野氏だった。候補にも入っていなかった人物だったが、「初の女性会長もいいかも!?」という流れで、芳野氏が会長に安易に決まってしまったのだ‥。選出してしまった他の「連合幹部」たちも、その後の後悔は後の祭りだった。いったい、この芳野友子氏とは、どんな人物なのか‥。

 ―芳野友子とは?―生まれた年だけは分かっていて現在56歳。誕生日は明らかにしていない。結婚しているのか、子供がいるのかさえも、秘密のベールに包まれている。おそらく、結婚はしていない可能性が高いとされている‥。高校卒業後にミシンメーカーの「JUKI」に就職、19歳の時にこの会社の組合に配属され、事務方の組合専従職員となった。

 そして、20歳代の前半に、「富士社会教育センター」(当時の「民社党」の党首である西村栄一氏などによって設立。労働者のための教育施設だが、当時の民社党は、かなり自民党に近い政党で、「反共産党」を政策の要諦としていた。)の中におかれた「富士政治大学校」で、「JUKI」労組からの派遣で学んだ。この「富士政治学校」は、「旧統一教会と勝共連合」との結びつきも強かったとされる。ここで芳野氏は「反共思想」の影響を大きく受けたようだ。

 高校卒業の彼女にとって、大卒には負けないという自負は強かったのだろうか…。まともな労働運動の考えもあまり身に付けないまま、2021年に「棚ぼた」で手中にした「連合会長」という地位に、狂喜乱舞したにちがいない。「私は高卒でここまできたのよ!」と‥。政権を担う自民党からちやほやされ、「私ってこんなに偉くなったのよ‥」と、日本の労働者の置かれた状況をどう改革していくのかということも考えず、ただひたすら、「労働組合が日本共産党を支援することはあり得ない。立憲民主党が日本共産党と共闘することはあり得ない」と絶叫する姿は、自民党や財界にとっては、歴史的にもこれほどありがたい「連合会長」は他にないだろうと思われる。

 創立100周年となった日本共産党。「党内民主主義」の大きな弊害となっている「民主集中制」を巡る問題などに揺れている今。日本の労働者の権利向上や賃金上昇、税制改革による格差の是正など、これらの課題は、このことを最もまともに政策課題にとりあげている日本共産党の存在と発展、国民の支持増大はとても重要だ。だが、「民主主義政党」になるための具体的な方向性は、いまだ見えてもこず、『シン・共産党宣言』を著した現役党員の松竹伸幸氏を除名処分とした。そして、野党共闘の要(かなめ)である立憲民主党は日本維新の会との野党共闘に軸足を置いてきている。

 上記写真は、左より、①山添氏、②清水氏、③辰巳氏、④福山氏

 このような労働者の置かれている日本社会の現状下、日本共産党が「民主主義政党」になるための改革は、今後の日本社会のためにもとても重要なキーポイントとなる。もう、「松竹氏の除名は当然」と言明している日本共産党の志位委員長や小池書記局長、6人いる副委員長の筆頭である山下副委員長、田村副委員長などは、これらの改革をなす人材ではなくなったようにも思える。いまだ、日本共産党に影響力をもつとされる不破哲三氏(93歳)などは、現在の執行部にかわる新たな人材を考えてもいるとも一部伝わる。例えば、東京選挙区で当選した山添拓氏(38歳)などだ。彼は、現在、日本共産党の常任幹部会(26名)の一人ともなっていて、政策委員会の副委員長。(日本共産党―最高幹部会である「常任幹部会」は26名で構成。次の「幹部会」は64名で構成。中央委員会は193人で構成。准中央委員は28名で構成。)

 私が暮らす関西の京都や大阪には、将来的に期待もできる若手の立憲民主党の国会議員や元国会議員などが数名いる。京都選挙区では、立憲民主党の現在の代表である泉健太氏がいるが、最も私が期待しているのは、前幹事長だった福山哲郎氏や山井和則氏ら。また、日本共産党の大阪選挙区では、元国会議員だった清水ただし氏や辰巳孝太郎氏など。辰巳氏はこの春の大阪府知事選挙に出馬予定だ。共産党が「民主主義政党」となり、国民の信頼が高まる政党と変革できることが将来的になることを期待したい。

 

 

 


NHHドラマ「ガラパゴス」(前編・後編)を見る❶―非正規労働者の割合が4割の日本社会、その問題に迫る骨太ミステリードラマ、原作者・相場英雄さんのこと

2023-02-21 09:55:50 | 滞在記

 2023年1月29日(日)の「しんぶん赤旗(日曜版)」(日本共産党発行)」、NHKドラマ「ガラパゴス」についての番組紹介が特集で掲載されていたので、この記事を切り抜きにして、冷蔵庫に貼り付けておいて、このドラマの放送日(2月6日前編、13日後編)を心待ちにしていた。新聞の紙面には、「NHKドラマ"ガラパゴス" 社会矛盾に迫る骨太ミステリー」「非正規雇用と産業構造のゆがみ―理不尽乗り越える力強さ」「谷口卓敬プロデューサーに聞く」などの見出し記事の言葉。

 このドラマの原作者は、作家の相場英雄(あいばひでお)さんだ。何年か前に原作である『ガラパゴス(上・下)』を読んだことがあり、とても優れた、また、読者を魅了するミステリー文学作品だと感嘆した。相場さんが書いたミステリー文学作品の多くは、ミステリーというより、ドキュメント的な、今の日本社会で起きている社会の問題・矛盾・悪を、ミステリードキュメント的に書かれている作品が多い。しかも、一気に読ませるだけの筆力の物語の展開、面白さをもっている。

 ドラマ「ガラパゴス」の前編と後編を視聴した。主人公は、警視庁捜査1課継続捜査班の刑事・田川信一(織田裕二)とその相棒の刑事で鑑識課の刑事・木幡祐香(桜庭ななみ)。5年前に自殺とされた身元不明の青年(満島真之介)の死の真相を追うところからドラマは始まる。その過程であぶりだされるのは、非正規雇用の劣悪な労働実態と"ガラパゴス"化した日本の産業構造のゆがみ。ミステリーでありながら、社会の矛盾に迫る骨太のドラマだった。

 ドラマでは、大手派遣労働会社や大手自動車会社・家電会社なども描かれる。大企業は雇用の調整弁としての人材派遣を、特に2000年代に入って活用してきているようすも描かれる。ドラマでは、大手人材派遣会社「ホープネス・フォールディング」の森社長(高嶋政宏)や、この会社と癒着している警視庁捜査第一課の鳥居刑事(伊藤英明)らも‥。そして、派遣労働者の生活実態(たこ部屋のような4〜5人同居の部屋、家賃1か月一人4万円)や、派遣労働会社のピンハネ(給与の3割余り)の実態なども描かれる。

 派遣労働者として働きながら、大手自動車会社の自動車製造における安全性に関わる不正の実態を知ったため、そのことをインターネットに匿名で告発したために、派遣会社や大手自動車会社の系列会社の正社員となることをもちかけられ、彼を青酸カリ自殺に見せかけて殺害した二人の同僚(上地雄輔など)たち。殺害された派遣労働者の仲野定文(満島真之介)の故郷は沖縄県の宮古島。仲野の遺骨を祖父らに届けるために島に向かった刑事の田川と木幡、宮古島の浜辺で、「ふつうに仕事して ふつうにめしが食えて ふつうに家族とすごして そんなあたりまえのことが 難しくなった世の中って どこかくるっていないか‥‥」と木幡に語りかける田川。

※大企業のCM契約を気にしなくてもよいNHKだからこそ、つくれた、日本の真実に迫れたドラマでもあるかと思う。このドラマを制作した谷口プロデューサー(これまでに、「ゲゲゲの女房」「七つの会議(池井戸潤原作」などをプロデュース)にも敬意を表したい。このドラマに主演した織田裕二さんは、「このドラマを見て胃が痛くなるかもしれない。ただ、これほどわかりやすく、今の日本の問題点をあぶり出してくれる作品はないだろう」とコメントしている。

 ―「平成・令和版『蟹工船』」とも評判の高いこのドラマ「ガラパゴス」の原作者・相場英雄さんのこと―

 1967年生まれの相場英雄さん(56歳)。新潟県立三条高校卒業後、外国語専門学校にすすむ。その後、1989年に「時事通信社」に入社。2005年に作家デビューをしている。以前に彼のインタビュー記事を読んだとき、今の日本社会が抱える問題や社会の闇に斬り込むのに、記者では限界を感じ、ならば小説で描こうと小説家になった‥とあった。

 ―原作の題名「ガラパゴス」の意味—

 ドラマの中で、派遣労働者の仲野は、「俺たちはガラパゴスの最前線に置かれているんだよな‥」と、会社を告発する匿名の発信のツィートで語る。このドラマや原作で使われている「ガラパゴス」の意味とは‥。ここでいう「ガラパゴス」とはビジネス用語の「ガラパゴス化」のことで、「市場が下界から隔絶された環境下で独自の発展を遂げ、その結果として世界標準の流れからかけ離れていく状態」を揶揄(やゆ)する表現である。ガラパゴス諸島の生物は長い間この孤島に外敵が侵入してこなかったため、淘汰されずに独自の進化を遂げ、固有種となったものの生存競争力に乏しく、19世紀に外来種が侵入し始めて以降、種の存続が危ぶまれる事態にたち至った。

 「技術立国、MAID IN JAPAN」の国として、1960年から2000年までの40年間は、世界を風靡した日本の産業界・経済界だった。しかし、中国などの新興国などの技術力の向上などにともない、2000年代に入っても家電製品やアイデアなどが、日本独自の機能やサービス、制度などにこだわった結果、海外では受け入れられなくなっている状態のことを「ガラパゴス化」と揶揄される。例えば、シャープの亀山モデルなどの液晶テレビは、高精細、高機能を求めたが、中国やアジアでの新興国では、購買層がそこまでのハイスペクトを求めなかった。画像再生の品質があまり変わらなければ、安い新興国のメーカーの方が売れるのは当然で、海外市場で日本のメーカーは取り残されることとなった。

 このため、商品の値段を下げて高品質のものを売るなどの戦略をたてることや、商品の品質を下げて(偽装)制作するなどの戦略をたてることも起きてきた。雇用の調整弁としての派遣労働者は、人件費ではなく「外注加工費」とも呼ばれることに‥。「ガラパゴス化」した日本の産業構造の歪みと働く人たち(労働者)の多くが、この「ガラパゴスの最前線」に置かれることとなったため、この原作名は「ガラパゴス」と名前がついている。

 ―相場さんの作品群―

 私が初めて相場さんの作品を読んだのは『震える牛』。BSE問題(牛海綿状脳症に関わる食品偽装に関する社会問題)を扱った作品だった。その後、『血の轍』『血の雫』、『アンダークラス』なども読みすすめてきている。いずれも、社会派ミステリーのドキュメントミステリー作品には魅了されてきた。現代の作家では、とても優れた作家の一人かと思う。

 

 

 

 


「赤旗日曜版」に掲載された「松竹氏を巡る問題」の志位委員長会見内容に疑問を呈する‥―有田芳生さんのこと

2023-02-19 20:52:18 | 滞在記

 今回の現役共産党員である松竹伸幸氏の新刊著書『シン・共産党宣言』(文春新書)の内容の中での、「①党首公選制の提案、②安全保障・外交政策などに関する提言」を巡って、日本共産党が松竹氏に対し党規約違反を挙げて党除名処分としたことに対する一連の問題。この問題の本質というか、最も大事なことは、「党規約違反云々(うんぬん)」ということではなく、松竹氏の「党首公選制の提案」にあるように、日本共産党の「民主集中制」という非民主的な党規約、非民主的な党の体質改善に関する問題、つまりは日本共産党が「民主主義政党」となるような改革を求める問題である。

 朝日新聞は2月8日付で「共産党の除名―国民遠ざける異論封じ」と題された社説記事を掲載、毎日新聞は2月10日付で「共産党除名―時代にそぐわぬ異論封じ」と題された社説記事を掲載した。朝日新聞はさらに2月16日付で、「民主集中制という呪縛」と題された社説記事を掲載した。この社説を執筆したのは、朝日新聞国際社説担当の村上太輝夫氏。村上氏はこの社説記事で、「‥だが、日本の民主政治は、党の論理を国政に浸透させている一党支配体制(中国などの国)とは違う。党外の市民に理解と支持を広げなくてはならない。そこに日本共産党が直面する困難があるように思われる。」と述べている。

 産経新聞も2月14日付で、「共産党の除名騒動 危うい強権体質が露わに」と題された社説記事を掲載した。この記事では、「‥もう一つ明確になったのは、現実的な安保政策への転換を求めた松竹氏を除名したことで、(日本)共産党の日米安保(条約)廃棄路線がより固定化されたことである。それでも立憲民主党など野党が(日本)共産党と共闘するかどうかは、‥‥」とも書かれていた。

 いずれにしても、今回の松竹氏への除名処分の決定は、日本共産党の志位委員長ら幹部会が切望している今後の共産党と立憲民主党などとの「野党共闘」のさらなる実現をより困難な事態に陥らせたことは明白だし、4月に行われる統一地方選挙にも「さらなる党勢の衰勢」へと向かわせることになる可能性は大きくなったと推測もされる。

 朝日新聞の書籍紹介紙面には、「週刊文春2月23日号」で、「批判者は粛清 志位共産党に現職議員たちが反旗」と題された記事があることが掲載されていたので、コンビニで購入して読んでみた。日本共産党の地方議員(市会議員)など数名が、今回の松竹氏除名処分の党の決定という事態に対し、離党届を自ら提出したり、ツィターで志位執行部を批判しているなどという内容であった。

 今日、2月19日付の「赤旗 日曜版」で、これらの一連の問題に対する日本共産党の見解が、2面にわたって大きく掲載されていた。この記事内容が、現在における日本共産党志位執行部の見解の限界なのだろう。この記事には、まず、憲法学者で慶応大学名誉教授の小林節氏の談話が掲載されていた。談話内容は、「除名問題に強まるパッシング 看過できない―憲法の"結社の自由"を侵害」「大軍拡批判せず共産党攻撃に走るメディア―野党結束が必要な時に(共産党)非難—結社は内部規律に関する自治権をもつ」などという見出し記事。

 この中で小林氏は、「規約に反した行動をとったわけだから、除名されるのは当然であり、政党は内部規律に関する自治権をもつのだから、このことで日本共産党を批判する朝日・毎日・産経などのメディアは間違っている」としている。だが、「民主集中制」に対する是非の見解は一切語っていなかった。問題の本質はこの是非にあるのだが、これについては語らずじまい‥。どんなに大きな改善すべき問題があろうとも、「それは、政党の自治権で保障された問題だ」というのが小林氏の見解なのだろう。

 「松竹氏をめぐる問題Q&A 志位委員長の会見から」の特集では、①「松竹氏の除名処分についての考えは?」のQに関して、志位氏のAは、「異論を持っているからではなく、党攻撃を問題にしている」「結社の自由という角度からとらえていただきたい」と題して回答。②「もう少し話し合いはできなかった?」のQに関して、志位氏のAは、「手続き上も除名という判断が適切だった」と題して回答。

 ③「朝日の社説を批判するのは?」のQに関しては、志位氏のAは、「日本共産党の自主的・自律的な決定に対する外部からの攻撃」と題して回答。「朝日の社説は、結社の自由をどう考えているのかと思います」と批判回答。④「党首公選制の提起について」のQに関しては、志位氏のAは「日本共産党がとっている党指導部の選出方法が、一番民主的で合理的」と題して回答。「私たちは、日本共産党がとっている党指導部の選出方法が一番民主的で合理的だと考えています。第一に、個人の専断を排し、集団指導によって党運営をやっていくうえで、一番合理的だと考えております。

 第二に、派閥や分派をつくらず、国民に対して公党として統一的に責任を果たしていくうえで、一番合理的だと考えております。第三に、もともと日本共産党というのは、ポスト争いとは無縁な党です。"私が、私が"とポストを争ったりするような党ではないんです。‥‥‥。ですから"党首公選制"なるものは合わないんです。‥‥」と回答。

■この小林氏や志位氏が述べていることは、まず、①「民主集中制」などの党の規約や党則は、「政党に保障された訣社の自由の一つ」であり、このことを外部のメディアなどが批判することは論外であるあるという主張である。党の党則であっても、その党則の問題が大きければ、また時代にあまりにもかけ離れ、解離しているならば、党員の発言の自由や人権を保障するためにも、そのことを自由にメディアは批判することは当然のようにも思うのだが、どうなのだろうか。

②志位氏の「党首公選制」をまっこうから、なにかわけのわからない、子供だましのような言い方で、しかも、「日本共産党とっている党指導部の選出方法が一番民主的で合理的」と、まあ、民主的の実態・実情とかけ離れていることをぬけぬけと「一番民主的」と言い切るところなど、この人は、いったい「民主的」といいことをどのようにとらえているのか、疑問を呈したい。志位氏が「自由と平和 ひとすじにつらぬく 日本共産党」と書かれたポスターを持つ姿に、今の日本共産党を、とても悲しく憂う‥。

■余談だが、最近『希望の共産党―期待を込めた提案』(あけび書房刊)や『日本共産党100年—理論と体験からの分析』(あけび書房刊)の書籍の共著者となっている有田芳生さんとは、学生時代に、京都北白川に下宿していた立命館大学の学生であった片岡さん(私の友人でもあり、有田さんの友人でもあったのが片岡さん)の下宿の部屋で有田さんを交えて酒を酌み交わしながら親交をもったことが何度かあった。

 有田芳生さんは、当時、立命館大学経済学部の学生であり、京都社会科学研究会連合会(略称:京都社研連)の委員長でもあった。京都社研連は、京都市内にある主な各大学(京都大学・同志社大学・立命館大学・龍谷大学など)にある「社会科学研究会(サークル)」の連合体組織。そのトップにいたのが有田さんだった。もの静かな風情の中に、理路整然と語る有田さんの姿は、私にはとてもすごい人だなあと感心させられてしまう学生だった印象は今も強い。有田芳生さんは、卒業後に東京の出版社(日本共産党系の新日本出版社)に勤務することとなった。後に知ったことだが、18歳の時にすでに日本共産党に入党していたようだ。

 その後、彼が新日本出版社で企画した書籍が問題視され、共産党から査問(さもん)され、新日本出版社を退社させられることとなった。退社後に、フリーランスのジャーナリスとなり、統一教会の霊感商法問題やオウム真理教の問題などにも携わり、テレビの報道番組などにもその後、コメンテーターとしてよく出演するようになった。そして、日本共産党がより日本国民の支持が広がるための企画として、加藤周一氏らと共同して、日本共産党への各界著名人の提言をまとめた『日本共産党への手紙』1990年(教育史料出版社刊)を手掛ける。私もこの書籍を購入して読んだが、なかなかに優れた書籍内容だった。だがこの企画を日本共産党の不破委員長らは問題視し、再び査問と自己批判を要求され、日本共産党からの除籍処分とされた。

 彼の父の有田光雄氏も彼の母も、熱心な日本共産党員としての活動家で、有田光雄氏は、鳥取農林専門学校(現在の鳥取大学)を卒業後、農林省に勤めたが、1951年にレッド―パージを受けて農林省を解雇された。だが、1952年には、京都府庁に就職できることとなり(おそらく府庁の農林課)、京都府北桑田郡京北町で有田芳生さんは1952年2月に誕生している。私と同年の生まれだが、学年は一つ上だ。この「芳生(よしふ)」という名前は、ソ連共産党のヨシフ・スターリン書記長からとられた名前のようだ。その当時、父の有田光雄氏はスターリンのことを偉大な革命家と尊敬をしていたのだろう。 

 その後、光雄氏は、京都府職員労働組合の書記長や立命館大学経済学部の講師になども歴任し、京都府共産党委員会の副委員長についた。1979年と80年には、国政選挙に出馬したが、当選とはならなかった。有田光雄氏の演説は何度が聞いたことがあるが、「有田光雄でございます」と冒頭で語りかけるようすは、歌手・三波春夫の「三波春夫でございます」という冒頭の語りかけとよく声も似ていたのが今も印象にのこる。

 息子である有田芳生さんは、2010年に「民主党」から選挙(比例)に出馬することとなった。その後、民主党の流れをくむ「立憲民主党」から選挙(参院比例)に出馬し、参議院議員として6年間活動することとなった。昨年度の参議院議員選挙でも、立憲民主党の比例候補となったが、立憲民主党の選挙戦での得票率の減少により、議席には残念ながら届かなかった。そんな有田芳生さんだが、父や母の日本共産党への熱い思いを見て育った影響か、「日本共産党」の民主的改革に関しては、今もなお熱い情熱を持っているようだ。

 彼とは、学生時代に会って以来、会ったことはないが、最近ではまた「統一教会問題」で、テレビの報道番組で見かけることも昨年の秋にはよくあった。機会があれば、一度再開して一献の酒を酌み交わしたいとも思う人だ。世に知れ渡る冷酷な独裁権力者であったヨシフ・スターリンのヨシフ(よしふ)だが、有田芳生(よしふ)さんの方は、スターリンとは真逆の人間尊重の政治家・ジャーナリスト「よしふ」として、この2月には71歳となったのかと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


衰勢著しい日本共産党の現状と、「民主集中制」を「呪縛のように維持しつ続ける」ことの悲しきなぞ‥。

2023-02-19 15:28:55 | 滞在記

 政治を巡る政策の問題は多岐にわたるが、私は「①働く人たち(労働者)の立場を守る課題に対する政策と、②国際情勢に基づいた安全保障政策や外交政策」の二つが、最も重要な政治課題であると考えている。他に、教育・福祉政策などなど、政治が執り行う課題はとても多いが‥。

 日本には現在、自由民主党・立憲民主党・日本維新の会・公明党・日本共産党などの主要5政党の他に、いくつもの政党がある。私は、とても政治的に重要な二つの課題に対する各政党の基本政策を巡って、例えば自由民主党のこの部分の政策は支持する、日本共産党のこの部分の政策は支持するなど、是々非々の立場で日本の政党を見ていてるわけだが、①の「働く人たち(労働者)の立場を守る」ことや「所得格差の是正」(つまり貧富の差をなくす)政策を巡っては、日本共産党の政策を最も支持している。

 そして、②の安全保障の政策を巡っては、日本共産党の「憲法九条を守れ」には共感するが、現実の国際情勢を踏まえての自由民主党の安保・外交政策が、より現実的な日本がとるべき基本政策だとも思ってもいる。この政策課題に立ち向かい苦悩する日本共産党員の松竹伸幸氏の書いた『改憲的護憲論』(集英社文庫・2017年刊)は、なかなか優れた労作であると思ってもいる。

 私は1979年から京都府の学校の教員になり、京都府下南部の綴喜地方(現在の八幡市・京田辺市・井手町・宇治田原町に32余りの公立学校があった)の教職員組合の副委員長(2年間)や委員長(4年間)[1980年代当時の組合員組織率は80%余りで、組合員数は1000人余り]なども経験する中で、日本共産党の教育政策や労働問題政策などにも共感することは多々あった。そして、日本共産党の機関紙である「赤旗日曜版(日刊紙ではなく毎週日曜日付で刊行されている新聞)」や京都府共産党委員会の影響下にある「京都民報(毎週1回の日曜日に刊行)」をこの40年間余り定期購読し続けてもいる。

 このような私には、現在も日本共産党員として在籍し、党活動を行っている友人たちもけっこう多く、よく居酒屋などで酒を酌み交わしたりすることも多いし、政治談議などもよくする。(私は共産党員ではないが) だからこそ、日本共産党がもっと日本国民に受け入れられ、賛同され、支持が増えることを願ってもいる。

 ①の「労働者の立場・生活を守る」の政策では、日本共産党の政策が最も支持できるからだ。特に、2000年代に入ってからの自由民主党の小泉純一郎内閣下の「労働者派遣法」の施行以来、日本の労働者の非正規雇用者数は現在40%以上にものぼっている。このことの是正を強く政策的に主張しているのが日本共産党だからだ。一方、このことや、税制改革による貧富の差是正に最も消極的な政党が実は「日本維新の会」である。

 現在、自由民主党と公明党は連立政権を組んでいる。それに対する野党共闘は、➊「立憲民主党・日本共産党・社民党・政党れいわ」を中心とした野党共闘と、➋「立憲民主党・日本維新の会・国民民主党」を中心とした野党共闘の構想があるが、現在は日本共産党を除外した➋の方が優勢を呈している。だが、①の「働く人たちの立場・生活を守る」(非正規雇用の本格是正)や「税制改革と貧富の差是正」に関しては、➊の野党共闘の実現が必要となる。

 だからこそ、日本共産党の「党内民主主義」の実現のために、非民主的な「民主集中制」の改革は必要不可欠なことだと思う。日本共産党の党内改革により、より日本共産党が日本国民にとって、魅力的なものになることは、日本国民の生活にとっても重要なことだと考えるからだ。

 現在の世界で、「民主集中制」という組織原則を維持しているのは、一定の政治的影響力をもつ政党でいえば、世界で次の7党のみである。「一党独裁型社会社義国の中国(中国共産党)、ベトナム(ベトナム共産党)、ラオス(ラオス人民革命党)、キューバ(キューバ共産党)、北朝鮮(朝鮮労働党)」と、「資本主義国の日本(日本共産党)、ポルトガル(ポルトガル共産党)」。

 1989年からの東欧革命とソ連崩壊で、10ヵ国の社会主義国が崩壊し、民主集中制も放棄された。西ヨーロッパのユーロコミュニズムの諸党もこの「民主集中制」を放棄した。1989年イタリア共産党、1991年スペイン共産党、1994年フランス共産党などが「民主集中制」を放棄している。また、イギリス・オランダ・ベルギーの各共産党は解党し、または解党状態にある。また、日本の政党である社民党は、1991年(当時は日本社会党という党名)に「民主集中制」を放棄した。1990年代に入り、西ヨーロッパや東ヨーロッパの共産党の多くは「社会民主主義」政党として再出発しているのが現状でもある。例えば、イタリア共産党は党名を「左翼民主党」と改称し、1996年には中道左派連合の「オリーブの木」と連携し政権を獲得した。

■日本共産党は、「民主集中制」の放棄又は改革を行い、「共産党」という党名の改称も論議すべき時期には、とうに来ているように思われる。これ以上の党勢の衰退をとどめ、魅力ある政党に再生するためにも‥。

■—日本共産党の党勢の衰退や国民の支持離れが留まらない現状―

 ここ20年余りの近年、日本共産党の「党勢衰退」は顕著である。党員数は1990年の約50万人から現在は約27万人と、半数近くに減少。その多くは60歳以上の高齢者の党員が占めている。機関紙赤旗(①赤旗日曜版と②日刊紙の赤旗)の発行部数(購読者数)は、1980年の約360万部から、現在は約100万部にまで減少している。こうした、党勢の衰えが得票数や得票率の低下、獲得国会議員数の減少をもたらしてもいる。ちなみに、ここ6年間だけを見てみると、2016年の参議院選挙の得票数は601万票、得票率10.7%、2019年の参院選の得票数は448万票、得票率は9.0%、そして、昨年2022年の参院選の得票数は361万票、得票率は6.8%と、国政選挙のたびに衰勢してきている。

 このような衰勢の状況が続いていれば、普通の政党ならば、党首や幹事長(書記長)などはその責任をとって辞職するところだが、「民主集中制」のもとの日本共産党では、このような動きが起こらない。反論や反対という意見が、まず起こらないというか、表面化できないというか、そのようなことになるのがこの「民主集中制」の規約だからである。そのような動きをしたら反党分子として処罰を受けることになるからだ。委員長(党首)は、200人余りの中央委員や准中央委員による選挙で選ばれるが、対立候補はなく「信任投票」なので、ほぼ反対票はなく、全員一致となる。反対票を投じたと判明すれば、党から給与を支給されている中央委員らは失職することとに、つなががりかねなくなるからでもある。

 現在の日本共産党の小池書記長(62歳)は2016年より書記長に就任しているので、当然に、この党勢の衰勢を志位委員長と共に問われるべくなのだが、「民主集中制度」のもとでは、志位委員長の支持があれば安泰なのだろう。このような中、最近では党内パワハラ事件まで起こしている。

■現在の日本の主要政党では、党首公選を実施していないのは、日本共産党と公明党だけである。(自民・立憲・国民・維新・社民などは全て、国会議員と党員による直接選挙で党首を選出している。)1964年に結党された公明党は、宗教団体の「創価学会」を母体している宗教政党の側面をもつ。この公明党でさえ、64年の結党以来、その党首は11人となる。最も委員長としての在任期間が長いのが竹入義勝氏の1967年~86年の19年間、次いで現在の山口那津夫氏(2009年より)の13年間となる。

■日本共産党が、いまもなおこの「民主集中制」なる党則・党規を維持し続けようとするのはなぜか?約27万人の日本共産党員に中に「呪縛(じゅばく)」のようにまとわり続けているのはなぜなのか?これはおそらく、1955年以降の約70年間にわたってたった3人だけが代替わりのようにその党内最高権力者として君臨し続けることができ、党内権力を長期に渡り維持しやすいために最適な党則だからに他ならないのではないかと、私には思える。人は一度手にした権力は、なかなかに手放せないものなのだ‥。だからこそ、任期の制限などが、人間社会には必要なことなのだが‥。日本共産党の現状を憂う‥。「民主集中制」維持の悲しき謎(なぞ)でもある‥。