彦四郎の中国生活

中国滞在記

オミクロン株の感染大爆発➋—ピークアウトはいつになるのか?—ワクチン接種を巡って

2022-01-31 14:21:16 | 滞在記

 新型コロナ感染拡大の世界的パンデミックが始まって2年を経過しようとしているが、昨年の12月から始まった新たなコロナ変異種「オミクロン株」の超感染爆発は、この2年間の感染拡大状況をはるかに凌駕(りょうが)し、とどまるところをしらず、最近では世界で連日300万人超の新規感染者数を記録している。

 このオミクロン株は、従来株よりも数倍強い感染力を持つとされたデルタ変異種株よりも、さらにその4〜5倍の感染力をもつことがわかってきている。そして、これまでのコロナワクチン接種の有効性についても、このオミクロン株への防疫有効性はかなり減少することも判明してきている。ただ、肺炎を引き起こす重症化率はいままでのデルタ株よりもかなり低いとされることが唯一の救いではあるが‥。

 今、日本でも、このオミクロン株感染大爆発を抑止するための対策は、コロナワクチンの3回目接種の進展に頼るしかない状況(オミクロン変異種に対する防疫の有効性はまだよくわからないが‥)だが、この3回目の追加接種が日本ではなかなか進んでいない。G7諸国のなかでは追加接種率は極端に低く、1月末時点でたったの2.7%(全人口の)となっている。(英国55%・イタリア53%・ドイツ52%・フランス47%・カナダ39%・米国27%、他に韓国51%・中国24%・ブラジル21%・ロシア7%など。インドも低く1%) 1月27日付朝日新聞には、「進まぬ3回目接種 今月末までの接種対象者のうち16%のみ/首相"全然進んでないじゃないか!"と‥」の見出し記事。

 この追加接種の状況は、岸田政権下のコロナ政策での大きな失策となっている。政権発足後の11月上旬からこのワクチン確保の加速や前倒し接種の緊急的必要性(善は急げ/備えあって憂いなし/転ばぬ先の杖)に取り組まなかったつけがきている。オミクロン株の世界的流行の兆しに対し、「12月から外国人の入国原則禁止(水際対策)」を世界に先駆けて早々とうちだしたが、日本の米軍基地(沖縄や山口県岩国など)兵士や関係者からオミクロン感染が爆発的に拡大して行ってしまった。

 3回目追加接種の大きな遅れの原因の一つとして、「ファイザー製ワクチン追加接種の希望者が多い」こともあげられている。私が暮らす京都府の自治体では、65歳以上の追加接種は12月中旬時点では、政府の「2回目と3回目の接種間隔機関を8カ月から7カ月に短縮する」という決定のもと、遅くても1月下旬からの接種開始を行う予定もしていた。しかし、供給量が不足しているため、昨日配布された市の広報誌では、「①接種予約は自分ですることに変更、②集団接種会場はモデルナ製を使用—予約開始2月7日より・接種開始2月14日開始、③個別接種会場はファイザー製使用—予約開始は2月14日より・接種開始は2月21日より」と書かれていた。

 当初の接種開始予定より2〜3週間遅れることとなった。3回目追加接種をしても、今回の爆発的感染拡大期の防疫に間に合わない状況ではあるが、それでもいつ感染拡大のピークアウトを迎えるのか分からない中、できるだけ早く3回目を接種したいとは思う。私の場合は、アナフェラキシーの心配がある体質なので、1回目・2回目に接種したファイザー製を希望している。副作用やアナフェラキシーが2回の接種ではなかったからだ。しかし、ファイザー製の予約はかなりの難しさを伴うようだ。

 1月27日付朝日新聞には、「閉じる保育所 保護者悲鳴 在宅勤務と育児、あまりに大変」の見出し記事。テレビでは、「東京 昨日1万4086人の新規感染者 約7万人が自宅で療養」と報道されていた。この日、「全国の新規感染者数が初めて8万人を越えた」と発表された。また、1月29日付朝日新聞には、「全国26万人が自宅療養」の見出し記事。1月31日付朝日新聞には、「感染の波 高齢者に―弱毒と言われるが強烈な肺炎—接種間に合わず/重症化リスク高」の見出し記事も。

 タレントのビートたけし(日本の資産番付100人に入る資産家)は、「オミクロンなんて風邪と同じ」と世間の関心を引こうと吹聴していたが、こんな吹聴は無責任な嘘デマ八百だ。確かに若い人たちの重症化率はオミクロンは低いようだが、その大変さは風邪と同じもんでは全くない。「オミクロンの感染力は"インフルエンザの40倍"」と、コロナ診療の最前線に立つ埼玉医科大学の感染症専門家である岡秀昭教授は語る。「最大で1人から50人に感染させる、桁外れの感染力を持ち、はしかや水疱瘡の感染力に匹敵する」とも‥。

 1月30日付赤旗新聞日曜版には、「"風邪"と対策を緩めたら重症者増で医療が崩壊する/無症状でも強い感染力—オミクロンはデルタの4倍/会話や呼吸だけでも」との、WHO感染症危機管理シニアアドバイザーの進藤邦子さんによる見出し記事が掲載されていた。1月27日付京都新聞には、「新型コロナ感染者 20代以下が全体の6割—10代急増/京都府内1月中旬以降」の見出し記事。この記事によれば、特に1月中旬以降のオミクロン株による感染拡大は、10代・20代が急増し、感染者全体の6割を占めるまでになっているとの内容。1月29日付朝日新聞には、「インフルや風邪とは全く違った―家族全員が高熱/自宅療養"地獄"」の見出し記事。

 10代・20代を中心にオミクロン感染が爆発的に拡大し、それが30代以降の人々や高齢者にも広がってきていて、ワクチンの3回目接種が間に合わない中、重症化数も増加、医療崩壊の手前まできているという1月末の状況だ。1月29日、新規感染者数は8万4933人と発表された。だが、このオミクロンは無症状感染者数は、ヨーロッパでは実際には新規感染者数の10倍は存在していると見積もられている。そのことを参考としたら、日本での1日の新規感染者数は85万人と推定もされる。こんな状況だ。

—「いつピークアウト(第六次感染拡大のピーク)が来るのか」―

 まだまだ分からない。2月中旬なのか下旬なのか、それとも3月上旬なのか中旬なのか‥。一つの仮説がある。政策研究大学院大学の土谷隆教授の最新予測。土谷教授は第2波のピークが2020年7月~8月にやってくると予測したデーターを発表し、的中させたことでも知られている。その土谷教授の最新予測とは、「東京都で第6波がピークに達するのは2月上旬」との予測。第6波のピークは2月4日で、新規感染者数は3万668人にのぼるとしている。シュミレーションによると、第6波は2月上旬にピークを迎えたあと、急速に低下し、3月までにほぼ収束するとしている。また、2月中には100万人~150万人の待機濃厚接触者も発生すると予測もしている。

 まあ、少なくとも2月中旬ころまでに第六波のピークが到来してしまえばいいのだが‥。

 だが別の予測もある。オミクロン株の亜種(変異種)である「ステルスオミクロン株」の出現。これは今のオミクロン株の2倍の感染力をさらにもつとされ、現在40カ国で確認されている。すでに感染の中心がステルスオミクロンに置き換わりつつあるデンマークのような国もある。日本では一昨日までに空港検疫で198例が確認された。東京大学佐藤圭准教授は、「第6波が長引く可能性及び、ステルスオミクロンによる第七波が来るおそれ」を指摘している。

 1月31日付朝日新聞には、「重点措置後初の週末"変わらぬ客数(人出)"   措置法の効果はどこまで?」の見出し記事が掲載されていた。

 今度のオミクロン第六波の感染大爆発の状況は、ちょっとそら怖ろしい‥。とても身近な人や家族の誰かや、自分がいつ感染してもおかしくない状況だ。感染しないためにいくら気をつけてはいても‥。

 

 

 

 

 

 

 


オミクロン株の感染大爆発➊—"2月は「阿鼻叫喚」の見出し記事"が現実的にもなりつつある

2022-01-31 06:55:11 | 滞在記

 1月22日付「日刊ゲンダイ」に、「ピークアウトいつ」「ピークアウトはいつだ!?」の大きな見出しに続いて、「おそらく2月は収束どころか、阿鼻叫喚(あびきょうかん)」との見出し記事が一面に掲載されていた。「いつものこの日刊紙の大げさすぎる見出し」と思っていたが、その見出しの言葉が、明日から入る2月には現実的になりつつある感もある。

 1月23日付京都新聞には、「国内ピーク見通せず—追加接種は出遅れ」「大阪 検査キット不足深刻/陽性者自覚せず、市中感染拡大か」の見出し記事。

 同じく1月23日付読売新聞には、「厚労省発表10万人あたりの新規感染者 2回接種 感染大幅減/オミクロン 未接種 若者でも肺炎」の見出し記事が掲載されていた。この記事によると、コロナワクチンを2回接種した人のオミクロン感染率は、未接種の人の4分の1だったとの厚労省の発表を掲載したものだった。(この比較を、年代別に表した棒グラフも掲載されていた。) ワクチン接種のオミクロンコロナへの有効性が注目される中、一つの参考にはなる情報だが、オミクロンコロナに対するワクチン接種(2回目・3回目)の有効性については、今も情報が錯綜(さくそう)している。

 1月19日、コロナ基本的対処方針分科会の尾身会長が、「人流抑制ではなく、人数制限がキーワード」との見解を公式発表した。この会見発表内容について1月20日、全国知事会の平井会長は「会食の人数制限をすれば出歩いてもいいと聞こえる」と、尾身会長の公式発表を批判。その後、尾身会長は前記の発言内容について誤解を招いたと謝罪することとなった。日本の感染対策のトップ機関の責任者が、相変わらずこのような状況なので、国民は右往左往させられてしまう。

 また、医療専門家有志の提言案として、「若者層にはPCR検査などを実施せず、臨床症状のみで診断を行うことを検討する必要がある」との見解に対し、「検査を確実にできる体制づくりをする必要がある」との反論も起きている。この検査を巡る問題も、方針が錯綜し、右往左往してきた。まあ、日本の検査体制及び医療体制が、オミクロンコロナの爆発的な感染急拡大の進行により、手が回らない、崩壊的な状況が急激に進行している感がある‥‥。

 1月24日付朝日新聞には、「コロナ飲み薬 行き届かぬ恐れ/米メルク製 発症5日以内に服用必要—受診遅れ処方できぬ例/供給限られ在庫逼迫」「PCR検査 数日待ちも」「感染対策 欧米の学校混乱/マニュアル不満 仏の教員スト/NYの生徒 対面授業ボイコット」などの見出し記事。週刊現代の最新号には、「オミクロン最前線レポ"医療現場は もうとっくに壊れている」の特集記事が掲載されていた。

 同日のテレビで、「2月8日には、東京の濃厚接触者数は約146万人と試算されている。(都民の10人に1人)このまま濃厚接触者の隔離を続けると、社会機能がマヒする恐れがある」と報道もされていた。

 同日のANN(朝日放送系)では、コロナ問題を巡る世論調査の結果が発表されていた。それによると、①「まん延防止等重点措置について」は、「1、この対応で良い42%、2、もっと厳しい対応が必要だ31%、3、制限は必要ない21%」となっていた。②「会食・旅行控えるか」は、「1、大幅に控える45%、2、ある程度控える44%」と合わせて約9割にのぼっていた。③「政府のコロナ対策について」では、「1、評価する46%」と前回調査よりもマイナス15%となっていた。翌日の朝日新聞にも、「政府コロナ対策 評価45%/治療受けられぬ不安69%」の見出し記事が掲載されていた。

 この世論調査の発表から1週間が経過したが、現在では、錯綜する情報や、政府のコロナ対策の弱さなどから、国民のさらなる不安が増大していて、政府の対応への評価はさらに低下しているかと思われる。

 世界保健機構(WHO)のデドロス事務局長は1月24日に開幕したWHO執行理事会において、2021年1月末に宣言した新型コロナウイルスによる「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」について、「各国が新型コロナウイルスワクチン(2回接種)の接種目標を達成すれば、コロナの緊急事態は、今年に終えられる可能性がある。」と表明をした。WHOは新型コロナについて警戒を繰り返し呼びかけており、緊急事態(世界的パンデミック)の終了のめどについてトップが言及するのは異例だった。

   WHOは今年半ばまでに、世界各国が人口の70%にワクチンを接種することを目標としている。ただ、WHOが昨年に掲げた「世界各国で人口の40%へのワクチン接種」との目標は、加盟国の半数しか達成できず、現在も世界各国へのワクチン供給が改善されていない。デドロス事務局長は、接種目標が達成できなければ、新型コロナ収拾は「ほど遠い」とも語った。

 「WHO 今年中に世界的パンデミック収束の可能性あり」の発表の言葉が先行し世界に伝えられたため、その後、デドロス事務局長は、その言葉の一人歩きの打消し的な対応に追われることともなった。

■ウクライナ侵攻も辞さぬという姿勢のロシアプーチン大統領だが、彼への国民の最近の支持率の低下の中、これをくい止めて支持率上昇を図るためであることは明らかだ。ロシアは世界に先駆けて2020年10月に国産ワクチンを承認し接種を開始した。しかし、プーチン政権や国産ワクチンへの不信感とも相まって、その後の1年間でワクチン接種が進んでいない。2021年の12月段階で、なんと、1回目接種率は38%、2回接種率が32%にとどまったままだ。

 世界的には、ワクチン接種を望まない人々の存在もけっこうあり、世界的には「接種率70%」が一つの壁となっているが、ロシアでは「接種率40%の壁」となっている。2回目接種が終った人は、32%となっていて、WHOの昨年の目標達成国内にも入っていない。「支持率アップのために戦争している場合じゃないだろうが!」と、プーチン大統領に対しては強く思う。

 共同通信のネット記事には、「若者層、受診せず自宅療養も容認—コロナ、外来逼迫回避へ方針転換(後藤厚生労働省1月24日発表)—自身でウイルス検査を行い、結果を行政側ら連絡する―」の見出し記事。1月26日付朝日新聞には、「救急搬送困難 最多4950件/コロナ病床増 一般病床を圧迫」「検査一気に逼迫/キット不足"全員に対応厳しい"」「感染拡大 学校に変化 増える自宅学習 近畿の小中高 相次ぐ休校」などの見出記事。

 1月31日現在、「まん延防止等重点措置」は34都道府県に適用されているが、歯止めのかからない感染拡大と病床使用率の増加により、「緊急事態宣言措置」への切り替えが多くの都道府県において、この数日間で進むかと予測されている。このコロナ禍下の2年間で、ちょっと、かなり、最も深刻な状況を、私たちは迎えようとしている。「阿鼻叫喚」という言葉が当たらずとも遠からずという状況に‥‥。かなり恐ろしい‥‥。

 

 

 

 


もう一つの見方—ウクライナ問題、台湾統一問題を巡って

2022-01-28 12:04:56 | 滞在記

 数日前に日本政府は、ウクライナへの「渡航中止勧告」(渡航警戒レベル3)を出した。今後のロシア軍の動きによっては、退避勧告を含む渡航警戒レベル4(最高の警戒レベル)が出されるかもしれない。欧州の天然ガスは、その供給量の3分1をロシアに頼るだけに、今回のロシア軍のウクライナ侵攻への構えをもつ国境配置問題に関しては、欧州各国の思惑には温度差がある。

 米英がウクライナ周辺への派兵を進めるという強力なロシアへの対抗を進めようとしているのに対し、ドイツとフランスは2国が、今回の対ロシア政策に関して共同歩調をとることを確約し、ウクライナやロシア・プーチン政権との交渉を始めてきている。ドイツはウクライナへ武器ではなく5000個のヘルメット供与を発表したことに、ウクライナ国民にはドイツへの失望の声も上がっているとも伝わる。

 1938年にナチス・ドイツがオーストリアやチェコスロバキアの国境に軍を進め、第二次世界大戦のヨーロッパでの勃発を恐れたイギリス・フランスは、ドイツの併合を容認してしまった。そして翌年39年には、ナチス・ドイツはさらにポーランドに突如侵攻し占領し併合した。今回のドイツ・フランスの動きは、このような過去の歴史の二の舞を起こすきっかけにならなければよいのだが。

 今日1月27日付朝日新聞に「ウクライナ社会不安懸念—政府"今すぐ攻撃はない"」の見出し記事。ロシア軍の侵攻近しと不安に陥っているウクライナ国民に、ウクライナの政府(ゼレンスキー大統領)がパニックに陥らないように呼びかけた記事内容だ。さらに「4か国が協議 継続を確認/ウクライナ東部紛争 緊張緩和に隔たり」の見出し記事も。ドイツ・フランス・ロシア・ウクライナ4か国による協議の記事。

 CNNのニュースより(※「CNN」米国のケーブルテレビ会社Cable News Network)

    ―ウクライナへの侵攻恐れる西側、ロシアのテレビに映るのは別の世界—

 (CNN)重装備の外国軍隊がウクライナ国境に向かって進軍する。偵察機が上空を飛ぶ。「偽」のNATO軍だ。ロシアから見る鏡写しのようなウクライナ情勢にようこそ。同国のメディアが見せる別の風景では、NATO軍は何年も取り組んできた計画を実行しようとしている。ロシアを封じ込め、プーチン大統領を倒し、ロシアのエネルギー資源を乗っ取る計画だ。

 モスクワ側のあらゆるニュースやトーク番組で繰り返される見方では、ウクライナは米国という「人形遣い」に操られた失敗国家だ。欧州はワシントンからの命令を聞くペット犬からなる弱く分断された集団だ。恐ろしい脅威である米国でさえ、政治的分断や人種問題で引き裂かれた、弱い分断国家となる。

※上記の記事は、ジル・ドアティ氏がCNNに寄稿した記事の冒頭文だ。そして、この記事の結びには、「‥‥若い世代は情報を得ようとインターネットにアクセスする。だが、ロシアの主流以外の報道機関は閉鎖されるか、隅に追いやられている状況で、ロシア政府の主張するもう一つの現実が電波を支配している。」と書かれている。

■2021年、世界180カ国「報道の自由度ランキング」報告書では、ロシア150位、中国177位、北朝鮮179位となっている。

 中国のインターネット記事を毎日視聴しているが、1週間ほど前までは、ウクライナ情勢に関する記事はほとんど掲載されていなかった。しかし、数日前から、一挙に、これに関連する記事が、一面・二面に掲載されるように変化してきている。「ロシアも我慢の限界だ」など、ウクライナ問題に関して、ロシアプーチン政権の政策(ウクライナ国境への10万の軍集結)を擁護する内容がほとんどだ。

    もう一つ特徴的なのが、日本の岸田政権がアメリカと歩調を合わせ、ロシア軍の動向を批判したことに対する非難。「日本はすでにロシアに宣戦布告書を送った」などの過激な見出し記事も多い。この記事に対して、読者コメントには、「小日本鬼子‥‥」「消灰日本鬼子‥」などの枕言葉に続いて、「東京を灰にしろ‥」「日本介入 台湾 ウクライナ‥」「アメリカの顔色ばかり見てる奴‥」などの言葉。

 しかし、事の真相は、今回のロシア軍のウクライナ国境への大軍の配置に対して、中国の習近平政権は、これを単純に支持しているわけではない。いちおう、中国のネット右翼層のガス抜きのためにも、上記のような記事を書かせている(又は容認している)とみることもできる。

 この1月に入り、中国やロシアとも国境を接する中央アジアの国・カザフスタンで暴動が起きた。このカザフスタン暴動の背景には、この国を巡るロシアと中国の綱引きがある。カザフスタンの現在の大統領は親ロシア傾向が強いが前大統領(30年間にわたり政権の座にいた)は親中国傾向の強い人物だった。1991年のソ連邦の崩壊にともなって新しく分離独立をしたカザフスタンはソ連邦下では最大の面積をもつ自治区で天然資源も多い。そして、中国にとっては、2015年より本格化した「一帯一路」政策では、地政学的にも最も重要な国となる。

 この動乱の背後には、中国政府が動いていたのではという見方も消えない。このためか、カザフスタンの大統領は、ロシアには暴動鎮圧のための軍の派遣を要請したが、中国からの軍の派遣は断った。中国にとっては、ウクライナともまあまあ良好な外交的関係をもっていて、「一帯一路」政策化でも地政学的に重要な国。このため、ロシアプーチン政権の影響力がこれ以上ウクライナに強まることは、歓迎していないというのが本音である。

 つまり、「旧ソ連圏の主導権を巡り、中国とロシアの間には不協和音が存在」しているということだ。中国にとっては、ロシアがウクライナに軍事侵攻して併合することには、基本的には受け入れがたいことかと推測されている。このため、「ウクライナへのロシア軍攻撃抑止の"影の主役"は習近平中国国家主席」との見方もされている。兄貴分の習主席から釘をさされれば、プーチン大統領も兄貴分の顔を立てざるをえないとの見方だ。

 2月4日の北京冬季五輪の開会式にはロシアのプーチン大統領は出席をする予定だ。とともに、北京で習近平・プーチンの両巨頭会談も予定されている。

 前号のブログで、中国による台湾統一(侵攻含む)問題はいつ動くのか?ということを書いた。『2023年台湾封鎖』などの書籍の内容にもふれながら、2024年1月の台湾総統選挙前後の5カ月間が、その動きが顕在化する可能性が最も高くなるのではないかとも記した。

 私が知る限り、現代中国問題に精通しているジャーナリストとして、かなり信頼がおける人が3人いる。遠藤誉(1941年生まれの81歳[筑波大学名誉教授/中国問題グローバル研究所所長/ジャーナリスト])・近藤大介(1965年生まれの57歳[週刊現代特別編集委員/明治大学講師/ジャーナリスト])・冨坂聰(1964年生まれの58歳[拓殖大学教授/ジャーナリスト])の3氏だ。(上記写真:右から1枚目遠藤氏、2枚目近藤氏)

 この3人の中で、遠藤誉氏は最近の記事で、「中国が崩壊するとすれば"戦争"、だから台湾武力攻撃はしない」というテーマで次のことを述べている。以下、その冒頭部分。

 中国共産党が崩壊するとすれば、その最大のきっかけは「戦争」だ。だから台湾政府が独立を宣言しない限り、習近平は絶対に台湾を武力攻撃しない。軍事演習は独立派への威嚇と国内ナショナリズムへのガス抜きだ。

 —戦争を避けるために台湾経済を取り込む―2030年頃には、中国のGDPがアメリカを凌駕していて、2035年頃には少なくても東アジア地域における米軍の軍事力は中国に勝てなくなっているだろう。だから2035年まで待つ。これが習近平の長期戦略だ。それまでに台湾経済を絡め取っていく戦略は、独立志向が強い民進党の蔡英文政権が誕生してから積極的に動くようになった。

 ―中略—

 ―もし中国軍が米軍に勝てない状況が続いた場合—  万一にも何かのアクシデントで大陸の軍隊(人民解放軍)と米軍が衝突した場合、もし近い時期であるなら、まず中国軍が負けて中国共産党による一党支配は崩壊する。だから台湾政府が独立宣言をしない限り、近いうちに中国の方から戦争を仕掛けることは絶対にしない。

※以下続く。

 このテーマの遠藤氏の記事は2021年12月下旬と2022年1月20日に発表された。傾聴に値する内容ではある。

 「世界が新型コロナの度重なる感染爆発という状況の中、中国ではコロナ感染爆発は政府の政策により抑えられている。これは誇るべき喜ばしいことだ」との大意の中国のネット記事。

 中国の春節の始まりである1月30日の大晦日まであと二日。今日1月28日付朝日新聞には「中国"春節"帰省阻む地方—連休控えて感染拡大警戒/"隔離だけでなく拘束""自粛要請」の見出し記事が掲載されていた。「北京冬季五輪開会は1週間後。ゼロコロナを目指す中国では新型コロナウイルスの流行で、お祭り気分とはほど遠い限界ムードに包まれている。中国のお正月休みにあたる春」の連休が始まってきているが、地方政府は感染者を出すまいと規制を阻む。ふるさとを思う人々の苛立ちも募っている」との記事内容。

 

 


台湾統一問題を巡って―北京五輪後から2年間以内に起きる可能性の高いこと

2022-01-26 18:30:57 | 滞在記

 先週1月22日(土)のABC(朝日放送)の報道番組「正義のミカタ」では、特集報道としてロシアのウクライナ侵攻危機とともに「北京冬季オリンピック後と台湾侵攻(統一)」の問題についても連動して報道されていた。この特集のコメンテーターはスポーツジャーナリストの玉木正之氏と中国問題研究ジャーナリストの近藤大介氏の二人。

 この特集ではまず玉木氏の方から「1936年ドイツ・ベルリン夏五輪と2022年北京冬季五輪の"ヤバイ"共通点」と題して、説明がされていた。

 それによると、<開催前>①[ベルリン]第一次世界大戦敗戦と世界恐慌の中、経済危機のドイツをナチス・ヒトラー政権が再起させた。[北京]中国共産党習近平政権のもと、中国を米国に迫るGDP2位の経済・軍事大国化に導いた。②[ベルリン]ユダヤ人差別が問題に。アメリカなどでボイコットの機運が高まる。[北京]ウイグル民族に対するジェノサイド疑惑が問題に。欧米などが外交ボイコット。③アメリカ・オリンピック委員会のブランデージ会長(のちのIOC会長)が、ベルリンを訪問。その後、彼は「ユダヤ人差別は存在しないと」報告。[北京]IOCバッハ会長が軟禁状態にあると噂になっている女子テニスの彭帥選手とテレビ電話。その後、彼は「彼女が置かれている状況には何の問題もない」と報告。

 <開催後及び開催後予測>①[ベルリン]ドイツが金メダル数初の1位。熱狂したドイツ国民はヒトラーを猛烈支持。[北京]中国メダルラッシュ?!。中国国民が習近平氏を猛烈支持?!。、②[ベルリン]1939年ポーランド侵攻~第二次世界大戦へ。ユダヤ人大量虐殺。[北京]2022年台湾侵攻?!ウイグル人などに対するジェノサイド加速?!

  ■玉木氏「最悪のシナリオとならぬように、我々は歴史から学ぶべき」とのコメントで結ぶ。

 近藤氏は「北京冬季オリンピック終了が台湾統一へ踏み出す合図」と題して、「台湾侵攻を想定した最近のさまざまな軍事訓練の実例」を紹介しながら、「今年は2月のオリンピック開催と5年に1度の中国共産党大会が10月に行われる年であり、中国側が台湾統一(侵攻の可能性も)を見据えた動きを具体的に加速させ始める。」「デジタル人民元&台湾統一で世界の覇権を握る!?」「いきなり台湾本土へ侵攻するのは、中国はリスク大、まずは台湾が実効支配している小さな島から狙い取り込んでいくのでは‥」とし、具体的には、南シナ海の太平島(台湾軍200人が駐留)と東沙諸島(台湾軍500人が駐留)を挙げていた。二つの島とも、海上交通の要衝でもある。

 2018年に中国習近平国家主席は、2期10年までという国家主席の制限を撤廃するため憲法を改正した。これには少なからずの反対もあったようだが任期制限撤廃の改正を行った。その改正を正当化する最大の理由は、習近平国家主席が国のトップとして「中国共産党の70年にわたる核心的悲願[目標]である台湾統一を成し遂げるため、引き続き3期目にも国家主席となることの必要性」をもって、党内で了承されたものだった。このため、習氏としては、3期目が終わる2027年10月までになんとしても台湾統一を成し遂げる必要に迫られてもいる。それまでにあと5年間という期限。

 

■「中国が野望を加速させるのを懸念する。台湾は野望の一つであり、今後6年以内に脅威が顕在化する」と、アメリカ議会で2021年3月に報告したのは、昨年の4月までアメリカのインド太平洋前司令官のデービットソン・ウィンド氏。その理由をいくつか挙げたが、そのうちの一つが、中国の軍事力の急速な強力化。2025年には西太平洋におけるアメリカの総合軍事力をはるかに上回るとも語る。

 京都丸善書店の中国コーナーには多くの書籍が置かれているが、その中に『2023年台湾封鎖』(宝島社)北村淳・早川友久・山崎文明(ほか著)がある。この書籍は最近刊行されたものだ。本の表紙裏扉には、「2021年3月にアメリカの高官は、"中国は6年以内に台湾に侵攻する可能性がある"と発言した。一番危ないのが台湾総統選前の2023年だ。中国は、台湾に向かって数百発のミサイルを撃ち込む。そして、習近平は、抗議する西側諸国に向かって。"これはひとつの中国の内政問題だ"と言い張るのだ。本当にそんなことが起きるのか。そのとき日本はどうなるのか。この本は、その危機に立ち向かう一冊である。」と書かれていた。

 この書籍の「はじめに」は、編集部の文がある。これによれば、「なぜ2023年なのか?!」についての概略が書かれている。その理由(根拠)として、次の三つのことが記されていた。

 ①中国は現在、世界でもトップレベルの宇宙産業国となった。特にGPS人工衛星防衛システムは、現在アメリカを上回り優位性をもつまでになった。これに対抗するため、アメリカもこのシステムの再びの優位性を目指し開発を急いでいる。中国を上回るそのシステムを2026年中に配備できる目標をアメリカはもっている。このため、中国はその優位性がある間に台湾統一(侵攻含む)を行う必要がある。人工衛星の軍事的優位性がなければ、いくらミサイルや兵力、空母や艦船が多くても、アメリカ軍との戦いを優勢にすすめられないからだ。(中国は現在、アメリカのGPS衛生を破壊することも可能なような宇宙軍事力をもっている。現代戦はGPSの誘導なくして戦いはおこなえない。)

 ②2022年2月には、北京冬季五輪がある。これは習近平政権が国の威信をかけた大会だ。このときに、多くの欧米諸国をボイコットさせるような台湾侵攻をすることはないだろう。また、10月には中国共産党大会があり、3期目の国家主席・党総書記として再選されるだろう。しかし、その前に、もし台湾侵攻をして失敗したり、もし成功したとしても、何らかの形で反撃により中国本土が大きな被害を受けることが起きれば、習近平ののトップの座は危うくもなる。

 ③2024年1月には、台湾総統選挙が控える。台湾総統は2期8年までの任期期限と憲法で3選は禁止されているので、蔡英文が立候補することはないが、誰が蔡英文を引き継ぐか?その候補者が、台湾独立志向が蔡英文より強い人物ならば、中国が台湾侵攻を行う可能性はより強くなる。現状では、国民党より蔡英文の民進党の支持率は確実に高い。

 この3つの根拠(理由)から、2023年の台湾統一(侵攻)の可能性が最も高いとして、『2023年台湾封鎖』という題名をつけたと編集部はしている。

■私は、やはり2024年1月の台湾総統選挙の前後の2023年秋から2024年春までの5カ月間に、中国による台湾統一(侵攻含む)の可能性が最も高いかと推測している。2023年11月頃の、台湾総統選挙の支持状況を判断して、どのような台湾統一ーの方法をとるかのかを、中国は最終判断をして動くものと推測している。それにしても、あと2年後だ。それまでにコロナの世界的パンデミックは収束している可能性があるが、収束後は台湾を巡る状況が一気に緊迫することとなる可能性がある。日本にとってもとても大きな影響がもたらされるだろう。私の中国の大学の教員生活にも‥。私の勤める大学やアパートのある福建省福州市は台湾海峡を挟んで台湾の台北までわずか160kmの距離にある。本格的な台湾侵攻となれば、日本人の中国への渡航や帰国などもどうなるかわからない。

■2023年中までに、まず太平島や東沙諸島への軍事行動(侵攻)が起きる可能性は高いとも思う。台湾封鎖の場合には、日本の沖縄諸島の台湾に近い西端の島々や尖閣諸島も、その侵攻を受ける可能性がある。

 1月24日付朝日新聞には「台湾の"中国ファクター"習政権の浸透工作 統一狙い着々と」の見出し記事が掲載されていた。

 最新の『NewsWeek』紙の特集記事は「2024年全米動乱」。アメリカ次回大統領選挙は2024年秋に行われる。共和党からはトランプ前大統領が出馬する可能性が高いとされる。民主党の現大統領バイデン氏は高齢のため、出馬は微妙。日本の日刊フジは民主党候補としてヒラリー氏の再出馬の可能性も述べている。しかし、民主党は次回大統領選挙に向けての有力候補難だ。

 台湾統一に向けての中国の動きは、このアメリカ大統領選挙の行方も見据える。全米が再びトランプ劇場で動乱となれば、中国にとっては大きなチャンスでもある。

 最近、米国バイデン大統領と日本の岸田首相とのオンライン会談が行われた。1月24日付読売新聞には「日米豪印会談 春後半に 日本で開催 バイデン氏"国賓"案」の見出し記事が掲載された。このバイデン・岸田会談を受けて、1月22日付朝日新聞には、「日米会談をどう見る―反発防ぐ対中メッセージを」と題する文章(早稲田大学教授 中林美恵子氏)、社説では「対中、共存の戦略を」という見出し記事が同日に掲載されていた。

 週刊誌「週刊現代」の最新号には「"北京五輪後に中国は崩壊する"7つの根拠」と題した特集記事が掲載されていた。その根拠とは「①ゼロコロナ政策は大失敗、②米中激突へのカウントダウン、③習近平国家主席の"暗〇"危機、④21世紀の天安門事件が勃発する、⑤不動産バブル崩壊/経済は破綻へ、⑥"嫌われ中国"国際社会でも孤立無援、⑦頭脳流出で人材焼野原」と題された小見出しの7つの根拠。

 この記事は筆者名がないので、誰が書いたか分からない(おそらく編集部の誰か)が、多少の事実は書かれているが、そのほとんどは「単なる希望的観測」にすぎず、かなり眉唾物(まゆつばもの)の恥ずべき特集記事だった。売れるためだけの、真っ当なジャーナリズム精神は皆無の記事内容だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ロシアのウクライナ侵攻が迫る危機―プーチン大統領の狙いとその背景にあるもの

2022-01-26 09:28:43 | 滞在記

 2022年1月に入り、東欧のウクライナを巡る情勢が緊迫してきている。10万超のロシア軍がウクライナとの各方面国境に展開し、ウクライナ侵攻を準備している状況がここ数週間続く。

 NATO(北大西洋条約機構)は、このロシアの動きに対し警戒を強めてきている。1月21日付朝日新聞には「ロシア軍の侵攻予測—米大統領ウクライナ巡り警告」の見出し記事。

 1月22日(土)のABC(朝日放送)の報道番組「正義のミカタ」では、このウクライナ情勢とオリンピックとの関連性について「ロシアが動くとき そこにオリンピックあり」と題して特集報道を行っていた。この特集報道を視聴するて、改めてロシアの軍事行動(侵攻)がオリンピック開催と関連している歴史を知ることができた。アメリカホワイトハウスのサキ報道官は「北京オリンピック開催中にウクライナに軍事侵攻する危険性」を指摘している映像も流れた。

 この番組報道によれば、「①[五輪前]の1979年ソ連(ロシア)のアフガニスタン侵攻—翌年1980年にモスクワ夏五輪開催(67の国と地域が大会不参加のボイコット)、②[五輪中]2008年北京夏五輪中―ロシアのグルジア(ジョージア)侵攻、③[五輪後]2014年ソチ(ロシア)冬五輪―閉会式直後にロシアはクリミア(ウクライナ領)に侵攻し併合」と、「ロシアの軍事侵攻と五輪との関連性」を説明していた。そして、今回のウクライナ侵攻に向けた動き。

 1月22日付朝日新聞には「ロシアの情報工作 米が警戒 ウクライナ侵攻の"前兆"非難—ロシア、侵攻も撤退も否定」、1月23日付読売新聞には「露、米へ攻勢強める―ウクライナ情勢"深刻な結果招く"と/外相会談最終通告」と、それぞれの見出し記事が掲載されていた。米国のブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相とのオンラインン会談が決裂し、ロシア側が最後通告をした結果となった。

 この状況を受け、昨日1月25日付朝日新聞には「米、ウクライナ退避を命令/"ロシアが侵攻の恐れ"大使館員家族へ/米軍派遣検討」の見出し記事。そして今日26日付には「米、東欧へ派遣命令8500人/ウクライナ情勢対立―"ロシアに沈静化の意図なし"」の見出し記事が掲載されるまでとなった。米国や英国は、ウクライナへのロシア軍侵攻が近いと判断し、大使館員やその家族へ避難命令を発したこととなる。また、米国軍は、ロシア軍の侵攻に備えてバルト三国に1万人近くを派兵することを決定した。NATO加盟諸国も、この動きに伴いなんらかの軍事行動をとるものと予測される。

 今回のウクライナ危機(ロシア軍侵攻)の背景にあるものは、主に三つのことがあると思われる。一つは、ウクライナが2004年にNATOへの加盟を申請したのだが(ロシアの反発を懸念し、現在はまだ申請に対する継続審議中の段階で加盟は実現していない)、最近になり加盟の正式決定が現実的になってきたことへのロシア・プーチン政権の反発がある。1991年のソビエト連邦崩壊後、とりわけ2000年代に入り、かってソビエト連邦の衛生諸国だった中・東欧諸国の多くがNATOに加盟、2010年代に入ってもその流れが続いていることへの反発だ。

 ソビエト連邦崩壊後から20年を経過した2010年代に入り、プーチン長期政権下のロシアは国力をかなり回復し、政権への国民の高い支持を取り付け続けるためにも、2014年のソチ五輪後にクリミアに軍事侵攻し併合をした。これは、超大国となった中国の習近平政権との蜜月関係もその背景にある。

 (※ロシアと国境を接するバルト三国[エストニア・リトアニア・ラトビア]はNATOに加盟。最近では、台湾との事実上の国交外交をとり始めている。だが、NATO加盟国であるトルコは最近、ロシアや中国、欧米諸国とのバランス外交を取り始め、NATO脱退の動きがある。また、東欧最後の独裁者と云われるベラルーシの大統領は超親ロシアの政権。)

 二つ目は、2024年にプーチン大統領の任期が切れるため、最近、憲法改正をして最長2036年までプーチン大統領が続投できることを可能にした。このような独裁的・強権的な政治に一時は85%以上の支持率を誇ったプーチン大統領だが、最近では若者層を中心にその支持率が低下している。このような国民世論の動向に対し、旧ソビエト連邦下で最も重要な地域の一つだったウクライナ(ソ連邦の食糧庫ともよばれた)併合を狙っていることだ。ゆくゆくはバルト三国やベラルーシの併合又は衛星国化もその視野に入れてはいるだろう。

 そして三つ目は、ロシア・プーチン政権と中国習近平政権との連携が2013年頃から強まり、特に近年は共同した動きがとれていることだ。欧米諸国や日本も、台湾問題と東欧問題の両面で軍事侵攻問題がおきてくれば、その対応・対抗に困難さがよりともなってもくる。

■私は2000年代に入り4度、ロシアを訪れている。2001年~2008年にかけてのことだ。2008年は日本からも近い極東ロシアのウラジオストクやハバロフスクだが、それ以外の3回はバルト三国に近い、ロシア第二の都市サンクトペテルブルク(旧レニングラード)。1991年にソビエト連邦が崩壊し、ロシアの人々は生活難・仕事難に直面した。2000年代の初頭には、その生活難や仕事難もやや落ち着きを見せ始めていた。この10年以上に渡るロシアの人々の暮らしをなんとか支えたものにソビエト(ロシア)伝統のダーチャがあった。このダーチャとは、特に都市部の人々の小さな小屋と周辺の小さな農地のことだ。

 2〜3人であれば宿泊もできる都市近郊のダーチャの小屋。その周りに家庭菜園規模の農地がある。今、日本でも多い貸農地を少し広くしたぐらいのものだが、ここで野菜を作って、食糧難をしのいだのだった。そして、再びロシアの経済や国の威信を回復したのが現在のプーチン大統領だった。私がロシアを訪問した2000年代、ロシア国民にとってプーチン大統領の存在は希望の星だった。そして、2014年のソチ冬季オリンピック開催と直後のクリミア(ウクライナ)併合により、国民のプーチン支持は90%近くにまで再び上昇した。

 しかし、特に2018年以降、その独裁的・強権的政治に、特に若者層を中心に支持が低下してきている。昨年8月の支持率調査では60%に下落。若者層では50%の支持率で、支持しないは46%に上った。

※ウラジミール・プーチン:1952年サンクトペテルブルク生まれで、今年10月に70歳になる。私と同じ年で。2000年にロシア第2代目大統領に就任、現在20年間を越える超長期政権となっている。ロシアの軍事力は、米国・中国と並ぶ世界三大軍事力をもつ。しかし、GDP(国民総生産)は2020年では世界11位。10位の韓国に次ぐ程度となっている。ロシアの人口は1億5000万人ほどと日本より少し多い程度。国土面積は世界一。