彦四郎の中国生活

中国滞在記

夕暮れ時の鴨川べりの光景―酷暑の中を歩きとおして、外国人観光客もここでようやく笑顔が

2019-08-13 07:12:15 | 滞在記

 8月8日午後5時半頃の京都鴨川三条大橋に行くと夕暮れが始まりかけていました。6月22日の夏至からもう1か月半もたっていますから夕暮れが少しはやまってきたんだなあと思いました。京都北山(丹波山系)の山々もこの時間になると、西山山系に落ち始めた夕日の光を受けて、かすかに橙(だいだい)色がかってきています。

 三条大橋の上で浴衣姿の女性が二人お互いの写真を撮っていました。中国系の人らしく中国語会話をしていました。と、そこに偶然に、「(KOJIN)きりんタクシー 煕麟日中双語的士」と車体に書かれたバン型タクシーが信号待ちで止まりました。日本語と中国語が両方とも対応できる的士(タクシー)という意味です。中国からの観光客の増加でこのようなタクシーも営業されていました。三条大橋の西たもとには、もともと京都発祥 大衆中華料理店の「眠眠」の店と「餃子の大将」がありますが、新しく4階建ての中華料理店が最近オープンしました。かなり一品一品の料理の値段が高い高級中華料理店です。この店の鴨川べりには納涼川床席もあって、夕暮れが始まった鴨川の風情を見ながら料理やビールを楽しむお客さんの姿もみられました。ウエイトレスは涼しげな水色のチャイナドレスでした。

 川べりに下りていくと、鴨川のそばで涼しさを求めきた人たちが多くいました。38度の高温・酷暑が10日間あまり連日続いている京都ですが、欧米系・アジア系を問わず、外国からの観光客はとても多いです。特に中華圏から来ている観光客が多いのですが、中華圏の観光客の人たちは、「家族や親せきの人たちが4〜10人くらい」で日本に観光に来ているのが目立ちます。ベビーカーを押しながらの人たちも多いです。私が中国から帰国したり中国に戻ったりする時の飛行機便の中は、いつも家族・親戚の団体の人たちも多く、とてもやかましいくらい賑やかです。

 この酷暑の中、10人くらいの中華圏からの団体客が、ベビーカーを押したり、小さい子を抱きかかえたりしながら街中を歩いている姿をよく見ていて、「この酷暑の中、よくも日本に来てくれました」と感謝の気持ちになります。特にお年寄りが辛そうに歩くようすを見ると気の毒に思ってしまいます。

 でも、ようやく、この夕暮れ時の時刻になった鴨川べりにきた外国人観光客たちに 楽しそうな笑顔が見られ始めてくるのです。澄んだ川の流れ、20~30羽あまりの鴨(かも)や雁(がん)や鷺(さぎ)が水辺で泳ぎ水を飲む姿、段差のある川のせせらぎの水音、京都の鴨川です。川の中に足をいれたくもなります。笑顔がこぼれます。中国の都会では、このような澄んだ川面は見られません。世界的にも京都ぐらいの大きな町で、このような澄んだ川を見ることは、なかなかないのではないかと思います。

 夕暮れ時にここに来た人たちの笑顔を見ると、「京都に鴨川があってよかった」と思います。100軒ばかりある鴨川沿いの納涼川床の席に、ぼちぼちとお客さんが入ってきていますね。

 仰向けにねころばっている人もいます。ゆかたを着ている女性の向こうには、橙色の光が川面に映っていました。気温も少し下がってきています。なでるような川風が心地よいですね。

 四条大橋に上がると、北山方面の山々の上の空も少し橙色(だいだいいろ)に染まり綺麗です。その景色をずっと静かに眺めている外国の観光客、橋の欄干は賑やかな中にも 景色に見惚れているという一種の静けさもあります。四条大橋の東たもとにあるレストラン「菊水」の洋風ビルディングや南座(歌舞伎)の建物が夕日に照らされてこれも美しいです。

 四条大橋の南側歩道で「アジア的な弦楽器」を演奏している人がいました。幽玄な中にもアジア的というか日本的というか、そんな旋律の曲が四条大橋に響きます。美しい、この夕暮れの景色ともとてもよく雰囲気の合う曲が続きます。立ち止まって曲の演奏を聴きながら佇む人が多いです。中国からの観光客でしょうか、緑っぽい中国古代衣装を着ている女性が腕組みをしながら演奏に聞き惚れていました。

 中華料理の老舗「東華菜館」のクラッシックな建物と演奏者と鴨川と四条大橋と夕暮れの夕焼けと聴衆が組み合わさった光景はなんともいえません。酷暑の中、一日を過ごさざるをえなかった外国からの観光客も、ここになってはじめて、「京都に来てよかった」とこの暑い季節は思うかもしれませんね。西山山系にだんだん夕日がおちていきます。四条通が橙色にそまってきました。

  午後7時頃になると夕闇が鴨川を包み始めました。川床の提灯の灯が川面に浮かびます。鴨川周辺の先斗町や祇園や木屋町には6000軒ほどの飲食店があります。外国からのお客さんは、「今日はどこの店に入ろうか」とぶらぶらと花街を歩いたりしています。この先斗町・祇園・木屋町という広いエリアに、数千件のもの飲食店がかたまり、かなり多くの伝統家屋が残る飲食店街というものは世界的にもここぐらいです。世界文化遺産に登録されるべきエリアだと思います。

 夕日も落ちて少ししのぎやすくなりました。鴨川べりから柳ごしに東華菜館を見ると、上に三日月の月が上がっていました。四条大橋西べりの京阪電鉄「祇園四条駅」の入り口付近で、若い人のバンドが歌を歌っていました。駅構内に入ると、京都観光を終えた外国人観光客が大阪のホテルにいくのでしょうか、大阪行きの特急列車に乗る人も多かったです。

 京都は神社仏閣、桜や紅葉など、いろいと季節によって見どころも多く、「日本に 京都があってよかった」と思う町ですが、やはり京都の一番の魅力は、この鴨川かと思います。

◆「東華菜館」は中国料理の老舗ですが、値段はそう高くはありません。「ちょっと値がはるがまあいいかっ」という感じです。屋上ビヤガーデンは値段も手ごろですし、鴨川や東山連山や西山連山、京の市街地を見下すことができる絶景です。この菜館には、アジアで最も古い歴史をもつエレベーターがあります。エレベーターの前には、ボーイが立っていて、エレベーターに誘導してくれます。ちょっといい雰囲気の体験ができますよ。