10月22日(土)、「2016年度福建省大学日本語スピーチコンテスト」が閩江大学を会場に行われた。福建省には92の大学があるが、外国語学部の日本語学科がある大学は18ある。中国では大学の日本語学科が多く存在する省の一つである。(他には、遼寧省や上海市など) スピーチコンテストの審査員(7人)を依頼され、午前7時45分より「審査員会議」が行われるので、午前6時すぎにアパートから大学に向かった。
8時から開会式が始まり、来賓などの紹介があった。閩江大学の学生たちが大会ボランティアとしてたくさん参加していた。「中国人民対外友好協会(北京市)」の国際交流部部長の大会挨拶の後、審査員7人が紹介された。[関西大学教員(日本人)・慶応大学教員/福州大学教員(日本人)・厦門大学教員(日本人)・華僑大学教員(中国人)・閩江大学教員/私(日本人)・日中翻訳会社社長(中国人)・福建師範大学教員(中国人)]
9時から「課題スピーチ」が始まった。「課題スピーチ」のテーマは、今年度は①「未来を担う覚悟」②「世界に紹介したい中国文化」の2つからどちらかを選んでスピーチをすることになっていた。16の大学から16人の学生がスピーチをした。
私の教え子が2人、福建師範大学(劉さん)と閩江大学(嫣さん)の代表としてスピーチ参加をしていた。この1カ月間、原稿の添削依頼などを頼まれた学生たちだった。スピーチ練習も他の教員たちから 何度も特訓を受けて今日を迎えた。
―福建師範大学の劉さんのスピーチ原稿―「世界に紹介したい中国文化」
皆さん、こんにちは! ようこそ「世界に紹介したい中国文化」をめぐるテーマの舞台へ。
中国は他民族、多文化の国で、洗練された様々な文化が 我々中華民族独特の魅力です。その中の一輪の花―服装の姿も千姿万態、つまり 様々な姿や形があるといえるでしょう。
三年生の時、幸いなことに、私は日本人先生のアシスタントになりました。それで、よく先生のアパートに行きました。ある日、ルームメートの張さんと一緒に行きました。彼女は漢民族の服、すなわち漢服が大好きで、その日も綺麗な漢服を着ていました。一歩入ると、先生は驚きのあまり、「わー、綺麗ですね!」と叫びました。食事中も「張さんの服がゆったりとしていて、爽やかな感じだなぁ」と言いながら、カメラを出して写真を何枚も撮りました。
それから先生は、「この服は和服に似ていますね。どこの服ですか。」と聞いたら、「漢民族の服です。周朝から明朝まで長い歴史を持っている服です。」と張さんは答えました。私は「似ていますけど、漢服の袖は わきの下から袖口まですごく広くなっていて、柔らかい感じがしますね。また、袖の幅も和服より広く 「八」の字のようになります。薄い帯は前で結ぶので、風が吹いている時、なんだか服は流れているような感じがします。」と言い添えました。興味をひかれたので、先生はインターネットで漢服の種類とか、スタイルとか いろいろと調べながら、私たちと それについての文化を詳しく話し合いました。おかげで、中国人である私も もう一度 漢服の魅力を味わうことができました。
間もなく、先生は閩南地域の恵安へ行ってきて、にこにこ笑いながら、綺麗な服を一着見せてくださいました。一見して、恵安の女性の服だとわかりました。「地元の人の着る服には特徴があって、青い上着が短くて、黒いズボンが太いんです。なんと奇妙な服だと感じていますが、なぜこんなデザインになったか知りません。」と言ったので、私はその服の由来と勤勉な恵安の女性のことを話しました。実は恵安県では女性は主に外で海の 「貝」をとる仕事をするのです。このようなデザインは便利で ちょうどふさわしいのです。 「素晴らしいですね。その服の文化が分かったあと、その大切さを心から感じられますね。日本に帰って、友達に紹介したいです。」と先生は感心しました。先生の気に入った様子を見て、中国人である私も誇りに思いました。
大学へ帰る途中で、いろいろ考えました。世界各国の伝統的な服装といえば、日本は和服(着物)、韓国は韓服(チョゴリ)、インドはサリーなどです。中国なら、ほとんどチャイナドレスを思い浮かべるでしょう。でも、中国は他民族で、服装も民族や地域によって違います。漢服でも恵安の女性の服装でも、綺麗で独特な服装なので、それに含まれる文化を 日本人にだけでなく、世界の人々にも紹介したいと思っています。
中国は歴史が長く、文化が多彩です。輝かしい服装文化もその重要な一環です。諸民族が長い間 心の中に秘めている祖国への感情、これこそ 親に対する愛情のように切り離すことができないものだと思えてきます。このような深い愛情を語っているのは 各民族の それぞれの服装です。「56の民俗、56の花」という通り、56の花が世界の大きな舞台で咲いたら、中国文化の豊かさも世界で広がっていくと信じております。
ご清聴ありがとうございました!
◆昨年度、劉さんは 福建師範大学で 私の学生アシスタントをしてくれました。中国での生活などのサポートをしてくれて助かりました。劉さんの故郷は、福建省泉州市の山間の町のようです。この泉州市の海辺に「恵安地区」があり、劉さんもこの地区のことを 知っていたようで、いろいろ教えてもらいました。
※次号に続く