彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国の国営紙:「サイゴンの昨日、カブールの今日、台北の明日」と—アフガン情勢を巡って

2021-08-21 09:25:00 | 滞在記

 中国のアジア支配において、中国と対抗するインドの包囲網の地政学的に重要なパーツの国としてミャンマーとアフガニスタンがあった。この両国がこの2021年8月までに中国の影響が格段に強くなる国となった。残るは東南アジアのタイやマレーシア、ベトナムなど。特に中国の一帯一路政策において、ミャンマーとアフガニスタンは中国と国境を接し、地政学的にも要衝の国。アフガニスタンと国境を接するパキスタンはインドとの対立関係があり親中国の国であり、イランは中国やロシアと準軍事的同盟関係があるとも言われるくらい反米・親中国の国。

 この8月15日にアフガニスタンの首都カブールがタリバン勢力によって陥落占領され、新国家樹立が宣言されることにより、インドや中国の西に位置する中東アジアの大国であるイラン・アフガニスタン・パキスタンの三国が反米親中国の国家となった。

 2016年にアメリカでトランプ政権が成立し、アフガニスタンからの米軍の段階的撤退が開始された。それまでEU諸国(英国・フランス・ドイツ・オランダなど)の軍隊や米国の軍隊がアフガニスタンに駐留していたが、米国の段階的撤退方針により、他の国々も撤退をすすめ始めた。このためタリバーン勢力が攻勢を強め、2018年にはアフガニスタン国土の46%はタリバーンの勢力下へと変貌して来ていた。そんな流れの中、2019年12月には日本人の中村哲さん襲撃事件も起きていた。

 2021年9月までに米国は撤退を完了する方針だったが、それを待たずして、8月に入りタリバーン勢力は各州の州都を陥落させ支配下に治め、8月10日には首都カブールはタリバーン勢力に包囲される。戦乱の中、多くの避難民が全土に溢れた。

 8月15日、タリバーン勢力はアフガニスタンの首都カブールに進行した。アフガニスタンの政府軍の兵士たちはタリバーン軍の侵攻前に全軍逃亡し、大統領は飛行機で国外に逃れた。このような状況下、首都カブールの空港に数千人のアフガンの人々が国外に逃れるために押し寄せた。米軍の大型輸送飛行機に乗り込めて国外に脱出した人も数千人にのぼった。

 中国のインターネット報道記事や動画報道を見ていると衝撃的な映像が流されていた。離陸し飛び立った米軍の大型輸送機にしがみついていた7人のアフガン国民が空中から地面に落下していく映像だった。

 この映像は、中国国内にとどまらず世界に発信され拡散していった。今日、Yahoo Japanのネット記事を見ていると、この飛行機から落下した少年のことが掲載されていた。「タリバンが怖い。国外で人生を変えたい—少年は飛行機にしがみついた。16歳以下のサッカー代表選手だった少年(ザキ・アンワリさん)の夢は断たれた」と‥。

 現在、ここ首都カブール空港は、米軍5000人あまりが残留し人々の国外脱出作戦を進めるために、タリバーン軍と対峙している。「せめて子どもだけでも」と、赤ちゃんや小さな子どもを壁の上に立つ米兵に託す動画もSNS上で拡散している。米軍が退避の対象にしているのは米国人の他、元米軍通訳などのアフガニスタン人協力者や家族らで、これまでに7千人を退避させ、さらに手続きを終えた6千人あまりが出発を待っている状況という。

 首都カブール市内では、タリバーンの侵攻を前にして、商店などは"反イスラム的"とも言われかねない、女性のウエディング姿の壁画などを消していた。市中にタリバーン軍の兵士たちが侵攻してきた。

 このカブール陥落で、カブール空港のようす、特に飛行機から7人の人間が落下する映像は衝撃的だった。今年1月に米国のトランプ前大統領の支持者たちが米国議会を襲撃した時の衝撃的な映像に続き、米国の権威の喪失的な印象を強く世界に焼き付ける映像でもあった。特に中国国内ではこの2つは何度も何度も繰り返し報道されていたようだ。

 8月16日は、日本の大手新聞は休刊日だった。このためこのアフガニスタン情勢は17日に掲載。8月17日付朝日新聞には、「タリバン勝利宣言—アフガン政権崩壊、大統領国外脱出」「攻勢10日 首都占拠—米国では撤退賛成7割、敗北バイデン政権」「アフガン市民 不安と怒り—20年間の積み上げた夢一瞬で」「アフガン混乱置き去り—米軍機へ同乗求め数千人―空港映像"失敗"の象徴」などの見出し記事が掲載されていた。

 8月19日付朝日新聞には「米軍撤退 台湾に余波—中国紙など"アフガンから教訓を"」「タリバン融和姿勢強調—女性の人権"尊重" 敵対勢力"政権に"」「軍事限界 バイデンは学んだ—現地の安定に腐心、支持した"対テロ戦争"泥沼化」「抗議の市民に発砲 女性キャスター交代」「欧米諸国 割れる対応—米静観 EU協議 独援助停止」などの見出し記事が掲載されていた。

 8月に入り、タリバーンが各州都や首都への大攻勢を展開し始める数日前の7月28日、タリバーン幹部たちは中国に招かれて、中国天津で中国の王毅外交部長(外相)と会談をしていた。このタリバーンの代表団は、バラダル師が率いていた。

 8月15日のカブール陥落によるアフガニスタン政府崩壊後、中国の耿爽国連大使は国連で米国のこれまでのアフガニスタン政策を非難した。また、中国の華春瑩外交部報道局長は16日、アフガニスタン情勢について「各党派、民族と団結し、国情に合った政治的枠組みを確立することを望む」と述べた。タリバーンによる政権掌握を事実上容認した。イランの大統領は、タリバーン政権の樹立を歓迎すると発表。ロシアも歓迎の意向かと思われる。

 8月18日付、日本の「夕刊フジ」紙は、「アフガン崩壊 中国暗躍」「タリバンのアフガン制圧、中国にとって大収穫」の見出し記事を掲載していた。

 今日8月21日、中国のインターネット記事には、「バイデン惨敗—世界は中国が第一へと」「中国への対抗失敗—バイデン緊急会議招集」「米国は恥辱の時を迎えた」「今日のアフガン 明日の台湾」などの見出し記事が列挙されていた。

 中国共産党系新聞「環球時報」は17日付で、「米軍の撤退でタリバンがアフガニスタンの首都カブールを陥落させたのは、ベトナム戦争の終盤に米国が同名の南ベトナムを放棄し、サイゴンが陥落したことを思い出させる」とし、「サイゴンの昨日、カブールの今日、台北の明日」と表現した。

 さらに、「米国がアフガン政権を棄てたのはアジアの一部地域、特に台湾側に大きな衝撃を与え、蔡英文民進党政権を震え上がらせただろう」とし、「米軍の撤退でアフガニスタン情勢が急激に変わったのは、台湾の運命を暗示する前兆かもしれない。米国は危機状況でアフガンのように台湾を見捨てるだろう」と主張した。また、中国の国営メディアは一斉に、「台湾はアフガニスタンの経験から教訓を得るべきだ」と報道した。これらの報道に合わせるように、台湾海峡周辺では中国軍による大規模な軍事訓練を行い、台湾を威嚇した。

 8月21日付朝日新聞には、「国旗掲げアフガン市民デモ―タリバン発砲死傷者」「米軍撤退 バイデン氏苦境—民主党内でも批判噴出、支持率 就任以来最低」「タリバン幹部 中国のTVで"アフガン女性 自由を享受"と主張「中国 "崩れる米国"に自信」などの見出し記事が掲載されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


超厳格な「ゼロコロナ政策」の中国と「コロナ共存政策」の多くの諸国—日本の対策は‥

2021-08-20 13:55:40 | 滞在記

 東京オリンピックに出場した中国選手団777名と中国からの大会関係者など千数百名、その多くはオリンピック閉会式翌日の8月9日に中国に帰国した。88名のメダル獲得選手なども含め、その再入国者全員が3週間~4週間の厳重な隔離生活を帰国後から過ごしている。今日8月20日で隔離生活10日目あたりとなるのかと思う。

 海外からの渡航者に対する隔離措置は、より厳しくなることはあっても、一貫して絶対に緩めないのが中国だ。(※空港周辺の隔離者用ホテルで2週間、自宅で1週間の合計3週間の隔離生活が多い。しかし省や市によっては2週間の自宅隔離を義務付けるところもある。) オリンピック金メダリストであっても隔離政策に容赦はない。

 私が勤める中国の閩江大学から日本の広島大学への留学生(3回生)は10日ほど前に中国に帰国した。また神戸の女子大学に交換留学をしていた学生たち3名(3回生)は、今日20日に成田空港より中国に帰国する。3週間の隔離措置があるため実家に戻ることはできず、隔離終了後はすぐに9月上旬から始まる予定の大学の授業に参加する。日本からの帰国後、彼らが故郷に戻れるのは来年の1月になるようだ。

 春節開始を今年の2月10日頃に控えていた中国では、今年の1月上旬頃から中国北部の山西省や北京市、中国東北部の遼寧省や吉林省などで新型コロナウイルスの従来株の感染拡大が起きた。そして、1月中旬ころにはさらに感染拡大が広がり、ようやく春節前の2月上旬に新規感染者を激減させた。このため、春節期間は他の省への渡航や帰省は特別な事情がない限り強力に規制された。そして約1カ月間あまりで感染を収束させていった。

 それから半年後の7月10日、再び感染拡大が起きていた。今回はロシアのモスクワの空港から中国江蘇省南京の空港への入国者のうち7人ががデルタ株に感染していたことが空港のPCR検査で判明した。乗客はすべて濃厚接触者として隔離施設に送り込まれたが、7月20日の定期的な空港従業員全員のPCR検査を行ったところ、機内清掃員17人が陽性であることがわかった。ロシアからの飛行機の清掃にもあたっていた清掃員たちだった。

 彼等は、このモスクワからの飛行機の清掃にあたっても、防護服に身を包み機内清掃にあたっていたのだが、防護服を脱ぐ時に感染防止の注意が行き届かなかったらしい。これらの清掃員は、国際便だけでなく国内便の清掃にもあたっており、このため、南京市内だけでなく、中国各地にデルタ株の感染が広がっていった。8月6日には中国全土での一日の新規感染者数は100人あまりにのぼる。中国の武漢でも1年ぶりにコロナ感染者が報告された。

 一人でも新規感染者が確認された市では都市封鎖が行われ、住民全員のPCR検査が実施された。また、7月10日以降の感染や濃厚接触者のルート(クラスタールート)は徹底的に調査され、中国国民の携帯アプリにそのルートが知らされているというその徹底ぶりには改めて驚かされる。7月10日以降からの全国の感染者総数は2500人あまりに上ったが、8月10日以降は新規感染者数は減少し、8月15日になり、コロナ感染新規拡大は江蘇省や河南省、湖北省の3省の地域での24人までに抑え込んでいるので、8月中には新規感染者ゼロを達成できる見通しがたってきている。この中国での感染拡大におけるデルタ株の特徴としての空気感染(エアゾール感染)の怖さが改めて確認された。

 世界の多くの国々が「コロナとの共存」政策をとる中で、中国は「コロナゼロ政策」を徹底してとってきている。「世界で最も厳格」と誇る「ゼロコロナ政策」だ。ある中国在住の日本人は、「中国国内を移動した際に、万一、移動先で感染者が1人でも確認されれば、何週間もその地で足止めされる。1000万人を超える市民がPCR検査を義務づけられる。中国に滞在する私たちにとって日本はどんどん遠くなっている。一旦、中国を離れれば、再び中国に戻るためには3週間の隔離が待っている」と語る。

 そのような世界一厳しい「ゼロコロナ対策」に対し、中国の著名な感染症専門家で上海復旦大学の張文宏教授は、「ウイルスとの共存政策」も考えるべきとの提唱を最近行った。反響は大きく、ネット上には賛否両論が相次いだ。しかし、中国当局は「ゼロコロナ政策」への懐疑が広がることには強い警戒感を示している。このため、張教授を学会から締め出す動きともなっているようだ。また、中国江西省の教師が8月10日、この張教授のウイルス共存論に同調するSNS投稿を行った。すると地元警察は「不適切な言論で社会に悪影響を与えた」として、教師を拘束し、15日間の拘留を決定したので、今も拘束中かと思われる。

 全人口14億1200万人の中国では、この8月中旬までに18億3500万回のコロナワクチン接種を行っている。それにともない7億7000万人が2回の接種を完了していると報告された。これは中国人口の55%にあたるが、今年中には2回接種者を全人口の70%を目指している。

 この7月16日、WHOのデドロス事務局長は、加盟国との会合で、「(今年1月に行われたWHOの中国での調査だけでは、武漢ウイルス研究所流出説など)いずれの仮説をも否定するには十分な科学的根拠がないと判断される。コロナの起源を調べるために初期の感染者データ・感染の疑いのある人の血清調査などが第二回目として必要」として、武漢ウイルス研究所も含む追加調査を提案した。

 この提案に対し、中国側は強く反発し、調査協力に応じない姿勢を示している。あと半年後に迫った2022北京冬季オリンピックへのボイコット問題を払しょくするためにも、このWHO提案に応じた方が賢明なのだか、なぜか中国政府は応じない‥。

 米国のバイデン大統領はこの5月に「90日以内にコロナ起源の新たな証拠や資料を調査し発表せよ」と関係機関に命じた。その90日期限は来週に迫っている。

 日本における第五波感染の爆発的傾向が続いている。昨日8月19日には一日に2万5000人の新規感染者数を超えた。このまま推移すれば、8月下旬には3万人超となるかと思われる。この5月の京都大学医学部の西浦教授の「第五次デルタ株による感染者のピークは9月下旬から10月上旬頃」との予測が現実味をもってきている。

 IT大手のYahoo Japanによる最近のインターネット投票調査では、約80万人の検索読者のうち80%の人が「ロックダウン(都市封鎖) をすべき」に投票していたのにはちょっと驚いた。それほど日本国民の間に、このデルタ株による第五波の爆発的感染拡大に危機感をもってきている証の一つなのだろう。このような調査結果も念頭にいれてか、吉村大阪府知事は「ロックダウンに準じた措置も必要な事態」と一昨日に発言した。PCR検査がほとんど行われていない日本の感染対策下、「無症状感染者による感染誘爆・隠れ陽性者 把握困難」(夕刊フジ)などの状況となっている。早いところでは今週末から小中高校は夏休みが終わり新学期も始まる。このデルタ株は、小学生などの子供への感染事例も多く報告されるようになった。

 先日、NHKスペシャルでこのデルタ株の特徴についての説明がされていた。それによると、①感染力がとても強く、従来株の2倍の感染力をもつ。それは、人体の細胞にいち早く多く感染させる力をもつため、ウイルスの量も多くなり、ヒトへの感染力が倍化している。また、感染者は重症化しやすい。②コロナワクチンを2回接種して、コロナ免疫システムをもつ人でも感染をする。それはこの変異種ウイルスは免疫防御システムから発見されにくい特徴をもつからだ。

 国民のワクチン2回接種率が世界で最もすすんでいる(80%)イスラエルでは、最近ではコロナワクチンの有効率は64%との報告がされている。イギリスでも国民の75%の接種が進んでいるが、最近の7月のピーク時には1日5万人もの感染者数が発表されているが、その死者数はこの1月のころの同程度の感染種数の時と比べて、ワクチン接種が進んだため重症者数が大きく減少し、死者数も10分の1程度となっている。日本ではワクチン接種率はこの8月中旬時点で、一回接種者は国民の50.34%、二回接種者は40%程度となった。

 「ブレークスルー(ワクチン2回接種者も感染する可能性)も多くなる状況下、3回目の接種も不可避」(夕刊フジ)も必要となってきているようだ。先日、河野ワクチン担当相は「3回接種のための量は確保している」と報告していた。また、あらたに南米からの「ラムダ株」の日本上陸も伝えられた。

 今のところ日本では、「ワクチンを2回接種すれば、デルタ株への感染可能性比率は半分以下となり、もし感染しても重症化が防止できる」ということは確かデータのようだ。隣国の韓国での1回目のワクチン接種累計は2300万人と、総人口の43.6%。日本と似たような接種率状況だ。(英国アストラゼネカ製ワクチン1066万人、米国ファイザー製ワクチン962万人、米国モデルナ製ワクチン94万人)  2回の接種を受けた人の割合は全人口の20%と報告されている。

 日本の新型コロナ対策は典型的な「コロナとの共存政策」だ。陽性者を探り出すためのPCR検査はほとんど進めず、都市のロックダウン政策はしてきていないし、法的にも現在のところロックダウンができない。しかし、やはりコロナ対策の基本は、「①PCR検査の広範な実施、②陽性者(無症状者含む)の隔離が基本中の基本だ。さらに、③ワクチン接種、この①②③を実施しない限りいつまでもコロナ禍は安心できるものとはならないだろう。

 そして④感染者(陽性) を軽度・中度・重度にかかわらず病院で治療する医療体制の整備が重要だ。コロナ分科会の尾身会長などは、「人出の5割削減」や「オリンピック・パラリンピック開催への疑問」などは提言するが、この医療体制に対する提言はこの1年間、何も行ってきていない。自身が3つの大病院を経営するためだろうかと思われる。自宅療養者が何万人にも達していて命の危機が叫ばれている中、一般病院でのコロナ病床の増設や野戦病院的な施設の設立などが緊急に求められているにも関わらずである。①②に関しても尾身氏は何も言ってこなかった。

 安倍前首相の政権下からコロナ対策はこのような状況で、菅政権下でも組織的な戦略を確立できていないままずるずると1年半が経過してきている。ひたすら今は③のワクチン接種率の進みぐあいに頼るだけのものとなっているのは、根本的な戦略の転換が必要だ。

 ワクチン接種のかなりすすんでいる米国でも、この8月に入りデルタ株による感染爆発が再び起きていて、1日の新規感染者数が20万人超となっているようだ。特にワクチン接種がすすんでいない州での感染が多いとの報告。

 思うに、日本はコロナ対策で最も緩い国の一つになっているようだ。やはり、コロナ対策の基本①~④を実行する政治力が必要となっている。ロックダウン待望論も出てきているが、これだけ全国に感染者が増大するなかで、はたして東京や大阪などの都市のロックダウンをとっても効果がでるのかどうかも疑問だが。

 緊急事態宣言が13都府県、蔓延防止措置が16道県の合計29都道府県に適用されている現在。このお盆に故郷の福井県南越前町にお盆帰省を妻と共にした。娘たち夫妻や孫たちも南越前町に一泊予定で来る予定だったが、コロナの状況や連日の大雨の状況を考えて来ることを取りやめとした。ちょっとさみしいが静かなお盆を、母と妻と私の3人で過ごした。

 妻の実家のある京都府京北町にこの8月16日と19日に行きお墓参りなどをした。道沿いに「居酒屋の灯を消すな—コロナ自粛には補償を―」と書かれた日本共産党の看板が立てられていた。今回の第五次感染拡大に伴う飲食店の休業・時短・禁酒要請に、かなりの飲食店やパブが閉店をやむなくされることが予想される。飲食店は大変だ。

■あと4日後の8月24日、東京パラリンピックが開催される。思えば、7月24日の東京オリンピック開会式に、安倍前首相は欠席をした。今回の東京五輪・パラリンピックを開催した中心的な人物の恥も外聞もない突然の欠席には、唖然とさせられた。こんな人でもあったのだ‥。

 

 

 

 

 

 

 


東京五輪が閉幕して❷—海外の受け止め方は‥

2021-08-16 09:11:44 | 滞在記

 8月8日、東京五輪が閉幕した。翌日9日から最近までの朝日新聞には、この東京五輪を振り返って4人の人の記事が掲載された。「モノクロームな心 選手が色を点けてくれた」という見出し記事は歌手の小林幸子さん。「厳しいことばかりの世の中—五輪は"鎮痛剤"」という見出し記事は音楽家のヒャダインさん。「ネガティブな教訓 検証してこそレガシー」(※「レガシー」の意味は"残すべき遺産・財産")という見出し記事を掲載した筑波大学准教授で社会情報学者の落合陽一氏。「内輪に閉じた東京2020五輪―世界に開かれた1964夢見る時代錯誤」という見出し記事は慶応大学教授で社会学者の小熊英一氏。

 閉会した東京五輪についてはさまざまな意見がある中、海外の受け止め方はどうだったのだろうか。アメリカのワシントンポスト紙の論評、アメリカのニューヨークタイムズ紙の論評、外交専門のオンライン誌の論評、中国メディア環球時報の論評、イギリスBBC放送など、いろいろな海外の受け止め方の記事を読んでみた。いろいろな論評にかなり共通することは、いつ終わるともわからない新型コロナウイルスの世界的パンデミックの状況下、「異常なパンデミック下での五輪だった。その中でも日本は努力した。開催されてよかった。」というものだ。

 外交専門のオンライン誌に「東京五輪を開催した日本は正しかった」と題する米国ハドソン研究所上級研究員のジョン・リー氏の寄稿文が掲載されていた。寄稿では、東京五輪の開会式までは「多くの人が五輪開催を無責任で危険なものだと酷評していた」が、開会式が近づくと否定的な意見が減少したとして、五輪開催の意義について「多くの人が考えを改めたことだろう。五輪開催の判断は勇気あるものだった。また、賢明な判断であり、このパニックの中で、トンネルの出口に光が見え始めている世界にとって必要な強壮剤でもあった」と綴っていた。また、感染対策については、「11000人を超える参加者の中で、24人のアスリートを含む276人の陽性者が出ただけで(注:8月2日時点)、ほぼ成功している」と綴った。

 米国のニューヨークタイムズ紙は、「思い出に残るオリンピック。その理由は正しいものか?」と題して、記憶に残る大会だったが、果たして五輪開催は正しいものだったのだろうかと問いかける検証記事を掲載していた。英国ガーデン紙は、「日本人の親切さと異常なまでのコントロール」をテーマに東京五輪を取材したバーネイ・ロネイ特派員が、五輪の特集記事を掲載していた。

 また、イギリス公共放送BBSは、「サヨウナラ!」と銘打った速報記事で、「我々はもう東京オリンピックが開催されないと思っていた。だが、彼らは見事に大会を成功させ、世界を楽しませた。多くの日本人が不確実性、疑い、怒り、懐疑を抱いた中で、延期の末に進行していった今大会について、"成功"という答えを保留している人もいる。その一方で永遠に記憶に残る時を過ごした人々がいるのも事実だ。我々はこの時を永遠に忘れない」と伝えた。また、このBBC放送の東京五輪閉会式でコメンテーターを務めたアンドリュー・コッタ氏は「私たちは東京で開催された2度目のオリンピックを忘れることはない。世界的困難の中で開かれた今大会は、永遠に語り継がれるものになるだろう。ありがとう、東京。」と語っていた。

 この東京五輪はすべてが異例ずくめの開催となった。選手村では軽微ないくつかの感染防止の違反事例も生まれはしたようだ。選手も含めた五輪関係者のコロナ感染者数は最終的[8/11時点]に511人に至った。(海外からの五輪大会関係は選手を含めて5万3000人。あと日本国内の大会関係者はボランティアを含めて数万人にのぼる。大会を通じての感染者数は参加者の1%にも満たなかった。かなりの感染対策を行った今回の五輪は、感染防止という意味ではほぼ成功だったのだろうかと思われる。) 

 東京などでの緊急事態宣言下のもと開催された東京五輪の最終盤には、東京都は1日の新規感染者数が5000人を出す事態となっていたが、これは無観客での東京五輪開催が影響したものではないとは今のところ言われている。(おそらく、五輪が中止となっていたとしても東京の感染状況は似たようなものだったのかと推測される。それくらい日本における第五波のデルタ変異株の感染力は強烈なのだろう‥。)また、東京五輪を人々が自宅でテレビ観戦し、外出を抑制していたことも事実だ。逆に五輪が開催されていなかったら、日本の感染者数はもっと多くなっている可能性もある。

 この夏の東京五輪開催に一貫して中止を主張し続けた日本共産党。政党機関紙の『赤旗・日曜版』(7月25日号)の一面は「感染が拡大—五輪は中止を」の見出し記事。8月8日号の一面は「もはや医療崩壊」の見出し記事。その見出しの下に(オリンピック開催後の7月25日号の見出しは、国民感情になじまない、さすがにまずかったと思ったのか)、とても小さく「オリ・パラ中止を」と書かれていた。「命と人権をないかしろ—中等症患者も"自助"か」のジャーナリスト青木理氏の記事が掲載されていた。

 青木氏はオリンピック閉会式が予定されていた8月8日のTBS・毎日放送の朝の日曜報道番組「サンデー・モーニング」でも、「デルタ株はたいへんな感染力で驚異」とした上で、「政府がロクな対策を取らないでオリンピックを強行したっていうことの影響は大きくて」と持論を展開。さらに「オリンピックをやってデルタ株で広がっちゃって」と五輪と感染拡大を関連づけ「予測された状況に、一定程度の対処もできていない」と政府を批判していた。

 まあ、サンデー・モーニングなどでのこの1年間の青木氏のコメントや発言を聞いていて、彼は日本の政治問題に関してはかなり優れたジャーナリストの一人だが、残念ながら国際状況を踏まえての国際的な視点・視野に弱さを感じる人だった。今回の東京五輪の開催の是非に関してもその視野は狭く、彼の勉強不足を感じてしまった。

 8月9日付の朝日新聞には、1ページを使って「さあパラリンピックへ―22競技539種目の熱い闘い!」が掲載されていた。あと1週間後には東京パラリンピックが開催予定だが、やはり心配されるのが、東京5000人・全国2万人超のコロナ感染状況だ。

 8月12日発売のスポーツ雑誌『Number』(東京オリンピック総集編)には、元スマップの稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾の「僕たち3人はここを見る!」と題された、東京パラリンピックに関する特集も掲載されていた。彼等はこの数年間、この雑誌を通じて数多くのパラリンピアン(選手)たちと対話をしてきている

 上記写真左より①②世界陸連会長のセバスチャン・コー会長。③④オランダのニク・キム選手。

 世界陸連のセバスチャン・コー会長は8月8日、東京都内のメーンプレスセンターで記者会見し、新型コロナ禍下で東京五輪が開催されたことに触れ、「コロナ下のこの条件下で開催されたことは奇跡にほかならない。選手に格別な舞台を用意してくれた東京には多大な恩義がある」とし、「(コロナが終息し)再び(観客が)楽しめる状況になったら、東京に戻ってきたい。(東京に)お返しがしたい」と述べて、将来的に東京での世界選手権開催に意欲を示していた。関係者によれば2025年の開催への含みだとのこと。2024年パリ五輪やこの2025年には世界的なパンデミックは終息している可能性はあるだろうが‥‥。

 東京五輪の自転車・BMX競技で金メダルを獲得したオランダのニク・キム選手は、自身のツィートで、「日本は元々好きな国だったのですが、また更に、親切な思いやりの日本に感動しました。コロナが落ち着いてから、旅しに日本に戻ってきたいと思います。たくさんの応援、本当にありがとうございました」と日本語で投稿していたのも印象に残った。

 


東京オリンピックが閉幕して❶国内世論は、開催して「よかった」6割、「よくなかった」3割

2021-08-13 11:14:40 | 滞在記

 この夏の開催について、日本国内では賛否が2分していた東京オリンピックが19日間の激闘を終えて8月8日に閉幕した。閉会式中継を録画しておいて翌日にゆっくりと全編を観た。各国の国旗が全て入場し、その後に各国の選手たちが国立競技場に一斉に入場した。肩を組み、健闘をたたえ合う各国の選手たち。思い思いにスマホを構え、会場のそこかしこで記念撮影が続いた。

 国内外で活躍するバンド「東京スカパラダイスオーケストラ」の軽快な演奏が始まる。「上を向いて歩こう」「愛の賛歌」「歓喜の歌」などの名曲が夜空に響く中、会場はリラックスムード。体を揺らす選手や、芝生に寝転ぶ姿も見られた。

 ほんの数秒だったが、180度の開脚をしている映像が流れた。あとで調べてみると、ウクライナの新体操のフリスティナ・ポプラニチナという選手だった。男子選手の肩に両足を乗せて見事な開脚姿を見せていた。(上記4枚の写真)閉会式ならではの光景だった。

 閉会式の中で、コロナパンデミックの鎮魂のダンスとその周囲を行く鎮魂の灯籠がとても印象的だった。東京音頭に合わせて、各国選手も踊っている姿も心に残った。また、ボランティアを代表している人たちが壇上に数名並び、ヒマワリのブーケを渡される場面には、私も「ごくろうさまでした。ありがとう」と少し胸が熱くなった。

 この閉会式で圧巻だったのは「光のショー」だった。選手たちの入場が終ると会場は暗転。選手たちが立つフィールドに色とりどりの光の粒が滝のように流れ込み、滝つぼに水が落ちるように広がり、そして舞い上がり五輪の巨大な輪が作られ始めた。どうしてあのようなものが創作できたのか不思議でもあった。そして国立競技場の電光掲示板に「ARIGATOU」の文字が映し出された。その文字を背景に記念撮影をする選手たちの姿が印象的だった。

 そして花火とともに東京オリンピックは閉幕の時を迎えた。国立競技場の周囲にはたくさんの人がつめかけ、この瞬間をスマホに撮影もしていた。

 この閉会式のテレビでの視聴率はかなり高いものだったようだ。前半(19:58~21:00)の視聴率は、個人31.5%・世帯46.7%。後半(21:00~22:00)の視聴率は、個人27.1%・世帯39.8%と翌日に報道されていた。日本のネット上では「やはりつまらん!」との酷評も多かったが、なぜこのように国民的に視聴率が高くなったのか不思議でもあったが‥。

 閉会翌日9日の朝日新聞には、「五倫 異例づくめ閉会—無観客開催 メダル最多」「幕は下りた 光を残して」などの見出し記事。「パンデミック終われば日本に―海外選手の帰国ラッシュ始まる」の見出し記事も。

 同じ9日付朝日新聞には、「菅内閣支持最低28%—支持しない53%」の見出し記事。この記事にはこの東京五輪開催についての世論調査も掲載されていた。それによると、①「開催されてよかった」56%、②「開催はよくなかった」は32パーセント、③「無回答」12%だった。同日の読売新聞には、1「東京五輪が開催されてよかった思うか」は、「よかったと思う」64%、「よかったと思わない」28%、「無回答」8%。2「どのように開催するのがよかったか」は、「無観客」61%、「もっと観客を」12%、「中止」25%、「無回答」2%。3「今後も日本で開催してほしいと思うか」は、「思う」57%、「思わない」38%、「無回答」5%だった。また、「菅内閣について」は、「支持する」35%、「支持しない」54%、「無回答11%」だった。

 朝日新聞と読売新聞の「東京五輪開催」の是非については数値に違いはあるが、ほぼ60%の人が「開催されてよかった」との世論調査の結果だった。また、「開催はよくなかった」はほぼ30%という結果だった。おそらく「どちらとも言えない」が10%前後。

 この閉会後も「開催すべきではなかった」という30%の人々は、新型コロナウイルス感染拡大を危惧してのことがその背景にあるが、政党的には日本共産党や立憲民主党は開催に反対し続けてきているので、それらの政党支持者には「開催反対」の思いを持つ人が多かったと推測もされる。また、菅内閣の支持率が五輪開催によって上昇せず、逆により低下したことは、五輪開催を一定評価しつつも、コロナ感染者のインド株による爆発的増加に対する対策のなさを厳しく批判する人々の思いがあるのかと思われる。

 

 

 

 

 


東京オリンピック、アスリートたちの数々の激闘を観た19日間—幕は下りた、光を残して

2021-08-13 06:06:04 | 滞在記

 7月21日(水)から19日間にわたって繰り広げられた東京オリンピックの激闘は、8月8日(日)に幕が下りた。光を残して。

 昨日8月12日(木)にスポーツ雑誌の『Number』が発売された。「完全保存版東京五輪激闘録」特集号だ。この雑誌『Number』は1984年に創刊されて以来、隔週号を発刊し続けて、今回の号で1034号となる。夏のオリンピックや冬季オリンピックが閉幕した直後には、その特集記事を掲載し続けている。

 今回の東京オリンピック特集号には付録のファイルがついていた。そのファイルには1984年のロサンゼルス五輪から2016年のリオネジャネイロ五輪までの夏のオリンピック特集号の雑誌の表紙が全て掲載されていた。(上記写真の左端①) その表紙に日本人アスリートの写真が使われているものが何号かあった。1992年バルセロナ五輪での水泳・岩崎恭子、2000年シドニー五輪でのマラソン・高橋尚子、2004年アテネ五輪でのマラソン・野口みずき、2008年北京五輪での水泳・北島康介、2012年ロンドン五輪での体操・内村航平、2016年リオネジャネイロ五輪での陸上4×100m(400mリレー)アンカーとして走るケンブリッジ飛鳥と米国のウサイン・ボルトの姿。

 そして、今回の2020+1年東京五輪では、卓球混合ダブルスの水谷・伊藤ペアがその表紙を飾った。今回の特集号では金メダルや銀メダル、銅メダルを獲得した選手たちなどの中で、卓球男女、体操の橋本大輝、体操男子団体チーム、水泳女子400mと200mメドレー2冠の大橋悠依が特集掲載されていた。

 また、体操女子の村上茉愛、男子サッカー、女子バスケットボール、野球も特集記事が掲載されていた。

 他には柔道の大野将平や阿部一二三・詩の兄妹、レスリングの川井梨紗子・友香子姉妹、空手の清水希容、ソフトボールの上野由岐子、そして水泳の池江璃花子などの特集記事も掲載されていた。

 最近の東京五輪関連の一連のブログで書いてきたが、私がこの東京五輪で大きな関心をもって試合を観戦していた競技としては①サッカー、②ソフトボール、③卓球、④バレーボールの4競技。それらの競技以外でも、五輪の試合中継を観ている中で、空手の型、女子バスケットボール、体操などの試合には惹きつけられた。橋本大輝の鉄棒の演技などには心が震えた。五輪最終日のマラソンコースで映し出された札幌の町並みや北海道大学構内は懐かしかった。

 男子サッカーは、決勝トーナメントの準決勝まで進みスペインと対戦、3位決定戦ではメキシコに敗れた。健闘はしたが、強豪国との力の差がまだあることを実感させらもした。男子バレーボールは決勝トーナメントでの準々決勝までの進出とまりだったが、まあ、それなりの実力と戦勝を積み重ねてはいた。

 女子サッカーは、残念ながら決勝トーナメントに進む力をチームとして精神的にも体力・技術的にももっていなかった感がある。これまでの高倉監督のチーム作り手腕には大きな疑問がもたれた。女子バレーボールは、残念ながら決勝トーナメントにのこれなかった。女子バレーボールは、中国が予選リーグ敗退という大波乱があった東京五輪。中田監督のチームのいままでのチームづくりの問題点も指摘されているが‥。韓国戦をなどを観て思ったが、日本には韓国のキム・ヨンギョンのような絶対的エースが不在なのが痛かった。

 陸上短距離走は国民的にも大きな期待がかけられていた。100m走全員が予選落ちで決勝に進めず、400mリレーでまさかのバトンミスでの棄権となった。とても残念だった。また、バトミントンの桃田選手の1次リーグでの敗戦は予想もしなかった。選手たちの再起を期待したい。

 上記写真左から①③ロシアのマリア・ラシツケネ、②ウクライナのヤロスラク・マフチフ

 他の競技では、女子走り高跳び競技に惹きつけられた。ロシアのマリア・ラシツケネ選手(28)は、最近の世界選手権で3連覇してきているが、ロシアのドーピング問題でまだオリンピックでの競技参加はなかった。今回の東京五輪が初めてのオリンピック。若手、ウクライナのヤロスラク・マフチフ(19)との金メダル争いが注目されたが、マリア・ラシツケネが勝った。五輪金メダルおめでとう。

 新体操競技は大会の最終盤に登場した。見ていて楽しく美しい。そして観ている方も緊張感がみなぎる演技の数々。五輪大会の華の一つだと思った。団体ではブルガリアが金メダルを獲得した。ハンガリーのファンニ・ピクニッキ選手の個人種目での演技衣装には驚かされた。衣装には日本の富士山・桜・金閣寺・紅葉・中央アルプスの山々・波が描かれ、さらに「強武士」と書かれた文字までが刺繍されていた。また、ウズベキスタンの団体演技では美少女戦士セーラームーンをあしらった衣装だった。

 猛暑というか酷暑の中の、東京五輪の真夏が幕を閉じた。インターネット記事のコメント欄の中には、「コロナ患者数の報を耳にする日常から、選手の活躍が沈んだ気持ちを和らげてくれる。」と。私もこの19日間そうだった。東京五輪の幕は下りたが、暗闇の幕の中の心の中に光は残っている。