9月の中秋節、宿舎の部屋まで、かすかに聞こえてくる音曲の音。今年も「閩劇(びんげき)」の一座が、宿舎の近くやってきた。庶民の古びたアパート群の一角にある小さな広場。ここに昨年も、この劇団の上演が行われていた。福建省の東北部(福州を中心とした)に伝わる伝統的な地方劇。この地方では、伝統的な節句には閩劇が各地で上演されるようだ。歌と舞踏と台詞(せりふ)で構成される劇の物語は、喜劇的な要素が多く見られる時代劇である。
中国の伝統演劇といえば「京劇」が思い出されるが、中国各地では長い歴史をもつ独自の演劇が数多くある。1600年に始まった閩劇はその一つである。
中国の「八大地方劇」といわれるものは、①京劇(北京)②昆劇(江蘇省)➂評劇(河北)④黄梅戯(安徽省)⑤越劇(浙江省)⑥粤(えつ)劇(広東省)⑦川劇(四川省)⑧豫(よ)劇(河南省)。
閩劇が上演されている会場の雰囲気は、1920~30年代の場面の映画の世界のような趣がある。客が観劇している場所の横にある団員の休息・控えの場所。古ぼけたビリヤード台の上に、多くの荷物や衣装がおかれている。赤ん坊に乳を飲ませている女団員の姿も見られた。
宿舎近くで週末(土日)に開催される露店。多い時には1000軒を越す露店が出現する。ここでは、色々な物が売り買いされている。鳥や蛇や亀や蟹なども売られている。上記の写真は、左より「骨董品の店店」「野鳥を売り歩く男」「蛇(手に蛇の頭下を持つ。背中のバックの中には十数匹の蛇が入っている。)を売り歩くお」。
自転車の前籠に売る物を入れて移動する女、八ッポースチロールの箱に蟹を入れて売り歩く女、天秤棒に野菜を入れて移動する男、新疆ウイグル自治区から来ているクルミ売りの男など、いろいろな物売りと買い物客でごった返す。
一昨日の日曜日、露店をぶらぶらしていたら、「阿房宮(あぼうきゅう)」を描いた大きな蒔絵が置かれてあった。阿房宮は、秦の始皇帝が都「咸陽」の近くの景勝地に築かせた宮殿(別荘)だ。値段を聞いたら2000元だという。欲しかったが値段が高い。また、司馬遷の「史記」の古本が置かれていた。とても欲しいが600元だという。あきらめた。(1元は約18円)
宿舎近くの河川公園には、大勢で喋り合う人々や「賭けトランプ」をする人々など、思い思いにすごす人々。福州の中国社会の多様性を感じる。1950年代から現在までの世界が、混ざり合うような中国社会。この混在性が中国という国の大きな魅力だと思う。