昨年の11月の今頃、3回生(現在4回生)の授業で、中国の結婚事情について学生達が、「中国では、家と自動車を男性が準備しなければ結婚できません。」と口を揃えて言うので、少々驚いたことがあった。ディベートの授業で、「結婚するなら、見合い結婚がいいか、恋愛結婚がいいか?」を実施した時も、学生達はかなり熱を帯びながらディベートをしていたのを思い出す。あれから1年間が経つ。学生たちの兄の結婚に関する事情や、様々なことを学生達と話したりするなかで、かなり「中国における結婚事情」というものが分かって来た。
福州市の「閩江公園」や「三坊七巷」という場所に散歩に行ったりすると、結婚をしたカップルが記念撮影(アルバム用)をしている光景をよく見ることができる。最近では、この光景を見るたびに、「よくぞ結婚までこぎつけましたね。辛苦了。(シン・クーラ)[お疲れ様でした。]。」という気持ちになる。それほど、中国において「結婚」に至ると言うのは結構大変なのだ。特に「男性」が------。
現在の中国では、大学の進学率が30%近くまで上昇を続けている。女子の進学熱も盛んだ。大学で教えている女子学生達に、「何歳までに結婚したいですか?」と聞くと、「3分の1が25歳まで・3分の1が27歳まで・3分の1が30歳まで・結婚しないが10分の1」となる。男子学生に聞くと、「2分の1が30歳まで・2分の1が33歳まで」となる。中国全土では、25歳までに結婚するというのが平均的な社会通念となっているようだ。(1970年代までの日本では、「女性は25歳までに、男性は30歳までに」が平均的な社会通念だった。)
中国共産党の報道部が最近次のような題名の記事を出した。「27歳までに結婚しない女性は、黄色く変色した真珠になる。」。この記事は、中国内外に波紋を呼んだようだが、最近の中国では晩婚化が進み始め、社会制度の基盤である結婚・家族制度が揺らぎ始めたことへの懸念を表明したものだ。所謂、中国政府版「結婚の勧め」記事だ。女性・男性ともに高学歴化が進みっつあるなかで、「剰女(ションニュイ)」といわれる女性たちの存在が社会問題とされている。「剰女」とは、30歳超で高学歴・容姿にも恵まれている独身女性のことだ。売れ残り女性という意味合いも強い。また、「剰男(ジョンナン)」とは、30才以上の結婚できていない男性のことで、買えない男性という意味合いが強い。
中国の人口では、男女の比率は120:100となっているが、一人っ子政策の影響で、例えば33才では293:100、27才では199:100となっている。このように結婚適齢期の年代の男女比率の大きな違いは、特に男性が結婚できない原因となっている。特に、農村部では若い女性が都会に出るケースが非常に多く、花嫁不足が深刻である。このため、特に中国中南部の農村では、結婚相手の見つからない中国人の男性が、国際結婚相談所を利用するケースが増加しているようだ。健康で若く働き者のベトナム人女性やラオス・タイなどの女性との結婚がブームになっている。また、都市部でも花嫁を見つけるのは大変らしい。上海などの大都市では、「花嫁募集」「花婿募集」の掲示板が町中にあるようだ。この掲示は、主に息子・娘の親たちが作成して掲示するという。また、「見合いでテート」のような「出会いと・結婚」をテーマとしたテレビ放送の視聴率は高いらしい。また、結婚問題に関する書籍はよく売れているようだ。
そして、結婚が難しい最大の問題は、「家と車」が準備できないことだろう。
日本においては、二人が結婚しようと思えば難しい問題は中国よりは はるかに少ない。二人で結婚式を挙げて、アパートを借りればことはすむ。しかし、中国ではそういうわけにはいかない。男性側の方が、結婚前に5万元から10万元以上(200万円以上)の結納金を女性側に渡す。そして、住宅を準備し、できれば自動車を所有することが必要になる。中国では、借家に住むのは貧乏人という考えが根強くあるし、福州などの地方大都市では借家(アパート)そのものが極めて少ない。住宅は安くても100万元(2000万円)はする。日本の月収の3分の1くらいが、現在の平均月給である。(平均月収は、福州では2500元くらい➡日本円で10万円) つまり、日本で2000万円のマンションアパートを買うとしたら、中国ではその3倍の6000万円の物件を買うような感じになる。これに加え自動車(10万元➡200万円)も購入するとなると、結婚のための費用は莫大になる。これを30才までに準備することは難しい。親も親戚や知り合いからお金を借りて、息子のために準備することになる。
結婚後の離婚率も、年々増加してきている。中国の北京市での離婚率は、現在30%。上海では28%となっている。
中国の高校では、現在でも「恋愛カップル」禁止だそうだ。1990年代までは、中国の大学でも恋愛禁止規定があり、見つかった場合は退学処分だった。しかし、現在の中国では、大学の恋愛は自由となっている。特別な事情が無い限り「寮生活」を4年間送る。したがって、恋愛カップルが大学内で多く見られる。手をつないでいる者たちや、肩に腕を置きながら歩くカップルも日常茶飯事にな見られる。抱き合っているカップルもある。これが中国の大学の光景の一つなのだ。しかし、ほとんとのカップルは、大学卒業と同時に分かれるようだ。「恋愛」と「結婚」は別だという風潮がかなりみられる。「親孝行」という言葉があるが、中国ではこのことがとても大切に今もって考えられている。いくら好き同士でも、親の反対があったら結婚に至らないケースがほとんどだという。親は、自分たちの住む町から近い所の相手と結婚してほしいと願っている。
来年の6月に卒業する4回生のうち、最近 親の勧める「見合い」をして、結婚がほぼ決まった女子学生が2人いる。