彦四郎の中国生活

中国滞在記

今、世界で起きていることの、そしてこれからの世界の行方を考えために➊—寺島実郎、エマニエル・トッドの論考から

2025-04-03 10:12:31 | 滞在記

  3月20日頃、「寺島実郎の世界を知る力」(youtube配信の講座)を視聴した。(寺島実郎:1947年生、政治・外交評論家。財団法人・日本総合研究所会長、多摩大学学長。かって立命館大学客員教授も歴任。)  この講座の3月のテーマは「21世紀秩序と3つの権威主義国家—3つの戦争への視界」。この中で寺島氏は、「➀トランプ2.0の米国—権威主義への同調とディール、➁プーチンのロシア—階級より民族志向、➂習近平の中国—社会主義現代化強国・国家資本主義"中国の偉大な復興」と分析し、それぞれの権威主義国の現在の特徴をより詳しく述べた。

 そして、トランプ2.0の出現による現在を「"20世紀システムの消衰と権威主義的潮流の台頭、"力こそ正義"の大国主義的合意形成の世界としている。そして、帝国主義時代の「力こそ正義」の潮流を押しとどめるために何が必要かのポイントとして次の点を挙げていた。「🔴21世紀システムの模索➡新たな世界秩序を支える理念(自立と自尊—自国の運命への決定力—他国への配慮・多様性と地球環境」「情報環境の激変の現在➡AIとSNSの進化に人間的に対応する」「全員参加型秩序とグローバルサウスの重要性」など。

 いずれにせよ、21世紀は大国主義間合意形成が主となりつつある潮流になるのか否か、その見方・考え方が問われていると述べた。そして、3つの戦争(➀ウクライナ・ロシア戦争、➁ガザ戦争、➂台湾有事)と21世紀潮流に関して、『WAR—3つの戦争』(ボブ・ウッドワード著)を紹介していた。講座の最後に、谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」や茨木のり子の「自分の感性くらい」、二つの詩を紹介し、講座を終える。

 3月10日頃の日本の報道番組「ABEMA的ニュースショー」で、政治学者の舛添要一氏が、今の世界情況を「第二次世界大戦直前に酷似」と題して解説していた。第二次世界大戦が始まる直前の1938年、ドイツのミュンヘンでヨーロッパ主要四カ国による「ミュンヘン会議」(ドイツ・ヒトラー、イタリア・ムッソリーニ、イギリス・チェンバレン、フランス・ダラディエら、各国首脳)が行われた。

 議題は、ポーランドやチェコやスロバキアの分割統治問題。ドイツのヒトラーは、これらの国々でのドイツ人在留者が迫害を受けているので、ドイツ人が多く住む地域をドイツに割譲したいと主張した。そして、「まあそれくらいの地域ならしかたがないか」としぶしぶ同調したイギリス・フランス。イタリアはヒトラーの案に最初から賛成。その後、それらの国々は、全土をドイツ軍に侵攻されることとなり、これに反発したイギリス・フランスなどとの間に第二次世界大戦が勃発したのだった。そして、戦火はヨーロッパ全土へと拡大、ソ連やアメリカ、日本も参戦。

 確かに舛添氏の説明は、2014年のクリミア半島併合から始まった、ウクライナ領土を巡るロシアの侵攻・占領というこの一連の間の流れには、ヒトラーとプーチンの戦略的・思考的な共通性も見られる。

 3月7日のBS・TBSの報道番組「報道1930」では、「アメリカは敗北しつつある」と題されて、フランスの歴史人口哲学者であるエマニエル・トッド氏(1951年生)の著『西洋の敗北』ついての特集報道を行った。

 エマニエル・トッド氏はこの著作の中で、ロシアなどと比較して、「➀生産力—エンジニア減少による産業システムの衰退、➁社会の安全—社会状態を示す最重要指標—乳幼児死亡率の上昇、➂宗教—"宗教ゼロ"に向かう衰退、退廃社会の到来」を挙げて、アメリカの敗北を述べている。

 まあ、このトッド氏の➀~➂の項目での指摘については、➀と➁はあまり信用できる内容ではないと思われる。しかし、➂の「宗教」に関してはとても参考になる指摘だった。また、この報道番組に主演していたコメンテーターの1人の「民主主義を担うのは市民—ボリュームゾーンのところに常識がある。中間層がいないと民主主義は機能しない」とのコメントは、その通りだとも思った。

 この「報道1930」に先立つ2月下旬、日本の『文藝春秋』社の編集者が、エマニエル・トッド氏に単独インタビューをしたものがyoutubeで配信された。このインタビューでトッド氏は、アメリカでの宗教の形骸化とアメリカの衰退について、かなり詳しく述べていたが、とても参考になる内容だった。

 トッド氏は次のように言う。「➀プロテスタンティズムこそが世界に君臨する英米を支えてきたのです。そして、(アメリカの)その衰退の要因として、宗教的要素、すなわちプロテスタンティズムの崩壊を指摘しました。すなわち、米国を含むアングロサクソン世界の内部崩壊です。そのプロテスタンティズムが崩壊し、"宗教ゼロの状態"に至ることで、道徳面・教育面・知性面での"退行"が起こりました。「➁西洋は世界から尊敬されていて西洋が世界を主導していると思い込んでいませんか。実は、"その他の国々"は、西洋に無関心で、むしろロシア側につき始めています。」と‥。

■確かにトッド氏の指摘するアメリカ社会での宗教、とりわけプロテスタンティズムの衰退を「アメリカの敗北」の要因の一つとする主張には説得力もある。「なぜトランプという人格的にも思想的にも大問題のある人物が米国大統領に再選されたのか?」「2020年の米国連邦議会へのトランプを熱狂的に支持する暴徒たちの議会突入がおきたのか?」「なぜ、トランプはビジネス・金儲け第一の人物なのに大統領になれたのか‥?」など、トッド氏の「宗教倫理観」の喪失論で、ある意味、一つの大きな要因としての説明もつく。

 1905年、ドイツの社会・政治・経済学者であるマックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を著した。プロテスタンティズムの倫理感(つつましさを失わず、過度な金銭欲にはしらないという)がまっとうな資本主義の興隆につながったという説だ。このプロテスタンリズムは特にヨーロッパでは、イギリス・ドイツなどでは主流だったし、アメリカもそうだった。それが2000年代に入って徐々に、とりわけ金融・IT部門でのプロテスタンティズムの喪失など、世界の潮流ともなっていった。それにより、世界的に、そしてアメリカでも貧富の極度の差が生まれ、2015年頃からは中間層が激減してきている。反知性、反倫理のアメリカ社会の出現とも言える。

 これがついにアメリカ社会では、トランプの再来をもたらした要因とも考えられるのかとも思われる‥。だからこそ、アメリカ社会のまっとうな再生の難しさがあるのだろう‥。

 

 


「プーチンの頭脳」と言われているロシアの極右思想家・ドゥーギン氏の最近のインタビュー内容とは—トランプを手玉にとる交渉も、「力あるものが正しい」と‥

2025-04-02 08:45:32 | 滞在記

 ロシア・プーチン大統領政権による、2022年2月24日のウクライナ侵略(侵攻)開始から3年間が経過した2025年2月24日。この日、BS・TBSの報道番組「報道1930」では、「プーチンの頭脳」と言われるロシアの思想家(極右思想家)・アレクサンドル・ドゥーギン氏の最新インタビューの全編的な内容が放送された。プーチン大統領に最も大きな影響力を与えている思想家が語るインタビュー内容は、現在のプーチン大統領の頭脳が野望を思い描き、考えていることとほぼ一致するのではないかと思われる。そういう意味で、非常に注目すべきドゥーギン氏のインタビュー内容だった。

 「停戦は急がない」として、ドゥーギン氏は次のように語った。要約すると次のようなものだった。

 3年余りが経過する今のウクライナとの紛争は「ロシアの勝利か人類滅亡かの 二者択一」です。そして今、西側から思わぬ援軍がありました。突然、アメリカ(のトランプ)から、信じられないほど協力的なイデオロギー支持を受けました。それは、まさに、プーチン政権下にロシアが行ってきた政策をアメリカが始めようとしています。これから、アメリカだけでなく、全世界でもそうです。世界が劇的に変わっていくでしょう。

 トランプは(ロシアとウクライナの)戦争を始めたのは、バイデンとグローバルリズム体制だと認めました。今後は、世界の各国でもこの体制(グローバリズムとリベラル)を倒す予定です。トランプの改革政策は我々の政権による改革政策と同じです。トランプの敵と同じイデオロギーを持っている政治政権が(ヨーロッパのフランス・イギリス・ドイツなどをはじめとして)まだ残っていますから、これらを(アメリカのトランプとともに)倒していきます。反グローバリズムで、世界は多極化に進んでいくでしょう。(その多極化間の国々)は、むき出しの主権国家間の(対抗)となります。「あの国もこの国も傷つけないように」などとの外交的ニュアンスに気を配るのではなく、自国の利益を実現すべきです。

 「透明な地政学」の時代が始まりました。(言い換えれば)「露骨な地政学」の時代の始まりですね。偉大な国は、偉大な大国として好きなように行動をとるというわけですね。(長く待ち望んだ)そんな時代の到来ですね。「力あるものが正しい」ということです。

 (今後の世界での)多極化世界の中心は四つ。(アメリカを中心とする、反グローバリズム・反リベラルの右翼政権が主流となったヨーロッパとの)アメリカNATO諸国、ロシア、中国、インドです。南ユーラシアとの国境を越えて、(中央アジア諸国や旧ソビエト連邦諸国)にとどまらず、温かい海のあるイランを含めた、ロシアを中心とする連合国家を作ることができれば面白いですね。

 トランプのおかげで、ロシアの敵対する勢力が消えていくことができそうです。これにより、核兵器を使用しなければならない状況も緩和されますね。

※以上がドゥーギン氏のインタビュー内容の要約。上記写真右端は、「報道1930」が、ドゥーギン氏の語る内容をまとめた図表。「ロシアは停戦を急がない」と発言もしている。トランプ大統領が「停戦の立役者」の功を焦るあまり、ウクナイナやヨーロッパ諸国を無視して進めている、あまりにロシア寄りの、プーチンとトランプの停戦交渉。ロシア側は完全にトランプ氏の(功を焦る軽薄さ)足元を見ていて、トランプを手玉にとりながら、次々と要求を小出しにしてきていることを裏付けるドゥーギン氏のインタビュー報道だった。プーチン氏はドゥーギン氏のアドバイスも受けながら、トランプ氏との交渉の駆け引きを行ってもいるのだろう。

 2022年2月24日にロシアによるウクライナ侵略戦争が始まった。それから2か月間余りの間に、ロシア理解のための書籍を10冊余り読むこととなった。それらの書籍の中で、最も秀逸な書籍が『プーチンとロシア人』(北海道大学名誉教授・木村汎[1936年生]著)だった。それ以降に読んだロシア関連の書籍などもたくさんあったが、「ロシアという国の風土(環境)・歴史・民族性・文化、そしてプーチンと国民との関係」について、その根底から論述している、この『プーチンとロシア人』には及ばない。同書籍ではロシアの極右思想家であるドゥーギン氏とプーチンとの関係についても述べられている。また、ドゥーギン氏が描いた「ハートアイランド構想(ロシアが今後支配すべき世界のエリア)」の地図(1997年にドゥーギン氏作成)も掲載されている。

 これらの書籍を読み、2022年4月22日に福井県鯖江市で行った講演会(講座)に臨んだ。講演会の題目は「私の目に映った中国の実像—中国人、中国社会、そして中国という国—」。2時間余り(質疑応答時間含む)の講演を、第一部から第五部にわたって行った。

 第五部は、「中国とロシア、その国民(民族)の政治的意識における共通性—なぜプーチンへの支持が高いのか?—」をテーマとして話した。「国家に対する意識・政治意識」について、中国とロシアのそれぞれと共通性を歴史的に考察した話だった。

 その講演会(講座)の内容の詳細に関しては、私のブログの➀2022年4月30日号と➁2022年5月8日号に掲載している。詳細はその号のブログを参照ください。

 

 


中国「清明節」(先祖たちのお墓参り)のころとなる、伝統的に食べられる清明節の草餅

2025-03-31 07:28:04 | 滞在記

 「今年の冬は例年よりもとても長いですわ」と福建省の中国人たちは言う。例年なら2月中旬ともなれば春の陽気となるが、確かに今年は3月下旬でもまだ寒い。そんな中国福建省だが、先週の3月26日・27日の最高気温は36℃の猛暑日。そして、翌日の28日や29日・30日は寒風の中、ホカホカカイロやマフラーの13℃(最低気温7℃)へと急降下。そして、今日31日からの今週は最高気温が27℃から32℃へと変化するとの予報。昨今、中国も気候が変調しているが、春から秋にかけて咲き誇る亜熱帯性気候の花・ブーゲンビリアもようやく福州市内のいたるところで開花が始まっていて美しい。

 この季節に咲く、亜熱帯性の黄色い花(名前はわからない)。閩江大学構内のホテル「閩院酒店」の敷地内にも美しい花を満開にさせている今。

 それなりの規模の中国の大学では、大学構内にホテルが併設されているのが一般的。それらのホテルには、レストランや宿泊室の他に、学術交流などができる会議室や大ホールなどもある。閩江大学の「閩院酒店」の正面は、福建省の別称「閩(びん)」の伝統的な建物のデザインがとられている。

 3月下旬、日本の京都よりも3~4週間早くツツジが開花し始めている。かと思えば、大学構内の広葉樹のある種類の大木は、この時期に黄色く紅葉した木々の葉が落葉し、秋のような景色も出現するので、日本のような季節感がもちにくい。

 3月24日(月)、この日は午後に「特別講座」(3回生)の授業を行う。大学からアパートに戻る途中の🚌バスに、午後5時ころ、授業を終えた職業系の高校生(※中国の高校生の50%を占める。4年制大学への受験は閉ざされている。)たちがたくさん乗り込んできた。この10年間の間で、中国の高校生たちのようすも変わってきている。10年ほど前の高校生たちは、まあ、バスの中での礼節があり、高齢者には席を譲るなどの光景も普通だった。

 しかし、今は、そんな光景を見かけるのは珍しい。この日、バスに乗り込んできた女子高校生の二人は、ソフトクリームを食べていたり、50センチ余りの竹串にたくさんさされている揚げ物を車内で食べてもいた。手を握り合って座っている高校生カップルの姿も。

 アパートから最も近い福建師範大学前バス停で下車。路上には「お金を請う」ルンペンさんの姿も。最近の乞食のルンペンは、携帯電話(スマホ)のバーコードを使っての電子決済システムでお金を請う人が一般的だが、この日のこの人は、そのシステムはなかった。直接、現金を請うていた。多くの人々は電子決済で店での支払いをすます中国の現在、現金を持ち歩いて生活している人は少ないので、お金を恵む人の姿は皆無。私は常に現金も持ち歩いているので、長時間ひたすら頭を下げ続けている乞食の人の大変さを思い、5元札(約100円)を入れた。

 アパート団地近くの交差点付近で、卵を売っている路上の男性の姿も。様々な生活階層の人がたちが、あらわに(赤裸々に)見られる中国社会の人々の暮らし。みんな生きるためにさまざまな生業をしている。

 今年の中国の「清明節(せいめいせつ)」(※日本のお盆のように、墓参りなどに行く日で祝祭日となる。)は4月4日(金)。この日には、草餅を食べる伝統的習わしがある。パン屋さんなどの店先には、この草餅販売の看板が置かれていた。先日、閩江大学卒業生の王さんから、「これ自分の実家で作った草餅です」と、4個を渡された。食べてみたら、とても美味しかった。(中に餡が入っているものや餡なしの2種類)   3月下旬となり、町中の露店ではパイナップルも売られ始めたので、1個買って食べた。(1個8元〜15元)[約160円~300円]

 4月4日(金)の「清明節」祭日も利用して、日本に一時帰国することにした。(昨日の3月30日に帰国。4月9日に中国に戻る予定。) 日本の京都も桜の季節を迎える。孫たちの中国土産に二つを買って帰った。


トランプ米国大統領の再来に世界は揺れ動く➌—国連総会でロシア支持に回る米国、ロシアのペースに乗せられて進む停戦案、「トランプの誤算」もあらわになり始めた‥

2025-03-29 10:57:33 | 滞在記

 国連総会(193カ国)は2月24日、ロシアのウクライナ侵攻から満3年になるのに合わせて特別会合を開き、ロシアを非難し、ウクライナの領土保全を支持する欧州側提案の決議案を、93カ国賛成多数で採択した。採択ではアメリカ・ロシア・中国など18カ国が反対票を投じ、65カ国が棄権した。

 その後、国連安全保障理事会の会合も開かれ、アメリカが提出した「紛争の終結」を求める決議案を、アメリカ・ロシア・中国など10カ国の賛成で採択した。この決議にはロシア非難は含まれず、これまでアメリカの主要同盟国のイギリスやフランスなど5カ国が棄権した。アメリカのトランプ政権は、この日の2度の採決で、いずれもロシア側につくかたちとなり、ロシアのウクライナ侵攻による戦争を巡る、国連でのアメリカの立場をこれまでのアメリカの方針とは180度、一変させた。

 これにより、ロシア・ウクライナ戦争情勢を巡るアメリカとウクライナやヨーロッパ諸国との同盟関係の断絶が浮き彫りとなってしまった。

 中国は国連の場でのこの戦争を巡るロシア支援の立場に変わりはないが、ロシアとアメリカ二国間のみの停戦協議の行方をじっと注視している。そして、2月28日、アメリカを緊急訪問したウクライナのジェレンスキー大統領とトランプ大統領との会談。この会談で、ゼレンスキー大統領が、トランプ大統領の停戦交渉がロシア寄りすぎることの懸念を示したことに強く反発し、噛ませ犬的なバンス副大統領とともに、「無礼だ」「あなたは第三次世界大戦を賭けてギャンブルをしている」「あなたにはカードは何もない」「大統領執務室でアメリカメディアを前に、自分の立場を訴えるとは無礼だ」「恩知らず」などと声を荒げて批判。双方での激しい言葉の応酬口論となった。

 この会談の模様は全世界に速報され、ロシアのプーチン大統領は高笑いが止まらなかったようだ。このアメリカのトランプ・ウクライナのジェレンスキー両大統領の激しいやり取りについて、中国政府は公式のコメントは控えたものの、ロシアの高官たちのコメントをもとに、中国の国営中央テレビ(CCTV)は、ロシア安全保障会議副議長であるメドヴェージェフ(元大統領)の発言「トランプのゼレンスキーへの叱責は不十分だった」や、ロシア外務省のザハロフ報道官の発言「トランプはゼレンスキーを殴らなかったことで自制を示した」などを引用し、この会談を報道した。

 この会談決裂を受け、イギリス・ドイツ・フランスなどヨーロッパの主要国はゼレンスキー大統領擁護・支持のコメントを伝えた。

 3月2日、アメリカ・トランプ政権がロシア寄り政策をとる中、ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援するため、欧州各国やEU首脳・カナダなどがイギリスのロンドンで会議(ジェレンスキー氏も参加)を開き、停戦後のウクライナへの平和維持部隊の派遣などを含めた「有志国連合」を形成するなどの方針で一致した。この会議での一致点とは、➀ウクライナへの軍事支援の継続と対ロシア経済制裁の強化、➁停戦協議へのウクライナ参加、➂停戦後のウクライナの国防力、侵攻抑止力の強化、➃ウクライナの安全の保証に向け、アメリカの支援を求める方針も確認した。3月14日、G7外相会議がカナダで開催された。 

 アメリカ・トランプ政権によりNATO諸国の分断となった状況を受けEUのフォデアライン欧州委員長(EU)は3月4日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの脅威に対抗するため、8000億ユーロ(約125兆円)規模の「再軍備計画」を表明した。また、5日、フランスのマクロン大統領は、「ヨーロッパ全体をフランスの核の傘で守る」議論を欧州各国と始めると表明した。ドイツも、ロシアに備えた軍備大拡張方針を表明。

 このように「欧州は(アメリカ抜きでも)欧州諸国をロシアの侵略から軍事的に守る」という動きも加速し始めている世界情況。そして、東アジア諸国(日本・台湾・韓国・フィリピンなどの、中国や北朝鮮、ロシアと対峙する国や地域)では、「動揺するアジア、深まる米国不信—トランプの停戦交渉から見る 集団安全保障からの離脱という現実」だ。

 アメリカでトランプ政権2.0が1月20日に正式発足して2か月間以上が経過した3月下旬、日本のANN(朝日)テレビでは、「トランプさらなる誤算」とのテーマでの報道特集が放送された。四つの誤算「➀合意できなかったウクライナ・ロシア30日停戦、➁関税・国内経済の反応、➂最高裁長官のトランプ氏への苦言、➃ガザ停戦 崩壊の危機」。停戦の功績を急ぐあまり、あまりにもロシア・プーチン大統領の術(すべ)にはまってきて、ロシア言いなりの停戦交渉など‥。また、ガザ停戦の機運も、アメリカトランプ氏と相通じているイスラエルのガザ大規模空爆や侵攻の再びの実施により暗礁に乗り上げた。

 この報道の中で、4月から開始される世界各国への25%関税率引き上げ(追加関税)を実施した場合、今後3年間の各国のGDPへの影響を示す図表が示された。それによると、「メキシコ(マイナス3.26%)、アメリカ(マイナス1.80%)、‥‥、日本(マイナス0.87%)、‥‥、中国(マイナス0.24%)‥‥。」などとなっていて、中国などは影響が小さいとされてい.る。世界全体的には(マイナス0.69%)。

 もうこれ以上の戦場悪化を停めるため、ガザ地区の住民による異例の「ハマスはガサから出ていけ」とするデモが数日前に起きたとも シハイ伝えられた。(これはアメリカ・イスラエルのさらなる武力行使の成果の一つとも言えるが‥。)

 3月下旬、「アメリカの大学はリベラリズムの温床になっている」として、大学への補助金の再検討や停止などを検討するとの圧力をかけ始めた。

 世界は、トランプ大統領の再来により動揺し、再び「帝国主義(武力ある国が、より弱い国々を侵略支配する)」の時代へと再び戻り始めた世界史の転換点にもきているようだ。

 

 

 


トランプ大統領の再来に世界は揺れ動く➋—バンス副大統領演説の衝撃、自らを王に見立てるトランフ、3年間の戦時下が経過したウクライナの人々

2025-03-27 20:48:40 | 滞在記

 2月14日、NATO加盟国がドイツのミュンヘンに集まり、「ミュンヘン安全保障会議」が開催された。この会議にアメリカ政府代表として参加したバンス副大統領は、異例の欧州NATO諸国(特にイギリス・ドイツ・フランスなど)を次のように批判する演説を行った。「欧州が最も懸念すべき脅威は、ロシアでもない。中国でもない。欧州内部自身だ。」と演説した。

 欧州内部自身の問題(懸念)とは、イギリスやドイツ、フランスなどヨーロッパ主要国の現政権(民主主義を標榜し、右翼ポピュリズム勢力と対峙している。)に対する批判であり、この演説は、ロシアや中国のみならず、欧州の右翼ポピュリズム勢力を勢いづかせる演説内容だった。このバンス副大統領の演説について、トランプ大統領は、「素晴らしい演説だった」とバンス副大統領をほめそやした。

 バンス副大統領はこの演説の中で、欧州各国の(民主主義)政権が、(特に右翼ポピュリズム勢力などにもよる)ニセ情報のSNS規制強化を批判。「(懸念とは)欧州がアメリカと同じ価値観から後退することだ。欧州が言論の自由から後退していることを危惧している。"移民排斥"を訴える政党が欧州で支持を広げることを希望している」とし、「ワシントンには新しい保安官がいる。トランプ氏のリーダーシップのもと、欧州の言論の自由を守るためにアメリカは戦う」と演説した。この演説は「バンス演説の衝撃」として、世界に衝撃を与えた。

 この演説に先立つ2月8日、スペインで、「欧州議会極右会派集会」が開催され、フランスのルペン党首やオランダのウィルターズ党首、ハンガリーのオルバン首相(ロシアとの関係が深い)など、欧州各国の右翼勢力が一堂に会した。バンス演説はこれらの欧州の右翼ポピュリズム勢力のみならず、世界の同勢力を勢いづかせるものとなった。

 —トランプ氏が自らを王に見立てた—2月21日、アメリカ大統領府のホワイトハウスは、トランプ氏が自らを王に見立て王冠を被った写真に「王様万歳!」と記したものを全世界に向けて投稿した。バンス演説といい、このような投稿といい、「民主主義とは、あまりにかけ離れた」というか、「民主主義を敵視さえしている」様相を呈しているトランプ政権でもある。

 そして、アメリカ国内では、共和党党員であれ民主党党員であれ、両党の議員であれ、トランプ政権を個人が批判することさえも、躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない、かなり決意のいることとなっているようだ。批判すればトランプ氏を熱烈に、狂信的に支持してる、2020年に連邦議会を襲撃したようなトランプ信者の集団からの猛烈な批判・抗議行動にさらされることを恐れるからだ。民主主義制度崩壊の深刻な危機にアメリカもある。

 2月18日から、サウジアラビアでアメリカとロシアの高官による「ロシア・ウクライナ」の停戦交渉が始められた。当事国であるウクライナを会議には参加させず、欧州からも参加させない、ウクライナの頭越しの、ロシア寄りの停戦交渉。

 2月19日には、「ウクライナのゼレンスキーは独裁者だ。彼は4%の国民の支持しかないのに、大統領の座に居続けている。彼は、(大統領になる前の)コメディアンとしてはそこそこに成功したが、このロシアとの3年間の戦争の間、何も成し遂げられていない、実績を残してもいない。プーチン大統領が望めばウクライナ全土を占領できるだろう。これまでアメリカがウクライナを支援するために使った金額の見返りに、ウクライナ国内のレアメタル鉱山の権利をアメリカにわたせ」などと、ゼレンスキー大統領を罵(ののし)った。

 この4%という数字は、ロシア側が主張している数字。実際には、今年2月上旬に信頼できる機関が行った支持率調査では、1年前より下がったとはいえ、57%が「ゼレンスキー大統領を信頼し支持する」というのが正確なものだったにもかかわらずだ‥。

 2025年2月24日、ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵略・進攻が始まって、まる3年間が経過した。首都キーウのみならず、ウクライナ全土で多くの犠牲者を弔う集まりが行われた。この日もロシアによるミサイル攻撃が首都で行われた。

 トランプ大統領とプーチン大統領による、ウクライナの頭越しの停戦交渉や、トランプ大統領のウクライナ国民に対する態度、ゼレンスキー大統領を馬鹿にした言動などに、「トランプ氏は、ロシアを被害者のように扱っている。とても嘆かわしい」と憤るウクライナの人々の姿が報道されてもいた。

 この3年間の戦闘や空爆などにより、多くの犠牲者が生まれた。TBSの「報道1930」の報道番組によれば、ウクライナでは、兵士の死者4万5100人、民間人の死者1万5000人以上、兵士や民間人の負傷者は約39万人にもそして、国土の20%がロシアに占領されている。一方のロシアは、兵士の死者は17万2000人、負傷者は61万1000人。

■前号のブログで紹介した、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の「トランプが当選した理由」について語るインタビューは、youtubeでは9分くらいのものもある。(上記写真)前号で記さなかったが、人々を「愛国主義」へと過度に煽りたてる主張も人々を惹きつけるとサンデル教授は述べている。「アメリカンファースト」「アメリカを再び偉大な国へ」という呼びかけだ。これに人々の多くは惹きつけられ、誇りのようなものを感じる。「カナダやグリーンランドの領土化、パナマ運河の所有」などの発言や、「ガザ地区のアメリカ所有」などの発言も、この過度な愛国心や「アメリカを再び偉大な国へ」と、リンクする言動だ。

 これは中国では習近平主席の「中国の夢」、ロシアのプーチン大統領の「ロシアを再び偉大な国家に」と合い共通する。過度なまでの国粋的なプロバガンダである。