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彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国福建省福州空港—日本関西空港の航空便が、毎日、就航することに4月1日からなった—日中の人々の往来が増えてきたためだ

2025-04-25 05:02:15 | 滞在記

 先日、日本の沖縄地方は5月上旬頃に梅雨の季節になるとの予報が報道されていた。沖縄の那覇市とほぼ同じ緯度にある中国福建省福州市は、穀雨(谷雨)の季節が始まった4月20日頃からは、ほぼ連日の雨模様。すでに福州は梅雨の季節に入っているようだ。

 大学の授業が午前中(8:30~)にある木曜日と金曜日は、アパートを早朝の5時30分前に出る。もよりのバス停付近の歩道には、この時期、夜が明け始める早朝の5時30分ころから路上市場が毎日開かれ、野菜・魚・衣類・雑貨などが売られる。買いにくるのは早起きの高齢者がほとんどだ。

 たまに散歩に行くアパート近くの石畳の坂道。うっそうとした木々の緑が坂道にかかる。塀の内側の建物から、中国琵琶の音色が聞こえることもある。ちかくにある「書里書外」という名前の看板がかかるの建物など、この辺りは1920年代頃に建てられたレンガ造りの建物も多い。

 4月下旬になり、枇杷(びわ)の実が少し黄色く色づき始めてきている。桑の実もすこし赤色から黒色へとなっている実もあり、食べてみると美味しかった。福建師範大学正門付近の夾竹桃(きょうちくとう)も開花し始めた梅雨の初夏。福建師範大学構内に隣接した学生街の入り口で、葬式を終えた人々が、葬儀で身に着けた葬儀用衣服を燃やしていた。

 4月19日(土)の午後6時から、福州市内のホテルで福州日本企業会の定例総会が開催された。出席者は90名余り。来賓には中国広東省広州の日本国総領事館の首席領事らも参加。日本貿易振興機構(JETRO)広州代表所の岡田英治氏が「中国における日本企業の動向」に関して特別講演を行った。岡田氏に初めて挨拶に行ったら、「あなたのブログを見ています」と告げられて、ちょっと驚いた。

 乾杯や食事会、公園などの総会は2時間ほど続き、午後8時頃に閉会となつた。年に2回の日本企業会総会、次回は12月の兼忘年会総会となる。

 福州日本企業会総会の会場の隣の大広間の会場では、大勢の中国人たちが集まり、一段と賑やかな会場。ステージでは様々なショーも繰り広げられていた。

 明日4月26日(土)から、日本は大型連休(ゴールデンウイーク)期間に入る。この期間に関西国際空港の国際線利用客の予想が4月18日に発表された。関西空港を運営する関西エアポートによると、約95万人とコロナ前を上回る見込みと発表。人気の海外行先は、1位から順に、「中国」、「韓国」、「東南アジア」と報道されていた。おそらく「中国」の中には、台湾や香港も入っているのかと思われる。

 中国も5月1日(木)から4日まで労働節(メーデー)による連休となるので、明日26日から日本に観光に来る人もけっこうあるだろう。日本政府観光局(JNTO)は4月16日、2025年3月に日本を訪れた中国人が前年同月比46.2%増の66万1700人だったと推計を発表した。国・地域別では韓国に次いで2位の多さだった。また、1月~3月の訪日中国人は、前年同時期比の78.1%増の236万4900人との発表。(※3月訪日外国人は前年同月比13.5%増の349万7600人。1~3月の累計は23.1%増の1053万7300人で過去最速で1000万人を突破したとの報道。

 私も、明日4月26日(土)から5月7日(水)までの12日間も、大学での担当授業がないことになったので、急遽だが日本に一時帰国をすることにした。中国厦門航空便(福州空港—関西空港)は、今年の4月1日から毎日の就航となった。(それまでは週に4便だった。)日中間の人々の往来が多くなったためかと思われる。2013年以来、12年間余り中国の福州で暮らしているが、毎日、福州—関空間に飛行機が就航するのは初めてとなっている。

 

 

 

 

 


「穀雨(谷雨)」の季節がはじまる、日本では水田に水が張られる頃かな‥

2025-04-22 17:21:23 | 滞在記

 4月20日(日)から5月5日(月)にかけての2週間、二十四節気における今年の「穀雨(こくう)」の季節となる。「穀雨」を中国では「谷雨(こくう)」とも言う。地上にあるさくさんの穀物に雨が降り、水分と栄養がためこまれる頃。田植えの準備がはじまり、植物が緑一色に輝きはじめる「穀雨」の季節となった。ここ亜熱帯地方の中国福建省では、最近は気温が28~35℃近くとなり、時には雷も伴うような雨がよくふり、ちょっと蒸し暑くもある季節ともなっている。

 穀雨の季節が始まった翌日の4月21日(月)、この日は午後から3回生への「特別講座」があるので、お昼の12時頃に大学に到着した。どこの学部の学生か分からないが、大学の正門付近で卒業服に身を包んで、思い思いに記念写真を撮っていた。

 大学構内の水辺の緑がみずみずしい。この季節、名前は知らないが黄色い花が大学構内のいたるところに咲いている。亜熱帯性植物のブーゲンビリアはかなり開花、バウヒニアも遠くから見ると満開の桜の花の木に見間違う。

 私の研究室のある福万楼という建物の7階の窓から大学構内を見渡す。緑の季節が生き生きとしている。福万楼の建物のそばの亜熱帯性高木に赤い花が咲いている。

 亜熱帯の樹木・デェイゴの木は緑の葉に包まれ、夏の6月に満開の花を咲かせるが、もうすでに一つ二つと、開花前の赤い蕾が見え始めた。

 夏の花の一つ石榴(ざくろ)の赤い花も開花し始めた。

 大学の授業などが行われる教学楼。外国語学部の授業が多く行われている外国語学部棟(楼)の廊下には、「福州翻訳歴史」と題されたパネル群が掲示されている。清時代の末期の1890年~1900年の頃、ここ福州には「福州船政学堂」が開設されたり、清国(中国)海軍の拠点の一つとなるなど、清国の近代化に向けた「洋務運動」の地ともなった。近代の諸外国(特にヨーロッパ)の学問・科学を学ぶために翻訳活動も盛んな地となる。

 近代著名翻訳家の1人として、福州人の厳復(げんふく/Yan Fu)がいた。彼は、欧米の政治思想や科学に関する書籍の翻訳の第一人者となり、「民主・科学」の啓蒙家となった中国では著名な歴史的人物だ。さしずめ、中国の福沢諭吉的人物。以前に教員をしていた福建師範大学(1903年創立)の図書館や外国語学部楼の前には、この厳復の胸像が置かれている。福建師範大学の創立にもたずさわったのだろう。

 

 


今、世界で起きていること、そしてこれからの世界の行方を考えるために➍—ハラリ氏の最新インタビュー「トランプ政権、AIの危険性、人類の未来」➂

2025-04-20 21:18:39 | 滞在記

 ➂「AIが奪う"信頼" 民主主義の危機」

徳永:ヘイトやフェイクも多いSNS空間。AIを手掛ける大富豪が今、トランプ政権下のホワイトハウスに出入りしています。(トランプ政権の)「政府効率化省」の担当者として、狙うのはこれまでの官僚機構の解体だとイーロン・マスク氏は言っていますが‥。

ハラリ:AIなど「デジタル官僚制」に権限を与えようとする、とても危険な行為です。マスク氏らは、行政官や官僚を攻撃して官僚制反対を訴えながら、AIにその権限を移行しようとしています。官僚制は悪いどころか不可欠で、体の各部位をつなぐ神経細胞と同じなのです。病院なら医師や看護師が患者の面倒をみて命を救いますが、治療費を回収し、給料を払う(病院)官僚がいなければ成り立ちません。これまで官僚は人間でしたが、その役割をAIが担い始めています。

 トランプ政権では、予算削減のターゲットを定めるのにAIが利用され、イスラエルへの抗議の声を封じるのもAIでSNSを洗い出すという手段が取られようとしています。不眠不休で大量のデータを取り込み、感情もなく反抗もしないAI。そんな存在に人間が担ってきたきた仕事を譲り渡した時、いったい何が起きるのか‥。とても危険です。

 人間どうしの信頼が崩壊し、民主主義の危機を迎えているのは、(SNSなどのAIによる編集などにより)人々の対話や会話の流れを作る力をAIに渡してしまったからです。独裁とは1人の人間による命令です。大勢が話し合い、意見をぶつけ、皆で決めるが民主主義です。しかし今、AIが人間の会話を管理し始めています。

■『NEXUS 情報の人類史』(抜粋)—「政府あるいはどこかの企業が、私たちの行動や思考を細かく管理することができるようになったら、社会に対する全体主義的な支配権を獲得するだろう。」

④「(AIの)人間の偽装を禁止せよ」

徳永:人類の未来を切り拓く存在であるはずのAI。同時に、人の心を操作し、国家をも支配し得るテクノロジーと、私たちはどう向き合えばいいのでしょうか?

ハラリ:問題はAIの開発をどう止めるかではなく、どう安全に進めるかです。その中で最も大事なのが、AIに人間のふりをさせないことです。通貨の偽造を禁止するように、"人間の偽造"を禁止すべきなのです。AIを高度化させるより先に、人間どうしの信頼関係を回復することに労力を費やしてほしいのです。

徳永:人間どうしの信頼を構築するというのはすごく難しい。アメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が口論をしました。強い者が弱い者を面前でなじるような姿を見ると、そういう世の中でいいのかって‥。人は信じられない気持ちになると思います。その不安というのは今、世界が深刻に抱えていると思います。

ハラリ:誰かに裏切られることもありますが、人間はほとんどの場合、約束を守り、法と規則を守ることを歴史が証明しているのです。実際に人類史を読み解くと、犯罪や不正より、人と人との協力関係や信頼を築く能力に驚かされます。10万年前は数十人単位で暮らし、部外者を信頼することができなかった。数万年後、人類は数十億人が対話し、事実を共有し、法律を受け入れるメカニズムを発達させてきました。

 私たちが口にする食べ物や着る服、命を守る薬の多くは、遠い異国に住む人たちが生み出したものです。信頼は恐怖を凌駕(りょうが)します。外部のものを取り込むことは、この世界へのささやかな信頼の証(あかし)です。

➄「人類の未来について、どう考えればいいのか」

徳永:人類の未来について、ハラリさんは楽観的ですか、それとも悲観的ですか?

ハラリ:現実主義的でありたいです。悲観論者は悪い結果しか描かない。それは責任感や自主性を奪います。何をしても失敗すると感じるからです。楽観論者は逆の問題で苦労します。何をやってもうまくいくだろうと考え、責任感の欠如につながります。現実主義者の中庸(ちゅうよう)が必要なのです。

 戦争やAI、気候変動の危険を認識することも大切です。私たちは、それに対処する能力を備えていることを意識するべきです。解決不能ではない、神や奇跡を待たなくても対処できる問題です。ただし、もっと責任感を持つことが深刻な問題ほど不可欠なことです。リアリズムとは、危険と対処法の両面を認識し、悪い結果を防ぐために責任ある決断を背負う姿勢です。AIも不可能な課題ではないのです。

■ハラリ氏はこのインタビューで次のことも述べている。中国やロシアの指導者、アメリカのトランプ大統領など、彼らのビジョンは国を要塞化し、巨大な城壁を造って、貿易や移民、異国文化から身を守ることにある。では、世界に要塞の網ができたとして、果たして、どのように世界の人々は共存するのか?それぞれの要塞が隣国を犠牲にしても、より多くの領土と安全、繁栄を求めて、「領土も貿易も、軍隊ももっと欲しい」、みんなそう言う。

 トランプ的な人たちが、要塞どうし、合意できる仕組みを提供できるのか?どのような価値観と規範・国際法で関係を制御し合えるのか? グローバルな価値観と国際法がなければ、暴力と"力の法"(理屈)が世界を支配してしまうだろう。各国はより強く、大きな軍隊を求め、戦争を引き起こすことになる。敵対する要塞同士に合意する手段がないからだ。

 私たち人類の歴史は、20世紀半ばまでは、何千年もそのような状況にあった。それが当たり前だった。その苦境からやっと抜け出せたのは21世紀の前後。暴力や兵力ではなく、国際法や人権・平等・自由・民主など、人類共通の価値観に基づく秩序だった。それは確かに、実際には 理想にはほど遠い秩序ではあったが、それでも人類がそれまで築いてきた秩序より優れていたものだった。

 グローバルな自由主義に反対する人に、「あなたの代替案は?」と問うべきだ。「グローバルな価値観をルールとしてではなく、武力と暴力だけを信じて、どうやって人類の平和と繁栄を守れるのですか?」と‥。

※中国に暮らして10年以上が経過している。その間、中国では急速なスピードでIT、AIが人々の暮らしへの入り込みを進めてきた。政府組織によるAIをも利用した超監視国家体制が世界で最も進んだ国となっている中国ではある。また、現代版「万里の長城」とも言える、IT、インターネットへの超強力な監視ブロック要塞を築いてもいる。世界の「民主主義度」を毎年調査しているヨーロッパの機関が、「あと半年でアメリカは民主主義国ではなくなる」と、最近、報道がされていた。「民主主義やリベラルの温床となっている」として、ハーバード大学などへの政府補助金の凍結など、「学問の自由」に対する攻撃(弾圧)も強めているトランプ政権でもある。

今日、yahoo Japanのニュースサイトを見ていたら、佐藤優氏が「トランプ大統領の関税政策を反対している人は、なにも世界のことを知らない!私はトランプ大統領の関税政策に大賛成だ」とトランプ大統領を礼賛していた。佐藤優氏はもう少し賢い見識のある人だと思っていたのだが、‥‥。彼は思想的に「弱肉強食世界」での世界観を支持する立場なのかもしれないとも‥感じた。それとも、「トランプ関税やロシアへの接近など、日本でのマスコミ、ネットでの論調の多くがトランプ大統領批判が多い」ため、天の邪鬼(あまのじゃく)を発揮して、トランプ大統領を批判する人たちに「おまえらアホだ」と自分を偉ぶるだけの今日の論調なのか‥。いずれにしても、佐藤優氏の人間としての底の浅さを感じてしまった佐藤氏の記事だった。残念だ‥。

 

 

 

 


今、世界で起きていること、そしてこれからの世界の行方を考えるために➌—ハラリ氏の最新インタビュー「トランプ政権、AIの危険性、人類の未来」➁

2025-04-20 18:30:07 | 滞在記

 4月7日付でブログ記事「—ハラリ氏の最新インタビュー『トランプ政権、AIの危険性、人類の未来』➀」を書いた。3月下旬、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏が日本を訪れた際、ANN(朝日テレビ局)の求めに応じて、東京科学大学(2024年10月に東京工業大学と東京医科歯科大学が合併して設立)の大岡山キャンパス図書館にて、1時間余りのインタビューを行った。(インタビュアーはANNの徳永有美キャスター)  

 このインタビューの内容は、大きく分けると、➀「トランプ時代"秩序崩壊"の危機」、➁「歴史上比類なき"AIの脅威"」、➂「AIが奪う"信頼""民主主義"の危機」、➃「(AIによる)人間への"偽装"を禁止せよ」。今回はこのインタビュー内容について、少し詳しくその概要を書きたいと思います。

➀「トランプ時代2.0"秩序崩壊"危機」

徳永:『NEXUS』の大部分は2021-22年の間に書かれたということですが、今の世界とのリンクを感じました。特にトランプ政権です。ハラリさんは今の世界情勢をどんなふうにご覧なっていますか?

ハラリ:非常に厳しい状況です。人と人との間にある信頼が失われ、国内、国家間の秩序が崩壊しつつある。最も憂慮すべきは、現在、人類全体のリーダーシップが不在なことです。トランプ氏のような世界観は古くからあります。この世界観は"世界は弱肉強食"と考えています。弱者は強者に従うべきと考えています。「ウクライナがロシアの攻撃を招いた」という(トランプ氏の)発言に疑問を持つことでしょう。

 彼には弱肉強食こそが世界の秩序で、強者の要求を拒んで争いになれば、拒んだ弱者の責任になる。グリーンランド取得への意欲も同じ発想でしょう。「要求を蹴ったデンマークが悪い」、そういう理屈になります。こういった人間社会の捉え方は、「弱肉強食こそ世の常」という考え方です。

 この数十年、私たちは、この世界観(弱肉強食の世界観)と異なり、「力より(国際)法に基づく世界秩序を確立」しました。人類史を振り返ると、この数十年が最も平和な時代でした。これには破られざるタブーがあります。強国が正当な理由なく弱国を侵略・征服してはならないというタブーです。それによって安心感が強まり、国家は軍備や防衛の代わりに医療保健・教育・福祉に資金を投じられるようになりました。かっては、民主主義・独裁国家、帝国・都市国家を問わず、ほとんどの政府が予算の50%以上が兵隊や戦車などの軍備に充てていました。それが21世紀の初頭になると、安心感の高まりで、軍備費の平均は政府予算の6~7%で、対照的に医療費は10%に上がり、人類史上初めて医療保健や看護師・医師・病院への財政支出が兵器や要塞の支出額を越えたのです。

 それが今、変わりつつあります。ロシアによるウクライナ侵攻や、トランプ2.0政権の政策を前に、各国に不安が広がり、強国による侵略から自らを守るには軍備拡大しかないと感じ始めています。ヨーロッパや東アジア諸国からすれば、もはや国際秩序もアメリカも頼れない。軍事予算を引き上げ軍備を拡大するしかない。他国も追随すれば軍拡競争になり、世界情勢は悪化するばかりです。

➁「歴史上比類なき"AIの脅威"」

徳永:歴史学者のハラリさんから見て、今の時代は過去のどんな時代と似ていると考えますか?

ハラリ:数千年の間に、混乱した秩序の崩壊と新しい秩序の創生が繰り返されてきました。しかし、過去との最大の違いはAIの台頭です。AIがこれまでの技術と異なり道具ではなく"行為主体"だからです。情報テクノロジーの行きついた先がインターネット。さらに今、人間と会話でき、自ら判断を下すことが可能となったAIが世界を度巻しています。

 この歴史的瞬間の最大の疑問は、様々な面で人間よりも賢い無数のAIを世に放ち、経済・軍事・メディアなどの管理統制を任せるようになったらどうなるかです。すでにメディアにおいては人間からAIに権力が移行中です。今、最も力のある編集者はもはや人間ではなく、SNSなどのニュースを管理するAIのアルゴリズムです。これまで、何をニュースとして伝えるかを決めていたのは、新聞やテレビなどの編集者でした。すでにSNSでは、その役割をAIが担いつつあります。現在のXやTikTok、Facebookのニュースを管理しているのもAIです。

■ハラリ氏が最新刊の『NEXUS—情報の人類史』で紐(ひも)解くのは、人と人を結びつける媒介としての情報の歴史。そしてAI。情報テクノロジーの進化は、科学の発展や近代国家の形成に道を開き、20世紀、自由な情報の流れが民主主義を世界に広げたと言う。それと同時に負の副産物も生んだとハラリ氏は指摘する。

『NEXUS  情報の人類史』(抜粋)より 「印刷革命の直接の結果には、魔女狩りや宗教戦争もあるし、新聞やラジオは民主主義体制だけでなく、全体主義によっても利用された。産業革命はどうかと言えば、この革命に適応する過程で帝国主義やナチズムといった壊滅的な実験も行われた。」

※以下次回に続く

 

 

 

 

 

 

 


「清明」の季節、大学構内は若葉・新緑の季節となっている—中国における宗族と宗祠(廟)について

2025-04-15 15:47:42 | 滞在記

 4月9日(水)に中国に戻り、翌日の早朝から大学の教室に向かった。亜熱帯地方・福建省にある大学構内は、若葉・新緑の季節となっていて落葉樹は黄緑色の若葉の季節。針葉樹の森も若葉を芽吹かせていた。大学構内の樹木の8割余りを占める常緑樹もまた、葉の3分の1ほどは冬の間に古い葉を落として、この季節に黄緑色の若葉を茂らせ始めている。

 二十四節気(紀元前4世紀に、中国の華中(河南省)で発明・作成された。)では、今年の「春分」の日(昼と夜の長さがほぼ同じとなる。本格的な春の始まり。)は3月20日、「清明」の日(花々が咲き春らしくなる。)は4月4日。4月中旬の今の季節でもある。そして、あと5日間ほどで「穀雨」の日(春の雨で穀物が潤う。この時期に種を蒔くと、雨に恵まれよく育つ。)、5月5日には「立夏」の日(暦の上では夏の始まり。)。

 亜熱帯地方の福建省では、日本の京都などより季節の花々(日本の京都と同じ花)は1か月間ほど早く咲き、そして枯れていくようだ。今、ツツジの花は色あせはじめ花が落ち始めている。(ツツジの花は京都では5月上旬ころが見頃となり、中旬を過ぎると色あせて枯れていく。)

 この季節、ちょっと遠目から見ると一見、桜並木のようにも見えるバウヒニアという名の亜熱帯樹木の花が満開に咲いている。この花は淡いピンク色が多いが白い花の樹木もある。香港の象徴の花とされ、香港の紋章ともなっている花だ。

 この季節、高木に赤い花を咲かせる亜熱帯の花(名前?)。ここ福建省・福州では街路樹としてもけっこう多い。

 藤(フジ)の花が今は満開。ハイビスカスも満開となり始めた亜熱帯地方の「清明」の季節。藤の花も京都では5月上旬から咲き始め、中旬には満開となる。

 8階にあるアパートの部屋から見える福建師範大学構内の小高い山の森の樹木も新緑の季節。いつもこの景色を見て心安らぐ。真下(ました)に見える「趙氏宗祠(ちょうし しゅうし)」。昨年の11月から全面改修が始まり、屋根瓦の取り換え、壁の塗りなおしなどを経て、この4月上旬にほぼ改修が完了し美しい姿となった。

 これは「趙」という姓の、ある一族たちの祖先を祀る廟(びょう)の建物である。おそらく百数十年前以上前の清朝の時代に建設された建物かと推測される。建物の最も奥まった場所には宗祖の祠の一角がある。

 毎年4回ほど、この廟に一族の人たち数十名が集い、祖先に祈りを捧げ、大量の料理を作り酒宴が開かれている。『中国の宗族と祖先祭祀』という書籍の表紙帯には、「宗族は血縁団体として中国社会を特徴づけ、今も華僑や中国企業の背景では健在である。」と書かれている。

 中国の長い歴史で、この同じ宗族(一族)の人々は、生きていく上での相互扶助で暮らしを支え合う特に重要な血縁団体だった。1949年に中国共産党政権となって70年以上の歴史を経る中でも、この宗族(一族)の祈りや団結、相互扶助は消えることなく続けられ現在に至っている。生活、進学、就職、金銭の貸し借りなどの相互扶助は、この宗族(一族)や幋(はん)[友人や仲間たちの団体]などを頼りにしていることは、日本社会以上に強く、そして現在でも脈々と続いている。このような宗族(一族)や幋のつながりを大切に守っているのは、日本に比べて中国の歴史がとても生きる上で厳しい歴史を持ってきているからと思われる。

 4月14日(月)の午後の担当授業(特別講座)を終えて、大学正門近くのバス停からバスに乗った。一見、桜並木のようなバウヒニアの街路樹を通り、次のバス停で乗り換えのために下車。木製の天秤に荷物をぶら下げた高齢者の男性が立っていた。おそらく、ある路上での物売りのための荷物なのだろう。アパートのある団地の入り口付近で、これも高齢者の農民工たち(地方からの出稼ぎ労働者)が8人ほど集まって賭けトランプを楽しんでいる。中国では、元公務員や元軍人以外は、日本に比べても年金がとても少ないので、高齢者になっていても生きていくことは大変だなあといつも思う。

 団地内の路上で焼き物の食べ物を作っている高齢の男性。今晩の夕食に「梅花小‥」というものをこの人から買った。(11元=220円) アパートのある団地棟の近くの枇杷(びわ)の実が、まだ緑色だが大きくなり始めていた。

 そして、桑の実がちよっとだけ色づき始めてもいる。近所の果物店にはスイカ、パイナップル、そして、枇杷など夏の果物も売られ始めている。今週の毎日の最高気温は27℃~32℃。最低気温は18℃余りと、亜熱帯地方の福建省福州は、もう初夏の季節となってい。

■二十四節気は、中国中部の河南省で作られた。このため立夏(夏の始まり)は5月5日。この河南省よりも南方にある亜熱帯地方の福建省は、夏の始まりはその河南省よりも半月余りは季節的に早くなる。そして、5月上旬から10月下旬までの半年間は、30℃以上から40℃の、湿気も猛烈に強い真夏日が続く。(35℃以上の猛暑日は4カ月間ほどもある。この4か月間余りの季節を人々は「悶熱」[メンロウ]、悶絶しそうな湿気と暑さの日々と言う。この亜熱帯地方の福州の夏と比べると、京都などの夏は涼しく感じてしまうのだ。)