彦四郎の中国生活

中国滞在記

光明港河川公園界隈を歩く❸—いつもの露店に立ち寄り―NHK朝ドラ「ひよっこ」、カレーライス

2017-05-30 22:53:45 | 滞在記

 光明港河川公園や旧宿舎から歩いて10分くらいのところにある、毎週末(土日)の午前中に開かれている露店に立ち寄った。若いお母さんと小さな1才と少しくらいの男の子が道端に座っていた。「少しでもいいからお金を与えてください」と白い紙に書かれていた。自分の孫のことが浮かぶ。5元札(80円)を渡してあげた。母と娘の露店、人ごみの中でずっと立ってバスケットに入った卵を売る女性。ウイグル族の男たちがTシャツを売っている。ドリアン・西瓜(スイカ)・椰子の実などの季節の果物が売られている。

 天秤棒(竹制)に薬草をぶら下げて売り歩くおばさん。夏になり、竹で作られたゴザをうる露店。古書が並べられているシートのそばにしゃがみこんで本を見ている若い女。私もこの露店で「中国古代仕女画」という書名の美術絵画の古書を買った。20元(320円)。

 別の露店で、『太平天国』(上・中・下)の3巻の古書が売られていた。太平天国の乱は1860年前後に起きた乱である。一時期には中国の南部の広東省からから中部の南京にいたるまでを占領して「清朝」に反乱を起こした乱であった。いずれ、この「太平天国の乱」について調べて見たい。この本の横に反町主演のテレビドラマ「GTO―麻辣教師」のDVDが置かれていた。赤ちゃん連れの若い夫婦が露店を見廻っていた。若い夫がたすき紐で赤ちゃんを抱きかかえている。

 石を売る露店のエリアに行く。年季の相当入ったオートバイ、車のトランクに石を置いて売っているウイグル族の男性。チャイナ服(チーパオ)を着ている女性がいた。なかなか似合っているなあ。「ヤマモモ」をみかける季節になっている。

 露店近くのバス停には、ファンタ(飲料水)の宣伝。3人の若い男の子たちは、今人気の「TFBOYS」(中国のジャニーズ版)。何か見たことのない果物が売られていた。後部座席がなくなってしまっている泥だらけのオートバイ。中国はいろいろだな。アヤメやカキツバタの一種の花が開花していた。

◆―NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」

 現在放映しているNHK朝ドラの「ひよっこ」は、なかなか面白い。主人公たちの生まれ育った年代は 私より少し早いが、ほぼ同じ時代。故郷の中学校生活や制服の様子、集団就職、定時制高校---。東京への集団就職で勤め始めた「電気会社」の工場での寮の様子。時代のニオイがよく分かる。

 私も福井県の越前海岸の村の中学校の出身。私の学年は3クラス(A組・B組・C組)で、126人の同級生がいた。いまでも5年に一度の同窓会がお盆の前日にある。当時、同級生の多く(2/3)は集団就職で都会に旅立った。高校に進学したのは(1/3)くらいだった。普通高校に行ったのは家が金持ちの4〜5名くらいで、ほとんどは 私も含めて職業系高校の高校進学だった。私も進学させてもらえるかどうか心配もしたが、高校に行かせてもらって下宿をした。結局、この青春時代の高校生活はけっこうおもしろかった。3年生の時は生徒会長をしながらも、謹慎処分や停学を3回もくらってしまい、実家の父や祖父母を心配させてしまった。当時、大学というものに行けるとは、夢にも思わなかった。それから数年後、家からの仕送りはなかったが、夜10時から朝5時までの深夜アルバイトを月に平均18日間ほど4年間こなし、大学を卒業することができた。結局、私の中学校の同級生で大学というものに進んだのは3人だけだった。

 この「ひよっこ」というドラマは、そんな田舎出身の若者たちの様子が 実によくでているドラマだと思う。主演の有村架純もなかなかいい。

◆ ―中国一人暮らしでのカレーライス―

 中国に来て4年近くたつが、時々 とてもカレーライスを食べたくなる時がある。中国の人たちは、5年ほど前まではカレーライスを食べる人は少なかったが、ここ4〜5年ほどでカレーライスを食べる人が増え始めてきている。スーパーマーケットでも、日本の「ハウス食品」のカレールー「こくまる」などが中国の工場で生産され販売されるようになっている。 「日式食堂」などでもカレーライスを食べることができる。しかし、いろいろな店のカレーライスを食べたが美味しいと思ったことは一度もない。中国人が好む「水っぽい薄味のカレーライスで、日本人には少し苦手なにおいのする香辛料も入っている」からだ。

 そこで、カレールーを買ってきて、アパートでカレーを作るのだか、このカレーは「少なく作る」というのがけっこう難しい。月に1度ほど週末に最小の量を作るのだが、これを一人で食べると、「夕食→翌日の朝食→昼食→夕食→翌々日の朝食」と5回ほど連続で食べることとなる。少し飽きるが、1カ月くらいすると、また無性に食べたくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 


光明港河川公園界隈を歩く❷—2年前まで住んだ宿舎があった旧大学キャンパス(長楽)は今―

2017-05-30 09:05:20 | 滞在記

 河川公園で、「水書」を書いている人。ジャスミンの花の蕾が少し膨らみ始めていた。ここ福州はジャスミン茶の世界の本場とあって、ジャスミンの花畑も多い。バトミントンのようなスポーツだが、ラケットと羽根が違っている。羽根ではなく柔らかくて少し重いテニスボールのようなものを使っている。

 朱塗りの中国風の建物で少し休む。近くでは、バトミントンの羽根より少し大きく羽根の下が平たくなっているものを、バレーボールのように競うスポーツ。けっこう上手で見ていて楽しいな。小さいお札のようなものを使うトランプのようなゲームを楽しむ人達もいた。二胡の演奏で歌うおじさん。

 亜熱帯の景色を実感する椰子の群生。伸び縮みするゴムバンドで体を鍛えるおじさん。ベンチでおばあさんに甘えきっている小学低学年と中学年の2人の孫たち。

 河川公園に隣接している閩江大学の旧キャンパス(長楽校区)跡に行ってみた。2年前まで私はここの大学外国人教員用の宿舎に住んでいた。広大なキャンパス跡地は民間に売却され、1年前には建物の取り壊しが始まっていた。この日1年ぶりに来てみたら、敷地の周りは公園のようにきれいに整備され、新しい高給マンションとなっているところもあったので驚いた。旧キャンパスの正門の方から見ると、建物を建設中だった。広大な敷地は、これから続々と建物が建設されるのだろう。敷地は新しい塀で囲まれて敷地の中を見ることはできなかった。懐かしい場所だな。大好きな場所だった。

 この旧キャンパスには「情報システム学部」の1・2回生たち、1000人あまりが生活し学んでいたが、今は全員が新キャンパスに移っている。学生たちがいなくなり、大学そばの飲食店などもシャッターが下りている店がほとんどだった。診療所だけは、あいかわらず たくさんの人が並んでいた。タバコをいつも買っていた店のおじさんとおばさんに挨拶をしたら、「あなた、少し中国語が話せるようになつたねえ」と冷やかされた。

 大通りに出る。高層の住宅が並んでいる。中国の男性は、たくさんの鍵を腰にぶら下げている人が多い。10個くらいの鍵をぶら下げている人も普通にいる。1週間ほど前の授業の時、「中国に来て不思議に思うことの一つに、鍵をたくさん腰にぶら下げている人を 普通によく見ることです。なぜ、あんなに鍵が多いのですか。家の鍵・自動車の鍵・仕事場の鍵・電動バイクの鍵まではわかるのですが、他は何の鍵なんですかねえ?」と学生たちに聞いてみた。学生たちによれば、「他に机やタンスや小箱などの鍵などもあります。とにかく中国人は、泥棒に備えて、いろいろなところに鍵をするんです」とのことだった。「なるほど、鉄格子と鍵で いろいろと備えているんだ」と納得できた。小さなプロパンガスを運んているおばさんの姿。

 中国では「電動バイク」の3人乗りは普通である。5人くらいが乗っている場合もたまに見かける。小さな赤ちゃんを乗せるのも普通。こけたら怖いな。歩道に若い男が椅子に座っている。中国で多い「刈り上げて上だけ髪を残すヘアースタイル」の一見怖そうなお兄ちゃん。刺青もしている。これは、中国では普通によく見られる一般的な男性の姿だ。

 アダルトショップの店がある。「全国連鎖NO,1215店・福州機旗艦店」とある。「全国チェーン店の1215番目の店で、福州市の本店」という意味だ。中国の性産業の実態はよくわからない。政府の規制はとても厳しいようなイメージはあるが、性に関しては「ある部分は日本よりオープン」なところもある。例えば、大きなスーパーマーケットのレジの近くには、「コンドーム」商品が必ず置かれているなどだ。これは、政府が30年来強要していた「一人っ子政策」(産児制限)に関係しているのかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 


光明港河川公園界隈を1年ぶりに歩く❶—公園での、中国庶民のいろいろな過ごし方―

2017-05-30 06:35:35 | 滞在記

 1週間ほど前の5月21日(日)の朝、1年ぶりに光明港河川公園に行ってみた。この河川公園は、2013年8月下旬から2015年7月中旬までの約2年間住んだ大学の宿舎が近いので、ほぼ毎日のように散歩をしていた場所だった。公園での、中国庶民の過ごし方がいろいろあって面白いところだ。現在住んでいるアパートからは、60番バスに乗れば20分ほどで、この公園近くに到着できる。1年ぶりに、この公園に出かけた。

 福州市内を流れる「閩江(びんこう)」という大きな川の支流に沿って河川公園がある。このあたりの住民の憩いの場所だ。小舟に乗り貝を採っているおばさんがいる。5月30日(火)の端午節に、この河川で行われる予定の「龍舟(ドラゴンボート)レース」用のボートが係留されていた。毎年、端午節の1カ月ほど前から、練習が始まる。たくさんの木を運ぶおばあさん。ベンチで談笑するおばさんたち。

 一人カラオケで中国の歌謡曲を熱唱している男性。川の上に架かる大きな𣘺に近づくと、ものすごく音響の効いた歌声が聞こえてきた。とても上手で歌手のような歌声だ。川向うの橋の下に この歌声の主が見えた。裸で歌っているおじさんだった。橋の下は、とても音響が素晴らしいので上手に聞こえる。何艘もの「龍舟」がみられる。今日も練習をするのだろう。

 梅雨の季節に入っているので、どんよりとした天気が多い福州のこの頃。日本の梅雨のようにたくさんの雨は降らないが蒸し暑い。少し晴れれば30度以上となる。アジサイが数輪開花を始めていたが、まだ色付きは薄い。くちなしの花の匂いと同じ白い花。水辺には、青い色の花が咲いていた。池の蓮は、数輪が花を開花していた。

 中国全土で行われている「おばさん体操ダンス」。中国将棋を楽しむ人。顔見知りのおじさんは、お互いの孫の世話をしながら談笑していた。

 ここは、毎日 クラッシックなダンスを楽しむ人たちが集う場所。ここを歩く時は注意しなければならない。皮製の靴でダンスをするので、皮靴の底に磨かれて蝋(ろう)が塗られたようにツルツルになっているのだ。夏になり、女性の肩の下の脇が露出する服装も多く見られる。多少は「有毛文化」が残っているので、わき毛が見えるのが悩ましい。

 ここは、本格的な「ダンスのグループ」の人たち。ステップを見てもメリハリがあり、競技会に参加しているような40代〜55才くらいまでの人たちだ。4年前から このグループの人たちのダンスを見ているが、一見の価値ありというダンスを踊る。カッコいいおじさん・おばさんたちだ。

 

 

 

 

 

 


新シルクロード「一帯一路」❷―イギリス主導「0.0版」、アメリカ主導「0.1版」、中国主導「0.2版」

2017-05-29 15:08:16 | 滞在記

 

  中国グローバル化研究センター(Center  for  China  and  Globalization  )[CCG]の王輝耀主任は、「1800年代初頭から本格的に始まった世界のグローバル化は、イギリス主導のグローバル化が0.0版だとし、1900年代を中心とした米国主導のグローバル化が1.0版だとすれば、『一帯一路』は中国がバージョンアップに関わったグローバル化2.0版である」と言う。そして「この『一帯一路』の成功のためには、超莫大な資金が必要であり、その資金は中国を中心とした現在の『一帯一路』加盟決定国が拠出できるには ほど遠く、とりわけアメリカの加盟による資金拠出が必要不可欠である」とみている。つまり、「グローバル化0.2版」は中国が中心となり主導するスタンスをとりながらも、アメリカや日本・ドイツの参加を望む現実が横たわっている。

 「一帯一路」沿線地域のインフラ建設を行うには、毎年1兆7000億ドル(約190兆円)の資金が必要と試算されている。中国が主導している金融関係の3組織(AIID、新開発銀行、シルクロード基金)の資本総額は、2400憶ドル(約2兆6400億円)に過ぎない。近年、中国は毎年「一帯一路」沿線各諸国に総額1300億ドル(約1兆4300億円)の借款を供与している。その金額の拠出元の大部分は、中国国営の国有銀行や国家開発銀行ではなく、中国民間の「商業銀行」からの資金である。中国の銀行としては「海外投資プロジェクト」に対して、慎重な態度をとることも多い。このため、アメリカや日本の商業銀行や国有銀行の「一帯一路」への参加は、のどから手がでるほど欲しいものかと推測される。

 上記の円グラフは、世界全体に占める主要国GDP(総生産額)の比率であるが、「1位、アメリカ24.4%、2位、中国15.5%、3位、日本6.4%、4位、ドイツ4.5%、5位、イギリス3.3%、6位、フランス3.2%、7位、インド3.1%、8位、ブラジル2.5%、9位、イタリア2.4%、10位、カナダ2.0%、その他32.7%となっている。上記の棒グラフは、そのGDPの各国の金額比較となっている。(※その他の中の、韓国は11位、1.9%、ロシアは12位、1.8%となっている)

  ➡「アメリカと中国、そして日本とドイツの4国」で、世界のGDPの50%超を占めているのが現状である。

 人口という面からみていくと、現在「一帯一路」に加盟参加を表明している国の人口を合わせると「44億人」を占めるという。これは、現在の世界人口の63%。国内総生産(GDP)の面でみると、合計は21兆ドル(約2310兆円)にのぼる。この額は世界のGDPの約30%となる。アメリカや日本などが加盟した場合、今後10年間で、世界GDPの60%以上を占める可能性もある貿易機構となる可能性がある。

◆2016年・世界人口は73億人と報告されている。各国の人口は、「1位中国13.8億人、2位インド13.1億人、3位アメリカ3.2億人、4位インドネシア2.6億人、5位ブラジル2.1億人、6位パキスタン1.9億人、7位ナイジェリア1.8億人、8位バングラディシュ1.6億人、9位ロシア1.4億人、10位日本1.3億人、11位メキシコ1.2億人、12位フィリピン1.0億人---」などとなっている。日本周辺のアジアでは、韓国が約5000万人、ベトナムが約3000万人、北朝鮮が約2500万人、(台湾)が約2400万人、(香港)が約730万人となっている。

◆人口が多いということは、国力としては大きな要素となる。人的資源ともいわれる。特に国民の所得が向上すれば「物を買う購買層としての世界的大市場」となる。現在の中国がそうである。中国の現在の人口構成は「洋梨型」である。つまり、40代が最も多く、若年層になるにしたがって少なくなっている。中国は1970年代末からの改革開放政策のもと、「人口が多すぎるという圧力からの回避→一人っ子政策→外国資本への労働力解放→世界の工場への脱皮→労働力不足→賃金急上昇→消費購入力向上→外国資本への市場開放→世界の市場への脱皮→人口圧力の超越→世界の超大国へ」と現在に至っている。改革開放路線のもと、35年間をかけて国力の増強に成功し超大国となった国である。

 1980年と2021年(推定)の「国民1人あたりのGDPを比較」する(上記の棒グラフや折れ線グラフの写真)と、中国は約42倍となる。次いでインドが9.5倍、インドネシアが7.6倍、日本やアメリカやドイツなどは4.5〜5.4倍程度。中国は、特に2006年以降の伸び率がすざましく、この10年間で1人あたりの経済的向上が飛躍的だったことを示している。

◆人口が多いという点では、中国と肩を並べているのがインドである。(2020年には中国を人口では追い抜く)インドは日本との関係は良好であるが、中国とは対立緊張関係が横たわる。今回の「一帯一路」にも加盟参加をしていない。日本人の間には、日本とインドが協力関係を結び中国に対抗すれば中国に対抗できると期待する人たちも多いかと思われる。日本とインドのGDPを合わせると、世界の10%近くを占めることになる。

 しかし、インドの経済成長率は中国と比べると格段に低くなっている。インドには人口政策はなく、人口構成は完全なピラミッド型である。インドは1980年以降の中国と比較すると、「現在同じような人口を有しながら なぜ経済的な発展が遅れているのか」と疑問が浮かぶだろう。インドは中国と違い「多くの人口をかかえながら世界の工場になることはできなかったし、今後も難しいといわれている」のはなぜなのか。その最大の理由は「インド人労働者は権利意識が強すぎて、外国資本による工場や会社経営が困難である」と言われている。また、インド特有の身分差別制度がいまだ根強く残っていることも大きく影響しているとも言われる。このため、自慢のIT産業や国内資本だけでは、過剰労働力を吸収できず、野放図に膨れ上がる人口圧力に、インドは押しつぶされる可能性もあるとも言われている。

 「一帯一路」構想の具体化に伴って、いろいろな問題も浮かびあがっている。中国の雲南省と国境を接するラオスやタイ、ミャンマーなどの大きな河川では、河川の港湾整備を環境への考慮をいないまま 中国側が大規模に工事を行い、それらの国々もそれを容認している。このため、河川の環境破壊が進み、漁民にとっては「魚がとれなくなった」との嘆きが起きているようだ。また、スリランカは現在多くの借款(借金)を中国から受けているため、借金のかたに港湾に中国の軍艦や潜水艦が寄港し、基地化を要求もしているという。この状況に、隣国インドのモデイ首相がスリランカ支援に動き出している。「大国が小国の弱みにつけこみ支配するのはよくない」との抗議もスリランカやインド国内で起きている。

 「一帯一路」フォーラム国際会議の会期中、各国の中国に対する警戒感や懸念に配慮し、主催者の習近平国家主席は「中国は、世界各国とともに発展の経験を分かち合う。他国の内政には干渉しないし、社会制度や発展モデルを輸出もしなければ強要もしない」などと説明をしたが、中国国内の「人権や自由」に関する問題や南シナ海を巡る問題など、中華思想のもと「覇権主義」的行動を行っている中でのこの説明が、どれだけ各国に受け止められたかは疑問が残るところもある。

 ちなみに、今回のフォーラム国際会議には、先に述べた「インド」は オブザーバー(正式な加盟参加ではない)の代表団参加させていない。また、オーストラリアなども、「中国に対する警戒感」から距離をもち参加を見送っている。TPP(環太平洋パートナーシップ)は、現在10か国(日本・カナダ・ベトナム・オーストラリア・ニュージーランド・チリ・ペルー・シンガポール・マレーシァ・メキシコ―中心国だったアメリカは、トランプ新政権が離脱表明)での締結を目指しているが、締結までには多くの困難も出てきているようだ。(※この中で、ニュージーランドは「一帯一路」への加盟・参加に最も積極的)

◆―ねらいは「政治・経済」の両面―

 中国が、「一帯一路」の構想を提唱し、今回、習近平主席がここまで大規模な国際会議を開催したねらいは、何なのか。大きく2つあると言われている。1つは、「経済的」ねらいである。このことは、前号で述べたとおりである。もう一つは、国内外を意識した政治的なねらいである。中国では今年の秋に、五年に一度の「中国共産党指導部の大幅な交代をともなう大会」が開催される。この共産党大会で、習近平主席が2期目に入ることは確実視されているが、党の規約を2022年からの3期目の主席就任が可能になるように変えることも予想されている。それを前に、中国が主導する初めての大規模な国際会議を成功させ、国民の支持を取り付けて、みずからの権威を高め、人事をめぐる党内のかけひきを有利に進める思惑がある。また、アメリカ第一主義を掲げるトランプ政権の誕生で、国際関係に大きな変化が起こり始めた現在、経済をてこに各国との関係を強化し、超大国アメリカに対抗して 世界の中心的な国家となる「中国の夢」を追及するという思惑がある。

 3〜4年後、最終的にアメリカが不参加の態度を強め、日本、ドイツなども参加しないとなると、「世界に大きくあげたアドバ―ルーンである一帯一路」が、資金的な問題で実現できなくなる可能性もある。習政権にとっても、大きな痛手となり、国民の支持にも、対外的にも大きな信用失楽の影響を与える事態となる。このため、日本やアメリカに対して「ことさらこれ以上関係を悪くしたくない」という中国側の思惑も見え隠れする。

◆このような「一帯一路」を巡る国際情勢の中で、日本国内でも「加盟参加をすべきかどうか」という、日本の将来の鍵(命運)を握る選択に関心がもたれ始めている。安倍政権の中でも、政権No.3の麻生太郎副総理・財務相や安倍外交の最高ブレーンである矢内正太郎国家安全保障局長(元外務省事務次官)などは、4年後のアメリカ大統領選の動向を見据えながら、中国包囲網を再構築し、安易な妥協をせず中国にあたるべきだとして「加盟参加」に慎重もしくは反対をしている。

 一方、政権No.2の二階俊博自民党幹事長や安倍首相の最側近の今井尚哉首相秘書官(政務)は、AIIDなどにはまず参加し、中国側に恩を売り、日中関係の正常化をより実現するためにも「できるだけ早く加盟参加」の方向に賛成の立場をとっている。今井秘書官が、この5月の「一帯一路」フォーラムに参加した北京に滞在中、中国政府の外交政策決定の最高責任者である楊潔箎国務委員(副総理級)[王毅外交部長の直属の上司]と 内密に会って会談したという情報もある。日中平和友好条約締結40周年の来年9月の自民党総裁選までに、安倍首相の中国公式訪問を実現したいと 今井秘書官は考えているようだ。

 いずれにせよ、1カ月以降後の7月、日本に於いて「日中韓」の首脳会談が行われる予定である。日本からは安倍首相、韓国からは文大統領、中国からは李克強首相(政権NO.2)の参加が予定されている。東アジア情勢を巡る いろいろなことが具体的に動きそうな予感がする。

 「一帯一路」への 日本としての判断は、とても難しい情勢があり、その判断はなかなか難しい。いずれにせよ、中国を中心とした「グローバル化0.2」の時代は始まってきていると感じる。日本という国が、これから将来に向けて、「アメリカを中心とした政治経済圏と中国を中心とした政治経済圏の両方に対して 重要な位置を占めることが必要だ」ということ これだけは明らかなことではないかと考える。

 安倍自民党政権に対抗すべき、民進党や日本共産党の党内論議は、この点に関してまったく聞こえてこない。また、政策としても具体的なことがまったく聞こえてこない。残念ながら、党内の相当深刻な人材不足の感がいがめない。

 4年間近く住んでいる福州市内は、あいかわらず、そこかしこでの建設ラッシュが続いている。地方の中・大都市では福州(人口700万人・中国の都市としては30番目くらいの規模の都市)と同じように、道路や地下鉄の新設整備を進め、経済発展を進める都市が多くなってきている。「一帯一路」構想が進むなかで、広い中国全土の中で 経済発展が遅れていた地域や都市に活気があるのも、今の中国の一面でもあり事実である。

◆このようなテーマで文章を書くために、さまざまな資料などに目を通します。いままで知らなかったことも多く、自分の勉強にもなります。また、中国の大学で「日本概況」などの講義を行う場合の、私の基礎的な知識・学力ともなると感じながら、ブログを作成しています。それにしても、今回のブログ記事は長く長くなりました。すみません。

 

 

 

 

 

 

 


新シルクロード「一帯一路」❶―習近平(中国共産党政権)が主導する「中国梦」と世界戦略

2017-05-28 19:42:59 | 滞在記

  1981年より始まったNHK特集(日中共同制作)のドキュメンタリー番組「シルクロード」。第1部12集が放映され、私たち日本人は「シルクロード」に強い関心がもつこととなった。1983年より第2部18集が放映され、中国の西安からイタリアのローマに至る交易の道と国々を知ることとなった。その後、ローマから地中海・アラビア海・インド洋、マラッカ海峡を経て南シナ海・東シナ海、そして中国の広州・泉州・福州・寧波(ニンポー)の港湾都市から西安に至る「海のシルクロード」特集(12集)が放映された。実に9年間にわたり全42集の番組となった。

 今、中国共産党政権の習近平主席が掲げる「中国梦(中国の夢)」という国民的スローガンの具体的政策の重要な柱となる新シルクロード戦略「一帯一路」(英語名:One  Belt , One  Road  )が世界的な注目を集めている。(胡錦濤前主席の時代の国民的なスローガンは「和諧社会」であった。)

 この「一帯一路」構想には3つのルート(路)がある。北線と中線と南線である。その貿易ルートは、[北線]―北京➡ロシア➡ドイツ➡北欧、  [中線]―北京➡西安➡ウルムチ(中国)➡カザフスタン➡アフガニスタン➡ハンガリー➡フランス(パリ)➡イギリス(ロンドン)、そして[南線]―福州・泉州➡広州➡海南島(海口)➡ベトナム(ハノイ)➡シンガポール➡マレーシァ(クアラルンプール)➡インドのネシア(ジャカルタ)➡スリランカ(コロンボ)➡ケニア(ナイロビ)➡ギリシァ(アテネ)➡イタリア(ベネチア・ローマ) となっている。北京からヨーロッパに至る鉄道の整備、港湾の整備などを行い、ユーラシア大陸全域とアフリカ大陸のほぼ全域にわたる「経済的、貿易共同体」を作るという壮大な構想だ。アジアに限って言えば、「中国中心のアジア版EC」の結成を構想しているといえるかもしれない。

 この中国主導の「一帯一路」に、アメリカのトランプ大統領のTPP離脱宣言もあり、日本国内でも「一帯一路に日本は参加すべきかどうか」という関心が高まりっっある。日本はどうすべきだろうか。国の将来の鍵ともなる(命運がかかる)政治的選択を含んでいる。

 この「一帯一路」構想の提案は、2012年に新主席となった習近平によって2013年頃から具体的な提案がされるようになり、2015年にはかなりその具体化がはかられてきた。AIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立などである。習近平と李克強首相がこの数年間、世界の各国を訪問し「一帯一路」構想への参加を働きかけてきた。そして、今年の2017年5月14日から16日までの2日間、初めての「一帯一路」世界フォーラム(国際会議)が、開催された。冬の寒さが厳しく夏暑い北京だが、この時期の北京は気候的に最も過ごしやすい季節となる。

 この国際会議には、ロシアのプーチン大統領、インドネシアのジョコ大統領、トルコやイタリアの大統領など29カ国の首脳(NO,1)を始め、130超の国と70以上の国際機関から1500人が出席した。日本からは、自民党政権NO,2の二階俊博自民党幹事長が経済産業副大臣など70人からの大型代表団を率いてを派遣され、フォーラムが終わった後の16日に、習近平主席と短時間会談し、安倍首相の親書なども渡したと伝えられた。しかし、中国メディアは、米国がフォーラム開催直前に急きょ代表団を派遣したことを大きくとりあげていた。(中国が主導する「一帯一路」関連の金融機関協会である「アジア金融協力協会」の会議には、日本の大手銀行である「三菱東京UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行」や複数の大手保険会社などが参加した)

 アメリカは首脳級は出席しなかったとはいえ、米国が「一帯一路」に「関わる」こと自体が中国にとって大きな意味をもっており、「大逆転」というふうにとらえているようだ。「オバマ政権がAIIBへの参加を見送ったように、米国は今回のフォーラムに参加しないだろう」というのが大方の見方だったからだ。フォーラムへの参加は、米国が必ず「一帯一路」に参加することを意味していないが、ある男性が仲を深めたいと思っている女性を食事や映画に誘ってOKしてもらったのと同じように、今後の進展が期待できるというものだと、中国のメディアは見ている。中国としては、「一帯一路」構想の実現化のためには資金が足りないのが現状。中国主導でアメリカや日本の経済的資金や投資を引き出したいという本音が見え隠れしている。

 北朝鮮もこのフォーラムに代表団を派遣した。中国が招待を働きかけたようだ。フォーラム初日に、北朝鮮はミサイル発射を実行したが、中国側は「困った刈り上げ坊ちゃんだ」とぐらいにしか受け止めていないようだった。

   今日(28日)、路上のキオスク(便利店)で雑誌『VIATA看天下』5月18日号(10元=160円)を買って読む。「一帯一路」の特集がくまれていた。10日に一度の割合で発刊される週刊誌だ。この特集を見ると、ヨーロッパから中国までの、具体的な交易計画のことがかなりわかった。

 ここ福建省の省都・福州は、「一帯一路」構想の「新・海のシルクロード」の玄関口の一つとしての一大拠点となる。現在、港湾の整備や道路の整備、地下鉄の新造営などが進められている。私が勤める「閩江大学」には、新しく「海洋学部」など、いくつかの学部や大学院が創設され、より「総合大学」化をすすめる予定で、ここ1年で省の重点大学の一つに昇格となると思われる。これも、「一帯一路」構想の大学版の一つと考えられる。

◆2010年まで続いた年率10%を越えていた「中国の高度経済成長期」が、それ以降 当然と言えば当然だが 徐々に成長率が減少し始めた。この時期に就任した習近平国家主席。「中国の夢」という大きなスローガンを国家的に掲げて、「一帯一路」国家計画を立案実施し始めたことは、とても先見の目があると感心せざるを得ない。彼の側近などのブレーンにかなり優れた人物たちが存在しているようだ。低下し始めた飛行機の高度を再び長期に上昇させる可能性が大きいこの国家計画。中国の大きな国内問題である「都市と農村の経済格差、沿岸部と内陸部の経済格差」の是正にも大きな効果を発揮する政策でもある。中国の歴史的にも非凡な政治家の一人であることは間違いない。

 これは、かって日本の池田内閣の「所得倍増計画」、田中角栄首相が実施した「日本列島改造論」(新幹線や高速道路の全国整備による地方と都市の格差是正)に共通するところもあるが、中国の「一帯一路」はそのスケールにおいて桁がちがう。中華思想とは、一言でいえば「中国を中心とした世界を創る」ということであるが、習近平の掲げる中国共産党政権の「中国の夢」とは、中華思想の「中国が世界の中心地」となるという夢の階段の一つ一つである。

◆次回の号では、世界各国の「経済力や国力」をみながら、「一帯一路」などに関して、その計画・野望のもつ問題点、今後の日本のとるべき進路などについても 少し考えてみたい。