goo blog サービス終了のお知らせ 

彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国「清明節」(先祖たちのお墓参り)のころとなる、伝統的に食べられる清明節の草餅

2025-03-31 07:28:04 | 滞在記

 「今年の冬は例年よりもとても長いですわ」と福建省の中国人たちは言う。例年なら2月中旬ともなれば春の陽気となるが、確かに今年は3月下旬でもまだ寒い。そんな中国福建省だが、先週の3月26日・27日の最高気温は36℃の猛暑日。そして、翌日の28日や29日・30日は寒風の中、ホカホカカイロやマフラーの13℃(最低気温7℃)へと急降下。そして、今日31日からの今週は最高気温が27℃から32℃へと変化するとの予報。昨今、中国も気候が変調しているが、春から秋にかけて咲き誇る亜熱帯性気候の花・ブーゲンビリアもようやく福州市内のいたるところで開花が始まっていて美しい。

 この季節に咲く、亜熱帯性の黄色い花(名前はわからない)。閩江大学構内のホテル「閩院酒店」の敷地内にも美しい花を満開にさせている今。

 それなりの規模の中国の大学では、大学構内にホテルが併設されているのが一般的。それらのホテルには、レストランや宿泊室の他に、学術交流などができる会議室や大ホールなどもある。閩江大学の「閩院酒店」の正面は、福建省の別称「閩(びん)」の伝統的な建物のデザインがとられている。

 3月下旬、日本の京都よりも3~4週間早くツツジが開花し始めている。かと思えば、大学構内の広葉樹のある種類の大木は、この時期に黄色く紅葉した木々の葉が落葉し、秋のような景色も出現するので、日本のような季節感がもちにくい。

 3月24日(月)、この日は午後に「特別講座」(3回生)の授業を行う。大学からアパートに戻る途中の🚌バスに、午後5時ころ、授業を終えた職業系の高校生(※中国の高校生の50%を占める。4年制大学への受験は閉ざされている。)たちがたくさん乗り込んできた。この10年間の間で、中国の高校生たちのようすも変わってきている。10年ほど前の高校生たちは、まあ、バスの中での礼節があり、高齢者には席を譲るなどの光景も普通だった。

 しかし、今は、そんな光景を見かけるのは珍しい。この日、バスに乗り込んできた女子高校生の二人は、ソフトクリームを食べていたり、50センチ余りの竹串にたくさんさされている揚げ物を車内で食べてもいた。手を握り合って座っている高校生カップルの姿も。

 アパートから最も近い福建師範大学前バス停で下車。路上には「お金を請う」ルンペンさんの姿も。最近の乞食のルンペンは、携帯電話(スマホ)のバーコードを使っての電子決済システムでお金を請う人が一般的だが、この日のこの人は、そのシステムはなかった。直接、現金を請うていた。多くの人々は電子決済で店での支払いをすます中国の現在、現金を持ち歩いて生活している人は少ないので、お金を恵む人の姿は皆無。私は常に現金も持ち歩いているので、長時間ひたすら頭を下げ続けている乞食の人の大変さを思い、5元札(約100円)を入れた。

 アパート団地近くの交差点付近で、卵を売っている路上の男性の姿も。様々な生活階層の人がたちが、あらわに(赤裸々に)見られる中国社会の人々の暮らし。みんな生きるためにさまざまな生業をしている。

 今年の中国の「清明節(せいめいせつ)」(※日本のお盆のように、墓参りなどに行く日で祝祭日となる。)は4月4日(金)。この日には、草餅を食べる伝統的習わしがある。パン屋さんなどの店先には、この草餅販売の看板が置かれていた。先日、閩江大学卒業生の王さんから、「これ自分の実家で作った草餅です」と、4個を渡された。食べてみたら、とても美味しかった。(中に餡が入っているものや餡なしの2種類)   3月下旬となり、町中の露店ではパイナップルも売られ始めたので、1個買って食べた。(1個8元〜15元)[約160円~300円]

 4月4日(金)の「清明節」祭日も利用して、日本に一時帰国することにした。(昨日の3月30日に帰国。4月9日に中国に戻る予定。) 日本の京都も桜の季節を迎える。孫たちの中国土産に二つを買って帰った。


トランプ米国大統領の再来に世界は揺れ動く➌—国連総会でロシア支持に回る米国、ロシアのペースに乗せられて進む停戦案、「トランプの誤算」もあらわになり始めた‥

2025-03-29 10:57:33 | 滞在記

 国連総会(193カ国)は2月24日、ロシアのウクライナ侵攻から満3年になるのに合わせて特別会合を開き、ロシアを非難し、ウクライナの領土保全を支持する欧州側提案の決議案を、93カ国賛成多数で採択した。採択ではアメリカ・ロシア・中国など18カ国が反対票を投じ、65カ国が棄権した。

 その後、国連安全保障理事会の会合も開かれ、アメリカが提出した「紛争の終結」を求める決議案を、アメリカ・ロシア・中国など10カ国の賛成で採択した。この決議にはロシア非難は含まれず、これまでアメリカの主要同盟国のイギリスやフランスなど5カ国が棄権した。アメリカのトランプ政権は、この日の2度の採決で、いずれもロシア側につくかたちとなり、ロシアのウクライナ侵攻による戦争を巡る、国連でのアメリカの立場をこれまでのアメリカの方針とは180度、一変させた。

 これにより、ロシア・ウクライナ戦争情勢を巡るアメリカとウクライナやヨーロッパ諸国との同盟関係の断絶が浮き彫りとなってしまった。

 中国は国連の場でのこの戦争を巡るロシア支援の立場に変わりはないが、ロシアとアメリカ二国間のみの停戦協議の行方をじっと注視している。そして、2月28日、アメリカを緊急訪問したウクライナのジェレンスキー大統領とトランプ大統領との会談。この会談で、ゼレンスキー大統領が、トランプ大統領の停戦交渉がロシア寄りすぎることの懸念を示したことに強く反発し、噛ませ犬的なバンス副大統領とともに、「無礼だ」「あなたは第三次世界大戦を賭けてギャンブルをしている」「あなたにはカードは何もない」「大統領執務室でアメリカメディアを前に、自分の立場を訴えるとは無礼だ」「恩知らず」などと声を荒げて批判。双方での激しい言葉の応酬口論となった。

 この会談の模様は全世界に速報され、ロシアのプーチン大統領は高笑いが止まらなかったようだ。このアメリカのトランプ・ウクライナのジェレンスキー両大統領の激しいやり取りについて、中国政府は公式のコメントは控えたものの、ロシアの高官たちのコメントをもとに、中国の国営中央テレビ(CCTV)は、ロシア安全保障会議副議長であるメドヴェージェフ(元大統領)の発言「トランプのゼレンスキーへの叱責は不十分だった」や、ロシア外務省のザハロフ報道官の発言「トランプはゼレンスキーを殴らなかったことで自制を示した」などを引用し、この会談を報道した。

 この会談決裂を受け、イギリス・ドイツ・フランスなどヨーロッパの主要国はゼレンスキー大統領擁護・支持のコメントを伝えた。

 3月2日、アメリカ・トランプ政権がロシア寄り政策をとる中、ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援するため、欧州各国やEU首脳・カナダなどがイギリスのロンドンで会議(ジェレンスキー氏も参加)を開き、停戦後のウクライナへの平和維持部隊の派遣などを含めた「有志国連合」を形成するなどの方針で一致した。この会議での一致点とは、➀ウクライナへの軍事支援の継続と対ロシア経済制裁の強化、➁停戦協議へのウクライナ参加、➂停戦後のウクライナの国防力、侵攻抑止力の強化、➃ウクライナの安全の保証に向け、アメリカの支援を求める方針も確認した。3月14日、G7外相会議がカナダで開催された。 

 アメリカ・トランプ政権によりNATO諸国の分断となった状況を受けEUのフォデアライン欧州委員長(EU)は3月4日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの脅威に対抗するため、8000億ユーロ(約125兆円)規模の「再軍備計画」を表明した。また、5日、フランスのマクロン大統領は、「ヨーロッパ全体をフランスの核の傘で守る」議論を欧州各国と始めると表明した。ドイツも、ロシアに備えた軍備大拡張方針を表明。

 このように「欧州は(アメリカ抜きでも)欧州諸国をロシアの侵略から軍事的に守る」という動きも加速し始めている世界情況。そして、東アジア諸国(日本・台湾・韓国・フィリピンなどの、中国や北朝鮮、ロシアと対峙する国や地域)では、「動揺するアジア、深まる米国不信—トランプの停戦交渉から見る 集団安全保障からの離脱という現実」だ。

 アメリカでトランプ政権2.0が1月20日に正式発足して2か月間以上が経過した3月下旬、日本のANN(朝日)テレビでは、「トランプさらなる誤算」とのテーマでの報道特集が放送された。四つの誤算「➀合意できなかったウクライナ・ロシア30日停戦、➁関税・国内経済の反応、➂最高裁長官のトランプ氏への苦言、➃ガザ停戦 崩壊の危機」。停戦の功績を急ぐあまり、あまりにもロシア・プーチン大統領の術(すべ)にはまってきて、ロシア言いなりの停戦交渉など‥。また、ガザ停戦の機運も、アメリカトランプ氏と相通じているイスラエルのガザ大規模空爆や侵攻の再びの実施により暗礁に乗り上げた。

 この報道の中で、4月から開始される世界各国への25%関税率引き上げ(追加関税)を実施した場合、今後3年間の各国のGDPへの影響を示す図表が示された。それによると、「メキシコ(マイナス3.26%)、アメリカ(マイナス1.80%)、‥‥、日本(マイナス0.87%)、‥‥、中国(マイナス0.24%)‥‥。」などとなっていて、中国などは影響が小さいとされてい.る。世界全体的には(マイナス0.69%)。

 もうこれ以上の戦場悪化を停めるため、ガザ地区の住民による異例の「ハマスはガサから出ていけ」とするデモが数日前に起きたとも シハイ伝えられた。(これはアメリカ・イスラエルのさらなる武力行使の成果の一つとも言えるが‥。)

 3月下旬、「アメリカの大学はリベラリズムの温床になっている」として、大学への補助金の再検討や停止などを検討するとの圧力をかけ始めた。

 世界は、トランプ大統領の再来により動揺し、再び「帝国主義(武力ある国が、より弱い国々を侵略支配する)」の時代へと再び戻り始めた世界史の転換点にもきているようだ。

 

 

 


トランプ大統領の再来に世界は揺れ動く➋—バンス副大統領演説の衝撃、自らを王に見立てるトランフ、3年間の戦時下が経過したウクライナの人々

2025-03-27 20:48:40 | 滞在記

 2月14日、NATO加盟国がドイツのミュンヘンに集まり、「ミュンヘン安全保障会議」が開催された。この会議にアメリカ政府代表として参加したバンス副大統領は、異例の欧州NATO諸国(特にイギリス・ドイツ・フランスなど)を次のように批判する演説を行った。「欧州が最も懸念すべき脅威は、ロシアでもない。中国でもない。欧州内部自身だ。」と演説した。

 欧州内部自身の問題(懸念)とは、イギリスやドイツ、フランスなどヨーロッパ主要国の現政権(民主主義を標榜し、右翼ポピュリズム勢力と対峙している。)に対する批判であり、この演説は、ロシアや中国のみならず、欧州の右翼ポピュリズム勢力を勢いづかせる演説内容だった。このバンス副大統領の演説について、トランプ大統領は、「素晴らしい演説だった」とバンス副大統領をほめそやした。

 バンス副大統領はこの演説の中で、欧州各国の(民主主義)政権が、(特に右翼ポピュリズム勢力などにもよる)ニセ情報のSNS規制強化を批判。「(懸念とは)欧州がアメリカと同じ価値観から後退することだ。欧州が言論の自由から後退していることを危惧している。"移民排斥"を訴える政党が欧州で支持を広げることを希望している」とし、「ワシントンには新しい保安官がいる。トランプ氏のリーダーシップのもと、欧州の言論の自由を守るためにアメリカは戦う」と演説した。この演説は「バンス演説の衝撃」として、世界に衝撃を与えた。

 この演説に先立つ2月8日、スペインで、「欧州議会極右会派集会」が開催され、フランスのルペン党首やオランダのウィルターズ党首、ハンガリーのオルバン首相(ロシアとの関係が深い)など、欧州各国の右翼勢力が一堂に会した。バンス演説はこれらの欧州の右翼ポピュリズム勢力のみならず、世界の同勢力を勢いづかせるものとなった。

 —トランプ氏が自らを王に見立てた—2月21日、アメリカ大統領府のホワイトハウスは、トランプ氏が自らを王に見立て王冠を被った写真に「王様万歳!」と記したものを全世界に向けて投稿した。バンス演説といい、このような投稿といい、「民主主義とは、あまりにかけ離れた」というか、「民主主義を敵視さえしている」様相を呈しているトランプ政権でもある。

 そして、アメリカ国内では、共和党党員であれ民主党党員であれ、両党の議員であれ、トランプ政権を個人が批判することさえも、躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない、かなり決意のいることとなっているようだ。批判すればトランプ氏を熱烈に、狂信的に支持してる、2020年に連邦議会を襲撃したようなトランプ信者の集団からの猛烈な批判・抗議行動にさらされることを恐れるからだ。民主主義制度崩壊の深刻な危機にアメリカもある。

 2月18日から、サウジアラビアでアメリカとロシアの高官による「ロシア・ウクライナ」の停戦交渉が始められた。当事国であるウクライナを会議には参加させず、欧州からも参加させない、ウクライナの頭越しの、ロシア寄りの停戦交渉。

 2月19日には、「ウクライナのゼレンスキーは独裁者だ。彼は4%の国民の支持しかないのに、大統領の座に居続けている。彼は、(大統領になる前の)コメディアンとしてはそこそこに成功したが、このロシアとの3年間の戦争の間、何も成し遂げられていない、実績を残してもいない。プーチン大統領が望めばウクライナ全土を占領できるだろう。これまでアメリカがウクライナを支援するために使った金額の見返りに、ウクライナ国内のレアメタル鉱山の権利をアメリカにわたせ」などと、ゼレンスキー大統領を罵(ののし)った。

 この4%という数字は、ロシア側が主張している数字。実際には、今年2月上旬に信頼できる機関が行った支持率調査では、1年前より下がったとはいえ、57%が「ゼレンスキー大統領を信頼し支持する」というのが正確なものだったにもかかわらずだ‥。

 2025年2月24日、ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵略・進攻が始まって、まる3年間が経過した。首都キーウのみならず、ウクライナ全土で多くの犠牲者を弔う集まりが行われた。この日もロシアによるミサイル攻撃が首都で行われた。

 トランプ大統領とプーチン大統領による、ウクライナの頭越しの停戦交渉や、トランプ大統領のウクライナ国民に対する態度、ゼレンスキー大統領を馬鹿にした言動などに、「トランプ氏は、ロシアを被害者のように扱っている。とても嘆かわしい」と憤るウクライナの人々の姿が報道されてもいた。

 この3年間の戦闘や空爆などにより、多くの犠牲者が生まれた。TBSの「報道1930」の報道番組によれば、ウクライナでは、兵士の死者4万5100人、民間人の死者1万5000人以上、兵士や民間人の負傷者は約39万人にもそして、国土の20%がロシアに占領されている。一方のロシアは、兵士の死者は17万2000人、負傷者は61万1000人。

■前号のブログで紹介した、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の「トランプが当選した理由」について語るインタビューは、youtubeでは9分くらいのものもある。(上記写真)前号で記さなかったが、人々を「愛国主義」へと過度に煽りたてる主張も人々を惹きつけるとサンデル教授は述べている。「アメリカンファースト」「アメリカを再び偉大な国へ」という呼びかけだ。これに人々の多くは惹きつけられ、誇りのようなものを感じる。「カナダやグリーンランドの領土化、パナマ運河の所有」などの発言や、「ガザ地区のアメリカ所有」などの発言も、この過度な愛国心や「アメリカを再び偉大な国へ」と、リンクする言動だ。

 これは中国では習近平主席の「中国の夢」、ロシアのプーチン大統領の「ロシアを再び偉大な国家に」と合い共通する。過度なまでの国粋的なプロバガンダである。

 

 

 


異形の米国政権・トランプ米大統領の再来に世界は揺れ動く➊—世界各国の主権をも脅かす政権が米国でなぜ再来したのか

2025-03-26 20:48:16 | 滞在記

 昨年2024年11月に行われたアメリカ大統領選挙。トランプ大統領(共和党)は「圧勝して圧倒的な国民層からの信託を得た」と主張しているが、一般投票の得票率ではハリス候補(民主党)とは2%程度しか差がついていなかった。連邦議会上院・下院ともに多数をとったが、議席差は歴史的といって言いほどの僅差であった。(上院が共和党51・民主党47・空席2、下院が共和党219・民主党215・空席1。)

 次回の連邦議会上下両院の中間選挙は、2年後の2026年11月に行われる。共和党と民主党の議席数差がわずかという、トランプ大統領にとっては厳しい状況を打破する必要があることも相まって、2025年1月20日のアメリカ第47代大統領就任式を待たずして、矢継ぎ早に様々な政策を言明し始めることとなった。

 「カナダをアメリカの第51番目の州にしたい」「(デンマーク領である)グリーンランドを買い取ってアメリカのものにしたい」「パナマ運河をアメリカのものに」などと、世界に向けて言い放つなど、世界を唖然とする言動を、大統領就任前から連発。これまで、アメリカと強い同盟関係が続いていた隣国のカナダ国民は、この国家主権をないがしろにする侮辱的なトランプ氏の発言に大きな怒りとアメリカ不信をもつこととなった。また、不法移民対策強化のために、メキシコやカナダに高い関税をかけると圧力(脅し)をかけながら、不法移民のアメリカ入国阻止を強力に行えと迫る。さもなければ高関税の実施だと‥。この圧力(脅し)により、カナダ・メキシコ両政府は、今後、アメリカとの国境での移民対策を行うことを発表した。

 このトランプ次期大統領の言動や行動などにより、アメリカと国境を接する二つの国民は、(長く支え合ってきた)アメリカという国から、大きく心が離れていくこととなったと思われる。

 そして、2025年1月20日、トランプ大統領の就任式(トランプ2.0)が行われた。1月21日・22日付の朝日新聞には、「トランプ大統領就任—初日に政策大転換—トランプ印政策連打 バイデン路線否定する大統領令」「WHO・パリ協定離脱 来月から関税25%方針」「性別は男と女の他にはない トランジット性否定政策」「20年米国連邦議会襲撃1500人に恩赦」などの見出し記事の政策を発表。朝日新聞社説には、「トランプ政権と国際社会—米国依存から脱する新秩序を」が掲載。

 そして、トランプ新政権の重要閣僚として、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス国防長官などの名前や、イーロン・マスク氏などの名前が並ぶ。いずれもトランプ大統領に忠誠を誓う「イエスマン」たちと論評される閣僚人事だった。

 2月6日付朝日新聞には、「トランプ氏"米国がガザ所有"全住民の域外移住を主張—独仏"実行なら国際法違反"と批判」「ガザ 野心にじむ"極論"—リゾート地挙げ"世界の人々が住む"地と」「トランプ氏"米国がガザ所有"  実現性・敬意欠くビックマウス」などの見出し記事。

 このトランプ大統領のやりたい放題の発言(発表)もまた世界に衝撃を与えた。さらに、大統領のホワイトハウスからは、米国領となったガザ地区の海岸で、トランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が、リゾート地化した浜辺でくつろぎ余暇を楽しむ姿などのAIを使って製作された30秒ほどの動画を投稿。

 同動画では、空から浜辺に舞い落ちてくるドル紙幣を拾おうとしているガザ地区の子供たちの姿や、ガザ地区に立つ巨大な金ぴかのトランプ大統領像などもホワイトハウスから全世界に向けて動画が投稿された。これを見たガザ地区の住民たちの、侮辱された怒りの気持ちはいかほどだろうか‥。トランプという男のちょっと異常とも思える言動だと世界は感じただろう‥。もう、アメリカという国への敬意も‥。

 このようなトランプ大統領の言動や矢継ぎ早の政策実施に対し、「米国はもはや"恐喝集団"」「トランプ大統領は"(暴力団)マフィア"」「米国の"恥"」などの批判も上がる。

 トランプ大統領就任から約2週間が経過した2月6日、訪米した日本の石破首相は、ホワイトハウスでトランプ大統領との初会談に臨んだ。2月下旬発売の『News  Week』誌(3月4日号)には、「破壊王マスク」と題された表紙の特集記事。トランプ大統領の重要閣僚の1人として、ドイツなどヨーロッパ各国での右翼政党(ポピュリズム政党)躍進への揺さぶりをかけたり、アメリカの行政機構の生成AI(生成人工知能)の性急な導入化による、これまでの人による官僚・行政機構を破壊しようとしていると報じられる。

 得票率的には2%の僅差での勝利であったが、昨年11月のアメリカ大統領選挙に勝ったトランプ氏が「なぜ選ばれることになったのか?」ということについて、アメリカの政治学者であるハーバート大学のマイケル・サンデル教授(71)は、朝日新聞のインタビューに応じた。そのインタビュー内容の要約が1月24日付朝日新聞に掲載された。このインタビュー記事は、トランプという異形の大統領を再選させたのはなぜなのか?を考察するうえで、とても参考になる。

 「働く尊厳を取り戻すために—新自由主義の欠陥 尊敬や承認の欠如 暗黙の侮辱への憤り」「公の場の再構築と"生産者"の再評価—無力感の克服にも」と題されたインタビュー記事。「トランプ米政権がとうとう再始動した。米政治哲学者マイケル・サンデルさんは、富の偏在にとどまらない尊敬や名誉、承認を巡る不平等が、異形の政権を再来させたとみる。長く見過ごされてきた"暗黙の侮辱"とは何か。どうすれば働くことの尊厳を人々の手に取り戻し、民主主義を立て直せるのか。」と、この記事の前置きに書かれている。

 このマイケル・サンデル氏の論評は、you tubeで視聴もできる。(1時間ほどの全編論評)。これを要約したものが朝日新聞の記事内容とはとても近い。

■トランプ氏のような世界の右翼ポピュリズム政治家に共通しているのは、基本的に、不法移民の排斥・強制送還などを伴う「反グローバリズム主義」や「自国ファースト主義」と、政治家や官僚などエリート層が庶民の生活的苦境に目を向けていないと訴える「反エリート主義」だ。そのような主張は、生活の困難さや働く誇りを失わされている感じる大衆層には受け入れられやすい。このような大衆の不満に対して、民主党政権が有効な政策がとれなかったことに、トランプ氏の再来を招いたとサンデル氏は述べる。そして、米国をまっとうな民主主義国として再生させるにはどうしたらよいのかについてもコメントしている。

 

 


中国福建省福州地方の、神々のカーニバル「遊神」を巡って‥

2025-03-25 12:03:45 | 滞在記

 中国の華南地域の福建省や広東省東部、そして台湾海峡に面した台湾西部には、「遊神/ヨウション(ゆうしん)」という民俗行事がある。「遊神」は、特に福建省福州市地方の長楽地区などの各村々で毎年行われる「遊神行事」が最も規模が大きく、最近、全国的に有名となっている。このため、この行事のようすを体験しようと、訪れる人々が2023年、24年、25年と、年を追うごとに急増した。

 この「遊神」は、主に旧暦の正月開始から1か月内までの中国の「春節」期間中などに行われ、村々で実施される「年中行事」の一環として位置づけられている。最近ではSNSなどを通じて有名となり、「神々のカーニバル、遊神」とも呼ばれる。「人だかりができ、町や村は沸き立ち、神々がカーニバルにやってくる!」(2024年)とも報道される。

 何百年もの間、人々によって続けられてきているこの民俗行事「遊神」は、中国では多くの人々が信仰する「道教」に由来する。道教は、歴史上の人物で三国志でも有名な関羽などや、地域にまつわる様々な人物などを神々としてを祀る中国最大の民俗宗教。この道教と、先祖崇拝や、台湾海峡沿岸地方の媽祖信仰などとも相まって生まれた民俗行事が「遊神」のようだ。

 「遊神」行事では、各地域の村々や町の道教寺院や廟に祀られている神々を迎え出し、町や村々を巡回させる。そして五穀豊穣や地域の平和を祈ることにある。美しい衣装に化粧を施した数メートルもある各神々の木偶(でく)の中に人が1人入り、男神や女神たちの巡回パレードをする。この神々に伝統的な太鼓隊が同行、太鼓の音や銅鑼(どら)を打ち鳴らし、爆竹も大量に鳴らされ、夜には花火も打ち上げられるなかでのパレードとなる。そしてこの神々の行列の中には、神々にお供する「ナタ」や「孫悟空」や「二郎神」なども登場する「遊神」行事。

 2023年頃から急速にSNSなどを通じて人々の間に広がった「遊神」行事への関心。特に、20代・30年代の若年層がこの行事を見て、友人・知人にSNSで広めていった。私も、大学の学生や世話になっている福州在住の中国人などから、この23年と24年の「遊神」の神々のパレードの様子を「これ、見て見て!」スマホの動画を見せてもらうこととなった。

 この伝統のある福州地方の「遊神」のカーニバルの様子を一度は見てみたいと私も思い始めていたのだが‥。

 「信仰か統制か 福建省福州市長楽区で—福建の"遊神"を巡る激しい攻防(2月24日)」と題されたニュースが、2月28日付の「看中国」で報道された。この「看中国」は、アメリカのニューヨークに本局をおくユウチューブ報道番組(VISION TIMES)。日本支局など世界15カ国に支局をもち、毎週1度は配信される。

 この「看中国」の報道によると、今年の25年2月24日に開催された福州市長楽区の「遊神」パレードには、福建省内外からたくさんの人がこのカーニバル行事を見ようと訪れ、会場の町や村々は熱気に包まれていた。しかし、今年の「遊神」パレードに対し、多数の警察官などが盾を手にパレードの道を封鎖、バリケードや装甲の警察車両も道を封鎖し、「遊神」のパレードを中止させようとしたため、これに怒った人々は抵抗。爆竹なども投げられ現場は騒然となったようだ。そして、バリケードを突破し、行事が続けられたと報道されていた。

 社会主義国を標榜する中国では、1949年の中華人民共和国成立以来75年以上続く中国共産党政権のもと、この宗教(民俗宗教含む)に対して政府公認宗教以外は厳しく禁止してきている。まあこの道教などの長い歴史をもつ土俗的宗教の行事に対しては、キリスト教やイスラム教などに比べて寛容な政策をとってきていたのだが‥。

 この一連の今年の「遊神」を巡る騒動について、福州で生まれ育った20代後半の中国人に聞いたところ、「私が小学生の頃でしたが、この"遊神"の行事は迷信だから、見に行ったりしないようにしなさいと、学校からも言われていました。」とのこと‥。2023年頃から、その人気が全国的にも高まったこの行事に、当局もついにパレード中止の措置に出たが、多くの民衆の怒りによりパレードの中止が結局できなかったと報道がされていた。しかし‥‥今後、この「遊神」行事への制限はより強くなるかと思われる。

 日本であれば、京都八坂神社の神々の神事に由来し、八坂神社と京都の町衆がそれを何百年間にわたって担ってきた地元の誇りである「京都 祇園祭」の山鉾巡行などが、警察のバリケードにより中止させられることを想像すると‥。