彦四郎の中国生活

中国滞在記

世界の自動車産業の動向➍—大変動時代に、トヨタなど日本のメーカーはどのような戦略を持っているのか

2024-05-31 11:11:42 | 滞在記

 2021年~24年、世界の自動車産業の世界は大激動・大変動の時代の真っただ中に入っている。中国のBYD社などの自動車会社のEV車などの新エネルギー車が、中国国内市場のみならず、世界の自動車販売市場を怒涛し始めているからだ。また、米国のテスラ社のEV車の躍進も目覚ましかった。

 そんな大激動の自動車産業界だが、今年の春、日本のトヨタ自動車の昨年度(2023年)決算会見が行われた。その会見では、昨年度の売り上げは45兆953億円(前年比21.4%増)となり、純利益(営業利益)も5兆3529億円(前年比96.4%増)との報告がされた。1年間の営業利益が5兆円を超えたのは、日本企業としては史上初となった。

 なぜ、そのような売り上げと純利益の情況となったのか。それは、世界的にブームとなっていたEV車の販売増加が一旦落ち着き(EV車の課題もあって)、トヨタなどが主力車としているハイブリット車が再び評価されたことが要因のようだ。(※EV車は一旦は小休止となっているが、しかし再び、2027年頃から新たなEV車の世界的増加の流れはあると考えられている。だから、トヨタの2023年売り上げ増加も、この2~3年間だけのEV車の小休止によるものと認識されている。)

 そして、世界の自動車産業界は、今後の10年間、「EV機能+ハイブリット機能(※電気充電施設から充電可能なPHEV車)+固体バッテリー+太陽光充電+IT機器(OS)」の開発競争となる予測。さらに、「進化したEV機能車」の開発へと進むと予測されている。

 トヨタがこの20年間余り世界の先進をいっていたこれまでのハイブリッドカーについてだが‥。

 ―ハイブリッド車—世界に先駆けてハイブリッド車を開発し、1997年に販売し始めた日本の自動車メーカー・トヨタ。そのハイブリッドカーの代表的な自動車がプリウスだ。2003年、2009年、2015年にモデルチェンジを行い、2023年のモデルチェンジ車が4代目となる。

 そのハイブリッド車の仕組みとは、ガソリンエンジンと電気モーターの使い分けで、車が走行できること。発進の時はバッテリーとモーター、走行中はガソリンエンジンと電気モーターを使い分ける。タイヤの回る力を利用して電気を作りバッテリーに充電しモーターが回せる。

 日本でのハイブリッドカーの保有台数割合は、2022年で自動車全体の約16%、6台に1台がハイブリットカー。2000年代以降、このハイブリッドカーは世界の自動車販売シェアーを大きく占めることともなった。最近では、プラグインと呼ばれる、自宅や充電スタンドでバッテリーに充電できるハイブリッドカー(PHEV)も中国では先進的に販売されている。このPHEVの技術面では、トヨタは中国のBYDに遅れをとっている。

 このような世界の自動車産業の大変動の時代、日本のトヨタはどのような戦略でこの新たな時代を切り開こうとしているのか。最近、視聴したYou Tubeドキュメント特集番組で参考になったものを以下(1~8)にその内容を紹介しておきたい。

—You Tube特集番組より(1~8)—

1、EVは多くの問題をかかえていますが、その一つが充電に関する問題です。ガソリン車の場合、給油は数分で終わりますが、EV充電は充電スタンドでも30分から1時間ほどかかります。急速充電(料金は高くなる)の場合でも15分はかかるため、充電待ちの行列ができることもあるほどです。(※家庭での充電の場合、8時間から15時間ほどが必要)そうしたEVの充電問題が解決されない限り、世界でこれ以上EVソフトが進むことが難しいでしょう。

2、そのような中、トヨタなどがこれを解決するために動き出しました。それがペロブスカ太陽電池を掲載した自動車の開発です。ペロブスカ太陽電池は、その名の通り太陽光発電により発電する電池ですが、太陽光を効率的に電気に変換できます。そして、最大の特徴は、非常に軽量で柔軟性に優れていることです。印刷技術を使って製造することができます。その厚さは1mmで、従来の太陽光パネルの1000分の1、重さは10分の1となっています。また、フィルム状であるため、折り曲げることができます。さらにこのペロブスカ太陽電池をトヨタの車のEV車に設置すれば、充電施設を使う頻度が限りなく減ります。

3、ペロブスカ太陽電池は、2009年に日本の研究者が発見した新しいタイプの太陽電池です。宮坂力・松陰横浜大学大学院教授は(※最初は所属する大学院生の発案による)ペロブスカという結晶構造を持つ物質を用いて高い光電変換効率を実現する方法を発見しました。この発見は、ノーベル賞級の業績とも評されています。そしてこの研究は、京都大学発のベンチャー企業「エネコテクノロジーズ」が提携し、より高効率なペロブスカ太陽電池の材料技術の進歩を研究もしています。そして、この「エネコテクノロジー」と提携しているのが日本のトヨタ自動車です。

4、トヨタはすでに、プリウスなどの一部の車種で太陽光パネル搭載モデルも展開してきましたが、今後、充電施設スタンドなどを利用せずに太陽光パネルでのEV車などの実現も将来的に期待されています。これによりEV化の最大の課題とされてきた充電インフラ整備や充電時間の問題が改善・解消されEVの普及がさらに加速されていく可能性があります。トヨタとエネコテクノロジーは2023年5月から、車搭載用ペロブスカ太陽電池の開発に着手しており、2025年を目標に試作車を完成し、2027年頃にはこのペロブスカ太陽電池掲載のモデル発表を目指しています。

5、トヨタはあえてEV化に遅れをとっていたのは、次世代のEVを投入することで一気にEV市場のシェアを獲得しようとするためです。長年のハイブリッド車の開発で培った技術を活力にして効率的で革新的なEVを投入することです。トヨタ会長の豊田章男氏は、「EV化は避けられない流れだが、単にEVを作るだけでなく、より良いEVを作ることが重要」と述べています。

6、最近、EV市場の動向に世界の注目が集まっています。従来のEVはリチウムイオン電池(バッテリー)の課題から、環境性能に疑問がもたれてきています。豊田会長は、「EV市場の最近の不振の一つはリチウムイオン電池バッテリーの課題が消費者に認知されてきたことが原因として大きい」と述べています。つまり、EV=安全かつ効率的なクリーンエネルギーというという単純なイメージ図式が崩れつつあり、人々が現在のEVの欠点を理解し始めたということなのです。実際、テスラの株価は下落してきています。これはEV需要の一旦減少の影響です。

7、トヨタはEV以外にも水素車やハイブリッド車の進化の開発を進めてきました。このようなトヨタに対して、「EV開発に立ち遅れている。トヨタは時代遅れだ」という批判もありました。しかし、2023年~24年にかけてのEV市場の一旦減速をみれば、「トヨタの戦略には正当性がある」と、ドイツのフォルクスファーゲン社をはじめ、世界も改めて注目をし始めています。(※最近のアメリカの新車販売台数の40%近くが日本車なのです。)

8、トヨタはまた、従来のリチウムイオン電池バッテリーとは異なる「全個体電池バッテリー」の開発も提携企業と先進的に行っています。「全個体電池」とはリチウム電池のような電解液がなく、固体の材質のみで構成される電池です。この構造の違いにより全固体電池には大きなメリットがあります。

エネルギー密度の向上により、充電時間が大きく短縮されます。さらに安全性も高まります。(※従来のリチウムイオン電池バッテリーのように、熱暴走による発火の恐れがなくなります。)加えて、全固体電池は環境の変化にも強く、寒冷地での性能低下といった課題を解決できるのです。そして注目なのは、トヨタがこの全固体電池バッテリーを搭載した次世代EVを2027年までに市場に投入する計画を立てていることです。

■このYou tube動画などを視聴して思うことは、トヨタの戦略とはつまり、2027年を初年度の目標に、全固体バッテリーやペロブスカ太陽光発電を車に搭載することにより、より優れたハイブリッドカーを制作・販売する戦略を持って開発を進めていることかと思われる。このハイブリッドカーが作られれば「➀ガソリンエンジン+②太陽光発電と優れたバッテリー+➂家庭や充電スタンドでも充電可能なPHEV」の三種の神器的な機能を持つ自動車が開発されることとなる。

そして、この三種の神器的な機能を併せ持つ自動車の開発は、中国のBYD社も着々と進めいているようだ。まさに、トヨタとBYDの熾烈な競争ともなっているが、総合的にはBYDがやや優勢に進んでいるかもしれない感はある。つまり、➀のガソリンエンジンではトヨタ優勢、②は五分五分、③はBYD優勢、そして、④IT(OS)機能はBYD優勢かと推測される。

 中国の自動車産業は、中国政府の新経済産業政策国策としての大きな資金援助を背景に急成長をしてきている。一方、日本は政府の経済産業政策の国策が弱い。だが、自動車産業の世界的大変動に直面し危機感が強くなり、ようやく国としての動きも見られるようになってきた。

  日本政府(経済産業省と国土交通省)がこの5月20日に発表した自動車産業のデジタル化戦略案。自動車のデジタル化で、中国や米国勢が先行する中、「SDV」と呼ばれる次世代車の世界販売で2030年に日本勢の世界シェアー(占有率)を3割に伸ばす目標を掲げる。そのために、日本の自動車産業界のメーカーの垣根を超えた連携を促すとしている。(※日本の自動車会社NO1のトヨタ(※ダイハツを傘下)と、NO3の「マツダ」や「スズキ」が業務提携した。また、国内2位のホンダは、日産や三菱と、そしてSONYとの業務提携。)

■トヨタは中国のテンセント(IT機器大手会社)との協定を締結もしている。OS面での強化のためだ。また、同じくトヨタは、ライバル会社である中国のBYDとの技術協定も行うと発表した。BYDが先行しているプラグインハイブリッドの技術提供を得るためだ。中国側の会社としては、「世界のトヨタとの連携」というネームバリューが、企業価値を高めることができる。

■日本の三菱の「アウトランザー」(PHEV車)なども中国で最近、時々目にするようになっている。ちょっと中国人の間でも人気が出始めているのかもしれない。日本のマツダの「MX30」なども注目され始めているようだ。中国の人たちも、BYD車やテスラ車だけでなく、総合的によりよい自動車を求め始めているようにも思えた。

 

 

 

 

 


世界の自動車産業の動向➌—日本自動車メーカー関係者も認める「中国EV・SDV車の優位性」

2024-05-25 20:13:09 | 滞在記

 4月25日から5月4日まで開催された中国の「北京国際モーターショー」。現地を訪れた日系自動車メーカーの各社幹部からは、「明らかに日本が遅れている分野があることを認めざるを得ない」という声も挙がっていると報道さけている。具体的な遅れている分野とは特に「SDV」の分野。

 「SDV」とは、クルマの車載OS(オペレーティングシステム)を軸として、エンタメ、電動化、自動運転技術などを総括的にデーターマネージメントする仕組みを指す。要するに車の運転席・ハンドル周辺にある電子機器の機能分野である。

 中国はファウェーなどの世界的携帯電話などがあり、ソフトウェア―などのIT・AI開発も世界の最先端を行っている。特に中国の強みは、中国政府が自動車産業とIT・AI産業に対する影響力が強く、それらの産業分野を一体化させながら自動車製造に国策として力を入れられることだ。

 実際に最新の中国のEV車などに同乗させてもらうと、その「SDV」機器機能の先進性(ハイテク性)には驚かされる。

 中国の通信機器大手の「ファーウェー」(華為技術)は、自動運転などのスマートカー技術で協業する自動車メーカー(中国の自動車メーカー)を増やしてきている。(※日本のトヨタもファーウェーと協業提携を結んでいる。)

 世界の自動車産業の世界の動向は、自動車の「SDV」機器機能の先進性もまた、その販売力の成否に大きく関わる世界となってきているようだ。

■上記の二つのグラフは、2022年~24年の「EV車」の世界の販売台数。アメリカの「テスラ」と中国の「BYD」がダントツの上位を占めている。22年までは「テスラ」が首位だったが、その後、23年からは「BYD」が首位を独走してきている。

 ―世界PHEV戦争が始まっている―

 2020年から24年にかけて、世界的に販売シェアを広げてきている中国EV自動車やアメリカ・テスラ社EV自動車。だが、最近になってそれらのEV車のデメリット(問題点・課題)も明らかになりつつあり、EV販売の失速も始まってきたとも指摘される。そして今、新たに世界の注目を集めた自動車が北京国際モーターショーで展示された。それは、中国自動車メーカー「BYD社」の「秦」。"脱炭素の現実的解決版"の切り札とも呼ばれる「PHEV」(プライングインハイブリッド自動車)だ。(※中国の自動車名には、中国の「唐」や「宋」などと王朝名を名付けるものも多い。「秦」もその一つ。)

 「PHEV」車とは充電可能なハイブリッド車で、近場ではEV車として活用でき、遠出はハイブリッド走行が楽しめる。電欠の心配もなく、環境性能にも優れている。この"脱酸素の現実的解決版"の現実的使い勝っ手の良さが消費者に受け、販売台数を大きく伸ばし始めている。

 北京国際モーターショーで展示されたBYDの「秦」は、なんと価格が7万9800元(約160万円)と安い。日本市場だと軽自動車の価格で、この値段にメディアやSNSには「日本車キラー登場」とか「中国市場から日本車が駆逐される」という声も報じられていた。

■「新エネルギー車」―中国独自の定義で、電気自動車[EV]、プラグインハイブリッド車[PHEV]、燃料電池車[FCB]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない。

■中国の「BDY」社などの新型車やアメリカの「テスラ」社などの車は、車体の外観がとてもスマートですっきりしているものが多い。これも現在、世界及び中国での販売シェア拡大につながっているようだ。今日5月25日、私のアパートに来た中国の20代後半の男性と話していると、「この外観の良さも、シェア拡大のとても大きな要因の一つになっています」と話していた。(※ドイツのポルシェのような外観の自動車も増えてきている。日本車などは、この外観の新しさという点でも中国などの消費者の心をつかみあぐねているのかもしれない。)

■BYDのEVバスが「2階建てロンドンバス」にも登場

 BYDは5月21日、新型の2階建てバス「BD11」をイギリスで発表した。電気で走るバッテリーEVで、新しいロンドンバスとして採用される。BYDとしては、世界に向けてものすごく良い宣伝にもなるだろう。

■アメリカのバイデン大統領は5月14日、中国製EVに対して関税を現在の25%から100%に引き上げると発表した。(2024年8月から実施)  新たな米中貿易戦争の始まりでもあり、貿易戦争の拡大となる。

■YouTubeの放送より—「EVの問題(課題)が認識され始め、EV機能だけの自動車販売シェアは減速し始めている」の概要

 問題が次々と明らかになるにつれ、EVに対する不安が大きくなってきている。そのためEV市場は急速にその規模を縮小しつつもある。EVのみの販売を行っている企業(テスラ社など)は、非常に苦しい状況。ただ、中国のBYDはその中でも奮闘している。EVだけでなく新たにPHEV車の販売などがその例だ。

 しかし、中国では最近、EVを購入した人たちの間での不満を持つ人が増えてきている。2024年版のあるレポートでは、不満を持つ人が22%に。特に、地方・農村部では「購入を後悔している」%が、54%と高いとの報告。

 まあ、このYouTube報道の真偽のほどは私には分からないが、単なるEV車だけの自動車販売は頭打ちになりつつあることは確かなようだ。特に「EV」しかないテスラは厳しい状況が始まっている。

 


世界の自動車産業の動向—大変動の現在❷—これまで日本車・ドイツ車ばかりの中国だったが、中国国産のEV車が急増していた

2024-05-24 11:13:22 | 滞在記

 

 2013年9月に中国に赴任して以来、中国国内で走っていたり駐車している車を見続けてもきたこの10年間余り。

 世界の三大自動車生産大国といえば、例えば1990年代以降から2020年までの30年間は、ドイツ・日本・アメリカの三か国かと思う。

 そして、私が中国に赴任してから7年間の2019年までは、中国国内の自動車の多くもまた、この三か国、特に日本車とドイツ車がとても多かった。2014年、勤めていた大学の中国人同僚女性から、「今度、結婚することになりました。結婚する男性が自動車を買いますが、ドイツ車と日本車のどちらが良いか迷っています。自動車販売会社まで一緒に来て、両国の車を見てもらえませんか」と頼まれた。そして、その同僚とフィアンセの3人で販売会社に行き、エンジンをかけてみたりして性能を試したことがあった。最終的に彼らは、ドイツ車を買うこととなったのだが、その理由は、「ドイツ車の方が頑丈そうな感じがする」ということだった。

 その7年間の中国国内に存在する自動車は、日本車が30%、ドイツ車が30%、アメリカ車が5%、韓国車が5%、中国国産車やその他の国の車が30%というくらいの割合だったかと思う。

 日本車ではトヨタがやや多く、次いで日産やホンダ、そしてマツダという感じだった。ダイハツや三菱の車は少ないが、たまに見ることもあった。

 ドイツ車では、フォルクスワーゲン車がやや多く、次いでベンツ車やBMW車やアウディ車という感じだった。これらの車は、日本では高級外車というイメージだが、中国ではごく普通の大衆車というイメージだった。(※ドイツは世界的に有名な自動車会社が他にもある。ポルシェ社、アルファロメオ社、ミニ社などだ。)

 アメリカ車ではフォード車が多かった。(※アメリカの自動車会社としては、GM「ゼネラルモーター」社などもあるが、中国ではあまり見かけることはなかった。) そして、韓国車では、現代(ヒュンダイ)社の車。

 2020年1月に大学の冬休みに入り日本に一時帰国。そして、新型コロナウイルス感染拡大パンデミックがその1月から中国で発生し世界に広まった。このため、その後3年間余り中国に渡航することが難しかった。2023年3月に再び3年ぶり中国に渡航し、それから現在で1年2カ月が経過した。

 中国国内を走っていたり駐車している自動車の情況はその3年間で、驚いたことに2019年に比べて大きく変わってきていた。例えば車のナンバープレートの色。従来のガソリン車やハイブリッド車は青色。電気自動車(EV)は緑色のナンバープレートとなったいた。3年前にはあまり見られなかったEV車がとても増えていたのだ。

 EVで多いのは中国のBYD社の車。次いでアメリカのテスラ社の車。ガソリンエンジン車ではないためか、車前方の空気坑の部分が少なく、とてもスマートな感じのEV車もよく見かける。

 現在、私が暮らす中国福建省福州市内で走っていたり、駐車している車は、25%余りは緑色のナンバープレートのEV車かと思われる。自動車新車購入時に、いろいろとEV車に関しては優遇措置の多い北京や上海などでは、さらにEV車の割合が多いようだ。

 従来のタクシーの40%余りはEV車、ライドシェア―のタクシー車はほぼ80%近くがEV車、市内公共バスはほぼ100%近くがEV車となっていた。

   (※EV車は走行中の静けさがガソリン車よりも高いとされている。しかし、市内公共バスに関しては、車体は以前のものをそのまま使っていて、エンジンを取り外しバッテリーに替えて改造したものがほとんどで、車体そのもののクッション性はとても低くガタガタと揺れたりバウンドすることは、今も変わらない。ただ、一部の「純電動車」と書かれたバスはクッション性はやや改善されている。一方、日本の公共バスは静かで、クッション性も高く、安心して乗車できているというのが実感だ。)

 

 


世界の自動車産業の動向—大変動の現在➊—電気自動車(EV車)で、中国が世界で自動車販売シェアを急拡大してきている

2024-05-22 20:19:34 | 滞在記

 自動車産業及び販売の世界的な状況が、ここ2~3年で大きく変動している。中国の大手自動車会社に成長した「BYD(比亜迪)」やアメリカの大手自動車会社に成長した「テスラ」などのEV(電気自動車)の新車販売数が世界的(※特に中国、東南アジア諸国も)に、2020年~24年に急増していることが大変動の要因となっている。

 今年の4月25日から5月4日まで、4年ぶりとなる「北京モーターショー」が開催された。主役はEV(電気自動車)などのいわゆる「新エネルギー車」で、過去最多となる278車種が展示された。昨年度2023年、世界各国の自動車輸出台数では、中国が初めて首位となる約491万台。日本は約442万台(※前年比16%増)。そして、世界最大の自動車市場である中国市場での2023年度の日本車販売数は、日本の各メーカー共ともに、2022年度に比べ減少した。(※トヨタ190万7600台/前年比1.7%減、ホンダ123万4181台/10.1%減、日産79万3768台/16.1%減など)

 東南アジア最大の自動車生産拠点国となっているタイのバンコクでも、3月27日から4月7日までバンコク2024国際モーターショーが開催された。開催期間中の自動車購入予約台数は5万3438台。そのうちEVの購入予約は約32.8%を占め、前回の21.5%を上回った。

 メーカー別では、トヨタが8540台で、中国EVのBYDが5345台で続いた。主催者は、「中国のEVが人々の注目を集めた」と述べた。タイなどでは長らく日本メーカーが支配的地位を占めてきたが、中国やアメリカのテスラ社EVの隆盛が試練となってきている。(※これまでASEANにおいて日本車は90%を超える圧倒的シェア―を維持してきた。しかし、2023年は中国ブランドなどの台頭により、日本車のシェアは78%に減少した。) 

 日本メーカーがこれまでのシェアーを守りぬくのは相当厳しい状況になってきているのは間違いなく、今後は強みのあるハイブリッド車の車種を増やしつつも、諸性能と価格競争力のあるEV車の投入が不可欠となってきているようだ。(※トヨタなどは、今後10年~20年の世界戦略[新たな諸性能を持ったEVの投入も含めて]を持っているようだ。このことは、このシリーズの三回目か四回目あたりで書く予定。)

 中国国内では都市部を中心にすでに約273万箇所のEV充電施設(スタンド)があるとされている。(※携帯電話アプリで付近の電気EV充電スタンドの所在地を即座に見られる。)  日本でも今後のEV車の普及を見越して、東京都などでは2025年以降の新築マンションの建設には、EV充電器施設の設置が義務付けられた。(※日本国内でも日本メーカーのEV車「日産社の"さくら"」などのCMなどもテレビなどで見られるようになってきている。また、中国のBYDも日本市場に進出してきている。中国では2024年度のEV車販売は、販売される約2300万台の自動車のうち、約40%を占めるとみられている。)

 中国の調査会社、北京群智営銷諮詢(シグマインテル)は5月14日、中国自動車メーカー車が2024年の中国国内新車販売市場に占めるシェアーは60%~70%となるとの予測を示した。一方、外資(日本・ドイツ・アメリカなど)は苦境に追い込まれ、韓国系やフランス系は中国市場からの撤退を余儀なくされるとの見方だ。(※日本系とドイツ系はともに中国での2024年シェアは12~15%、米国系は7~8%、韓国系・フランス系は1%前後と予測されている。)

 日本のメーカー「ホンダ」は、この5月、中国国内の工場での正社員の希望退職を1700名募集し、人員削減を行うことを発表した。中国市場での販売の低迷が背景にある。ホンダの昨年(2023年)の中国での販売台数は122万台余りと、ピークだった2020年度と比べて約30%減少し、人員を減らして生産能力を調整することとなった。(※ホンダは中国でのEVの専用工場を今年後半に稼働させる予定で、中国での事業の再編をする予定。)

—EV(電気自動車)とは—

  従来のガソリン車はガソリンを給油してエンジンを稼働させる。電気自動車(EV)は電気をバッテリーに充電してモーターを稼働させる。ガソリン車の場合は、5分ほどで満タン給油できるが、EVの場合は、最速施設で15分、普通使施設で30分~40分、住居施設の場合は8~15時間をかけて100%充電が可能。また、走行距離がガソリン車に比べて短い(車種により200km~600km)や車両価格が高額(※ガソリン車に比べて100万円以上高い。)   そして、寒冷地や寒冷な季節に弱い。(気温がマイナスになると稼働が弱くなり、マイナス10度になるとさらに弱くなる。)

 EV車のメリットとしては、「CO2を排出しない、揺れや振動が少ない、ガソリン車よりも燃料費が抑えられる」「その他いろいろ」などがある。

 中国は現在、不動産バブルの崩壊が起きていて、国の経済は長期的な不況期に入っている。また、2010年より中国経済を不動産産業とともに牽引(けんいん)してきたIT企業・AI関連企業もまた、その隆盛期のピークを過ぎ、経済的な成長が鈍化しきている。

 しかし、次期の経済成長を牽引するものとして位置づけているものが「EV自動車の世界的シェアの拡大」「太陽光発電(SORA)の開発と世界的シェアの拡大」、そして「半導体の独自開発と世界的シェアの拡大」だ。すでに、EV向けバッテリーの世界市場において、中国の企業である「CATL」と「BYDは世界1位と2位のシェアをもっている。両企業のシェア率を合わせると、世界の約半分以上を占めている。

 そして、アメリカのEV自動車会社「テスラ」と中国の「BYD」、さらにこの二社と中国の振興メーカー(「Xiaomi」など数十社)や日本・ドイツなどの自動車メーカーなどとの熾烈(しれつ)な開発・販売競争が展開されている大激動の世界の自動車産業の時代に突入している。

■中国政府は、「従来のガソリン車(エンジン車)では、日本やドイツ、アメリカなどの先進国の自動車技術に対抗できない」と考え、2000年代に入り、「CATL」「BYD」などのバッテリーの開発に力を注ぎ、将来のEV車到来の時代の準備をしてきたとも言える。

■中国では国内でのEV車のシェアを拡大するために、さまざまな政策をとっている。首都の北京や経済都市・上海などの大都市で車を購入することは容易ではない。(年間購入台数制限があるため)  このため抽選などで購入資格を得るという方法がとられている。また、抽選で当たって車を購入できたとしても、例えば上海市の場合、ナンバープレート取得のための供託金としてガソリン車では150万円ほどが必要となる。

 しかし、EV車であれば抽選に当たりやすく、供託金もなく無料でナンバープレートが発給される。また、購入時に政府からの補助金も得ることができる。このようにして国内でのEV車のシェアを急拡大してきている。海外への輸出に関しても、手厚い中国政府の資金的な支援のもと、他国のシェアを減少させ、中国のシェア拡大を広げてきている。

■アメリカのEV自動車会社「テスラ」のCEOであるイーロン・マスク氏は、昨年度の世界長者番付で2位となっている人物でもある。

※このシリーズは次号に続く。

 

 

 

 


4回生たちの卒業論文発表会が昨日(5月18日)に行われた

2024-05-19 18:58:02 | 滞在記

 昨日5月18日(土曜日)、4回生たちの「卒業論文発表会」が行われた。私は授業がある平日のいつもの出勤のように、早朝5時50分頃にアパートを出てバス停に向かう。途中、廃品回収屋が段ボールなどを満載した三輪バイク軽トラ。この三輪バイク軽トラは、全国津々浦々、中国ではとてもとても多く使われている。荷台のある三輪自転車。これも現役でよく使われているが、電動で走ることができるしろものだ。バス停に着くと、農民工のおばさんたち5人が、これからどこかの建築・土木の現場に行くのだろう、道路わきに座ってバス待ちをしていた。

 バス途中で乗り換えて、午前7時30分頃に大学正門(南門)に着くと、大きな大学構内案内の立て看板があった。どうやらこの日、大学構内の4つの建物の教室で公認会計士試験が行われるようで、会場の建物や食堂などの案内タテカンだった。

 研究室のある建物近くの水辺と石橋。建物付近では、公認会計士試験を受験する人たちが集まっていた。石橋付近には、10本余りの濫花盈(らんかえい)[英語名:ジャカランダ]の樹木に初夏の薄紫の花を咲かせている。この花の花言葉は「在絶望中等待愛情(絶望の中で愛を待つ)」。

 水辺の蓮の葉が少し大きくなり始めていた。6月中旬頃には花が開花し始める。卒業論文発表会が行われる教学楼の建物群の教室に向かう。集合は、教員も学生たちも午前8時30分~8時50分の間。

 4回生の学生たち38人(その他2名)が集合していた。(その他2名の参加[昨年度の卒業論文審査で合格できなかった学生])  午前9時から3つの卒業論文発表グループ(組)に分かれて、それぞれ発表会が開始された。それぞれのグループの内訳は、➀「語言翻訳」組(学生12人・教員3人)、②「語言文化」組(学生15人・教員3人)、③「文学・文化」組(学生13人・教員4人)。記録・時間計測・評価計算などのために、2回生・3回生の学生たち15人(各グループ5人)も参加していた。

 私がこの日に担当したグループは、③「文学・文化」組だった。主に「日本文化」「日本文学」「日中の社会問題比較」などに関する卒業論文発表者たちのグループだ。4回生の学生たちは、各自5分余りの卒業論文概要説明の後、教員から3~4つの質問(口頭試問)がされる。そして、13人の発表が始まり、午前11時頃に卒業論文発表会の前半が終わった。(4人の教員たちは、この日までに13人の卒業論文の最終稿をすでに閲読している。)

 グループ➂「文学・文化」組の13人の学生たちの卒業論文テーマは次のようなものだった。

 1、「坂口安吾作品における反逆思想と現代的意味—『堕落論』を中心に」 2、「新海誠の作品における美学理念—もののあわれを巡って」 3、「民俗と推理—京極夏彦の推理小説作文の特徴について」 4、「宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の作用について」

 5、「日本アニメからみる"癒し"文化の中国での伝播と影響について―宮崎駿作品を中心に」 6、「視覚小説の日本における発展の現状について」 7、「アニメ動画『昭和元禄落語心中』を中心に物のあわれについての研究」

 8、「社会の背景と個人の感情の交錯:『ノルウェイの森』の主人公の感情の葛藤を視点にする研究」 9、「映画『おくりびと』からみる日本民族の死生観について」

 10、「中国における『ドラえもん』の流行と影響について」 11、「中日両国の安楽死について」 12、「中日職場における性差別についての研究」 13、「福沢諭吉の女性観についての研究」

 午前11時過ぎから10分ほどの休憩をとり、後半の部が開始された。後半の部は、教員たちからの3~4つの質問に対しての答弁。そして、それに対する教員とのやりとり(討論)が、順番に13人の学生たちとの間でとりかわされた。午後1時頃に、この日の卒業論文発表会が全て終了した。

 各3つのグループから2名ほどの優秀な成績の卒業論文(この日の口頭試問の成績を含む)が選出される。合計6人の学生たちは、来週水曜日(5月22日)の午後、再び、卒業論文発表会が行われ、口頭試問・討論を経て、最優秀論文(1名)と優秀論文(2名ほど)が選出されることになる。

■昨年の10月より始まった卒業論文指導。私は今年度は5人の学生たちを担当した。特に11月上旬~12月下旬、そして、4月上旬から卒業論文発表会までの期間は、卒業論文指導は、ものすごい量の卒論関連資料制作が必要で学生たちも私も大変でもあった。それもようやく、卒業論文発表会が終わって多忙さから解放されることになる。まあ、卒業論文の指導や発表会などを通じて、私もいろいろと新たに学ぶことも多い。

 卒業論文を発表した学生たち38人との最初の出会い(授業担当)は2020年9月、彼らが2回生になった時だった。当時、新型コロナウイルス感染パンデミック問題で、私は日本に滞在しながら彼らとオンライン授業を始めることとなった。そして、それから彼らが3回生になっても、日本—中国間のオンライン授業が続いた。私が昨年2023年3月に中国に3年ぶりに渡航し、3回生の後期授業「日本文化名編選読」で、初めて顔を合わせることとなった。その後、彼らが4回生となった昨年の9月からは「日本文学作品選読」の授業を担当した。

 4回生たちは、この6月中旬に卒業式を迎えることとなる。