元大阪府知事で大阪・関西万博の誘致に尽力した橋下徹氏が「能登半島被災地支援のためのお金や人員に不足がでるなら万博の中止・延期も考えるべきだ」と発言し注目された。1月18日、関西テレビの情報番組「旬感LIVEとれたてっ!」に出演した橋下氏は、能登半島震災のニュースのあと、被災地の復旧・復興に関して、来年開催予定の万博のことが語られるケースが多いことについて、以下のように話した。
「僕は万博はやるべきという意見です。ただ、被災地の復旧復興、被災者への支援、そのためのお金が必要だ、人員が必要だということであれば、万博よりも優先されるべきだと思っています。何でもかんでも万博を絶対やれということではないと思います。優先順位とすれば、被災地支援です。ただ、今の段階で万博の工事をすべてやめる必要はなく、工事は進めながら、いよいよ人員もお金も足りないということであれば、その時に万博の中止・延期ということも、考えないといけないと思います」と。
この橋下氏の発言に対して(ついて)、日本維新の会の藤田文武幹事長は、1月24日の国会内での定例記者会見で、「(被災地復旧・復興に)直接的にこれだけの悪影響が出るんだということを検証して、本当に相当復興の足を引っ張るんだという事実が明らかになった場合、例えば延期をするとか中止をするとかいうオプションを全く閉ざすべきではない」と述べた。その上で、「現行で言うと、通常通りしっかり頑張っていこう」として、2025年の万博開催や被災地の復興支援に支障はない考えを示した。(※12月の国民世論調査では、68.8%の国民が「万博開催」中止というものだった。1月の能登半島大震災か起きた現在、世論調査をすれば、さらに「中止」意見が増加していると推定されるのだが‥。)
■橋下徹氏は1月16日、自身のSNS「X」を更新し、自民党派閥の政治資金問題を受け、自分が立ち上げた日本維新の会が「政治改革実現本部」を立ち上げるとして、日本維新の会の共同代表で大阪府知事の吉村洋文氏が、「政治とお金の大問題についてはどんどん切り込んでいく。民間の感覚でおかしなところは正していく」と発言したことについて、橋下氏は「今は創業時(維新立ち上げ時)と違うので創業のやり方を踏襲するだけではあかんけど、それでも今の維新はお金を使うことを主軸とする政党となり、お金の使い方を正す側面が弱くなったと思う」と自身の見解を述べた。このように、現在の維新の会のお金の使い方への危惧を表明し、維新の会のお金の使い方を改めるべきとの批判を展開し始めてもいる。
ただ、橋下徹氏の大阪府や大阪市の街づくり構想の根本には次のような考えがあると思われる。
―総合リゾート型構想の街づくり―2009年9月15日、大阪夢洲・咲洲地区まちづくり推進協議会において橋下氏は、大阪市内ベイエリア再開発の一環として、「カジノが一つのキーワード」として次のように発言した。関西の活性化には、都市ごとの役割り分担が必要との考えを示した上で、「京都と奈良を"世界に誇れる観光の街"、神戸を"日本を代表するファッションの街"」と評価。大阪について、「こんな猥雑な街、いやらしい街はない。ここにカジノ持ってきて、どんどんバクチ打ちを集めたらいい。風俗店やホテル街、全部引き受ける。大阪はエンターテインメントの街でいいじゃないですか。都市で役割分担して、上がってきた税収を分け合えばええじゃないですか」と発言している。
それから14年後の現在、この2009年の橋下氏の発想・構想の通りに、日本維新の会と吉本興業を中心に大阪の都市づくりが進んできている。そして、国民・府民・市民の生活負担を増大させながら、維新が当初掲げていた「身を切る改革」からほど遠い、「身内以外への身を切らせる政策」にと変貌してきている。そこに、「万博」「カジノ」「F1」がある。
橋下氏の最近の維新の会への苦言も、維新への世間の批判の高まりで、「やはりこのままでは維新はちょっとまずいかな‥」と思い始めたからなのだろう。でも、自分がまいた種、育ててきた政策下で起きていることなのだが、‥‥。
■1月23日、大阪市観光局が記者会見を行い、観光局理事長の溝畑宏氏が「F1」の誘致を正式に表明した。溝畑理事長は会見で、「F1だけでなく、総合エンターテインメントとして飲食などと組み合わせることで、持続可能なスキムーとなる。その成功事例がラスベガスにもある」と熱弁。開催時期や場所は未定としている。大阪府の吉村知事も、協力に前向きな意向を示している。(※1999年、息子とともにグランドキャニオン観光に行くために、空港経由地として、やむなくラスベガスに2泊したことがある。昼や夜の街のラスベガスだが、そこに住みたいというような街ではまったくない、単なる博打と模造人工的な異空間の街だった。大阪市の構想では、そのエンターテインメントの中心に吉本興行がおかれるのだろう。)
この大阪市のF1誘致構想は、吉村知事が大阪市長だった2019年にもあったが、その後、採算が合わないなどの理由で断念していた。断念した経緯について読売新聞は、主催のFIA(国際自動車連盟)への支払いだけで400億~500億円かかる一方、チケット販売による収益は30億円程度だと報じている。また、F1レースコースや観客席などの道路整備などの建設費用は膨大な金額が必要ともされている。万博開催の費用がどんどん膨らみ、大赤字のつけが日本国民、及び、大阪府・市にふりかかるなか、F1にまで首を突っ込むというのだから、もはや、日本維新の会の政策は「国民・府民・市民負担増への底なし沼」と批判されてもしょうがないだろう。潤うのは維新と親しい会社だけという構図なのだから‥。
このF1招致決定の記事に対しSNSでは、「正直、大阪はF1をナメてるとしか思えない。万博ですらグダグタなのに、うまくいくイメージが沸かない」「大阪にF1を誘致する事に関して、まず大阪万博やって成功してから言ってくれないかなあ?あれも莫大なお金かかるよね?!」(※大阪市観光局理事長の溝畑氏[局長も兼任]は、いわくつきの人物のようだ。彼はもともと自治省[現・総務省]の官僚で、大分県に出向していたことから、サッカーチームの大分トリニータの経営面のトップとなったが、経営破綻で辞任した過去をもつ。「信用したらあかん」人物とも評されるのだが‥。)
一昨日の1月28日付朝日新聞に掲載されていた「週刊現代」の広告にある特集記事の一つのテーマは「大阪ぎらい」。昨日29日の早朝からコンビニなどでも発売され始めたので買ってそれらの記事を読んでみた。この「大阪ぎらい」の記事は秀逸な記事だった。誰がこれを書いたのか執筆者名はなかった(「週刊現代」編集部)が、予想をはるかに上回る記事内容だった。
「大阪ぎらい―ダウンタウン的お笑いも、万博をごり押しする維新もなんだかなあ‥/日本一の商都と文化都市のなれの果て」と題された記事なので、大阪の悪口ばかり書かれた記事かと読むまでは思ったが、そうではなかった。単なる三文記事的な読者の興味をあおるだけの薄っぺらい内容ではなく、大阪という街の近世・近代・現代の歴史をたどりながら、短編ながらも社会学的にしっかり執筆され、かつ、読者の興味にも応えるという記事だった。まあ、優れた短編「大阪論」という読後感想。
記事は紙面8ページにわたる。最初のページには、「通天閣」の写真、「選挙カー上に並ぶ橋下・松井・吉村氏」らの写真、ダウンタウンの二人の写真、大阪ミナミの「食いだおれ太郎人形」の4枚の写真。そして、「大阪ぎらい―ダウンタウン的お笑いも、万博をごり押しする維新のやり方も、なんだかちょっと時代とズレてしまった気がする/日本を支えた商都と文化都市のなれの果て」の大きな文字が書かれている。
次のページからは、「政治をかき回し、芸能界を騒がせ、ほかの地域の人を驚かせるこの街は、しかし、どこかで"無理"をしているようにも見える。‥‥「コテコテ」のイメージりウラにある「大阪の素顔のイメージ」に迫りますとして、▼本当に「関西人はオモロイ」のか?―鋭いツッコミの裏に隠されたもの、▼維新が大阪だけで強い理由―地元では支持率7割超え、でも東京では嫌われ者、▼「東京に負けへんで」が没落を加速させる―衰退を受け入れられない「元・日本一の街/無謀すぎる開発」、▼京都人と神戸人は、なぜ大阪のことが嫌いなのか―「頼むから一緒にせんといて」などと題された記事は、一読の価値あり。大阪市・大阪府民が、なぜ熱狂的に日本維新の会や吉本興業のタレントたちを支持するのかの一端というか本質もこの記事では語られていた。
同週刊誌には、次の記事も掲載されていた。題して「芸人の遊びかた、ほんま無茶苦茶です―元吉本芸人が実名顔出しで告白!」。元吉本芸人の村越周司氏(1972年生まれ51歳)と長田融季氏(1985年生まれ38歳)の実名・顔写真入りのインタビュー記事だ。二人ともに松本人志氏を尊敬も敬愛もしていると語る人物。そんな彼らが語る吉本芸人たちのこと‥。「俺もヤバイかもと思っている芸人は大勢いる。元吉本芸人の二人は、開口一番、そう口をそろえた。女遊びが芸人の嗜みともてはやされ、勘違い芸人が暴れまわっていた「異常な時代」を暴露する。」と銘打たれ、「"先輩のために女を集めるのも仕事のうち""ホテルに連れ込み、泥酔させる""松本さんは<神>でした""そもそも<モテたい"から芸人になりました"などの記事内容。▼松本さんは変わった▼大阪中の女性をナンパ▼ヤレないとブチ切れる▼いまの若手芸人は‥‥などの小見出し記事。
この記事を読む限り、吉本所属の多くのタレントたちのレイプまがいの無茶苦茶な女遊びというか性犯罪が語られる。そして、ある意味では松本人志氏を、「彼だけでないで、こんな問題を起こしてるのは‥」と側面的にはかばっている記事とも読み取れる。「こんな女遊びをしていなかったと断言できる吉本芸人は、藤井隆さん・「FUZIWARA」の原西孝幸さん・「バッハロー吾郎」の竹若元博さんくらい。あと、俺の同期のハリウッドザコシショウな。逆に言えばそれ以外はみんな遊んでた。」とも長田氏は語る。
まあ、橋下徹氏が語る「こんな猥雑な街、いやらしい街はない‥」と語る通りの"裏の街の顔"が大阪なのだろうか。そんな街づくりに奔走しているのが吉本と維新のタッグチームのようにも思える。残念でたまらない‥。
同週刊誌に、「会社訪問―海洋堂―下町の模型店は世界一のものづくり企業になった」と題された8ページもの写真会社紹介記事が掲載されていた。「フィギュアを芸術に高めた、世界最高の造形集団」「模型の梁山泊は大阪の下町で生まれた」とも題され、世界の海洋堂が紹介されていた。大阪府守口市や門真市の小さなプラモデル屋から世界的な企業に発展した海洋堂。私もこの会社の製品を多数購入して部屋に陳列している。大阪の下町が誇る企業の一つだと常日頃思う「海洋堂」。
京都の街には、これも京都市内の七條大橋近くの花札・かるた・トランプ製造販売の小さな店から世界的企業となった、「任天堂」がある。(世界的ゲームメーカー) その発祥の店の建物(小さな3階建てビル)は今も残る。そして、その建物は、2022年春にホテルとして改築されて創業家一族がオープンした。
さて、あと5日後の2月4日(日)、注目の京都市長選挙が行われる。無駄、税金の大きな無駄遣い、環境破壊の北陸新幹線の敦賀―小浜―京都―大阪の延伸ルート問題にも大きな影響を与える選挙だ。このルート計画の中止を求めているのが福山候補。そして、敦賀―米原ルートへの変更を求めているのが二之湯候補。松井候補はどちらかといえば現行ルートに賛成。村山氏はあまりはっきりしたことは言っていない。さあ、どのような結果となるか‥。昨日の新聞やネットでは、「松井氏先行、福山氏激しく追う」「松井氏と福山氏激しく競り合う」と報道されていた。維新の推薦を1月中旬までは受けていた村山氏は、失速している。