京都国立近代美術館で待望の「メアリー・カサット展」が開催されています。
日本では35年ぶりの回顧展でカサットの油彩、パステル画、版画の代表作、交流のあった印象派の作品110点が展示されています。
日曜美術館でも紹介されていましたので、早速行ってきました。
メアリー・カサット(1844-1926)はアメリカ東部の裕福な銀行家の娘に産まれます。
16歳でペンシルベニア美術アカデミーに入学し、その後本格的に絵の勉強をするために、
反対する父親を説得して19世紀のパリに画家をめざしてやってきます。
カサット1867年頃(23歳)の写真
パリの美術学校に入学しようとしましたが門前払いです。理由は女性だからです。
当時のフランスは女性に対する差別や偏見が色濃く残っていたのです。
それでカサットはルーウ゛ル美術館に通い、名画模写で腕を磨き苦労の末に画家になります。
当時一人前の画家として認められるには、サロンと呼ばれる展覧会に入選しなければなりません。
パリに来て三年、初入選作品です。
「バルコニーにて」1873
しかしサロンに違和感を覚えていたとき、一人の画家と出会います。
印象派を代表するエドガー・ドガ(1834-1917)です。
ドガの絵は宗教画にはない現実の人間が描かれ、カサットはこれこそ自分のめざす道だと考えます。
女性が一人で外出することも自由に絵の題材を選ぶこともできなかった時代です。
カサットは身近な家族や友人とその子供たちを徹底的に観察し、こまやかな視点で描き続けました。
人間のありのままの姿を実際にその場で見ているように表現したのです。
母と子のふれあいを身近に観察するうちにカサットのめざす絵が見つかったのです。
そして挑んだ作品
「浜辺で遊ぶ子どもたち」1884
「桟敷にて」1878
パリ印象派展出品、黒いドレスに見をつつみ男性の視線にも動ぜず、舞台に熱中する女性
「眠たい子どもと沐浴させる母親」1880
むずかる子どもの身体を拭いてあげようと、母親がスポンジを持った手を動かそうとしています。
「母の愛撫」
「果物をとろうとする子ども」1893
カサットはパリに来た頃、両親と姉と暮らしていました。
母や姉をモデルにした作品も描いています。
「お茶を飲むリデイアと母」1882
「タペストリー・フレームに向かうリデイア」1881
7歳年上の姉は病をかかえ、この作品の翌年に亡くなります。
「ロバート・S・カサット夫人 画家の母」1889
「編物をするカサット夫人 横顔」1882
40代後半カサットは複雑な心情を表現する新たな手法に挑戦します。
多くの印象派の画家が影響を受けた日本の浮世絵から学んだ銅版画です。
1890年モリゾへの手紙には「日本の版画を一緒に見に行きませんか。絶対にそれらを見逃してはいけません。
それは私の夢にもあらわれ、銅版の色彩以外には考えられないくらいです。」と書いているくらいです。
喜多川歌麿や葛飾北斎の浮世絵に構図や表現方法など大きな影響を受けました。
銅版画「母の愛撫」1890-91
「手紙」1890-91 女性はどこか日本人に似ています。
「母のキス」1890-91
「沐浴する女性」1890-91
カサットは47歳で初の個展を開催します。
フランスでようやく評価されるようになりましたが、故郷ではほぼ無名です。
アメリカでも認められたい、まだ知られていない印象派の絵を広めたいと思うようになり奔走します。
画廊やオークション会場をまわり印象派の絵画を薦めます。
ニューヨークのメトロポリタン美術館にカサットゆかりの展示室があります。
その大半を占めたのがカサットや印象派の作品です。
ドガ 「バーで練習する踊り子たち」
モネ 「ポプラ並木」
マネ 「舟遊び」
アメリカを代表する画家として、カサットの母と子の絵が飾られています。
「縫い物をする若い母親」
晩年のカサットは白内障になり視力を失います。
それでも若い画家の支援を続け、さらにはアメリカの女性参政権に関わる活動を支援します。
1926年パリ郊外で亡くなります。82歳でした。
知りませんでした
孫姫を預かって育てています私は
暖かい優しい気持ちになれる絵画です
このようなわかりやすい美しい優しい絵画が
好きです
京都様はさすがに詳しいですね!
良い勉強になります。本来ならしっかり勉強して
おかないと
いけない絵画の経営者です・・
母と子・・・切っても切れない縁ですもの(^_-)-☆
今日も感謝です
もう一度振り返るように京都さまのブログを読ませていただきました。
ありがとうございます。
母と子への優しい眼差しも素敵ですし、
様々な手法に挑んでいく姿は格好良いです。特に銅版画は秀逸ですね。
カサット展、良かったなぁ。
メアリー・カサット展パソコンが京都ですか。
私達も日曜美術館で観ました。
特に「母の愛撫」を観てみたいです。
それと「浜辺であそぶ子供達」も好きですね。
10月は京都へ行けることになりましたが、団体のバス旅行ですから、、、
紅葉の頃日帰りで観に行けたら良いなと思います(^.^)
私はカサットが印象派に移る前の作品も好きですが、やはりなんと言っても母子の絵は素晴らしいです。
カサット自身は独身なのですが、お兄様の子供を通して母と子の何気ない日常の一瞬を切り取っています。
「母の愛撫」特に気に入りました。
カサット展良かったです。
特に母子の絵は見ている私も心温ります。
私は印象派前の作品も気に入りました。
銅版画は構図など浮世絵の影響をかなり受けていますね。
日本では印象派の画家の中で、ルノワールやモネほど知られていないですが、もっと多くの人に知ってもらいたい画家の一人だと思います。
「母の愛撫」は私のお気に入りです。
赤ちゃんが安心しきって母親の頬に手をやる。
優しく見守る母親。見ていてとてもホッコリします。
10月の京都は留学生の付き添いのようですね。
お疲れ様です。
今年の紅葉は昨年のようにならなければいいのですが。昨年は気温が高すぎて紅葉がいまひとつでした。
今年は期待します。