京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

明治の天才洋画家 五姓田義松

2015-10-25 19:59:05 | 美術・博物館

投稿が遅れましたが、久しぶりの日曜美術館です。
今回は明治初期の天才洋画家 五姓田義松(1855-1915)です。





私は以前から 五姓田義松の絵画を高く評価していましたが、
あまり知られていないことが気になっていました。

今年は没後100年ということで、義松の出身である神奈川の県立歴史博物館で、
「 五姓田義松ー最後の天才展 」が開催されています。
展示作品はデッサンなども含め800点という膨大な作品数です。
あらためて光があたり、日本洋画のパイオニアとして正当に評価されてほしいものです。

今日、日本洋画のパイオニアとして知られているのは、「鮭」で有名な高橋由一です。

高橋由一の有名な「鮭」明治10年頃





その由一よりも早く油絵の技を極め、黒田清輝より早くパリに行き、
日本人で初めてパリのサロン に入選します。
また明治皇室から仕事を依頼されるほどの画家が 五姓田義松だったのです。

「御物 孝明天皇御肖像」明治11年










義松は10歳のとき、英国人画家・ワーグマンに入門し、洋画の技を学びます。
そこへ1年遅れてやってきたのが30歳年上の高橋由一でした。
義松は恐るべきスピードで上達し、日本を代表する画家へと成長していきます。

義松10代の作品「自画像」





10代とは思えない完成された写実の人物画作品です。
やっと洋風文化が普及しはじめた時代、義松は一気に西洋画のわざを極めるのです。

「婦人像」明治4年頃





「向島白髭神社近傍」明治7年頃 水彩画





「横浜西太田ノ村落」明治5年頃





膨大なデッサンの数々



















「婦人像(横浜婦人)」明治7年
義松の母の肖像です。





次は衝撃的な作品です。
義松が二十歳のとき最愛の母の最後を描いたものです。
亡くなる前日の姿、描ききった義松と息子を見つめる母の姿、感動を覚えます。

「老母図」明治8年





明治10年の第一回内国勧業博覧会で、義松は日本の頂点に登り詰めます。





義松は高橋由一をおさえて最高賞を受賞します。その作品です。

「自画像」明治10年





義松は西洋絵画の本場パリに渡ります。
パリで勝負し名を上げる野心がありました。


「西洋婦人像」明治14年





パリに来て3年、日本人として初めてサロン入選を果たします。

「人形の着物」明治16年
孫の人形の着物を縫う祖母





しかしその後パッタリと評価されなくなります。
時代は光の表現で革命を起こした印象派の画家たちが台頭しはじめていました。
義松の写実の画風は流行遅れになっていったのです。

ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」





失意うちに6年でパリを離れ、イギリス、アメリカにも渡りましたが、
義松が評価されることはありませんでした。

帰国後は肖像画が多くなりました。

「浅田氏肖像」明治23年





日本の画壇では義松より11歳若い、黒田清輝が影響力を強めていました。
義松は日本でも時代遅れの画家になっていたのです。

黒田清輝「湖畔」明治30年





義松後半生の作品です。

「田子ノ浦図」明治25年





「江ノ島図」明治29年





「富士図」明治38年





神奈川県に行きたいのですが、ちょっと遠くて残念です。









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6 コメント

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黒田清輝 (<tango>)
2015-10-26 12:31:45
好きな絵画です
京都様の解説でより一層わかります
お詳しいですね~~
義松後半生の作品……いいなぁ~~♪
若いときに理解できない絵画が今頃納得
ものの見方が変わるのでしょうか…?
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tangoさまへ (京都で定年後生活)
2015-10-26 17:02:42
こんにちは
ありがとうございます。
江戸から明治の激変期、芸術の分野でも同様でした。
西洋絵画を学ぼうとする若い芸術家たちの力作を目にすると感動します。
五姓田義松、黒田清輝、浅井忠、高橋由一、どれも好きな画家たちです。
しかし五姓田義松はもう少し世の中の評価が上がっても良いのにといつも思っていました。
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天才洋画家 五姓田義松(1855-1915) (shion(紫音))
2016-04-27 05:39:22
至極貴重な[写真と記事]ですね。

探していたものが見つかりました、
有り難ぅ存じました。
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shion(紫音)さまへ (京都で定年後生活)
2016-04-27 07:08:53
おはようございます。
コメントありがとうございます。
五姓田義松は好きな画家の一人でしたので、日曜美術館で取りあげてもらい嬉しかったです。
ずば抜けた技巧は目を見張るものがあります。
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Unknown (静岡人)
2018-04-29 20:44:33
浜松市美術館がこの4月にリニューアルオープンし、その記念として「日本洋画150年展」が開催されていますが、五姓田氏の作品はありませんでした。
時代、経歴、そして生で作品を見たことあるなら、除外することなどありえないと思うのですが。本当に残念でなりません。
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静岡人さまへ (京都で定年後生活)
2018-04-30 14:35:55
こんにちは
コメントありがとうございます。
私は五姓田義松の作品は大好きで明治初期の洋画家としてもっと評価されてよいのではとかねがね思っております。
日本洋画150年展にはどうしても必要な画家だと思うのですが、残念です。
ありがとうございます。
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