京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

京町屋中京(25)明治初期建築の岩崎家見学、 雨森敬太郎薬房

2019-10-21 06:32:54 | 京都の町 町屋・建造物


中断していた京都の町屋シリーズ再開です。
今回は京町屋中京区の続き、第25回です。二条通りです。

岩崎家
京都を彩る建造物認定番号第40号
中京区
明治初期建築の伝統的な京町屋です。
二条通に面して5間強の間口で、平入り形式の大型京町家です。
厨子2階西側に虫籠窓が残り,切子が2本入るやや太めの1階出格子は重厚感があり、2階大屋根は軒が深く取られています。
2間弱の間口を持つ通り庭には,吹き抜けに梁組みが見られ,入口に対面する竈の位置も特徴的です。
床,平書院,違い棚等のある主座敷も,本格的な作りです。
四季折々の花が彩る庭には,主木のクロマツが存在感を発揮し,白川石で作られている灯篭や手水鉢等が配置されています。
アルミ格子を木製に復元することで,まち並みの維持・向上に寄与しており,京町家の落ち着いた佇まいを今に伝えています。

今回縁があり、御当主の厚意で中を見学させてもらえることになりました。





表の間は店舗になっています。













少し内部を紹介します。





通り庭
玄関から奥までを貫く土間のことです。おくどさんがあるところは走りと言います。
火袋(ひぶくろ)
走りの上部に広がる吹き抜け空間のことです。
炊事の熱気や煙を逃がす空間で、火事の際に周囲への延焼を防ぐため火を閉じ込める役割を持っています。
左右に開口部が取れないため、天窓を設け手元に灯りを落としています。





嫁隠し
走り庭で目にする幅半間(約90㎝)ほどの板や衝立です。
この板から奥が生活空間であるという目印で、家の人の許可なく奥に立ち入らないのが暗黙のルールです。
現在はほとんど見ることが少なくなりました。






おくどさん(竃)
古来より炊事場は神聖な場所とされ、特に竈(かまど)は京都の人は親しみを込めて「おくどさん」と呼ぶびます。
焚き口が複数あるものや、漆喰やレンガで造られるなど種類や規模は様々です。
杉本家は七つ竃(現在は四つ)でした。





おくどさんの上の壁には「阿多古 祀符 火廼要慎」(あたご しふ ひのようじん)と書かれた札が貼られます。
愛宕神社の火伏札(ひぶせふだ)です。嵐山から北に歩くと京都市最高峰(924m)の愛宕山頂の愛宕神社があります。
この火伏札は料亭、レストランなどの厨房や民家の台所に普通に貼られています。
棚(荒神棚)には土の伏見人形が置かれています。
最初は小さなものから始め、1年無事に過ごすことができれば、翌年は少し大きいものを買い、7年かけて揃えるのが基本です。





水屋箪笥
京町家の意匠にかかせない箱階段と水屋箪笥があります。
水屋箪笥は食器棚のことです。
京町家の台所は走り庭と呼ばれる土間に水屋箪笥は置かれています。
水屋箪笥は長い年月、暮らしの中で使い磨かれながら大切にされてきました。
構造は、角材の組枠「框組(かまちぐみ)」に板を張って用いられています。
背の高いものは、上下2段に分離できるものもあります。





蔵は禁門の変のどんどん焼けで焼失しましたが、この瓦だは焼け残ったものです。





奥庭の木は黒松、白川石で作られている灯篭や手水鉢等が配置されています。










手水鉢





鞍馬石





織部灯籠





古い春日灯籠










座敷は網代が敷かれています。





二条通り続きます。

斎*家





小*家





雨森敬太郎薬房
京都を彩る建造物選定番号第4-023号
中京区
江戸時代から続く伝承薬「無二膏」の老舗店です。
風格ある庵看板を備え,黒壁に虫籠窓を持った意匠は,京都の薬種業としての歴史を伝えるとともに地域の景観を形成しています。

近江国で代々医師を生業としていた。徳川三代将軍・家光の時代に上洛する。
京都御所近くの車屋町に移り住んだ初代は御典医を勤めながら、民衆の苦しむ腫れ物の膏薬を作り、評判を得る。
「その効き目はほかにない」との評判から「無二膏」と名付けられる。
無二膏の需要に追いつかないため、慶安元年(1648年)に御典医を辞し、無二膏の製造に専念し、現在に至る。
現当主は15代目 雨森良和氏  HPより
















京町屋外観の特徴
屋根一階庇の最前列は一文字瓦葺いています。
横の一直線と格子の縦の線の調合が町屋の外観美の一つです。
格子
戦国時代からで、内からは外がよく見え、外からはよく見えないようになっています。
家の商いや家主の好みでデザインが異なります。
上部が切り取られた「糸屋格子」、太い連子の「麩屋格子」、「炭屋格子」、重い酒樽や米俵を扱う「酒屋格子」、「米屋格子」、繊細な「仕舞屋格子」などがあります。格子を紅殻で塗ったものが紅殻格子。
ばったり床几
元々は商いの品を並べるもので、後に腰掛け用に床几として近隣との語らいの場でした。
ばったりとは棚を上げ下げするときの音からきています。
虫籠窓
表に面した二階が低くなっている「厨子二階」に多く見られる意匠。
防火と道行く人を見下ろさない配慮と言われています。
犬矢来
竹の犬矢来は割竹を透き間なく組んだものから、少し透かしたものまでさなざまです。
直線的な町屋の表情を和らげてくれます。
駒寄
家と道との境界に巡らされた格子の垣。元は牛馬をつなぐためのものでした。
意匠もさまざま、栗や欅などの硬い木が使われることもあります。
鍾馗
厄除けの瓦人形は京町屋の屋根の象徴です。


各種建造物指定の説明
国・登録有形文化財
緩やかな規制により建造物を活用しながら保存を図るため,平成8年度施行の文化財制度で,登録された建物が登録有形文化財です。
登録文化財には,築後50年を経過している建造物で,国土の歴史的景観に寄与しているもの、造形の規範となっているもの、再現することが容易でないものといった基準を満たす建造物が対象となります。
京都市では,近代の建造物を中心に積極的に登録を進め,市内243件(平成31年1月末現在告示分)が登録されています。

景観重要建造物
 平成16年に制定された景観法に基づき,地域の自然,歴史,文化等からみて,建造物の外観が景観上の特徴を有し,地域の景観形成に重要なものについて,京都市長が当該建造物の所有者の意見を聞いて指定を行う制度です。
指定を受けた建造物には,所有者等の適正な管理義務のほか,増築や改築,外観等の変更には市長の許可が必要となりますが,相続税に係る適正評価や,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。

歴史的意匠建造物
 歴史的な意匠を有し、地域の景観のシンボル的な役割を果たしている建築物等を京都市が指定するものです。

歴史的風致形成建造物
 平成20年11月に施行された、歴史まちづくり法に記載された重点区域内の歴史的な建造物で,地域の歴史的風致を形成し,歴史的風致の維持及び向上のために保存を図る必要があると認められるもので,京都市長が建造物の所有者及び教育委員会の意見を聞いて指定した建造物。
指定を受けた建造物には,所有者等の適切な管理義務のほか,増築や改築,移転又は除却の届出が必要となりますが,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。


京都を彩る建物
京都市内には京都の歴史や文化を象徴する建物が,所有者のたゆまぬ努力により,世代を越えて継承されています。
しかし,その存在と魅力が十分に伝わっていないものや,維持・継承が危ぶまれているものもあります。
そこで,京都の財産として残したい建物や市民から募集し,市民ぐるみで残そうという気運を高め,様々な活用を進めることなどにより,維持・継承を図ろうというものです。
京都を彩る建物は市民から推薦を受け、審査委員会で選定された建造物です。
京都市内で世代を越えて継承され,京都の歴史や文化を象徴し、概ね50年以上の建造物(国又は地方公共団体が所有しているものは除く)です。






















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