2023年5月25日 弁理士試験 代々木塾 特許法184条の5
(書面の提出及び補正命令)第百八十四条の五
1 国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に、次に掲げる事項を記載した書面を特許庁長官に提出しなければならない。
一 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 発明者の氏名及び住所又は居所
三 国際出願番号その他の経済産業省令で定める事項
2 特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。
一 前項の規定により提出すべき書面を、国内書面提出期間内に提出しないとき。
二 前項の規定による手続が第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき。
三 前項の規定による手続が経済産業省令で定める方式に違反しているとき。
四 前条第一項の規定により提出すべき要約の翻訳文を、国内書面提出期間(前条第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)内に提出しないとき。
五 第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を国内書面提出期間内に納付しないとき。
3 特許庁長官は、前項の規定により手続の補正をすべきことを命じた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないときは、当該国際特許出願を却下することができる。
〔解説〕
PCTは、国際出願日を認められた国際出願が各指定国においてその国の国内出願と同一の効果を維持していくため、出願人に対し所定の期間内にその指定国のための国内手数料を納付することを要求することができることとし(PCT22条)、その納付がなかったときは、指定国において、当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅する(PCT24条(1)(ⅲ))旨を規定している。
また、PCTは、国内法令は、国際出願がその形式又は内容についてPCT及びPCT規則に定める要件と異なる要件又はこれに追加する要件を満たすことを要求してはならない旨を規定する(PCT27条(1))一方で、指定国の国内法令が発明者の氏名を届け出ることを義務付けることを妨げてはいない(PCT27条(2))。
これらのPCTの規定を実施するとともに、PCT22条に規定する手続を行う主体、対象等を明確にするため、国際出願の表示、発明者、出願人及び代理人に関する事項を記載した所定の様式による提出書の提出を義務付けたのが184条の5である。
・184条の5第1項(国内書面の提出)
184条の5第1項は、国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に、すなわち、優先日から2年6月以内に、発明者の氏名等を記載した書面を提出しなければならない旨を規定している。
この書面は、発明者の氏名等の届出書であるとともに、国内手数料の納付書等の性格を有するものである。
外国語特許出願について翻訳文提出特例期間が適用される場合も、国内書面は、国内書面提出期間内に提出しなければならない。
・184条の5第2項(補正命令)
184条の5第2項は、国際特許出願についての手続の補正の特例について規定したものである。
国際特許出願の場合は、日本国の特許庁以外の受理官庁に対し出願がされた場合でも国際出願日における特許出願とみなされ、184条の5第1項による手続がされていなくても日本国の特許庁に出願が係属していると考えられること、国内出願には類似の手続がない184条の5第1項の書面の提出手続があることから、その手続の補正について、17条3項の補正に加えて特別の補正事由を設けることとしたものである。
184条の5第2項各号は、国際特許出願に固有の理由により補正命令をすべき場合について規定している。
なお、184条の5第2項各号以外の方式的要件の不備については、17条3項各号が適用される。
・184条の5第2項1号(国内書面の不提出)
国内書面は、国内書面提出期間内に提出しなければならないところ、出願人が自発的に提出しないときは、特許庁長官は、出願人に対し、補正命令をする。
ただし、外国語特許出願については、明細書及び請求の範囲の翻訳文を提出していないときは、外国語特許出願は取り下げられたものとみなされるので(184条の4第3項)、国内書面の不提出を理由として補正命令がされることはない。国内書面の不提出を理由として補正命令をする意味がないからである。
日本語特許出願の場合は、出願人が特許庁長官に何も手続をしていないときであっても、国内書面の不提出を理由として補正命令がされる。
・184条の5第2項2号(7条1項~3項違反、9条違反)
「前項の規定による手続」とあるので、国際特許出願について国内書面を提出するときに、7条1項~3項違反、9条違反である場合に、184条の5第2項2号の補正命令がされる。
国内書面の提出が9条違反となるのは、代理人の選任を受けた者が特別の授権を得ないで副代理人を選任し、その副代理人が代理人として国内書面を提出した場合である。
・184条の5第2項3号(方式違反)
国内書面の提出が方式に違反する場合は、補正命令がされる。
・184条の5第2項4号(要約の翻訳文不提出)
外国語特許出願について要約の翻訳文を国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に提出しないときは、補正命令がされる。
ただし、外国語特許出願については、明細書及び請求の範囲の翻訳文を提出していないときは、外国語特許出願は取り下げられたものとみなされるので(184条の4第3項)、要約の翻訳文の不提出を理由として補正命令がされることはない。
・184条の5第2項5号(国内手数料の納付)
国際特許出願については、国内手数料を国内書面提出期間内に納付しないときは、補正命令がされる。
ただし、外国語特許出願については、明細書及び請求の範囲の翻訳文を提出していないときは、外国語特許出願は取り下げられたものとみなされるので(184条の4第3項)、国内手数料の不納付を理由として補正命令がされることはない。
・184条の5第3項(補正命令に応じない場合の取扱い)
184条の5第3項は、出願人が184条の5第2項による補正命令に応じた補正をしないときは、国際特許出願を却下することができる旨を規定している。
補正命令に応じなかった場合に、「手続を却下することができる」としないで、「国際特許出願を却下することができる」とした。かりに「手続を却下することができる」とした場合には、184条の5第1項の規定による書面の提出手続が却下されることとなり、この場合は、当該書面の提出がないこととなって、184条の5第2項1号により再度補正命令をする必要が生じ、補正命令が重複することとなる。そこで、このような重複する補正命令を回避するために「国際特許出願を却下することができる」とすることとしたものである。
特許庁長官の却下処分に対して不服があるときは、出願人は、行政不服審査法による審査請求をするか、審査請求をすることなく行政事件訴訟法により訴えを提起することができる。
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(書面の提出及び補正命令)第百八十四条の五
1 国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に、次に掲げる事項を記載した書面を特許庁長官に提出しなければならない。
一 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 発明者の氏名及び住所又は居所
三 国際出願番号その他の経済産業省令で定める事項
2 特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。
一 前項の規定により提出すべき書面を、国内書面提出期間内に提出しないとき。
二 前項の規定による手続が第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき。
三 前項の規定による手続が経済産業省令で定める方式に違反しているとき。
四 前条第一項の規定により提出すべき要約の翻訳文を、国内書面提出期間(前条第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)内に提出しないとき。
五 第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を国内書面提出期間内に納付しないとき。
3 特許庁長官は、前項の規定により手続の補正をすべきことを命じた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないときは、当該国際特許出願を却下することができる。
〔解説〕
PCTは、国際出願日を認められた国際出願が各指定国においてその国の国内出願と同一の効果を維持していくため、出願人に対し所定の期間内にその指定国のための国内手数料を納付することを要求することができることとし(PCT22条)、その納付がなかったときは、指定国において、当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅する(PCT24条(1)(ⅲ))旨を規定している。
また、PCTは、国内法令は、国際出願がその形式又は内容についてPCT及びPCT規則に定める要件と異なる要件又はこれに追加する要件を満たすことを要求してはならない旨を規定する(PCT27条(1))一方で、指定国の国内法令が発明者の氏名を届け出ることを義務付けることを妨げてはいない(PCT27条(2))。
これらのPCTの規定を実施するとともに、PCT22条に規定する手続を行う主体、対象等を明確にするため、国際出願の表示、発明者、出願人及び代理人に関する事項を記載した所定の様式による提出書の提出を義務付けたのが184条の5である。
・184条の5第1項(国内書面の提出)
184条の5第1項は、国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に、すなわち、優先日から2年6月以内に、発明者の氏名等を記載した書面を提出しなければならない旨を規定している。
この書面は、発明者の氏名等の届出書であるとともに、国内手数料の納付書等の性格を有するものである。
外国語特許出願について翻訳文提出特例期間が適用される場合も、国内書面は、国内書面提出期間内に提出しなければならない。
・184条の5第2項(補正命令)
184条の5第2項は、国際特許出願についての手続の補正の特例について規定したものである。
国際特許出願の場合は、日本国の特許庁以外の受理官庁に対し出願がされた場合でも国際出願日における特許出願とみなされ、184条の5第1項による手続がされていなくても日本国の特許庁に出願が係属していると考えられること、国内出願には類似の手続がない184条の5第1項の書面の提出手続があることから、その手続の補正について、17条3項の補正に加えて特別の補正事由を設けることとしたものである。
184条の5第2項各号は、国際特許出願に固有の理由により補正命令をすべき場合について規定している。
なお、184条の5第2項各号以外の方式的要件の不備については、17条3項各号が適用される。
・184条の5第2項1号(国内書面の不提出)
国内書面は、国内書面提出期間内に提出しなければならないところ、出願人が自発的に提出しないときは、特許庁長官は、出願人に対し、補正命令をする。
ただし、外国語特許出願については、明細書及び請求の範囲の翻訳文を提出していないときは、外国語特許出願は取り下げられたものとみなされるので(184条の4第3項)、国内書面の不提出を理由として補正命令がされることはない。国内書面の不提出を理由として補正命令をする意味がないからである。
日本語特許出願の場合は、出願人が特許庁長官に何も手続をしていないときであっても、国内書面の不提出を理由として補正命令がされる。
・184条の5第2項2号(7条1項~3項違反、9条違反)
「前項の規定による手続」とあるので、国際特許出願について国内書面を提出するときに、7条1項~3項違反、9条違反である場合に、184条の5第2項2号の補正命令がされる。
国内書面の提出が9条違反となるのは、代理人の選任を受けた者が特別の授権を得ないで副代理人を選任し、その副代理人が代理人として国内書面を提出した場合である。
・184条の5第2項3号(方式違反)
国内書面の提出が方式に違反する場合は、補正命令がされる。
・184条の5第2項4号(要約の翻訳文不提出)
外国語特許出願について要約の翻訳文を国内書面提出期間内又は翻訳文提出特例期間内に提出しないときは、補正命令がされる。
ただし、外国語特許出願については、明細書及び請求の範囲の翻訳文を提出していないときは、外国語特許出願は取り下げられたものとみなされるので(184条の4第3項)、要約の翻訳文の不提出を理由として補正命令がされることはない。
・184条の5第2項5号(国内手数料の納付)
国際特許出願については、国内手数料を国内書面提出期間内に納付しないときは、補正命令がされる。
ただし、外国語特許出願については、明細書及び請求の範囲の翻訳文を提出していないときは、外国語特許出願は取り下げられたものとみなされるので(184条の4第3項)、国内手数料の不納付を理由として補正命令がされることはない。
・184条の5第3項(補正命令に応じない場合の取扱い)
184条の5第3項は、出願人が184条の5第2項による補正命令に応じた補正をしないときは、国際特許出願を却下することができる旨を規定している。
補正命令に応じなかった場合に、「手続を却下することができる」としないで、「国際特許出願を却下することができる」とした。かりに「手続を却下することができる」とした場合には、184条の5第1項の規定による書面の提出手続が却下されることとなり、この場合は、当該書面の提出がないこととなって、184条の5第2項1号により再度補正命令をする必要が生じ、補正命令が重複することとなる。そこで、このような重複する補正命令を回避するために「国際特許出願を却下することができる」とすることとしたものである。
特許庁長官の却下処分に対して不服があるときは、出願人は、行政不服審査法による審査請求をするか、審査請求をすることなく行政事件訴訟法により訴えを提起することができる。
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