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2023年2月9日 弁理士試験 代々木塾 特許法73条

2023-02-09 03:09:30 | Weblog
2023年2月9日 弁理士試験 代々木塾 特許法73条

(共有に係る特許権)第七十三条
1 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。

〔解説〕

 73条は、特許権の共有について規定している。
 民法第2編第3章第3節は所有権の共有について規定し、民法264条は「この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。」と規定している。
 別段の規定がない限り、これらの民法の規定は、特許権の共有についても適用される。
 しかし、特許権については、他の財産権の共有とは違った事情があるので、73条の特別規定を設けることとした。
 したがって、73条と抵触するときは、民法の規定は、特許権の共有には適用されない。

・1項(持分の譲渡、持分の質権設定の制限)

(1)73条1項は、特許権が共有に係るときは、各共有者は他の共有者の同意がなければ、その持分を譲渡することができない旨を規定している。
 特許発明の実施は、有体物の使用の場合と異なり、1人が使用したために他人が使用できなくなるものでなく、しかも投下する資本と特許発明を実施する技術者いかんによって効果が著しく違い、他の共有者の持分の経済的価値も変動をきたすことになる。そこで、特許権の共有者は互いに信頼関係にあることが必要であり、持分の自由譲渡によって共有者が代わることを禁ずることとした。

(2)73条1項は、特許権の移転のうち、「譲渡」に適用され、相続その他の一般承継には、適用されない。
 特許権の相続その他の一般承継については、他の共有者の同意は不要である。承継人の範囲が限定されているからである。

(3)ただし、74条1項により特許権の持分の移転の請求を認めることとした趣旨により、74条3項において、74条1項の移転の請求により特許権の持分を移転するときは、73条1項は適用しないこととしている。

・2項(確認規定)

(1)73条2項は、民法の規定によって禁じられているものを特別規定として禁止を解除したというものではなく、民法の規定からすれば各共有者は他の共有者の同意を得ないで特許発明を実施することができるが、73条1項の規定にひきずられてこれに反する解釈がなされるおそれもあるので、念のため73条2項の規定を設けることとした。

(2)「別段の定め」とは、特許発明を実施するときは他の共有者の同意を要する旨の定めをいう。
 別段の定めがある場合において、他の共有者の同意を得ずに特許発明を実施すると、契約不履行責任が生ずるが(民法414条、415条)、特許権の侵害には該当しないと解される。

(3)甲と乙が共同で発明イ(AB)について特許権Pを取得し、甲が単独で発明イの利用発明ロ(ABC)について特許権Qを取得した場合において、特許権Pが先願に係るもので、特許権Qが後願に係るものであり、特許権Pに係る発明イの実施について甲乙間に別段の定めがないときは、甲は、乙の同意を得ないで、業として発明イ(AB)を実施することができるので、その利用発明ロ(ABC)についても実施することができると解される。

(4)最高裁昭和44年10月17日判決(一機関)
 この最高裁判決によれば、先使用権者の注文に基づき、専ら先使用権者のためにのみ、特許発明の技術的範囲に属する製品の製造、販売ないし輸出をしたにすぎない場合(一機関に該当する場合)には、先使用権を援用することができる。
 この最高裁判決は、特許権の共有者の一部の一機関にも適用される。共有者の一機関に該当する者の実施は、共有者自身の実施と同一視することができる。
 なお、この最高裁判決は、昭和13年の大審院判決の一機関の3要件説には従っていない。正当権原者から製造の依頼を受け、製造した製品の全てを依頼者に引き渡しているときは、一機関として認定される。
 現在(2022年7月)は、昭和13年の大審院判決の一機関の3要件説は、実情に適合しないものとなっている。

・3項(専用実施権の設定等に対する制限)

(1)73条3項は、特許権について、自由に、専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することを認めると、その設定を受け、又は許諾された者の資本及び技術いかんによっては他の共有者の権利も有名無実となるので、73条1項の場合と同様の理由により、他の共有者の同意を得なければならない旨を規定している。

(2)甲と乙の共有に係る特許権について、甲が乙の同意を得ないで、丙に通常実施権を許諾した場合は、73条3項の強行規定に違反するので、丙の通常実施権は無効であり(民法90条、91条)、乙は丙に対して差止請求権等を行使することができると解される。


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