◼️「シン・ウルトラマン」(2022年・日本)
監督=樋口真嗣
主演=斎藤工 長澤まさみ 西島秀俊 有岡大貴 早見あかり
オリジナルへのリスペクトと愛がパンパンに詰まった作品。日本の特撮作品が積み上げてきた偉大な歴史を再構築するのは良いことだと思う。「ゴジラ」の偉業や影響力は言うまでもないのだが、我々庶民にとっては毎回ゴジラの新作を映画館で観られていた訳ではない。一方で「ウルトラマン」は僕らのそばにいたヒーローであり特撮作品。シリーズから勇気や諦めない大切さはもちろん、いろんな矛盾があることを学びながら大きくなった。
「シン・ウルトラマン」は冒頭、意外にも「ウルトラQ」のテーマ曲から始まる。ゴメス、マンモスフラワーから始まって、いくつかの"禍威獣"が紹介される。そしてその対策チームとして"禍特隊"が組織されて、最前線の自衛隊と組んで対応にあたっている。そこには「シン・ゴジラ」と同様に、会議や報告、政治的な圧力や根回し…という現実味ある描写。危機に対する分析が主な任務で、ビートルや特殊潜航艇のようなメカが登場することはない。そこはオールドファンにはちょっと残念かな。
シリーズの中からいくつかのエピソードをピックアップして関連づけを加えた脚本の面白さ。日本でだけ禍威獣の脅威が頻発する理由づけに、オリジナルでは支配下の星人がいるメフィラス星人を絡める発想がナイス👍。シリーズへの思い入れがある人にとっては、バルタン星人や実相寺昭雄監督作のダークなエピソード、激しいバトルを期待してもっとパワフルな怪獣をセレクトして欲しかったかも。
庵野秀明セレクトは厄介な相手ばかり。そこには「エヴァ」の影がチラつく。ネロンガは電気つながりでヤシマ作戦がチラつくし、使徒みたいなガボラのツラ構え、エヴァっぽく巨大化したメフィラス星人、クライマックスに登場する最後の相手の造形は、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」に登場する戦艦にも見える(この扱いは許し難いと思うオールドファン多いかも)。工場地帯でのバトルアクションはエヴァそのものだ。
禍威獣→異星人と続いて、クライマックスには過酷な試練が待っている。地球にとっての人類とは。人類は異星人であるウルトラマンが守るべき価値のあるものなのか。ウルトラマンのシリーズが幾度となく向き合ってきた命題だ。平成シリーズでウルトラマンに触れてきた世代なら「ガイア」シリーズが描いた矛盾が印象的だろう。「シン・ウルトラマン」のクライマックスは、「ウルトラマンコスモス」劇場版第3作でウルトラマンジャスティスが"宇宙正義"として人類に下すジャッジに酷似している…いや、ほぼ同じ展開と言っていい。しかし、この危機にどう立ち向かうのかが、この映画の見どころだし肝だ。そこは見届けて欲しい。
メフィラスが人間の姿で現れる場面が好き。平和な日常を映しながら、その影で異星人二人の会話が交わされる。
「私の好きな言葉です」
ちょっとマイブームになりそww