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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ビブリア古書堂の事件手帖

2019-05-06 | 映画(は行)
 
 
◾️「ビブリア古書堂の事件手帖/Memory Of Antique Books」(2018年・日本)
 
監督=三島有紀子
主演=黒木華 野村周平 成田凌 夏帆 東出昌大
 
原作がもう大好きで大好きで。日常に隠されたミステリーが古書を通じて明らかになっていくストーリー、多彩で魅力的な登場人物、綿密なリサーチがあってこそ紡ぎ出される文章の情報量に、巻を読み進める度に感心しながら楽しんできた。ドラマ版はありえない栞子さんのキャスティングと、ジャニーズ枠の為に妹設定まで弟に変更されたことに腹が立ち、僕の中ではなかったことになっている(もちろん見ていない)。本作は別キャストとスタッフによる劇場映画化。観る前に不安はあったが、黒木華の栞子さんで正直ちょっと安心した。
 
さて感想。原作のテイストを生かしながら、2時間の尺に収めた脚本は悪くない。祖母の本にある「夏目漱石」の署名に気づいたのは原作では母親だし、栞子さんは第1巻では全編入院している状態で、バイトの話を持ちかけるのは栞子さん自身だ。病院のベッドで次々に店に持ち込まれる謎を解き明かす様は、まるでアガサ・クリスティ小説のミス・マープルのようだった。劇場版では、いろんな状況は変更されたものの、原作に出てくる重要な台詞をほぼそのまま使って、原作の雰囲気を損ねることなく、映画として成り立たせることができていると思った。むしろ映画が、よりディープな原作を楽しんでもらえるきっかけになるならよいのでは。
 
映画で特筆すべきは、大輔の祖母絹子と田中嘉雄をめぐる過去のエピソードが付け加えられたことだ。原作派には蛇足と切り捨てられそうなパートだが、このセピア色に染められたこの部分が実にいい。東出昌大が抑えた中にある熱い思いがひしひしと伝わる。絹子が本と嘉雄に惹かれていく様子、昭和30年代の雰囲気もいい。原作とは違って大輔の祖父は良い印象だし。古い本が人の思いをつなぐ、というテーマをより分かりやすく見せる試みでナイス。クライマックスはちと物足りなさが残るけど。
 
こんなに原作をしっかり読んで日本映画を観たのは、「武士道シックスティーン」以来かな。個人的に惜しいと思ったのは、栞子さんはもっとウンチクを語り倒して欲しかった。「電車男」で山田孝之が「マトリックス」を語り始めて慌てて止める場面くらいの勢いで。黒木華の栞子さん、本の話でスイッチが入った表情のギャップがものすごく素敵。だけど、原作にある萌え要素が薄れて、ちょっと生真面目な印象に感じられた。え?誰の栞子さんが見たかったかって?個人的には綾瀬はるかのイメージかなぁ。
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